「ピーターの法則」

    管理職になったら評価が下がった

 このようなことはありませんか。同じ人間であっても、立場が変われば評価の基準が変わる。

 たとえば、課長が平社員と同じようなことをやっていて評価されることはない。管理職は、部下を使って全体として仕事の効果を上げられるかに、評価の基準が移ってくる。

 そのためには、他の管理職の仕事をよく見て学ぶ以外に方法はない。

 幸福の科学大川隆法総裁は、『幸福のつかみ方』で以下のように説かれました。

「あなたは「立場が変わった」ということを、もっともっと知らなくてはならないということです。同じ人間であっても、立場が変われば評価の基準が変わるということです。平社員のときはよくできた人間でも、課長になれば同じようなことをやっていて評価されるというわけではありません。部長になったときも同じです。
 このように、立場、立場での仕事の認められ方が違うのです。たとえば課長になってあなたが“できない”と言われるようになったとして、あなたが平社員としてもできない人間かと言えば、そうではありません。課長としてできないと言われているのです。あなたはこの“組織の論理”を、一日も早く見抜かねばなりません。
 たとえば、平社員のときは熱心に働いてよく仕事をし、残業も難なくこなし、人の二倍、三倍働けば、誰でも評価が高まります。ところが課長になると部下ができます。そうすると、いままで自分ひとりだけ仕事ができさえすればよかったものが、それではすまなくなります。
 平社員のときには他の人がみんなライバルで競争相手ですから、他の人よりよく仕事ができればそれでよかったのですが、課長になればそうではない。自分ひとりが仕事をするのではなくて、部下を使って仕事をしなければならないのです。そうすると、あなたという人間が課長になって、部下を使って課全体として仕事の総量、効果を上げられるかどうか、というところに評価の基準が移ってくるのです。
 それにもかかわらず、あなたはいままでどおり「一生懸命働きさえすればいいんだ。人の二倍、三倍、働きさえすればいいんだ」と思っていたとしたら、これはたいへんな間違いになります。
 あなただけが評価を受けるのではなくて、今度はあなたが部下を評価しなければいけない立場になっているのです。そして、トータルで成績を上げなければいけないわけです。まず、あなたの立場が変わったということを知らなくてはなりません。課長になったら、やはり数人の部下を使いこなさなければならない。多ければ十人、十五人の部下を使わなければなりません。部長になれば二十人、三十人、あるいは五十人の人を使わなければならなりません。その時点で要求されているものが違うのです。
 ですから、管理職に抜擢される前のあなたは、自分の仕事に夢中だったし、自分への評価で夢中だったでしょうが、これからは人を評価し、人を育てなければなりません。そういうことはいままで考えなかったはずです。それをいま、考えなければならないのです。そのためには、他の男性の管理職の仕事をよく見て学ぶ以外に方法はありません。
 それと、もうひとつだけ言っておきます。あなたのように抜擢されて管理職になった場合には、他の女性や他の人たちからのやっかみが集中するものです。そういうことをよく心得ている上司は、あなたに対して一見厳しくあたるように見せることもあります。それはあなたへの嫉妬心をやわらげるために、わざとそういうことをするのです。」
(149~154ページ)

 ある程度の立場までは役立っても、その上の段階になると役立たなくなることがある(「ピーターの法則」)。それは仕事の性質が変わってしまうからである。

 より高度な仕事に、より多くの人を使える方向に自分を訓練して高めていかないかぎり、むしろ出世しないほうがよいことがある。

 その対策は、自分がもう一段出世したときに、その仕事ができるかどうかという目で常に上司の仕事を見て どのようにしたらよいのかをいつも研究していること。より高次な仕事に必要な要素や心得、能力とは何かということをつねづね見ておくこと。

 総裁は、『リーダーに贈る「必勝の戦略」』で以下のように説かれました。

「たとえば、「能力はないのだけれども、年を取ったので、その人を役員に据える」「昔ヒットを打ったことがあり、気の毒なので、その人を上げておく」など、人事を年功序列的にやると、それが会社を潰す原因になることがよくあります。実際、これは外国でも同じなのです。
 「ある程度の立場のところまでは役に立っても、その上の段階になると役に立たない」ということがあるのです。これを「ピーターの法則」といいます。
 平社員のときには非常に優秀であっても、主任になると優秀でなくなる人がいます。これは、その人の能力レベルが、主任になると、その任に堪えなくなるからです。
 主任のときには優秀でも、課長になると優秀でなくなる人もいます。これは、それまで下で仕事をしていたときには、上司に一生懸命に仕えていたのに、自分が人を使う側になると、管理職的な能力を持っていないので、人が使えないからです。
 また、課長としては優秀に働いていたのに、部長になったときに、急に駄目になる人もいます。課長として、そのラインの長の仕事はできるのです。ところが、部長になると、今度は管理職を使う管理職になります。そうすると、管理職を教えなければいけなくなりますが、管理職を教えるような技能や知識を持っていないため、いつまでたっても課長の仕事をしてしまうのです。
 部長が課長の仕事をすると、課長は自分の仕事を取られてしまい、課長以下の仕事をしなければいけなくなります。そうなると、時間創造の逆になり、どんどん時間を奪っていくほうへと動いていくのです。
 さらには、部長のときは有能だったのに、役員になったら駄目になる人がいます。ラインの業務を自分で持っている場合は仕事ができるのに、それがなくなって、これを全体的な目から見るような立場になると、急に窓際族になる人がいるのです。
 「いまの時点では優秀でも、立場を上げた段階で優秀でなくなる」ということは現実にあります。それは仕事の性質が変わってしまうからです。より高度な仕事に、より多くの人を使える方向に、自分を訓練して高めていかないかぎり、出世することが仇になり、出世することで自分の首が絞まることがあるのです。
 それでは、どのようにしたらよいかというと、課長になる前に、もうすでに課長の心境で、課長の仕事というものをよく見据え、いつでも課長になれるぐらいの仕事を心掛けてやっていれば、課長になっても落ちこぼれません。また、課長のときには、いつ部長になってもよいように、その準備を何年も前から始めておくと、課長から部長になっても落ちこぼれないのです。
 常に先取りする姿勢が大事です。「数年後に、自分がもう一段、出世したとき、その仕事ができるかどうか」という目で、常に上司の仕事を見て、どのようにしたらよいのかを、いつも研究していることです。「備えあれば憂いなし」なのです。
 より高次な仕事に必要な要素や心得、能力とは何かということを、常々、見ておくことです。
(126~130ページ)

 

出世や異動に伴うあるいは組織などがいつの間にか陥る無能化を避け成功を続けて自分の「賞味期限」を伸ばすにはどうすればよいのか。

参考

「無能」な人には理由がある

 小さいときからスポーツ万能で成績優秀。名門大学へと進学し、一流企業へ就職。しかし、入社してみたら周囲はそんなエリートばかり。次第に出世競争から落ちこぼれ、今ではさっぱりサエない「ただの人」。

 それまで有能だった人が、進学・昇進・異動などをきっかけに、同じ人とは思えないほど「無能」になってしまうケースは、私たち自身を含めてよく経験するところである。ベテランになるにつれて口の利き方が無礼になっていくセールスマン、あまりのクレームの多さにただ受け流すだけになってしまった苦情処理係など、身の回りには「無能」な例が多い。

 なぜ、人はこんなにも無能になってしまうのか。この疑問に明確な答えを与えてくれるのが、「ピーターの法則」と呼ばれる能力逓減の法則である。

ピーターの法則

 「ピーターの法則」とは、カナダ出身の教育学者のピーター博士によって発見された階層社会における法則である。

 「階層社会では、すべての人は昇進を重ね、おのおのの無能レベルに到達する」

 つまり、優秀な学生が社会人になって無能になる、有能な平社員が課長になって無能になる、課長として有能でも部長になって無能になる というように、昇進する過程ですべての人はいずれどこかで自分の能力の天井に突き当り、無能になってしまうということである。

 ということは、必然的に次のようにも言える。やがて、あらゆるポストは、職責を果たせない無能な人間によって占められる。これは裏返せば、仕事は、まだ無能レベルに達していない者によって行なわれているということになる。

 「無能」とはある人の本質的な能力を言い表しているのでも、たまたま何かの拍子でそうなってしまった状態を言うのでもない。そこに組織と階層がある限り、その影響下から逃れることはできない”法則”が働いているために生じる現象だという。

 ここで注意を要するのは、だれにでも当てはまる法則である以上、私たち自身もいつ無能になってもおかしくないということである(すでに無能化しているかもしれない)。

 そこで、自分の「無能化」危険度をチェックしつつ、教員、公務員、会社員などを例に、身の回りの「無能」について考察してみる。

 「なぜ、こんな重要なポストにこんな無能な人が・・・」 この腑に落ちない思いは、組織で働く人なら、必ずや身に覚えがあると思います。

 ピーターの法則は、すべての階層社会を例外なく支配していますが、右肩上がりの経済成長が期待できた時代には、社会の後押しがあった分だけ、昇進の魅力も強大なものに映ったはずです。しかし、今はその後押しが消えたどころか、逆流をオール一本で漕ぎ上がっていくような時代です。漕ぎ方が下手だったり、サボったりすれば、たちまち組織ごと下流へ押し流されますから、無能であることがすぐにバレバレになる。ですから、こんな時代にこそピーター博士の説く処世術を学んで、有能なままでいられる知恵を身につけるべきだと思います。

 「ピーターの本末転倒」 これは、目的の達成よりも、その手段を貫き通すことの方が大事になってしまうことをいいます。実際の成果は別にして、計画書や報告書のうまい・へたが昇進を左右するような組織は、無能な上司の吹き溜まりかもしれません。

 階層社会での昇進という概念を、最終的には人間の文明社会の歴史にもなぞらえました。原始の時代から、高度な科学技術の恩恵に浴している現代に至るまで、私たちは進化の階段を順調に昇ってきたかのようです。しかし、核やクローン技術の開発での「成功」とは、人類の無能化、つまり人類絶滅の危機と表裏一体なんだと訴えているわけです。

 今私たちに究極の無能が迫ってきているのだとすれば、一人でも多くの人に「創造的無能」の効能を理解してもらって、実践してほしいと思います。そうしたら、私たち人間は かろうじて有能さを維持できるのかもしれません。

 

突破のヒント

 昇進を続ければいずれ必ず無能になるという、あらゆる人をその影響下に置く、恐るべき「ピーターの法則」。

 しかし、だからといって避けがたい運命というわけではない。「ピーターの法則」を突破する方法はある。

1 上司の仕事を先取り研究  日常の心がけ

 「無能化の罠」に陥らない方法として、日常の心得として必要なのは何であろうか。それは「備えあれば憂いなし」。出世してから慌てて勉強するのではなく、日常の心がけとしてもう一段上の仕事を研究しておくことです。

「やはり先取りをして研究しておくことです。自分がもう一段スケールの大きな仕事をするためには、人の使い方や組織のつくり方において、どうしなければいけないのかということを、難しいことではありますが、考えていく必要があるのです」(『常勝の法』193ページ)

 例えば、課長になる前に、すでに課長の心境で課長の仕事をよく見据え、いつでも課長になれるぐらいの仕事を心がける。このように、いつも何年後かに自分がもう一段出世したときに その仕事ができるかどうかという目で、次の戦略を練って上司の仕事を常に研究している必要がある。

2 緻密な自己分析と創意工夫  限界を感じ始めたら

 昇格や異動をきっかけに、すでに能力の限界を感じて苦しんでいる場合はどうしたらよいのか。

 そんなときは、普段は見えない自分の欠点や弱点が見えてくる。そうした時こそ成長のチャンスだと考えよう。

「研究心を持って、自分を観察し、他人を観察し、その魂の癖や傾向性、長所・短所を緻密に分析しながら、『自分を変えていこう。いまの自分を脱ぎ捨てていこう』と思っている人は、運命が変わっていくのです」(『幸福の法』65ページ)

 自分の欠点のなかから長所を開発し、長所のなかから次の失敗の種を発見していくことで、もう一段自分を成長させる。

 苦しいときこそ、くよくよ悩むのではなく、緻密に自分を分析し、創意工夫を重ねて、限界を克服しよう。

3 過ぎた欲望は身を滅ぼすと知る  どうしても壁が超えられない時は

 そうは言っても、一生懸命努力しているのに、一向に道が開けず、どうしても限界が突破できないときもある。そんなときは どうすればよいのでしょうか。

「それでも超えられないものに関しては、欲望のコントロールの問題だと思わなければいけません。『分不相応な成功は身を滅ぼすことになる』ということを知っている人は、失敗はしないのです」(『幸福の法』68ページ)

 「課長になりたい」「部長になりたい」「社長になりたい」という志も、それが過ぎれば「執着」となって不幸の原因となる。他人の目で自分を見て、自分の実力を超えて出世しようとしていないかどうか、よくチェックすることが大切です。

 限界を突破しようと努力することは大事だが、それが必要以上の苦しみや執着をもたらすようであれば、あきらめることもひとつです。自分の限界を知り、執着を捨て、実力の範囲内で生きることも大切です。

 限界を感じたときこそ、限界を突破するチャンス。「無能」になることを恐れて単に安定だけを目指すのではなく、この機会に自分ならではのポジションを確立しよう。前に進むにしろ、新しい生き方を選ぶにしろ、常に考え続けるという姿勢が大切。それが無限に成功を続ける道につながっていく。

参考

先取り研究事例

 勝海舟は、江戸末期に最下層の旗本の家に生まれながら、後に幕府を代表する立場にまで出世した人物だが、いつ時代が自分を必要としてもいいように、普段から勉強を欠かさなかった。

 不遇の下積み時代に、貴重なオランダの兵書を写し取るために所有者の家まで1里半の道を半年通い続けたり、1年がかりで蘭和辞書68巻を2部筆写し、蘭学の勉強に励んだエピソードはよく知られている。それは黒船来航の5年前、軍艦奉行に抜擢される14年前のことだった。そうした研鑚を事前に積んでいたため、実際に出世したときには、すでに充分活躍できるだけの知識を豊富に蓄えており、一気に時代の最先端に踊り出ることができたのだ。

 

創意工夫事例

 昭和初期、経営の神様といわれた松下幸之助は、非常に病弱だったため、会社が発展するにつれて体力の限界を感じて行き詰まっていた。しかし、その苦しみの中で自らの弱点を逆手にとって、世界で初めて事業部制という経営手法を思いつく。そして、仕事を人に任せることで会社をさらに発展させていったのだ。個人の能力の限界を創意工夫で突破したわけです。

参考

40歳を過ぎたら

 他人の協力を受けて勝ちつづけるためには、だんだん人が使えるようになっていかなければならない。

 40歳を過ぎると、能力に対する評価が逆転してくる。

 大きな組織では、40歳を過ぎたら個人の才能だけで戦っている人は要らなくなる。

 大川隆法総裁は、『希望の法』で以下のように説かれました。

「「個人で戦って勝つ」ということと、「他人の協力を受けて勝ちつづける」ということは、意味が違います。他人の協力を受けて勝ちつづけるためには、だんだん、人が使えるようになっていかなければならないのです。
 三十代のときは、個人に能力があれば、まだ個人で戦える。しかし、四十歳を過ぎたら、個人の才能だけで戦っている人は要らなくなる」ということを知らなければいけません。個人の才能だけで戦っている人は邪魔になってくるのです。「言うことをきかないで、単独プレーばかりする」というように見えてくるので、むしろ、お荷物になってきます。若いうちはよいのですが、四十歳を過ぎると要らなくなるのです。
 四十歳を過ぎたら、他の人々をまとめて引っ張っていく能力のある人のほうが、高く評価されるようになってきます。個人の能力だけで戦っている人は、大きな会社などにいた場合、適当なところで見切りをつけて独立しないと、埋もれてしまって終わりになります。その辺の見方が大事です。
 「四十歳を過ぎると、能力に対する評価が逆転してくるのだ」ということを知らなければいけません。これは、なかなか納得のいかないことかもしれませんが、事実であり、真実であるのです。」

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