「創造性」を引き出せ

 これからの経済の原動力は、人間の知識と能力に裏付けられた「創造性」です。

 経済成長は、工場を建て機械を増やすといった「設備投資」や、「人口増」、新たなビジネスや産業を生み出す「イノベーション」などによってもたらされます。蒸気機関などの発明が産業革命のきっかけになるなど、いつの時代も「創造性」によるイノベーションが発展をけん引してきました。

 今、私たちの経済は、農業経済、工業経済、サービス経済を経て、情報・知識を中心とする経済へと移行しつつあります。「創造性」の開発は「設備投資」以上に重要になるのです。

 私たちは、アイデアを「財」として扱うことに慣れていませんが、これからは、技術、産業、富など、経済成長をリードするものすべてが創造的なアイデアから生まれます。創造性は無限の資源なのです。

 ここ数年で起きた先進国の経済低迷は、「創造性」の開発に注力することの重要性を再認識させてくれました。

 イノベーションと経済成長を引き寄せるためには、全ての人の「創造性」を引き出す必要があります。人々の才能や自由な発想を押しつぶす教育をしていないかを問い直し、新たな教育・スキル開発プログラムを生み出すのです。これが私たちの世代の最大のチャレンジです。

 

ドラッカーが予言した「知識」が富を生む時代

 改めて注目を浴びた経営学者のピーター・ドラッカー。組織の運営ノウハウである「マネジメント」を最初に体系化した「現代経営学の父」である。

 ドラッカーは、「アイデアが経済成長を牽引する」ことを最初に見抜いた人物の一人でもあります。

 1993年の著書『ポスト資本主義社会』では、「経済が『知識社会』に変わっていく」と予測。「知識社会における生産手段は、もはや資本でも天然資源でも労働でもない。それは知識である。知識を仕事に使うことで、生産性を上げ、イノベーションを起こすことによって価値は創出される」と述べた。

 その後、1996年にインターネットが急速に普及し、グーグルやフェイスブックなど知識とアイデアで戦う企業が増えてきた。ドラッカーの予測は見事に当たっている。

 この「知識によるイノベーション」という考えは、フロリダ氏の言う「創造性」に近い。機械で製品を製造するように、「知識を生かして新たなアイデアを創造する」経済が本格的に始まっている。

 ドラッカーは、この「知識経済」の担い手を、「肉体労働者」とは異なる「知識労働者」と呼んだ。ドラッカーの経営理論は、「新たに生まれた人種である『知識労働者』を いかにマネジメントするか」という問いに いち早く答えたものだった。それゆえ、「現代経営学の父」と呼ばれるのです。

 

一人ひとりの「精神」が経済の盛衰を決める

 「税金で格差を解消するのではなく、騎士道精神による社会貢献で経済成長の恩恵を社会に行き渡らせる」という考えは、綺麗ごとに見えるかもしれません。

 しかし、「個人が努力して稼いだ財産を、国家が強制的に奪う」という非道徳的な発想に比べれば、よほど理にかなっています。

 実際、騎士道精神の手本は数多くあります。アメリカの石油王ロックフェラーは、「金を稼げるだけ稼ぎ、維持できるだけ維持し、人に与えられるだけ与えるのは男の義務である」という格言を残しています。こうした生き方を尊重する文化こそ必要です。

 「経済成長の停滞を打破するには、創造性を開発すべき」という考えも、決して抽象的なものではありません。同じ土地や機械を使っても、各人の工夫によって成果に差が出ます。人の智慧こそ最大の「資本」です。ビル・ゲイツもスティーブ・ジョブズも、財産ではなく、「新しいものを生み出す能力」で富を築きました。それこそ資本主義の醍醐味です。

 ピケティの最大の間違いは、「資本」の中に この「人的資本」を含めていないことです。「創造性の開発」につながる勉強や教育を行うことは、工場建設以上の経済成長につながる「投資」なのです。

 「グローバルスタンダード」に代表される近視眼的な金融の問題も、その本質は「職業倫理を失ったこと」です。

 例えば、魚屋の倫理は よい魚を客に提供すること、寿司屋なら おいしい寿司を握ることです。短期的な利益にとらわれて、この倫理を無視すれば、客が離れ、店は潰れます。金融においても、「事業を育てる」という職業倫理を踏み外せば、いずれ自分も損失を受ける。これは当たり前の原理です。

 幸福の科学大川隆法総裁は、著書『智慧の法』の中で、こう述べる。

「国民の一人ひとりが、政府の大きな力に期待し、政府から与えられることに期待し、『この世の中の、さまざまな制度や機構、仕組み等をいじれば、未来が明るくなっていく』と考えているとするならば、それは、各人の魂の修行としては、十分ではない」

 人は「魂の修行」のために、この世に生まれてくる。その中では、精神的にも物理的にも「人から奪う人間となるか」「人に与える人間となるか」が問われる。経済においても、「社会の富を増やす人間」を志す。これが真の「資本主義精神」であり、経済を繁栄させる鍵です。

 

経済発展させる政策

減税

 「資本主義精神」を引き出し、経済を発展させるために、特に必要なのは「減税」です。「累進性の強い所得税」は、社会の富を増やせる人々の労働意欲を削ぎ、強制的な富の分配は、自主的に社会貢献をしようとする「騎士道精神」も萎えさせます。「消費税」は、企業の売り上げ見通しを押し下げ、新たな事業に挑戦する意欲を失わせます。 

規制緩和

 民間に「創造性」を発揮させ、前例のない新事業を多く生み出すための規制緩和が必要です。現在、新事業を行う際には、無数の規制をクリアし、役所の許認可が必要とされるケースがあります。その過程で多くのビジネスアイデアが潰されています。

起業家教育

 減税や規制緩和で自由な環境を整えた上で、国民の「資本主義精神」を引き出す必要があります。まず必要なのは、「創造性」を育む起業家教育です。知識の修得から一歩踏み込んで、無から有を生み出す発想法や、リスクを取ってチャレンジすることの重要性を学びます。

宗教教育

 さらには、「成功して世の中の役に立つ」という「騎士道精神」や、「人が見ていなくても不正をしない」という職業上の「倫理観」を、それら道徳の元である宗教と共に教える必要があります。

参考

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