組織のマネジメント

 組織のマネジメントは、その役割によって3つの階層に分けられます。

 

1 トップマネジメント(最高経営者層)

 トップマネジメントは、組織の最高経営者層のことで、具体的には会長、社長、取締役員、CEOなど経営者を含む取締役会のメンバー、組織の各部門を取り仕切る役員などが含まれます。

 トップマネジメントは、企業の基本的な方針の決定、経営を行う上での計画や戦略、組織の運営に関する意思決定など総合的な役割を持ち、最終責任を担うのです。

 組織の最高位ではありますが、ドラッカーは著書の中で「トップマネジメントとは一人ではなくチームによる仕事である」と提示しています。

 

2 ミドルマネジメント(中間管理者層)

 ミドルマネジメントとは、トップマネジメントとロワーマネジメントの中間に位置し、部門的経営管理の職能を担当する部長や課長などの中間管理者層のことです。

 企業の全般的な管理職能、経営責任を負うトップマネジメントがスムーズに業務遂行できるよう、組織内の経営資源の報告、実施計画の立案などをサポートします。また、組織目標や実施計画が現場を管理するロワーマネジメントの業務を監督する役割もあるのです。

 さらに、経営陣のトップマネジメントと現場のロワーマネジメントの間に位置する役割として、経営陣の戦略や意思を現場の管理者に伝える現場だからこそ気付くことをトップへ伝えるといった橋渡しを行います。これにより双方の意思疎通を円滑に進めるのです。

 

3 ロワーマネジメント(監督者層)

 ロワーマネジメントは、実際に現場で働く社員をまとめる役割を果たす立場です。一般的には、係長や主任、現場監督、プロジェクトリーダー、チームリーダーなどがロワーマネジメントに当たります。

 ミドルマネジメントで決定した具体的な目標をもとに、現場の指揮、管理、業務の進捗を確認、トラブルなどが生じた場合、

迅速にミドルマネジメントに連絡といった事柄を実行します。

 

中間管理職(ミドルマネージャー)に必要な能力

 中間管理職は役職名ではありません。管理職とは部下を管理して組織の運営にあたる立場で、一般的に部長や課長、係長が該当します。中間管理職は、管理職(部長)の下に就いている管理職です。

中間管理職の具体例

 一般的な企業において管理職に当たるのは、部長、課長、係長で、中間管理職は部長以下の課長と係長となります。

 管理職の最高位となる部長は、一般的な組織系統の場合、取締役会などの幹部、役員の指揮下におかれますが、役員は管理職ではないので、部長は中間管理職には該当しません。そして課長は管理職の部長の下、係長は課長の下に配属される中間管理職となるのです。

 なお、中間管理職には、上司からの指示に従いつつ、実際に現場で働く部下をまとめながら業務が円滑に遂行するよう努めるという役割があります。そのため、部下を指揮する立場にありながら、自分自身も上司の管理下にあるため心労の多い立場ともいえるのです。しかし、上層部と末端をつなぐため、企業には必要不可欠な存在といえるでしょう。

 

ミドルマネージャーに求められる役割

 一般社団法人日本経済団体連合会の報告によると、民間企業において、ミドルマネージャーに求められる基本的な役割は4つに分類されるようです。

 ・情報関係

 ・業務遂行関係

 ・対人関係

 ・コンプライアンス関係

1 情報関係

 トップで決定した企業方針や意思を理解して、現場に周知し目標達成に向けて実際に現場を動かすのがミドルマネージャーです。また、日々変化する現場の状況を把握して正確にトップに伝える役割も担います。

 そのため、業務に必要な社内外の情報を収集したり、会社目標を達成するために自分のチームに必要な行動目標をチーム内に浸透させたりするのです。また、組織内での情報共有など、リソースの活用も求められます。

2 業務遂行関係

 日常業務の管理や組織の課題解決、新規事業やプロジェクトの対応、海外需要の創出などを行います。常に自分の部署や組織の業務を把握して、部下への指示と監督、進捗状況や成果達成の確認、業務の効率化などを実行するのです。

 また、組織の目標設定、課題の解決に向けた戦略や方針をつくるのもミドルマネージャーの役割といえます。

3 対人関係

 ミドルマネージャーには、部下の育成やマネジメント、モチベーションアップを図る、組織を活性化する、会社組織の目標を達成させるといった大きな役割があります。

 そのためには、部下との対話、コミュニケーションの機会をつくり、部下一人ひとりの長所、短所を知ることが不可欠です。適材適所に人材を配置することで、組織としての成果が上がり、組織全体のモチベーションも高まります。

4 コンプライアンス関係

 業務に関わる関連法規について理解し、正確な知識を持って遵守することも必要です。ミドルマネージャーには、個人情報保護法の対応、適切な労働時間の管理、労働関係法規の遵守、機密情報の適切な管理などが求められています。

 これらは、一般的には総務部や人事部が担当する事柄でしょう。しかし、ミドルマネージャーにも正確な知識を持った迅速な対応が求められているのです。

 

マネジメント能力を向上させる方法

 プロジェクトを円滑に動かしながら、部下の育成も求められるマネジメントに必要なスキルを説明します。

1 アセスメントスキルを高める

 アセスメントスキルとは、組織のメンバー一人ひとりのポテンシャル(潜在能力)や行動傾向、育成のポイントを的確に把握するスキルのこと。アセスメントスキルを高めるには、管理しているメンバーの知識や技術、経験、長所と短所、性格をしっかりと把握することが重要です。

 また、そうしたメンバーの情報、個性を知ることで、どうすれば成長できるのか、どのように育成すればよいのかなど、最適な育成方針を導き出すこともできます。アセスメントスキルを身に付けることで、効率のよいメンバー育成が可能となるのです。

具体的手法

 アセスメントスキルを身に付けるためには、部下や後輩などメンバー一人ひとりと日頃からコミュニケーションを取ることが重要です。1対1で向き合って対話することで、これまで知り得なかった個性や性格が見えてくるでしょう。

 メンバーとコミュニケーションを深めるには、日頃からメンバーの行動をメモしておく、そのメモをもとに個人面談を行うといった事柄が必要です。そのメンバーに最もふさわしい問いかけをすることで、より深い対話へと発展します。

 また、メンバーの適性に合わせたマネジメントを行うためにも、普段の学習方法、最近の楽しかったことや辛かったことなど、基本的な質問事項を事前に用意しておくとよいでしょう。

 

2 アカウンタビリティスキルを高める

 アカウンタビリティスキルとは、相手に指示やアドバイスなどを分かりやすく、具体的に伝える能力のこと。

 ・上司に指示を出されるが、毎回その指示が分かりにくくて困る

 ・上司の話は理解しづらくて、聞くのに苦労する

など評されている上司は、アカウンタビリティスキルが低いということになります。

 指示やアドバイスなどは、ただ説明する、伝えるだけでなく、相手に納得して理解してもらう必要があるのです。アカウンタビリティスキルをしっかりと習得しておけば、メンバーの具体的な指導も効率よく進むでしょう。

具体的手法

 アカウンタビリティには説明責任という意味があります。メンバーの能力や適性を把握して、育成方針が固まったら具体的に指導していきます。

 その際、相手が理解できるよう、納得するまで説明をする責任もあるのです。質問にもしっかりと理解できるように答えなければいけません。その能力を高めるのがアカウンタビリティスキルです。

 アカウンタビリティスキルを高めるには、文章や日本語を見直すとよいでしょう。

 また、

 ・伝えたいことを順序立てて話す

 ・分かりやすいようにかみ砕いて話す

 ・たとえ話やジェスチャーやボディランゲージを取り入れる

などを行うと、話のニュアンスも含めて相手に伝わりやすくなるでしょう。

 

3 コーチングスキルを高める

 コーチングスキルとは、メンバーの能力を発揮させるために具体的な指導をしていくスキルのこと。

 アセスメントスキルが、メンバーの長所や短所、個性や適性を把握して育成方針を導き出す能力であるのに対し、コーチングスキルは、メンバーの長所や強みを見つけ出し、そこから明確な目標を立てて、メンバーの能力を発揮させます。

 コーチングスキルを活用すると、メンバーの能力開発を効率的に実行できます。

具体的手法

 コーチングとは対話という意味です。メンバーに対して指示を出すのはティーチングというスキルです。コーチングは、あくまでもメンバーの得意なことや強みを見つけ出すためのコミュニケーションを前提としたスキルです。

 コーチングスキルで大事なことは以下のとおりです。

 ・メンバー一人ひとりと向き合う

 ・メンバーの話にしっかりと耳を傾ける

 ・適切な質問を投げ掛け、相手をきちんと理解する

 こちらの経験を押し付ける、分かったつもりで話を聞くなどの態度では、相手の本質を引き出すことはできません。

 メンバー一人ひとりの個性に合わせたコミュニケーションで、強みや得意なことを正しく理解し、仕事を振り分けることでコーチングスキルは向上していくでしょう。

 

組織と人材のマネジメント

 経営層がどんなに良い経営戦略を作り上げたとしても、その経営戦略に基づいて実際に仕事を進めていく組織や従業員一人一人が経営戦略で意図されているように行動しなければ、その戦略は絵に描いた餅で終わってしまいます。

 「組織と人材のマネジメント」は、企業の経営戦略を実現していくために必要なものであり、決して人事部の担当者だけの問題ではないのです。

 企業において個人だけで完結する仕事はほとんどありません。

 ほとんどの仕事は、社内の関係者だけでなく、顧客や競合他社、提携先や取引先等の社外の関係者が有機的に結合して機能をはたしています。

 特に、目的達成のために部下を取りまとめて、人や組織を動かしていくマネージャーは、金銭的な経営資源だけでなく、生身の人間を理解してスムーズな組織運営を行っていかなければなりません。

 人を動かすためにはどうすればよいでしょうか? 大きく分けると、「仕組み」を作って人を動かす方法と直接的に人が人に働きかける方法とがあります。

 前者は「組織と人材のマネジメント」の問題となり、後者は「組織行動学」の問題となります。

 この組織と人材のマネジメントを学ぶことによって、経営戦略を実行していくために必要な仕組みを理解することができます。

 組織行動学の具体例としては、ビジョンづくりやコミュニケーション、コーチング等のリーダーシップがあげられます。

 これら組織行動学は、組織と人材のマネジメントとともに車の両輪として組織を動かすために必要不可欠なものであり、どちらか一つが欠けてしまうと組織はうまく機能しません。

 人を動かす仕組みにはどのようなものがあるのでしょうか。

 具体的には、以下の3点となります。

・組織文化(組織風土・社風) ・組織構造 ・人事システム

 これらを経営環境や経営戦略に合わせて、どのように組み合わせていくかという問題に対する基本方針を人事戦略といいます。

組織文化(組織風土・社風)

 組織構造や人事システムは明文化された社内ルールですが、無意識のうちに社員の行動を規定しているものが組織文化です。「組織風土」や「社風」と言われることもあります。

 組織文化は、一般的に創業者の想いやビジョン・哲学の影響を受けています。

 社員やその家族も、参加できる社内イベントを通じて社員同士のつながりを重視する家族主義的な企業もあれば、仕事の成果を重視して社員同士があまり顔を合わせる機会のない実力主義の会社もあります。

 ただし、どのような組織文化を持つ企業であっても、その文化に従うことができなければ組織のメンバーとして認められません。

 組織文化は、社員の行動だけでなく、価値観や考え方にも影響を及ぼすのです。

組織構造

 組織構造を決定することによって、社員に対する職務の割り当てが行われます。仕事として何を行い、何を行わないかが決まります。

 また、誰の指示の下で仕事を行うかも決まってきます。

 その組織構造は経営戦略によって規定されます。経営戦略を実現できる組織構造でなければならないのです。

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