ドラッカー 企業の目的と使命

 最初にお断りしておきますが、私は経営コンサルタントでない。また、ドラッカーの研究者でもない。ドラッカーについて、こちらの先生 方のサイトより参考引用させていただきました。

 

企業とは

 企業とは一般的に次のように定義される。「企業とは、営利を目的として、継続的に生産・販売・サービスなどの経済活動を営む組織体である。」

 企業とは経済的機能をもつ社会的組織であり、その組織構造は一人ひとりの人間から構成される人間組織である。そして、経営とは、その人間組織を通して事業をマネジメントし、成果をあげることです。

 価値を生み出す経済活動という観点から、企業は経済的繁栄をもたらすものであり、人間組織という観点から、企業は人材活用の場であり、従業員一人ひとりの観点から、企業は自己実現の場でもある。

 

企業の目的

 ドラッカー曰く、企業の目的は「顧客の創造」である。そして、企業が何であり、何を生み出すかを規定し、企業が成功するか否かを左右するものは「顧客」である。顧客のみが雇用を創出し、企業の成功と存続をもたらしてくれる存在である。

 この本質が理解され、企業文化として社員に浸透していれば、あえて「顧客第一主義」と謳わなくても当たり前のように顧客重視の姿勢が生まれる。

 ところが、現実にはあらゆる組織が内部のことに忙しく、顧客に焦点を合わせることができないでいる。マーケティングにおいても、顧客視点で求められる商品・サービスというよりも販売視点で「売るための商品・サービス」に重点が置かれている。即ち、自社都合の判断が優先された商品・サービスとなっている。「

 顧客は合理的である。顧客が不合理であると考えることは危険である。それは、顧客の合理性がメーカーの合理性と同じであると考えたり、あるいは、同じでなければならないと考えたりするのと同じように、危険である」(『イノベーションと企業家精神』)

参考

「顧客満足」ではなく「顧客を創造すること」が新しい市場を作る

 最近の例でいえば、ユニクロのヒートテックが好例でしょう。汗を熱に変えるという機能を持ったユニクロのヒートテックを明確にイメージして、

具体的に欲求していた顧客はいなかったでしょう。ユニクロが新しい市場を作り出したのです。

参考

 「顧客の、不合理に見える側面を尊重しなければならない。不合理に見えるものを合理的なものとしている顧客の現実を見ることこそ、事業を市場や顧客の観点から見るためのもっとも有効なアプローチである。これこそ、市場に焦点を合わせた行動をとるためのもっとも容易なアプローチである」(『創造する経営者』)

 ドラッカーは、企業が市場を創造するには、まず「市場に居る一人ひとりの人間を見よ」と言っているのだと思います。ドラッカーは市場をマーケットとして見ていたのではなく、市場を形成する一人ひとりの人間の集まりとして見ていたのでしょう。

「天動説」ではなく「地動説」

 ドラッカーの経営思想の原点は、顧客が中心にいるという事実にある。顧客がいて企業が存続できる。商品・サービスは、企業の側から見ると「売れている」と思われるが、実は顧客によって買われているのです。

 企業がニーズを発見し、商品・サービスを企画・開発し、提供してはいるが、企業が中心ではない。あくまで顧客が中心である。そのためのマーケティングであり、イノベーションであり、マネジメントである。

 経営トップの役割において、すべては顧客を理解することから始めなければならない。そして、顧客にとっての価値を創造することである。

 顧客の声に耳を傾け、顧客が価値とみなすものを知り、次に顧客にとっての価値を客観的な事実として受け入れ、それを社内のあらゆる検討と意思決定の基盤とすることである。まさに「顧客第一主義」である。

 顧客に価値あるものを供給し、顧客を満足させることが企業としての成果とすべきものである。その結果として、顧客の創造(企業の目的)に繋がり、売上や利益がついてくる。

 売上・利益を上げることこそが経営の目的だと思われていた時代がありました。しかし、ドラッカーが現れて、経営の本質というものが定義されることになります。それは、ドラッカーの「マネジメントとは人のことである」という言葉に結晶化されています。

 経営とは、現代の自由民主主義の中で、人が自由で民主的な生活をおくるための手段。経済だけが目的な資本主義ではなく、自由で民主的な社会を求める自由民主主義です。組織の中で人が幸せに、生き生きと自己実現し、幸せな生活を送るための道具にすぎないのです。

 売上、利益のみ目標にすることは、人間の幸せの犠牲を意味します。

 社会は、人が生き生きと生産的に生きれるためにこそ存在します。社会、企業の経済活動が人命、人の命、人の尊厳より優先されることはあってはなりません。

 「マネジメントは人のことである」と言う言葉は、人間中心の経営を行うということです。経営の中で、何よりも人の幸せを考え抜き、人を活かすことに集中するということです。経営の中心にあるものは、経済活動としての金ではありません。人間の幸せなのです。人の幸せを中心に考え、人を活かす組織を実現する気概に起業家が燃える時に、経営者としての心の軸、志が定まり、全てが正しい方向に回り始めます。

 マネジメントとは、現代社会の中で、いかに人が中心に気概を持って生き抜けるかという学問の本質なのです。すべてを人の幸せ、人の魂からの成長を中心に経営において実行されてみて下さい。

 経営者としての、あなたの価値は、どれだけの人を幸せにできる組織を創ったかという一点にあります。

 人を活かすリーダー、人を活かす組織を創りあげたリーダーとして、あなたの墓標にかかれるように、強い志をもって生き抜かれてください。

あなたが、あなたの存在こそが、現代社会の中で、人を活かす、マネジメントリーダーなのです。

 あなたは、人を活かし、成長させるという崇高なリーダーとしての哲学を経営で実践されてください。

 人間中心の経営の原理原則を学ぶ時に、経営の軸が定まり、確固たる意志をもって経営にあたるのです。

 

顧客についての五つの問い

 「顧客第一主義」といっても、あらゆる顧客を満足させることはできない。誰をも喜ばせることが大事なのではなく、大事なことは、対象とする顧客を深く喜ばせることである。したがって、行うべきは対象とする顧客の定義である。

 ドラッカーで有名な顧客について、五つの問いを発しなければならない。

第一の問い 「われわれの使命は何か」

第二の問い 「われわれの顧客は誰か」

第三の問い 「顧客の価値は何か」

第四の問い 「われわれの成果は何か」

第五の問い 「われわれの計画は何か」

五つの問い 詳しく

 まさに、ドラッカー流マーケティングの基本である。 「われわれの顧客は誰か?」 これは、「あなたの会社は、誰を満足させたとき、成果を上げたといえるか?」という質問の答えが、そのまま顧客は誰かを教えてくれる。

 この「われわれの顧客は誰か?」という質問に答えることによって、顧客にとっての価値を知り、組織にとっての成果を知り、行動のための計画を立てることができる。

 われわれの顧客は誰かを繰り返し考え続けなくてはならない。なぜなら、顧客は常に変化する。成果をあげるには、原則に忠実でありつつも、顧客の変化に応じて自らを変化(イノベーション)していくことができなければならない。(『経営者に贈る5つの質問』より)

 

 顧客にいかなる価値を提供できるかは、経営トップ自身が顧客に何を問い、その答えをどう解釈し、いかにイノベーションするかにかかっている。このような顧客中心の考え方、アウトサイド・インの考え方が「顧客第一主義」の本質であり、そしてマーケティングの基本である。

 また、ドラッカーは「顧客の創造」とは別に次のように述べている。

 第一に、経済的成果、即ち市場に商品やサービスを提供し、利益を上げること。

 第二に、非経済的成果として、従業員の幸福や地域社会や国家への貢献がある。

 

企業の使命

 企業の使命は社会や国家を経済的繁栄に導くことである。

 経営者たる者、正しい経営を目指すとともに、公(おおやけ)に奉仕する気概・精神をも持たなければならない。

 経営者はこのような使命を背負って経営しなければならない。大きな気概をもって、使命感をもって、企業は黒字を出し、社会や国家の発展・繁栄に貢献しつつ 前に進まなければならない。

 

経営理念

「経営理念」の定義

「企業経営における基本的な価値観・精神・信念あるいは行動基準を表明したもの」(広辞苑による

 その組織に方向性を持たせ、成果をあげさせるためには、「理念」なり「目標」なりが必要となります。

 経営トップは、求心力の核となるべき精神的主柱を社員に提示する必要があります。これが「経営理念」であり、「目標設定」です。

 「経営理念」というのは、「わが社はどの方向に向かっていくのか」、「わが社は何のために存在しているか」、さらには「わが社の行動原理」などを規定したものです。いわゆる「錦の御旗」のようなものです。

 経営理念は、企業に正統性と存在意義と方向性を与え、経営に関わるあらゆる戦略、判断、行動などの基準となるべきものです。

 経営理念は、経営トップの持つ使命感、理想、信念、価値観などを表したものでなければならない。そして、それは、多くの社員が共感し、勇気づけられ、発奮の原動力となるべきものでなければならないし、さらには社会の発展につながるものでなければならない。

 経営理念から、新たな戦略やビジネスモデル、あるいは商品やサービスを生み出す。経営理念に基づいて、社員や経営担当者の教育を行うことによって、経営マインドを持った社員が生まれる。

 正しい経営理念を定め、社員に徹底的に浸透させることによって、強い組織が生まれ企業の発展に繋がっていきます。人はミッションを共有し情熱をもって共に働くとき最大の成果をあげる。そして、これが企業発展の原動力となるのです。

 顧客がその商品やサービスを購入することによって、企業は経済的な資源を富(売上・利益)に変えることができる。

 時とともに変化する環境の中にあって、企業の目的が「顧客の創造」であることから、企業には二つの基本的な機能が必要となる。その基本的機能が「マーケティング」「イノベーション」である。