組織構造モデル

組織構造

 組織構造とは、組織の仕組みや組織がどのようなつくりになっているかを表すものです。また、個人の業務や責任、権限などの仕組みを指しています。

 組織を構造化することで、下記のようなことが明確になります。

 ・誰にどのような仕事をしていくのか

 ・誰に仕事の権限を与えるのか

 ・誰が誰に仕事を依頼するのか

 上記のような細かい指揮系統を整えて、権限を明らかにさせておくことで、業務の円滑化や生産性の向上につなげることが組織構造が重要な目的なのです。

 

組織構造における組織

 組織とは、「特定の目的を共に目指す秩序を持つグループ」という意味があります。

 組織の「特定の目的」を達成するために、企業は組織を上手く機能させることが重要です。

 組織を上手く機能させるために必要なことが下記の2点になります。

 ・「分業」の最適化

 ・「調整」の最適化

 たとえば、エンジニアの技術を持つ社員と会計の技術を持つ社員がいた場合、企業内でそれぞれ「分業」し、効率化が図れるように各社員を適切に「調整」していかなければなりません。

 企業の目的を達成するために「分業」され、その分業された仕事を「調整」する仕組みが組織です。そして、その組織におけるさまざまな仕組みを表したのが「組織構造」になります。

 

組織に必要な3つの要素

 組織を効率的に機能をさせるためには、下記の3つの要素が必要です。

・共通の目的

・貢献意欲

・コミュニケーション

 これら3つは合わせて「組織の3要素」と呼ばれ、アメリカの経営学者テスター・バーナードが定義しています。

1 共通の目的

 組織においては、共通の目的を社員全員に理解してもらい、浸透させておくことが必要です。そして、この共通の目的は組織のリーダーや経営者によって定義づけられます。したがって、共通の目的がなかったり、社員それぞれで目的が異なっていては、どれだけ優秀な社員を集めても組織とは言えません。

 共通の目的を設けて社員に浸透させるには、事業ドメインや組織文化を明確にしておくことが大切です。

2 貢献意欲

 「貢献意欲」として社員が企業の目的に対し、意欲を持って貢献したいと取り組んでいることも大切です。

 もちろん、経営者も社員が「貢献したい」と思えるように意欲を引き出していく必要があります。

 仕事内容を充実させたり給与面での不満の解消をしたりするなど、できることはあるので実施していきましょう。

3 コミュニケーション

 「コミュニケーション」は、組織内で社員同士のコミュニケーションが円滑にできているかどうかが重要になります。

 日常的な業務のなかでも、このコミュニケーションが最も重要で大切だと感じることもあるでしょう。

 組織に必要なこの3つの要素が揃っていれば、組織内で掲げる共通の目的の達成がより効率的になります。

 

組織構造モデル

 以下に、代表的な組織構造モデルを挙げます。  

1 機能別組織

 機能別組織とは、製造、販売、調達、経理、総務など、担当する機能ごとに分けて組織を作成したものです。

 機能別組織は、「事業部制組織」と合わせた「ヒエラルキー型組織」という組織のうちの一つになります。ヒエラルキー型組織とは、ピラミッド型に作られた階層構造が特徴的な日本企業が最も多用している組織構造です。

 ピラミッドの頂点周辺が司令塔である経営者となり、下の層へ末広がりのように責任、機能、権限が小さくなりながら、段階的に人員配置されていきます。

 そのようなヒエラルキー型組織の一つである「機能別組織」は、それぞれの業務内容や機能を区別し単位化する組織形態です。

 食品メーカーを例に挙げると、下記のように機能別に分けることができます。

 ・食品を製造する「製造」

 ・ネットで販売する「販売」

 ・卸業者を開拓する「営業」

 このように業務ごとの機能に合わせて組織を編成します。

 最も一般的な組織構造として、ほとんどの企業で採用されていることが特徴です。

機能別組織は、経営効率に優れる

 機能別組織は、業務内容の重複がなく、経営効率に優れた組織構造であり、機能別に職域を定義することで、業務範囲が明確化するなど、目標設定も容易であると言えます。また、機能別組織は、原則として専門職に特化するため、知識・技術の共有が図りやすく、経験を蓄積することで、一早いスキルアップが期待できます。さらに、事業規模が大きくなるほど規模の経済が働き、生産効率の向上から競争力向上及び利益率の改善を図ることができます。

 機能別組織のメリットとしては、以下のようなものがあります。

1) 同じ仕事を担当するスタッフが一つの組織内に集結するため、各担当者の持つ知識やスキルが共有されやすい

2) 組織の専門性の向上や業務の効率性を高めることができる

 一方、機能別組織のデメリットとしては、次のようなものがあります。

 1) 急激な市場環境の変化や企業組織を挙げて取り組むべき経営課題には対応しにくい

 2) 組織の権限や責任が限定されており、専門的な見方に偏りやすい

 3) 責任の所在が不明確になる

機能別組織は、経営層・トップの責任が重くなる

 それぞれの部署が専門職に特化していることから、職域間の調整を行うのは必然と経営層の職責となります。故にトップの責任が重く、強力なリーダーシップが求められます。調整機能がうまく働かなくなると、顧客ニーズや問題点が部署間に伝わりづらくなり、対応の遅れから重大な機会損失を招く危険性を孕んでいると言えます。それら課題は、全職域・全部署を横断するマネージャー職を設けることで解決を図ることができます。多くの商品や事業を展開する企業で多く採用されており、マネージャーには職域・部署を横断した広範囲での決済権限が与えられます。

 全社的な利益を追い求めるよりも自らの部門だけの利益を追い求めがちになることや、幅広い視点から判断を下すことのできるマネジメント人材が育ちにくいということがあります。その結果、組織・部門間での紛争が起きやすくなったり、最終的な意思決定がトップ・マネジメントに集中することが多くなり、部門間の調整に手間がかかって最終決定に時間がかかることになってしまいます。

 一般的に、機能別組織は、急激な変化の少ない安定的なビジネス環境において、組織内部の効率性や生産性の向上が成功要因となるような企業組織に適していると言われています。

 また、創業して成長期にある企業や、事業や製品のバラエティのそれほど大きくない企業でも採用されています。

 事業部制組織やカンパニー制組織を採用している企業においても、多くの企業では個々の事業部やカンパニーの組織構造は機能別組織となっています。

 

2 事業部制組織

 事業部制組織とは、本社の下に事業ごとに編成された組織(事業部)がぶら下がる形で編成された組織構造をいいます。 

 食品メーカーであれば、「チョコレート事業部」や「弁当事業部」などのように各事業部を編成し、さらに、事業部ごとに「開発部」「営業部」「購買部」などを作ります。

 企業のなかで、業務内容が大きく異なるものがいくつか存在するケースには、この事業部制組織が最適であり、実際多数の会社で採用されています。

 チャンドラーの研究結果では、企業の国際化や事業の多角化を効果的かつ効率的に機能させるには、権限移譲された事業部制の組織が必要であり、事業部制を機能させるための本社機能のあり方が必要だとして「組織は戦略に従う」の命題を1962年に提唱しました。

 事業部制では、日々変化する環境に柔軟に対応する戦略を策定するため、戦略のあり方で組織が可変されていきます。事業部制は、一定領域に特化することで専門的な知見を養うとともに、迅速な決済が可能になるなど、一定以上の企業規模に適した組織構造です。

 

 事業部制組織を構成する各事業部は、その組織が生み出すアウトプットに焦点を当てた組織で、製品・市場・顧客・地理的立地等を基準として決まります。

 事業部制組織では、分権化によって事業部長レベルでかなりの経営判断が行われるため、意思決定のスピードアップを図ることができます。

 事業部制組織が出来てきた背景としては、企業組織が成長する過程で新しい事業分野や新規市場に参入するなどして大きな組織となり、本社においてすべての経営判断を行っていくには非効率であるという点があります。

 事業部制組織と対称的な組織が機能別組織なのです。「製造」や「営業」、「財務」など機能ごとに組織が細分化されています。今でも単一事業を狭い範囲で行う、中小企業などで多く採用されています。

 それぞれの機能で専門性を発揮しやすく、生産性の向上や独自の強みを確立しやすいというメリットがあります。しかし、事業を多角化し、商圏を広げていく過程には、事業部制へのシフトが求められるでしょう。

 事業部制は、機能別組織とは対称的に事業部単位で構成されている組織体系です。各事業部ごとに事業を行う上で必須となる機能をすべて持っているため、事業部の運営権限のほとんどを事業部長に委託されることも珍しくありません。そのため、事業部制組織のことを「権利が分散している組織」と表現することもあります。

 会社によって事業部の分け方は様々です。

 主に3つのパターンがあります。

①製品ごとに事業部を分ける

 複数の商品、サービスを扱っている企業において、製品ごとに事業部を分ける方法です。製品についての知識や技術など、専門性の高い人材を集めることができるので、よりその製品に特化させられます。優れた製品を生み出しつつ、製品に関する問い合わせや営業も部署ごとに行えるので、効率的に利益を上げられるようになります。

②地域別に事業部を分ける

 例えば、東京に本社を置く会社が関西に商圏を広げる際や、海外進出をする際に現地に事業部を置く方法です。地域ごとに事業部を分けて権限を与えることで、その地域ならではの課題にも素早く対応することができます。

 東北、北陸、関東、中部、関西、中国、四国、九州などのセグメントで区分けられるほか、関東エリア内に東京、千葉、埼玉、神奈川など、さらに細分化された地域セグメントで事業部が編成され、それぞれの事業部が自己完結型で商品・サービス提供を行います。

③顧客別に事業部を分ける

 同じ製品の中でも、顧客をセグメントし事業部を分ける方法です。例えば、同じ製品でも法人と個人では売り方が全く違いますし、同じ法人でも大企業と中小企業でも売り方が違います。セグメントされた顧客特有の課題やニーズを理解することで、より深い提案が可能になります。

 顧客セグメントは、性別、年齢層(年代)、家族構成、年収、職業、ライフスタイルなどで行われ、顧客のセグメント毎に異なるニーズに応える、製品・サービス開発を行なっていきます。

権限委譲することで迅速な対応が可能になる

 事業部制組織では、各事業部に権限が委譲され、自己完結型の事業運営が行なわれます。事業部の長にあたる事業部長には大きな権限が与えられる一方、事業部に関わる全ての責任を担うことになり、責任の所在も明確化します。また、事業部毎に営業や販売などを行うため、現場や市場の状況を把握しやすく、迅速かつ柔軟な意思決定で、スムーズな組織運営と迅速な対応が可能となります。

 機能別組織が、職能別に専門職に特化することで経営効率に優れた組織構造であるに対し、事業部制組織は、人材、設備などの経営資源が重複することで経営効率に劣る懸念があります。

 機能別組織における製造部が共通部品をまとめ、効率よく製造するに対し、事業部制組織では、事業部間で共通できる部品があっても、事業部毎に部品を製造するため、経営効率に劣ると言えます。

事業部制組織は、ブランド・アイデンティティの担保が困難

 事業部制組織では、それぞれが事業部運営を優先する傾向があることから、企業ブランドとしてのアイデンティティ担保が困難になるケースがあります。また、事業部がそれぞれ独立採算制であることから、事業部間のシナジーや、事業部をまたいでのイノベーションが起こりづらいという課題が生じます。その一方、事業部毎にマネジメント・スキルが養われることから、幹部や後継者の育成に適しています。

 

面積図を使うと総資源の配分を視覚化しやすい

 会社に複数の事業があり、人員の再配置を検討するときには、どのような考え方をすればよいのでしょうか。そのようなときに便利なのが面積図の考え方です。

 会社組織の最も多い形態は、主に事業部制組織と機能別組織に分かれます。事業部制のメリットは、大きな会社であっても経営の単位が小さくなるため、意思決定の伝達がしやすいことです。デメリットは、同じ職能の従業員が複数必要になること、組織をまたぐ人的リソースの交換が難しくなることだといえます。

 事業部ごとの人員を面積で表現したグラフを準備して、開発技術者をどの事業部へ割り当てるのかを検討してみましょう。

 伝統があり人員の割り当ても多いけれども、製品のライフサイクルが衰退に向かう事業や、成長期にあって開発人員が足りない事業などの特徴を面積図で視覚的に把握すると、議論が進みやすくなります。

 面積図の考え方は、人員数以外に、人件費でも活用できます。ただし、人的リソースの配分は、同じ職能であっても業務内容が異なる場合も多く、単純に移動させればよいというわけではないので、実態を把握することが大事でしょう。

 

事業部制組織のメリット・デメリット

事業部制組織のメリット

 今では当たり前のように行われている事業部制ですが、その意味やメリットをしっかり理解しているでしょうか。形だけを取り入れても、うまくメリットが発揮されないケースもあるため、どのような恩恵を受けられるか考えて取り入れましょう。

現場におけるスピーディかつ柔軟な意思決定が可能になる

 事業部制では、事業部に必要な機能をすべて持たせているため、環境変化に対応するために事業部内で意思決定できます。経営陣にわざわざ確認する時間や手間を省けるため、より迅速で柔軟な意思決定が可能です。

 事業部制にしても、十分な権限を与えていなければ、事業部制の恩恵を受けているとは言えないでしょう。それぞれの事業部にどこまで権限を与えるかが、事業部制を成功させるためのポイントとも言えます。

経営視点を持った人材が育ちやすい

 事業部制での各事業部のトップは、製造や営業、経理などあらゆる機能を考慮した上で意思決定を行わなければいけないため、自然と経営感覚が磨かれていきます。機能別組織ではこうもいきません。

 各機能に特化した人材は育ちやすいが、総合的な判断をする機会がないため経営視点を持った人材が育ちにくくなります。育成するコストと時間はかかるものの、全体最適の視点で事業を管理できる人材を育てられることは、長期的に見れば会社の大きな資産になるはずです。

経営陣が全社的な経営に集中しやすい

 事業部制組織では、各事業部に運営の権限を委託しているため、各事業部で自己完結的に事業が行われています。そのため、経営陣に意思決定の権限が集中する機能的組織に比べて、経営陣への負担は軽くなると言えるでしょう。目先の意思決定を行わずに済むため、新規事業への進出や事業撤退などの全社的な意思決定に集中しやすくなります。

 事業部制組織においては、分権化されていることにより事業ごとの責任が明確になります。、問題が発生した場合に問題解決のための対応を迅速に行うことが出来ます。

 また、分権化により、事業部長に大きな権限が委譲されているため、意思決定プロセスが簡素化され、意思決定が容易となります。

 分権化されていることにより、管理職が早い段階から幅広い意思決定を任されるようになり、マネジメント・スキルをもった人材を育てることが出来ます。

事業部制組織のデメリット

 様々なメリットのある事業部制組織ですが、もちろんデメリットも孕んでいます。適切な対応をしなければ、事業部制が事業の成長を阻害することにもなりかねません。事業部制を取り入れるのであれば、そのデメリットも正しく把握しておきましょう。

事業部ごとに壁ができやすい

 事業部制を取り入れることで、それぞれの事業部の業績が明確に表されるようになります。そのため、それぞれのメンバーも自分の事業部の業績向上に躍起になるのは自然の流れです。

 メンバーがやる気になる事自体はいことですが、それにより、ほかの事業部に意識が向かわなくなることは大きなデメリットです。部分最適を追うあまり、全体最適が考えられなくなるのです。

 事業部間でのコミュニケーションが希薄になることにより、隣の事業部に眠るチャンスに気づかないこともあります。隣の事業部が開発した新しいシステムや研究が その事業部でしか使われないことも珍しくありません。

 また、Aの事業部で価値のない情報が、Bの部署では価値ある情報であることもよくあります。事業部制を取り入れる際は、事業部感のコミュニケーションが希薄にならないよう工夫し、全体最適で考えられる体制を整えましょう。

短期的な思考に陥りやすい

 事業部制組織では、1ヵ月(もしくは年)ごとに、各事業部の業績がクリアになります。業績が低迷したり他の事業部と比べて業績が悪いと、その事業部自体の責任が浮き彫りになりますし、最悪の場合は事業撤退にもなりかねません。

 そのため、各事業部は、長期的には、必要である人材育成や設備投資の実行に躊躇し、短期的に利益を得られる施策ばかり行なってしまう可能性があるのです。特に事業部を任された経験が浅いリーダーほど陥りやすいので、権限を与えつつもフォローを忘れないようにしましょう。

リソースに無駄が生まれやすい

 

 事業部制では、それぞれの事業部に事業を完結できる機能が必要なため、機能が重複して無駄が生じやすくなります。例えば、AとBのサービスを開発するのに10人のエンジニアが必要だったとします。それがAとBを事業部に分けることで、Aに7人、Bに8人のエンジニアが必要になり、計15人必要になることがあるのです。

 同じようなことが、人材だけでなく、土地や施設など、さまざまなリソースで起こります。そのため、事業部制にしても、一部のリソースを共有できるようにするなど、柔軟に組織を編成することが重要です。

 デメリットとして、以下のような点が挙げられます。 

 事業部制組織においては、上記のようなデメリットを緩和する意味もあって、各事業部を統括する本社機能(本部機能)があります。

 本社機能では、各事業部の業績評価や企業全体の戦略コーディネートといった全社統括機能に加えて、研究開発、法務、財務といった専門職能機能を担うこともあります。

 この本社機能によって全体の最適化が図られます。

 また、事業の幅が広く事業部の数が多くなってしまった場合には、事業部をグループ化してその上に事業本部を置いて「本社−事業本部−事業部」という構造にし、本社機能のうち、事業部の統括や研究開発を事業本部に任せるというやり方もあります。

 各事業部の担当事業の分け方ですが、代表的なものとして、「地域別」「製品別」「顧客別」という基準があります。

 一般的に多用されてきたのは「地域別」「製品別」の分け方です。近年「顧客別」での分け方も増えてきています。

 顧客企業ごとにニーズの異なるコンピュータ業界では、「製品別」「地域別」に事業部を分けることが多かったのですが、事業自体がコンピュータそのものを売ることから、コンピュータを活用したソリューションを提供することに主眼が移っていったのに対応して、顧客別(業界別)の事業部制をとることが増えてきています。

 このような事業部制組織を採用している企業にはどのような企業があるでしょうか。

 事業部制組織を採用している企業の特徴としては、食品、自動車、電機等の数多くの製品を抱えている大きな企業であるという特徴があります。

 事業部制組織を採用した代表的な企業の例としては、松下電器産業(現Panasonic)があります。

 松下電器産業では、1933年にラジオ部門を「第1事業部」、ランプ・乾電池部門を「第2事業部」、配線器具・合成樹脂・電熱器部門を「第3事業部」として、事業部制組織を導入しています。

 その他の導入企業の代表的な例としては、日本企業では神戸製鋼所や積水化学、三菱電機があり、アメリカの企業では、GM(ゼネラル・モーターズ)やGE(ゼネラル・エレクトリック)、デュポンなどがあります。

 

3 カンパニー制組織

 カンパニー制組織とは、事業部制組織の独立性をさらに高めた組織形態です。

 事業部制組織の各事業部を独立会社として扱うもので、事業部制組織よりも独立性が高く、事業成果が明確で、責任も重い高度の分化制度です。 

 企業内にある事業部を独立した一法人のように扱い、経営資源(ヒト・モノ・カネ)と権限委譲を行ことで、それぞれの企業が責任を持って経営を行う組織形態です。責任の所在を明確化することで、企業内競争力の強化や業務効率化、コスト削減などを意識づけ、収益力の向上や事業効率化を図ります。

 社内の本社機能の下にカンパニー(擬似会社)をおく社内カンパニー制と、本社機能が各事業会社の株式を保有し、各事業会社のコントロールに専念する持ち株会社制とがあります。

 社内カンパニー制では、各カンパニーに対して擬似資本金が配賦され、一定の基準に従って貸借対照表や損益計算書を作成し、会計上、完全に独立した事業体として扱われます。

 持ち株会社制は、日本では1997年に独占禁止法が改正されて認められるようになり広まってきました。

 その独占禁止法改正以前は、本社自体も事業部門を保有しながら、子会社を保有するという形をとってきました。

 また、カンパニー制であっても、各事業会社間のシナジー(相乗効果)が働く範囲での展開をするのが一般的ですが、本社が投資会社的な立場をとって、個々の事業会社間のシナジーがあまり働かないようなケースも見受けられます。

 それぞれのカンパニーには、執行役員を配置し、投資、人事、予算など、あらゆる権限と責任が与えられることから、事業部ごとの最適な判断や迅速な意思決定が可能となります。また、会計上の独立性が担保されている点も特徴的です。

 カンパニー制が多くの企業で導入されるに至った背景には、事業部制の欠点を補うメリットがあったことが挙げられます。事業部制は利益追求が不可欠である一方、重要な経営判断を事業部単体では行えないジレンマが生じていました。独立採算制となるカンパニー制では、重要な経営判断をカンパニー内で迅速に行うことができるようになるだけでなく、多様化する顧客ニーズに柔軟な対応が可能であるとして、多くの企業で採用されています。

 高度成長期を経て成熟期になると、多くの日本企業は多様化する顧客ニーズに対応するため、各事業部が一定の権限を持つ事業部制を採用しました。事業部制の多くは、商品・サービスごとに組織化され、事業運営に必要な権限を与えることで、最適な運営を可能にし、利益の最大化を図りますが、重要な権限は本部経営層が有することから、迅速な対応が困難でした。これに対しカンパニー制は、事業部を独立した一法人として扱い、経営資源(ヒト・モノ・カネ)と権限委譲を行ことで、カンパニーごとの判断で実質的な経営が行われることから、次世代リーダーに経営の経験を積ませることが可能となり、育成面でも大きな成長が期待できる組織形態であると言えます。

 カンパニー制組織は、事業部制組織と同様に組織を分権化し権限の委譲を志向する組織形態であるため、そのメリットやデメリットの大半は、事業部制組織のメリット・デメリットと共通のものになります。

 しかし、カンパニー制は事業部制組織よりもさらに分権化が進んでいるため、これらのメリットやデメリットは、事業部制組織のものに比べて大きなメリット・デメリットであるということが出来るでしょう。

カンパニー制のメリット

 1) 意思決定と実行の更なるスピードアップ

 2) 組織の活性化と事業の「利益」を意識した経営が可能

 3) 経営システムの簡素化

 4) 将来の経営トップの育成

 5) 経営資源の効率的な配分が可能

 6) 事業の売却や事業構造の変革が容易 

カンパニー制のデメリット

 1) 独立性が強すぎるため全社的な統一が図りにくい

 2) 全社での共有が望ましい経営資源が分散して全体の資本効率が損なわれやすい

 3) 部分最適化に陥ってカンパニー間の技術交流・人事交流が少なくなり、カンパニー間のシナジーを生み出すのが難しい

 4) 間違った判断で突き進むリスクがある

 一時期、社内カンパニー制を採用する企業は多かったのですが、それらの企業でも上記のようなデメリットから社内カンパニーを廃止し、事業部制組織に戻すなどの対応を行った企業もあります。

 社内カンパニー制を廃止した企業の例としてはNECやや富士ゼロックス、ソニーが挙げられます。

 これらのデメリットを緩和するため、本社機能は全体最適の視点でリソースを再配分するなどして、経営資源の合理化や効率化を図ることが求められます。

 

 カンパニー制と似た組織形態に持株会社制純粋持株会社)があります。持株会社は、一般的に実際的な事業活動は行わず、株式を有することで傘下企業や事業を支配する組織形態であり、カンパニー制と同様に独立した複数の企業で成り立ち、投資権や人事権など経営判断の権限を持ちます。カンパニー制はあくまでも同一企業内で運営され、法的にも同一法人として扱われるのに対し、持株会社は法的にも完全な別会社となります。

 

事業部制との違い

 同一企業内で利益を追求するという点では、カンパニー制と事業部制は共通していますが、権限を中心に大きく異なる点が複数あります。カンパニー制と事業部制の主な違いは以下の通りです。

 

カンパニー制

事業部制

目的

将来を見据えた経営の効率化

企業再編による経営のスリム化

責任の範囲

独立企業と同じくすべての責任

地域ごとの製品・サービス等の損益についての責任

経営戦略上必要な意思決定権

有り(カンパニー内で決定)

無し(本社や取締役会で決定)

人事権・投資権などの有無

有り(カンパニー内で決定)

無し(本社が持ち、事業部にはない)

人材育成

将来のリーダーとして企業全体の経営を擬似体験できる

事業部単位の利益責任のみ与えられるため、企業全体は見えにくい

 事業部制は、カンパニー制とは異なり、責任範囲と権限の両方が狭い特徴があります。事業部制では取扱製品やサービス等の利益責任が与えられますが、カンパニー制は独立企業が担う範囲の責任や権限が与えられます。

 また、事業部制は本社の意思決定が必要となり、カンパニー制と比べて執行まで多くの無駄な時間が発生しがちなため、事業推進のスピードが落ちる傾向にあります。

 機能別組織、事業部制組織、カンパニー制組織は、その組織内に階層性があるため、ヒエラルキー組織に分類されます。

 いずれの組織構造にしても、ヒエラルキーの階層を何層にするか(同時に1人の管理職が何人の部下を管理するか)という問題が生じます。

 近年は、意思決定のスピードアップのため、階層数を減らして組織のフラット化を進める企業が増えています。

 この1人の管理職が直接管理している部下の人数や業務の領域を、「スパン・オブ・コントロール」と言います。

 組織の階層数だけでなく、必要となる管理職者数や人員の具体的な配置を考える上で、このスパン・オブ・コントロールは重要な要因となります。

 部下の人数が多すぎると、管理者の目が行き届かず、管理者からのサポートや情報提供が不十分になることが考えられます。

 部下の数が少なすぎると、相対的に管理者数が多くなってしまい、コストが高くなってしまうことや、管理過剰になってしまい部下の自主性が育ちにくくなることが考えられます。適正な管理範囲を決定することは難しいことです。業務内容や業務のやり方、アウトプットの質や量、管理者や部下の能力などの違いを考慮する必要があるためです。

 IT技術の普及やネットワーク化によって、電子メールを使用した情報の共有や電子ファイルシステムでの情報の管理が容易になってきていますが、管理職である人間の管理能力には限界があり、管理可能な人数が無限に増えるわけではないのです。

 ヒエラルキー組織である機能別組織や事業別組織、カンパニー組織を採用して組織構造をデザインしていく際には、適切な数の階層やスパン・オブ・コントロールを考慮に入れて行う必要があるのです。

 

4 マトリックス組織

 マトリックス組織とは、機能別組織と事業部制組織のそれぞれの持つメリットを同時に実現することもくてきししてて、それらの組織構造を組み合わせた組織構造です。

 例えば、機能と製品という2つの軸を持つマトリックス組織であれば、機能別組織の持つ専門性の向上というメリットと、製品別事業部の持つ環境適応性や顧客適応性といったメリットを同時に実現しようとするものです。

 マトリックス組織には、大きく分けて①バランス型、②ストロング型、③ウィーク型と3つの種類が存在します。

 その違いはプロジェクト・マネジャーの選出方法にあります。

1 バランス型

 プロジェクトの責任者(プロジェクト・マネジャー)をプロジェクトチーム内から選任する組織形態です。

 プロジェクトに関わるメンバーからリーダーを選任することで、業務の遂行状況をいち早く把握し、状況に応じ柔軟な対応が可能になることがバランス型最大のメリットであると言えます。一方リーダーは、複数の業務を兼任することから、大きなやりがいを得るとともに、負担も大きくなると言うデメリットも生じます。また、プロジェクトマネジャーとは別に、部門のマネジャーが存在するため、指揮命令系統の複雑化から対立が起こる可能性を秘めています。

2 ストロング型

 組織内にプロジェクト・マネジメントに特化した専門部署を設け、プロジェクト毎に責任者を配置する組織形態です。

 プロジェクト・マネジメントに長けたマネジャーを配属することで明確かつ効率的な業務遂行が可能となります。多くの人員を抱える大企業や、高度なプロジェクトの遂行に適した組織形態だと言えます。

3 ウィーク型

 プロジェクトの責任者はあえて設けず、一人ひとりのメンバーが責任を持ち、自らの判断で業務遂行を行う形態です。

 自由度が高く、多角的なアプローチが可能になるメリットがある一方、マネジャー不在から責任の所在が曖昧になりやすく、意思決定に時間を要する可能性が高いというデメリットがあります。

 マトリックス組織の特徴には以下の3点があります。

 1) 事業部制組織と機能別組織を統括する組織が中央に存在する

 2) 1人の担当者が、事業別組織と機能別組織の両者の機能を求められる

 3) 1人の担当者が、事業別組織と機能別組織の2人の上司から指示命令を受ける

 なお、マトリックス組織には次のような問題点があります。

 1) 指揮命令系統の二重化により、系統間の調整や対立が発生し、結果的に意思決定や戦略実行が遅くなる

 2) 間接費が増大する

 3) 管理者間の権力闘争の激化

 このような問題点への対処方法としては、2人の上司のうちどちらかに強い権限・責任を与えるというものがあります。

 例えば、機能別組織をベースとして製品別の管理者に各機能間のコーディネートを担当させるケースや、製品別の事業部制組織をベースとして、機能別の調整役に製品間のコーディネートを担当させるようなケースがあります。

 

5 チーム制組織

 チーム型組織とは、プロジェクトのために短期的に集められた人員で構成されたチームで事業を進めていく組織の形態です。それぞれのチームメンバーが異なる専門性職種を持つことが特徴になります。

 プロジェクト毎にチームをつくる海外では一般的ですが、日本ではあまり広まってはいません。

 一般的には、プロジェクトが遂行されればチームは解散となります。

 最近では、ある目的のためだけにチームを形成する場合が増えてきています。

 このチームが企業経営上で重要な役割を担うことが増えてきています。 

 こうしたチームは、「プロジェクト・チーム」や「タスク・フォース」と呼ばれています。

 プロジェクト・チームには次のような特徴があります。

 1) 少人数で特定の目的を達成するために作られる

 2) 一般的に目的を達成した時点で解散する

 3) メンバーは特定の部署に所属しており、チームのために召集される

 このプロジェクト・チームには、所属部署を一時的に離れてプロジェクト・チームの仕事に専念するケースと、所属部署の仕事を行いながら、必要に応じてプロジェクト・チームの仕事を行うケースがあります。

 プロジェクト組織とは、プロジェクトごとに専門スキルを有した人材を各部署から招集し、プロジェクトチームを結成します。プロジェクトが完了すると、チームは解散し、各メンバーは元の所属部署に戻るか、また、別のプロジェクトに参画していきます。プロジェクト・マネージャーの権限が大きくなる組織形態で、要件変更が発生しやすい情報システム会社に多く見られる組織形態です。

プロジェクト組織のメリット
 環境や状況の変化に柔軟かつ迅速に対応できる
 共通の目的を持ってメンバーが招集されることから、チームの一体感を生み出しやすい
 プロジェクトの目的が明確なため、モチベーションが高まりやすい
 権限がプロジェクト・マネージャーに集中するため、責任の所在が明確である

 このプロジェクト・チームは、次のような状況下でその特徴を発揮します。

 1) 市場動向の変化が激しく、既存の組織体制では対応できない事案がある場合

 2) 問題解決のためのスピードが優先される場合

 3) イノベーティブな製品やサービスを開発する場合

 プロジェクト・チームのメンバーは、様々な部署に所属していることが多いため、多様な視点から事案を検討することができます。

 そのような多様な背景を持つメンバーが、組織の壁を超えて協力関係を作ることができるため、画期的なアイデアが生まれたり、優れた仕事の進め方を発見することもできます。

 また、少人数であるため、意思決定もスピードアップが可能です。

 このようなメリットを享受するためには、リーダーの育成やチームメンバーの構成、マネジメントからの支援や権限委譲が重要なポイントとなります。

 チームを構成するメンバーの能力は補完的なものであることが望ましかったり、リーダーには多様な意見をまとめ上げる力量が求められます。

 そして、チームが目的の達成に向かうプロセスの中で、仕事がしやすくなるように、マネジメント層には様々な面での支援が期待されます。

 このチーム制組織を定常的に採用しているのは、コンサルティング会社や法律事務所などの組織です。

 これらの企業組織では、プロジェクトの内容に応じてメンバーを選び、最適なチームを構成して業務を進めていきます。

 このチーム制組織の中で最も成功した例としては、日産自動車でカルロス・ゴーン氏が主導した「日産リバイバルプラン」策定に際して、実行主体となったクロス・ファンクショナル・チーム(CFT)です。

 日産でクロス・ファンクショナル・チームが導入された背景としては、社内で「顧客志向」の考え方が弱くなり、自分の部署の都合が優先されるセクショナリズムが蔓延していたという面があります。このクロス・ファンクショナル・チームは、日産社内の若手・中堅幹部を中心に組織横断的なプロジェクト・チームとして結成され、「事業の発展」「購買」「製造・物流」「研究開発」「マーケティング・販売」等のテーマについて検討し、解決策を経営陣に対して提案していくというものです。クロス・ファンクショナル・チームを導入することによって、部門間の壁を打ち破り、顧客のために企業組織として本当に対応すべき内容を議論できるようにしたのです。約3ヵ月間の活動期間中に2000件ものアイデアが検討され、それらは日産リバイバルプランとしてまとめられていきました。その日産リバイバルプランを実行した結果、日産自動車は1990年代からの業績不振から脱し、「V字回復」とも呼ばれる急激な業績回復を成し遂げることができました。

 このような成功例を受けて、公式的にチームを組織を構成する基本単位とする、チーム制組織の組織形態を取る企業組織が増えてきています。

 

6 社内ベンチャー組織

 社内ベンチャー組織は、新しいビジネスのために独立して作る企業内組織です。プロジェクトのように臨時ではなく、新規事業をコンセプトとして会社に近い権限を与えられます。新しい企業文化の成長や人材育成のきっかけにもなるでしょう。

 メリットは、やりがいのある仕事をアピールできることや、独立に必要なことを社員に学ばせられることです。新規事業が目的の組織は、新しい会社の運営に近い機能性を与えられます。これにより、社員は他の組織とは違ったことを学べるでしょう。

 企業で働く人によっては、独立や社長への昇進を目指す人もいます。そうした人に起業を疑似体験させるのが社内ベンチャー組織の特徴です。給料も得られるので、リスクを抑えた状態でビジネスを学べるでしょう。

 デメリットは、企業の損失リスクと社内ベンチャー組織に属するメンバーのモチベーションの維持です。新しいビジネスはうまくいくとは限らず、失敗が続くと社員も精神的につらいでしょう。

 新規事業が成功する可能性は絶対ではありません。企業にとっては運転資金の計算や経費のムダを削るなど、新規事業に対する損失対策が重要になります。

 また、企業によっては、経営陣の命令が多すぎるケースもあるでしょう。新規事業を手がけるにもかかわらず、ライン組織のような一方的な命令が続くと、社員の創意工夫の機会を奪うことになります。ある程度はカンパニー制組織のように意思決定の権限を与えるのが賢明です。

 このように、企業がリスクを考えて社内ベンチャー組織をコントロールしなければなりません。

 

7 ネットワーク組織

 ネットワーク組織とは、大きな自立性を持つ組織単位が相互に緩やかに連結した、非階層的で自己組織的な組織形態をいいます。

 インターネットやソフトウェア、人的サービス網が様々に結びついた情報通信ネットワークを背景として、ITを駆使した情報の創造開発と交流を目的とした緩やかな提携関係をいいます。

 この提携関係は、国や業種、企業規模等を超えて、企業間や部門間、個人間などで築くことが可能です。

 この緩やかな提携関係の中で、様々な異質な情報を結びつけて新しい意味のある情報を創造する場所を作り出し、イノベーションや情報、データベースの活用を通じて異業種・異分野への壁を乗り越えて参入することを可能になると考えられています。

 また、ネットワーク組織では組織の組み替えを容易に行うことができるため、経営環境の変化に柔軟に対応することができるとも言われています。

 このように、ITや情報通信ネットワークの高度化に伴って、新たな組織構造が作り出されているという面もあるのです。

 インターネットや電子メールといったITに対する取り組みが企業組織に大きな影響を与えるということは、もはや常識となっているとも言えるでしょう。

 しかし、ITによる新しいビジネスモデルの構築に合わせて、組織の在り方を変革する視点というものはまだまだ不足していると言えます。

 ITを活用したビジネスモデルに従って組織構造をデザインした事例として、DELLの事例を見ていきます。DELLのビジネスモデルは、顧客の望むパソコンを開発し顧客が望むタイミングで受注生産することによって競争優位を築くというものです。そのために、顧客との接点(顧客から受注するポイント)を重視し、顧客からの注文や要望を細かく受けることができるようにしたり、顧客からの仕様が設計以降の全工程で共有されるように工夫されています。

 DELLに限らず、ITを活用したビジネスモデルを築き上げることができれば、企業組織が市場との結びつきを深めることができ、顧客の動向やニーズを直接的に吸い上げることができる可能性は高まります。

 このようなビジネスモデルを有効に機能させるためには、組織構造のデザインの面からも注意すべき点があります。

 このDELLの場合は、次のような点で配慮が行われました。

1) インターネット以外で注文する顧客へ対応するための販売組織に経験豊富な販売員を配置する

2) 顧客からの要望を受け付ける販売サポートチームと次期製品を設計する担当マネージャが密接に連携している

 このような配慮を行うことによって、同社の強みをさらに強化するための組織構造をデザインしたということができるでしょう。

 一般的に、日本企業では、ITを導入するとなると電子メールを活用して組織をフラット化しようとするなど、組織構造の見直しを行うという例が多く見られました。

 ただ、ITを導入・活用したからと言っても、企業の競争力を高めるようなビジネスモデルが生まれることは稀で、組織構造いじりに終始してしまうということがよく見られます。

 一方、DELLのケースでは、ITの導入・活用を前提としてビジネスモデルを構築し、そこで明確になった機能を組織構造として組み上げるというアプローチをとっています。

 このように、ITと組織デザインを連携させることによって、ITはの企業にとって大きな武器となりえるのです。

 企業組織にとって最適な組織構造とは、その企業組織の業務内容や構成するメンバーの人員数や経営戦略によって変わってきます。

 また、ITの技術や情報ネットワークの進化によって、組織構造の形態も進化をしています。

 どのような組織構造にしたら、組織を構成するメンバーの能力を引き出してより効率的に経営戦略を実現できるのか、マネジメントにとっては常に大きな課題であるということができるでしょう。

 

組織構造を決める条件

 組織構造を決定する条件は、大きく分けて2つあります。

 1つは、企業組織を取り巻く外部環境で、もう1つは企業組織の内部環境です。

外部環境

 外部環境はさらに細かく分けると、マクロ環境(法規制、経済状況、社会状況、技術動向)や、市場環境(顧客数、ニーズ)、競合環境などがあります。

 これらの要因は、企業戦略への影響を通じて、あるいは直接的に組織へと影響を及ぼします。

 これらのうち、マクロ環境は一般環境と言うこともあります。

 マクロ環境は、ある特定の企業のみに特異的に働きかけるものではなく、その市場で活動しているあらゆる企業組織に対して影響を及ぼすからです。

 特に、技術動向は組織構造に対して大きな影響を及ぼします。

 イギリスの経営学者であるジョアン・ウッドワードは、1965年に生産形態(単品生産なのか、大量生産なのか、連続生産なのか)によって、適切な組織構造には違いがあることを指摘しています。

 受注生産で単品生産を行っているような場合は、専門の技術者が設計を行い、ユーザとの情報交換を通じて生産を行っていきます。

 その生産の中で必要になる部品も専門の部品となり、必要に応じて内製化します。

 そのため、多様で高度なスキルを持った専門家集団との協働が必要となり、それぞれが自律的に行動できるような組織構造が求められます。

 現在の自動車のようにラインで流れ生産を行うような場合は、決められた作業を決められた手順で、決められた時間内に実施することが求められます。

 そして、組織内には、作業者が規定通りに作業を行っているかを管理監督する監督者が必要となり、組織が階層化されていくことになります。

 また、企業の組織構造は競合他社の動向にも影響を受けます。

 当然ながら、自社が新製品を発売すれば、競合他社も似たような新製品を開発し発売することが考えられます。そのような時に、競合他社との差別化を図るために新たにカスタマーサポート部門を立ち上げるケースもあります。

 このように、自社が行動を起こすことによって、直接的に影響を与えたり、影響を受けたりする環境のことをタスク環境ということがあります。

 このタスク環境を構成する要素のうち、競合他社と顧客は重要な要素であるということができます。

 

内部環境

 内部環境とは企業組織内部の環境や状況のことをいいます。

 内部環境要因のうち、組織構造に影響を及ぼすものとしては、経営戦略や組織内の人材が挙げられます。

経営戦略

 企業組織を取り巻く外部環境要因が同じであったとしても、各企業組織が同じ組織構造を取るとは限りません。

 同じ製造業であっても、自社内で工場を持つ企業もあれば、工場を持たずに外部に製造を委託する企業もあります。

 このような違いを生み出しているのが経営戦略の違いです。

 外部環境の分析を行った結果は、その企業組織によって異なってきます。

 同じような環境におかれていたとしても、企業組織内部のメンバーがどのような点に価値を見出すかは企業組織によって異なってきます。

 例えば、新製品を開発し新規市場へ参入することに価値を置くか、既存製品で新規市場を開拓するかといった違いです。

 パソコンのように市場変化の激しい業界で自社で工場を持つことは、設備や製造技術が短期間に陳腐化するリスクを伴います。

 市場のニーズの変化に柔軟に対応するために、多少調整コストがかかったとしても、外部に生産を委託するという選択肢は例外的な対応ではないのです。

 この経営戦略について、特に注意すべき点は、完全無欠な経営戦略というものはあり得ないという点です。

 戦略の立案を行うのも人であり、一人一人の能力にも限りがあり、外部環境から得られる情報も完全なものではありません。

 企業組織は、自らの組織内にある限られた能力をもって、得られる範囲からの情報を最大限に活用して戦略を練っているのです。

 そのため、戦略をより実効的なものにするために、組織構造の在り方も柔軟にとらえる必要があります。

 例えば、新製品を開発して新規市場へ参入する場合は、これまでの企業組織から大きく変更を加える必要があるでしょう。

 その時に新規に開設する営業拠点を小規模のものとするか、最初から大きなものにするかは戦略によって変わってきます。

 あくまで戦略に整合した組織構造を取ることが求められるのです。

人材

 

 企業の経営資源は、一般的に「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」と言われます。

 経営戦略を実際に実行していくのは ヒトです。

 いかに企業組織内の人材が仕事をしやすいようにするかを工夫していく必要があります。

 人の認知能力には限りがあるため、それを前提として協働できるシステムを作ることが求められます。

 しかし、練り上げられた戦略を実行していくために、必要な人材を組織化していくことは難しいことです。

 どんなに良い戦略を作り上げたとしても、それを実行に移していくための人材が自社内にそろっているとは限らないのです。

 そのため、企業組織では、自社内にいる既存の人材を最大限に活用できる組織構造を選択していきます。

 事業部制組織が望ましいような場合であっても、事業部長を任せられるような人材がいない状況であれば、機能別組織のまま経営を進めるということがあります。

 このように、組織構造の設計において、人材は非常に重要な条件となっているのです。

 

 ここで注意すべきことは、これらの要因は、個別に組織構造に対して影響を与えているのではなく、複合的に影響を与えているということです。

 企業組織を取り巻く外部環境と自社内の状況の分析を行って、経営戦略を練り上げ、自社内の人材等の状況に応じた組織構造を作り上げているのです。

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