営業戦略・営業戦術

戦略と戦術

 戦略とは、『特定の目標を達成するために、長期的視野と複合思考で力や資源を総合的に運用する技術・科学である。』とされています。つまり、目標を成し遂げるために、最も効率の良い方法を考えることが戦略です。

 戦術は、『作戦・戦闘において任務達成のために、部隊・物資を効果的に配置・移動して戦闘力を運用する術である。』とされています。すなわち、目標を成し遂げるために、戦略に基づいて現時点で保持しているリソースを最適に割り当てることが戦術です。

 戦術は戦略の一部となりますので、戦略なき戦術はありえません。

 全体の戦略がしっかり固まっていなければ、どんなに戦術が優れていてもその効果を最大限発揮することは難しくなります。

 

営業戦略と営業戦術

営業戦略とは

 営業戦略とは、自社の経営資源(人・モノ・金・情報)の効率的な活用を通して、売上向上や市場シェア拡大の達成を目指すときの指針となるものです。

 すなわち、営業戦略(達成手段・手法)は、経営計画実現に向けて具体的に何に取り組むかを決めることです。

 営業戦略が曖昧だと、事業計画の実現は困難となるため、各項目につき達成方法や達成時期について具体的に定めていきます。

トップの姿勢
 従業員の営業推進をはかるためには、まずはトップの姿勢が重要です。
 従業員の模範となるべく、自らの時勢を定めていく。
 トップとして、現在の状況を見極め、事業計画を達成するために何をするのか具体的な行動を明確に定める。
  (例:従業員に対する目標面談の実施、既存顧客からの紹介獲得推進等)

営業推進項目
 ターゲット選定から、具体的アプローチ手法、また達成時期を明確に定める。   
 規模の拡大を実現するには、新規顧客の獲得、既存顧客へのクロスセル、単価アップ等、その手法は様々です。

 また、それに対するアプローチ方法も、紹介、飛び込み、DM送付等、様々です。

 営業推進を行うにあたり、どのターゲットにどのようにアプローチを行い、いつまでに達成を目指すのか、全従業員(もしくは営業担当者全員)で知恵を出し合い、意識の共有化を図りながら、具体的かつ明確に定めます。

業務改善項目
 事業を営む上で業務力の向上も重要な課題です。

 現在の各種内務事務指標から自社の弱点を洗い出し、その改善に向けて具体的に取組む項目を定める。

 役割分担の明確化も併せて行う。

 また、業務力は様々な場面で影響があり、営業数字のみならず、内務事務指標についても、全従業員が意識するように徹底することが重要です。

 自社製品やサービスを顧客に購入してもらうためには、市場にひしめく多くの競合企業との競争に勝たなければなりません。そのためはまず、現状の分析を通して自社の強みを把握し、「独自性」を打ち出し、他社との「差別化」を図るためにどのように経営資源を配分していくかを決めていきます。

 人的リソースや広告費など、全てのコストを把握し、最適なリソース配分をすることが営業戦略に必要とされます。

 売上アップや事業エリアの拡大といったような、目標達成のために「どの市場で」「どのくらいの期間で」「どの商材を」「どのターゲットに」などの作戦を練ることです。事業部単位で作るものが一般的です。

 作戦の大きな枠組みのようなものだと考えると良いでしょう。組織運営などにあたり、将来を見通して長期的な目標を立てていくのです。フレームワークを作ることで、どう動いていくかという方向性も決まりやすくなります。

 営業戦略は、チームで決めるという訳ではなく、経営者や責任者が決定する場合が多く見られます。

 

戦略的営業活動
 営業活動を行う上で、企業は戦略を立案する。

 しかし、その戦略に基づいて実績が上がっているかと言えば、実際にはうまくいっていない方が多いのではないでしょうか。

 これは、戦略面そのものに問題がある場合と、現場で活動する営業担当者の行動やその管理といった戦術面に問題がある場合が考えられます。

 国内の企業の約99%を中小企業が占めています。もちろん、規模の大きさだけで優劣が決まるわけではなく、地域や商品・サ-ビスによっては、大企業よりも中小企業の方が優位に立っている場合もあります。弱小に見られている企業が実は強者であり、大きな企業の方が弱者ということも多々あります。

 地域・商品・ライバル・得意先をよく分析し、営業戦略を立てなければ今の時代は結果がついてこない。

 いかにして「売るのか」からいかにして「買ってくれるか」、そしてどうすれば成果が上げられるのかについて検証します。

 

営業戦術とは

 営業戦術とは、営業戦略を達成するための手段で、戦略に沿って どのように どのようなやり方で進めるのかといった具体的な手法のことです。

営業戦略は、中長期的な視点で営業の目的やゴールを設定するものだが、それを達成するために何をすればいいかわからなくなることがある。そのため、中長期的な目標を持ちつつも、その目標に向かうための段階的なゴール(=営業戦術)の設定が必要になる。

参考

 長期的な目標の営業戦略と異なり、営業戦術は「中短期的」な目標を立てます。ひとつの戦術を実行したら分析し、もし不成功に終わったのであれば別の戦術に切り替えるなどの対応が必要となります。 

参考

 例えば、低価格戦略に従い「激安」と強調したチラシを地域に配付したり、高価格戦略に従い、富欲層向けの媒体に広告を出したりします。

 目標とする戦略が決まったら、その実現のために何をどのようにするのかを考えなければなりません。その目標を達成するために、低価格戦略をとるのか、富裕層をターゲットとした高価格戦略をとるのかといったことも含まれます。

 ユニクロでは、「機能性の追求」という目標を達成するために、テーマを持った製品作りを一貫して行いました。手触りや通気性に特化したエアリズム、軽さと保温性を追求したウルトラライトダウンなどはそのよい例です。

 営業戦術は、中短期の視点に立って、同じ戦略の下で一つの戦術が思うような結果を出さなかった場合、別の戦術に変更するなど柔軟性も必要となります。

 

マーケティング戦略との関係

 営業戦略に付随する概念として、マーケティング戦略営業戦術の2つが挙げられます。

 マーケティング戦略とは、トレンドや社会課題、あるいはターゲットとなる個別ユーザーのニーズのリサーチ・分析を通して、どのような商品・サービスをどういった形で顧客に提供していくのかについての計画を立てることをいいます。

 市場占有率や、製品の他の会社の同種製品と比較しての優位性を上げることを、最終的な目標にします。営業戦略とは目指すところに違いがあるわけです。

 マーケティング戦略をさらに具体化したものが「営業戦略」です。そして、より抽象度を下げて営業戦略を達成するための戦術(アイデア・手段)として用いられるのが営業戦術なのです。

 営業戦術は、営業戦略で立てた方針の枠内で検討されるため、論理的かつ正確な情報に基づく営業戦略の設定が求められます。また、戦術として現場に落とし込んだ活動の検証・フィードバック(PDCA)を通じ、必要に応じて営業戦略を修正していく柔軟さも忘れてはなりません。

 昨今、マーケティングと営業は、統合的に企画運営されるようになっており、営業戦略の企画立案に伴い、マーケティング戦略との整合性や営業戦術への展開方法なども一貫して検討、見直しする形が一般的となっています。

 

営業戦略の重要性

 営業戦略には、企業が販売する製品やサービスを売り込む「会社目線の営業戦略」と、顧客に自社の製品やサービスを選んでもらうための「お客様目線での営業戦略」があります。

1 会社目線の営業戦略

 会社目線の営業戦略は、競合他社の製品・サービスに対する自社製品・サービスの優位性をアピールするものです。入社希望者が、採用面接で自分を売り込むことをイメージしてもらうとわかりやすいでしょう。

 例えば、小規模な中古車販売店が、大手チェーンの様に社名だけで商品を売ることは難しい。しかし、大手企業は認知度や信用度が高いので、社名だけで商品を売ることができる。

 中小企業はどのような戦略を取るべきでしょうか。「大手より高く買い取り安く売る」をアピールすれば販売実績が上がり、顧客が顧客を連れてくるようになるかもしれない。

 このように、競合他社よりも優れていることをアピールするためには、会社目線の営業戦略が欠かせません。

2 お客様目線の営業戦略

 お客様目線の営業戦略では、いかにして自社製品やサービスを選んでもらうかが重要である。たとえ、大企業であろうと、お客様に「他社のほうがいい」と思われたら、それを変えるのは容易ではない。

 携帯キャリアのお客様目線の営業戦略を見ると、昨今は格安SIM業者が台頭しており、大手キャリアのドコモ・au・ソフトバンクはユーザー数が減少している。なぜ、このような状況になっているのか。格安SIM業者や地域によって差はあるものの、大手3社から格安SIMに変更しても、一定レベルの通信速度があるため、不便を感じることが少ない。音声通話でも大手3社の回線を使っているため、音質に差はない。現在は、大手3キャリアの寡占が強いため売上を保っているものの、お客様の目線が格安SIMへ向くと経営は厳しくなる。

 このように、お客様が「何を必要としているのか、何を求めているのか」を明確にすることで、お客様目線の営業戦略が有効になるわけです。

 

営業戦略立案のポイント

1 何をするのかを明確にする

 「何をするのか」を明確にすることが営業戦略の立案では大切なポイントになる。営業戦略が曖昧だと、中長期的視点でどのような成長ができるのか、競合他社と渡り合えるのかを予測できないからです。

 「売上を伸ばしたい」「顧客の数を増やしたい」「商品・サービスのリピート率を上げたい」など、目標によって やらなければならないことも変化する。

2 成功と失敗の本質を見極める

 何をするのかが明確になっても、成果が出るとは限らない。たとえば、「売上を前年比30%伸ばす」ことを目標としたが、20%しか伸びなかったとする。これを単なる失敗だと捉え、改善をやめてしまうと、本質を見過ごしてしまう可能性がある。

 営業戦略を立て実行したら、その結果から、何が成功要因で何が失敗要因であったかを分析することです。戦略が成功した場合は、成功要因を分析することで再度施策を打つ際に成功しやすい立案をすることができる。失敗要因を分析することで、次の施策はより成功確率が高いものとなります。

3 誰がどのように行動をするのか決める

 営業戦略が固まったら、次は目標達成のために「誰がどのように行動をするか」を決める必要がある。

 目標が決まっていても、「誰がやるか」が決まっていないと、責任の所在が不明確になり、それによって進行が遅くなってしまう可能性が高くなる。営業戦略を決めるだけでなく、「誰がどのようにやるか」まで決めることが大切です。

営業戦略は経営の要 周囲と話し合って戦略立案を

 営業戦略は経営の要であり、これをしっかり立てておかないと、倒産の危機を招きかねない。短期的な結果にとらわれることなく、中長期的な視野で戦略を練ることで、将来自社がどのような発展を遂げるのか、自社をどのように発展させたいのか、明確なイメージを持つことができる。闇雲に行動するのではなく、しっかりとした営業戦略を練ってから、仕事に取りかかることが大切です。

 

 次は営業戦略の立て方のポイントを見ていきます。

具体的な営業戦略の立て方

 営業戦略は、思いつきで何%売り上げをあげようといったように決められるわけではありません。その目標が達成可能かどうかという見込みを予想する必要があります。

1 市場の環境を理解する

 営業戦略の立案において最初に行うことは、市場環境の調査です。

 市場環境は営業戦略において重要であり、市場環境を確認しないまま営業戦略を立案すると、まったくの見当はずれになってしまう可能性がある。たとえば、小規模の飲食チェーン店を展開していて、競合他社がほとんどおらず、お客様の満足度が高ければ、ビジネスの規模は小さくても市場環境は良好と言える。

 しかし、外食産業では同じような製品を扱う競合他社がなくとも、「外で食事をしたい」というニーズを満たすだけならば、どの飲食店も競合となりうる。

 いくら現在の自社の利益が上がっていても、市場調査の結果で、一時のブームで利益が上がっていることがわかれば、ブームが過ぎ去る前に次の一手を考えないとたちまち倒産に追い込まれる。市場環境の把握は、営業戦略において非常に重要な要素なのです。

 

2 自社の営業状況を分析する

 市場環境を把握したら、次は自社の営業状況を分析する。自社の営業状況は、内部状況と外部状況に分類できる。

 内部状況の分析では、「自社の製品やサービスがお客様のどのようなニーズにマッチしているか」「自社の経営状況」「どのような人材を確保できているか」などを分析する。

 外部状況の分析では、「今後自社の製品やサービスが置かれている環境(業界)でどのような動きが想定されるか」「競合他社がどのような動きをするか」などを分析する。

 自社の営業状況を要素ごとに分析しておかないと、問題点を浮き彫りにすることができない。その結果、競合他社に出し抜かれ、お客様が離れてしまうかもしれない。

 

3 分析によって浮き彫りになった問題を把握する

 内部状況と外部状況を分析したら、浮き彫りになった問題点を把握します。問題が明確になっていないと、お客様のニーズをつかむ営業はできない。

 たとえば、「競合他社よりも料金が高い」という問題点が浮き彫りになった場合、料金を下げるか、競合他社にはないサービスを付加して利用価値を高めるといった対策が考えられる。

 自社サービスを分析して問題点を把握すれば、自社にとって必要な施策を打つことができるのです。

 

4 ターゲティング/ポジショニング

 具体的な営業戦略を立てるうえでは、戦略的マーケティング(STP)の概念を用いることが有効です。STPとは「セグメンテーション」(市場細分化)「ターゲティング」(ターゲット設定)「ポジショニング」(ポジショニング設定) の頭文字を取った言葉で、マーケティング戦略における基礎的な思考の枠組みとして広く活用されています。

 セグメンテーションで市場をニーズによって細分化したら、自社にふさわしいターゲットとなるグループを決めます(ターゲティング)。

 ターゲティングは、「選択と集中」と同義です。ターゲットを絞り、経営資源をそこに集中投資することで、売上達成の確率が高められるのです。

 続くポジショニングでは、市場における自社製品・サービスの立ち位置を正確に把握し、設定したターゲットに対して他社にはない自社製品・サービスの優位性を印象付けることで、魅力を感じた顧客を購入段階に導くことが容易にします。あくまで顧客の目線に立ちながらポジショニングを行い、市場での自社ブランドの位置づけの明確化に努めることが大切です。

 

5 営業目標の設定

 セグメンテーションにより営業戦略の方向性が定まり次第、中長期的なビジョンを描き営業目標を設定をします。

 目標とは自社が中長期にわたって描くビジョンです。例えば、営業目標は数年後の自社の売上、粗利率、顧客人数など各目標を数字で表します。

 目標が曖昧だと、調査をしたところで何をすればいいのかわかりにくい。目標は、一言で言い表せるくらいシンプルなものが望ましい。たとえば「売上を前年比50%アップする」などです。

 

 最終的な目標をわかりやすく設定することで、会社の上層部だけでなく、末端社員まで目標を共有することが可能です。注意したいのは、目標をいくつも同時に掲げないことです。複数の目標を達成する方法は、それぞれ異なる。目標がいくつもあると優先順位がわからなくなり、混乱してしまうおそれがある。

 営業目標は、数年後の売上や粗利率・顧客人数といった数字で示します。数値化することで目標が具体的なものとなり、事業の目指すべき方向性を見失う事態を防ぐことができます。

 営業目標を決定後、目標達成度を評価する指標である KPI を設定することが重要です。KPIとは「Key Performance Indicator」の頭文字をとったもので、「重要業績評価指標」と日本語では言われています。例えば「新規の営業先を10件開拓する」という営業目標に対して「100社に営業電話をかける」というのがKPIにあたります。設定した目標を達成するための中間指標といえます。

 KPIの設定により、今現在の進捗度合いが可視化され、評価・分析を通じて改善すべき点を明らかにすることが可能になります。続けて、営業戦略の見直しを図り、それにふさわしい戦術を打つことで、早期に軌道修正を目指すこともできます。

 目標を立てたら、立てっぱなし にするのではなく、進捗を評価して把握します。時には、軌道修正するといった「PDCAサイクル」による評価と改善によって、営業戦略の見直しを定期的に実施します。

 多くの企業の目標設定には数字的根拠が欠如しているように感じます。その原因としては、仕事の「見える化」がなされていないことが挙げられるでしょう。営業マネージャーであれば、最終的な売上はわかるが、途中経過を可視化できていないために、当てずっぽうな数値目標設定をせざるを得なくなってしまいます。そのため、SFAやCRMといった途中経過を可視化するツールを用いることで、目標達成のボトルネックとなっている部分を特定することが必要となってくるのです。

 弱みを把握し、適切な戦略を根拠をたてられたならば、あとはそれに適した戦術を選びます。会社の売上向上がうまくいかない理由がヒアリングにあるとわかったならば、ロープレイング強化や、顧客の想定される悩み事を社内で共有してみたり、ヒアリング項目を統一してみるといった戦略を講じることができます。

 

6 見込み顧客(リード)の獲得

 自社の製品・サービスに関心があり、将来購入する可能性がある見込み顧客(リード)を獲得することが、企業にとっての第一歩となります。

 リード獲得には、ターゲットとなるリードの属性により2つの方法が考えられます。どちらかを選ぶか、必要に応じて両者を組み合わせることで、自社が獲得したいと考えるリードに適した戦略を立てることが必要になります。

 自社の製品やサービスを購入する可能性がある企業(法人)が見込み客にあたります。見込み客は、受動的な営業活動では、増えることはありません。自社のサービスや製品の魅力を、能動的に発信していき、少しでも興味を持ってもらう必要があります。

 見込み客は、あくまで自社の製品やサービスを購入する「可能性がある」段階です。そのため、製品やサービスを宣伝したからといって、必ずしも売り上げにつながるわけではありません。

 見込み客をより本当の顧客に近づけるためには、相手のニーズや抱えている課題などを探り、そこに自社の製品やサービスを差し込む必要があります。

電話でニーズを探る際は声のトーンや共感を意識

 電話で見込み客のニーズを探る際は、声のトーンに注意しましょう。一般的に、営業電話では、声のトーンを上げる傾向にありますが、先方の担当者は、幾度となく営業電話を受けています。あまりにも営業然としたトーンでは、飽き飽きされかねません。電話で、見込み客のニーズを探る際は、自然なトーンで電話をすることが望ましいです。

また、相手が抱える課題やニーズに対しては、共感する姿勢を示しましょう。そうすることで相手も話しやすくなります。

参考

アウトバウンドマーケティング

 自社から顧客にアプローチしていく手法です。

 イベントに出展する、作成したリストを用いて電話をする、飛び込み営業を掛けるなどが代表的な手法です。未開拓の市場や不特定多数への認知に向いており、即効性が期待できます。

インバウンドマーケティング

 顧客から自社にアプローチしてもらう手法です。

 潜在顧客の興味を惹くコンテンツをネット上で発信し、ウェブサイトやメルマガ、ウェビナー等を通して自社への関心を高めてもらいます。自社に何かしらの興味関心を抱いている層からのアプローチが期待できるため、対象となる市場で確度の高い顧客獲得を目指す場合に好ましい方法です。

 アウトバウンドマーケティングとインバウンドマーケティングでは、獲得に向いている見込み顧客の属性が違うことに気を付けましょう。一般的に、アウトバウンドマーケティングは、インバウンドでは獲得が困難な未開拓マーケットや大企業へリーチする際のフックとなります。ここが、アウトバウンドのインバウンドに対する強みであると言えます。そのため、今までリーチできていなかったマーケットにリーチしたいときには、アウトバウンドマーケティング強化という戦略立てるのがよいでしょう。それに対し、インバウンドマーケティングは、自社が対象としているマーケットの顧客を効率よく集めることができます。これは、顧客自らコンテンツや導入事例を通して自社に興味を抱いてくれるからです。そのため、自社製品が対象としているマーケットでの販売シェアを上げたいならば、インバウンドマーケティングを強化するという戦略をたてることが有効になってきます。インバウンドで獲得した見込み顧客を効率よくさばいていくためには、テレアポを専門とし、機動力のあるインサイドセールス部門(内勤部門)を設けるなどの対応も必要となってきます。

 

7 見込み客を育成する

 見込み客になったとしても、すぐに商品購入とはなりません。見込み客は育成が必要になります。この育成の段階では、見込み客の悩みや課題、ニーズを探り、まず、導入検討をしてもらうことが重要です。

そのための方法としては3つあります。

 ・自社のことを信頼してもらうこと

 ・お客様の課題とニーズを把握すること

 ・購入を検討してもらうこと

 ただ、見込み顧客が集まったとはいえ、即座に売上に直結することはそう多くはありません。顧客の課題やニーズを把握し、自社製品・サービスがどのように役に立てるのかを訴えることで、真の顧客へと育成していくこと(顧客ナーチャリング)が戦略として必要となります。誠実さをもってリードに向き合い、段階を追ってコミュニケーションを取りながら、契約を急かさずに購入を検討してもらう姿勢で臨むことが肝要です。

 

8クロージング

 契約確度を高めることができたら、いよいよ契約締結(クロージング)です。

 クロージングは、実際に売り込みをするフェーズとなりますので、提案型の営業が重要です。そのため、お客様のニーズを把握した上で課題を解決する「ソリューション」型の営業が求められます。

 クロージングですべきことは、自社の商品やサービスを実際に売ることです。

 営業戦略を立てる観点からは、顧客の抱える課題に対しての解決策(ソリューション)の最後の念押しを行い、確実に成約に結びつけることに注力すべきでしょう。

 クロージングをせずに、「確認して後日ご連絡します」といったように、具体的な返答を聞かずにいると、時間が経過したことで契約に消極的になることや、他社と比較した結果、契約を見送られてしまうといった弊害が生まれてしまいます。

 クロージングを確実に行うには、自社製品を導入するメリットを具体的にしておきます。

クロージングのテクニック

 *購入する気があるか単刀直入に尋ねる

 *段階的に質問と合意を繰り返すテストクロージングを行う

といったことが挙げられます。特に効果的なのが、自社製品を導入することでのメリットや効果を明確に伝えることです。「導入することで売り上げが上がります」ではメリットが曖昧です。「導入した企業のうち○社が○%以上売り上げをあげています」といったように、具体的に紹介することが大切です。

 

9 顧客維持(リピート)

 契約締結により、営業活動としてはひと段落し、企業としては顧客維持(継続)を図る活動へと切り替わります。一度の取引だけではなく、顧客満足度を高め、自社のファンになってもらう戦略が求められます。

 商品を買ってもらったら顧客との関係が終わるわけではありません。「売りっぱなし」にするのではなく、商品を使ってもらってみてどうだったか、課題は解決したのか、改善点はないのかなど、次のアクションに繋がる課題を見つけ出し、提案へと繋げていく必要があります。

 ・顧客満足を高め自社のファンになってもらうこと

 ・今の課題を把握して次の提案に繋げ、購入してもらうこと

 継続利用者(リピーター)を増やすためには、サービス利用後の使用感、課題解決されたか、改善点はないかなど、利用後のサポートやヒアリングが大切となります。こうして新たな課題が明らかになれば、次の提案につなげることができ、リピート購入の他、アップセルやクロスセルに関わる提案を検討していただくことも可能になります。

 顧客管理(CRM)を強化して、顧客生涯価値(LTV)を最大化させるための施策を多様な切り口から検討していくことが大切です。

 営業戦略は、「どうやってやるのか?」ではなく、「何をしなければならないのか?」を常に考えなければなりません。何をしなければならないのかを考えて営業戦略を決めていくわけです。

 

営業戦略を立てる際の注意点

 戦略を立てるうえで、注意しておきたい点がいくつかあります。

戦略作りに時間をかけすぎないこと

 分析というと、非常に細かいことまで考えてしまいがちですが、細かすぎるとこれをもとに立てた行動計画の実現可能性が低くなりますし、そこに時間を多くかけることは適切ではありません。むしろ、行動計画に分析結果を落とし込む作業のほうにより時間はとられることになりますし、時間を使うべきなのです。

 また、行動を計画通りにできるようにすることがさらに重要です。 分析には多くの時間を使うべきではありません。より効率的に行うことを考えましょう。分析会議を開催するのではなく、軽いブレストを使う、一から自分で書くのではなく、よくインターネットで公開されている分析のテンプレートを使うなどして、時間を使うことは抑えましょう。

計画は緻密に立てるべきだが、試行錯誤も恐れないこと

 行動のレベルまでの落とし込みができなければ、営業活動の行動スケジュールも立ちません。計画は緻密であるべきです。
 時間はかかってもここはしっかりやる必要があります。

 しかし、ある作戦がうまくいかなかったら、次善策をとるなどして、一つの結果にこだわらないようにしましょう。こだわることの弊害は、1つうまくいかないと つい原因を探すなどして時間をとられてしまい、他の行動計画が進まなくなりがちなことです。

 全体のうち、どこの行動が欠けたか、どこで補えそうかを考え、試行錯誤は恐れず、最後に帳尻が合えばよい と思っておきましょう。そのように思えるには、大局的・俯瞰的な視点が必要ですが、重要なのはそうした視点を持って日々の計画をこなすことなのです。

営業戦略の立て方が売上を大きく左右する

営業の舞台は、飽和状態にある市場や細分化された人々の趣味・嗜好、インターネットの発達により多くの情報を持つようになった顧客の存在によって彩られています。

企業による大量かつ一方的な商品・サービス提供は通用せず、営業戦略の立て方の巧拙が売上を大きく左右するようになってきています。

 

顧客を維持するためには攻めの営業が必要

 見込み客から本当の顧客になったとしても、ただ売買をすればいいだけではありません。実際に使用してみて課題が解決されたか、改善すべき点があるかなどを探る、攻めの営業が必要になります。

 従来型の問い合わせがきたら対応するという守りの営業では、次の契約や新たなビジネスチャンスも逃してしまいます。

 顧客維持のためには、カスタマーサポートではなく、カスタマーサクセスを意識します。カスタマーサポートは一般的ですが、近年、カスタマーサクセスも注目されています。この新たな営業体制は、定額サービス(サブスクリプションサービス)が普及したことで知られはじめました。サブスクリプションサービスの場合、定額制でサービスを提供するため、解約は企業にとって打撃になります。そのため、顧客に継続する利点を伝えることが大切なのです。そこで生まれたのがカスタマーサクセスです。

 カスタマーサポートは、顧客の不満や不安を受けてその解消に努めますが、カスタマーサクセスは、サービス提供企業からユーザーの利用状況や感想などを聞き出し、次のビジネスチャンスにつなげます。

 

フレームワークを使った営業戦略立案

 過去の成功を体系化し、考え方の枠組み・パターンを抽出したものをフレームワークといいます。

 過去にそのパターンでうまくいったことを繰り返し使うことができれば、効率的に業務を行えるので、フレームワークはビジネス全般において利用されています。  営業・マーケティングの分野はもちろんのことですが、会計・リスクマネジメントなどの分野でも頻繁に使われています。

 ビジネスフレームワークを活用すると市場環境の正確な把握や自社の強み・弱点を明らかにすることできるので、より精緻な営業戦略を立案することができます。

参考

1 3C分析でマーケットの状況を確認する

 3C分析とは、「Customer」(市場・顧客)、「Company」(自社)、「Competitor」(競合)という、Cからはじまる3つを分析して、事業計画やマーケティング戦略を練る方法です。

顧客分析  

 顧客については、その規模、購入行動、購入重視点、使用状況などを把握します。ビールを例にすれば、どのくらいの数の人がどの程度の頻度で飲むのか、何を参考にどこで購入するのか、その銘柄に決める理由は何か、誰とどこでどのようにして飲むのかなどを理解することが必要です。

競合他社分析  

 競合他社とは、共通の商品分野で同様なタイプの消費者層をターゲットとしている他企業であり、市場の捉え方によって様々に想定することができます。例えば、ビールという狭義の商品分野での実質的な競合他社は4、5社ですが、広義に捉えれば、ウイスキー、ワイン、日本酒、焼酎などの様々なアルコール飲料の企業が想定されてきます。 内部分析  自社の経営資源について理解することを「内部分析」といいます。企業文化、組織、技術力、製品特性といった社内資源と、シェア、認知率、ブランド・イメージといった市場での地位について、他者との比較の中で自社の強みと弱みを捉えます。

 3C分析の実施にあたり留意すべきことが2つあります。

 1つ目は「事実」の収集に努めることです。もう1つが情報収集の手段です。ネットの活用が便利で効率的であることは間違いありませんが、戦略検討の段階で判断材料の不足を感じることが少なくはありません。特に、顧客情報は顧客の声に直に触れることが大切です。自分の足で情報を集める姿勢を持ち続けることが、リアリティのある営業戦略を構築することにつながります。

市場・顧客はマクロとミクロの視点から分析する

 昨今のマーケットは、顧客視点で進んでいる傾向があるため、まずは市場・顧客の分析からはじめます。分析する際は、マクロ分析とミクロ分析という2つの方法でアプローチしていきます。  マクロ分析の場合は、大きな視野で分析することで、PEST分析が大枠として用いられます。

 PEST分析とは、  

 *Politics(政治):政治動向、税制、法改正など  

 *Economy(経済):消費や景気動向、金利状況など  

 *Society(社会):トレンド、消費者志向の変容など  

 *Technology(技術):インフラ、IT化など

という4つの大きな外的要因を分析する方法です。

 これらの要因は自社でどうすることもできないものですが、自社にどう影響するかを事前に把握しておくことで、来たる時代に合った戦略を打ち立てられます。

 一方、ミクロ分析は、他の業界や業種が自社のビジネスに与える影響を分析することです。

 ミクロ分析においては、5フォース分析が用いられます。

 5フォースとは、

 *新規参入企業の脅威

 *既存の競合他社の脅威

 *代替品の脅威

 *買い手交渉力

 *売り手交渉力

という5つの外的・内的要因を指します。 この5つを分析することで、競合とのパワーバランスや関係性を洗い出し、自社の収益性を高められます。

なお、5フォース分析は新規参入の際のリサーチにも役立てられます。

競合の分析は他社の結果と要因という2軸を確認する

 競合の分析では、他社の売り上げや従業員数、市場シェアや、製品/サービスの強みと弱みを導き出します。この際は、他社のビジネスにおける「結果」とその「要因」を軸に分析を行うとよいでしょう。

「結果」とは、読んで字のごとく、競合の売り上げや利益率、市場シェアなどを指します。

一方、「要因」は、競合が結果を出せた理由を探っていきます。例えば、販路や営業体制、新製品開発など、競合の結果につながった要因を多角的に確認しましょう。

自社の分析は市場・顧客・競合の分析結果をもとに行う

 市場・顧客に加えて、競合他社の分析を行なった結果を受けて、自社の分析を行いましょう。市場の変化とそれに対する他社の変化を自社と比較して、自社についての認識を深めていきます。

 

2 SWOT分析

 3C分析で収集した事実を基に、「解釈」を加えていくのがSWOT分析です。

 3C分析で得られる情報全てについて解釈を入れていくのは、かかる時間と労力を考えるまでもなく、現実的ではありません。そこで、分析対象・対象の顧客属性・競合企業の設定など、前提条件を整理しておくことで、検証する項目が絞られ、効率的な分析が可能になります。

 SWOT分析では、自社の内部環境の「Strengths(強み)」「Weaknesses(弱み)」を、外部環境の「Opportunity(機会)」「Thread(脅威)」の把握を目指します。これら4項目を軸として、自社の課題をあぶり出し、今後進むべきビジネス機会の方向性と採るべき戦略とを明らかにすることができます。

 SWOT分析を行うときに大切なことは、「何を分析したいのか」を事前に明確にしておくことです。

機会と脅威という外的要因はPEST分析を活用して見つけ出す

 機会、脅威という外的要因は、マクロ分析で用いたPEST分析を応用することで見つけ出すことができます。

 また、業界全体の収益に影響がある要因には5フォース分析を活用します。

 強みと弱みという内的要因は外的要因も加味する

 内的要因である、強みと弱みは、主観で判断するのではなく、外的要因や他社の状況も加味して導き出しましょう。

 分析すべき項目は主に以下の通りです。

 *ブランド力

 *インフラ設備

 *価格/品質 *資源

 *立地

 *サービス/技術力

 これらの項目における自社の強みと弱みを精査していくことで、営業戦略も立てやすくなります。

 

クロスSWOTでより効果的な戦略・戦術を立てる

 強みと弱み、機会と脅威を掛け合わせて分析することで、より戦略的な計画が立てられます。 それぞれ掛け合わせることで、以下のような結果が見えてきます。

 *機会×強み

   自社の強みを機会に活かして成長を目指す

 *機会×弱み

   弱みを補強して機会に活かせる状態に整える

 *脅威×強み

   強みを活かし脅威(競合)を避ける

 *脅威×弱み

   弱みを把握して脅威を避け影響を最小限に抑える

 このように、SWOT分析で導き出された結果は、単体で使用するよりも掛け合わせることでより効果的に働きます。

 

3 4P分析で自社の強みと弱みを図る

 SWOT分析のように、自社の弱みと強みをはかる方法として、4P分析があります。

 「Product」(製品)、「Price」(価格)、「Place」(流通)、「Promotion」(販促)という4つのPの頭文字をとったものです。

 4つの項目、それぞれについて他社と比較し、優位な点はあるか、劣っている点はあるかを分析していきます。4C分析が、顧客視点での分析なのに対して、4P分析は企業目線での分析です。そのため、両者を併用することで、顧客視点からでも、企業視点からでも、営業戦略が導き出せます。

 各項目で精査すべきポイントは以下の通りです。

 *商品・製品

   他社よりも顧客ニーズに沿っているか、デザインが優れているか

 *価格

   収益や他社と競合できる価格かどうか

 *流通

   店舗の立地、店舗数は他社と比べてどうか

 *販売促進

   広告が消費者に認知され購買意欲を生むか

 予材管理の考え方からすると、売上または利益率達成のために、いくらで製品を売ればよいのか価格を決めるところから営業戦略を立てるべきこととなります。単価当たりの利益率を考えないと、利益率の目標が達成できないためです。  単価当たりの利益率が低すぎるということになれば、価格を上げることを検討します。利益率が高い場合で、価格が競合よりも高すぎるとなれば、価格を下げることを検討します。

 いずれにしても、目標が先にあり、価格を合わせていくアプローチにより、最終的に価格を決定します。  また、価格が決まらなければ、そのあと、どの製品を、だれに、どこで売ってくればよいかを決めることができません。

 価格帯・製品と顧客の対応関係を考えた場合、たとえば、高級食材スーパーに行く消費者に訴求する路線をとる として説明がつくのか、あるいは、それでは厳しいのか、価格を先に決めることで製品を どの顧客に どこで売るのか、ストーリーを作ることができます。  価格 ⇒ 製品 ⇒ ターゲット顧客 ⇒ 場所 の順番で考えることが定石です。この順番は外さないようにしましょう。

 

 ところで、3つのフレームワークによる分析をどのように行えばよいのでしょうか。

 3つのフレームワークによる分析は、1枚の紙にまとめます。4P、3C、SWOTの3つのフレームワークに基づく分析は、1枚の紙で行います。分析の途中で会議にかける時などは、なかなか1枚に済ませるというわけにはいかないかもしれませんが、少なくともまとめるときには1枚の紙で行いましょう。4P、3C、SWOTは関連している分析ですので、それぞれの分析の間に矛盾があると不正確な分析になります。1枚の紙にまとめられないと、その矛盾点が見えにくくなるからです。

 しかし、分析は完璧なもの、詳細なものでなくて構いません。1枚の紙で全体が見えるようにし、材料を出し尽くすことが大切です。

行動計画にどれだけ具体的に落とし込めるかが勝負

 4P分析の最終結果は、一つひとつの具体的行動と行動計画にブレイクダウンしていきます。

 誰に売るを、「どこに住むどういう人に」あるいは「何歳の誰に」、どこで売るを、一つひとつの場所レベルに具体的に落とし込んでいきます。  何をするか書き出すと、期間中には収まらないほど行動の数を伴うものとなるでしょう。そこで、最後に行動計画の取捨選択を「選択と集中」の思考法により行います。 限られた予算のうち、何にいくら使ったら売上目標を達成できるか、行動を取捨選択していきます。例えば、リピーター顧客の購買行動から考えて、期中に新規顧客を新規開拓すべきなのか、紹介を受けたら早いか、その見込みがあるかなど、できること・できないこと、代わりにできること を一つひとつ定め、最後はスケジュール表にして誰にでもわかるようにします。  ここまでくると、営業戦略はチームメンバーが体を動かせば実現できるものとなります。

 戦略は、作戦・戦術といった大まかな計画を、一つひとつの行動で実現するものなので、行動計画までの落とし込みを行うことが必要であり、最も重要なことと言えるのです。

 

営業戦略を立てる上での注意点

 営業戦略の立案に際しては、現場の実情を踏まえた効果的な運用方法を考えることも大切です。

1 営業リソース管理

 営業戦略を立てるときに忘れてはならないのが、昨今の労働環境の大きな変化の中で、営業リソースの確保と管理が難しくなってきていることです。少子高齢化による労働人口の減少、働き方改革の一環としての長時間労働を是正する動きは、営業部門における人的及び時間的リソースの減少という課題を生んでいます。営業がいなければ当然モノは売れません。机上では良い戦略であっても、実際の営業現場が機能しなければ無意味といえます。

 営業パーソンの業務である顧客と向き合う時間の確保に向けて、リストアップや架電、商談後の報告など、各種ツールの活用を踏まえた周辺業務の効率化が求められます。

 また、場合によっては、営業部内のメンバーを効率的に動かすことができるマネージャーの存在も重要となり、複数の営業目標を同時達成するマトリックス組織の採用が必要となります。

 

2 PDCAを回せる体制づくり

 PDCAサイクルとは、Plan(計画)・ Do(実行)・Check(評価)・ Action(改善)までを1つのサイクルとして繰り返すことで、業務の効率化を図り、営業活動の質を高めようという考え方です。

 営業戦略を立てるうえでは、営業活動における PDCA導入の意味を現場に明確に伝え、課題解決に向けた営業部内の自発的な取り組みを促すことが重要です。まずは、1年で1サイクルなどという、いきなり大きなサイクルを考えるのではなく、達成が容易な短期のサイクルを繰り返す方が効果は出やすいでしょう。

 最近では、SFA(営業支援情報ツール)の利用例も多く見られるようになってきています。SFAでは、営業活動で得られた情報をデータベース化することで、一元管理が可能になります。一元管理により、実行の可視化と評価の効率化が実現するので、営業パーソンを計画の練り直しと改善に集中させることができるでしょう。こうして営業活動の質を向上させることで、営業部内のPDCAサイクルをよりスムーズに回すことが期待できます。

 また、チームや個人によって顧客特性が異なるため、最小単位となる小規模な営業チームでSFAを活用し、自力で戦略実行のPDCAを回す自律したチームやメンバーも増えています。

 営業戦略の実行スピードを上げるために、小規模の自律組織を増やしていくことも重要な戦略要素となっています。

 

営業戦術の立て方

 営業戦略の流れが把握できたら、次に講じるべきは、営業戦術を立てることです。

1 目的に見合った戦術を立てる

 営業戦術を立てる際は、目的に見合ったものを設定する必要があります。例えば、高所得層向けのレストランをオープンした際に、多くの顧客を獲得しようとした場合、チラシを一般家庭が多い地域にポスティングしても効果は見込めません。

 営業戦術は目的に見合ったものを立ててこそ効果的です。自分が、あるいは、会社ができないことを手段とすることはできません。今までやってきたことを考え、その中から手段を選択します。ただし、やったことがない手段であっても、そちらの方が確実で効率が良いということであれば、その手段を選択します。

 戦術を決めるときには、「目的」を常に意識することが重要です。会社の経営規模を拡大するための戦略として、「認知拡大」を掲げたならば、広告代理店と話し合って CM を流したり、マーケティング部門の予算を上げて、ネット広告を出すというのが正しい戦術でしょう。「営業力強化」を戦略に掲げたならば、営業の引き抜きや採用の強化など即戦力獲得のための動きや、仕事の生産性向上のためウェブ会議ツールやSFAを導入することが正しい戦術となります。

 

2 PDCAサイクルを回して戦術をブラッシュアップしていく

 営業戦術が立案できたら、PDCAサイクルに当てはめ、回していきましょう。 PDCAサイクルとは、「Plan」「Do」「Check」「Action」それぞれの頭文字をとったものです。それぞれ、「計画」「実行」「評価」「改善」を意味しており、このサイクルを通すことで、当初計画した営業戦術をブラッシュアップできます。

 戦術に関しても適切なKPIを設定する必要があります。

 KPIを設定したら、そこに対する進捗状況を追っていき、

 ボトルネックになっている部分の改善施策を打っていきましょう。

 KPIを用いて営業マネジメントを行っていく場合、データを残して可視化できるツールを用いてマネジメントを行っていくことが重要です。

 企業において、目標を達成するためには、営業戦略と営業戦術を適切に立てる必要があります。この際、ブレのない営業戦略と一貫性を持った営業戦術を立てることが重要になります。

 さらに、PDCAサイクルを回して常に「改善」を意識することも必要です。

参考

 MECEで漏れのない営業戦術をたてる

 MECE(メーシー)とは、「Mutually」(相互)、「Exclusive」(重複せず)、「Collectively」(全体)、「Exhaustive」(漏れない)の頭文字をとった分析法です。

 これは、営業戦略を立てる上で、漏れも重複もなくわかりやすい状態にする重要な手段です。

 例えば、女性向けの商品を作る場合、「OL」「主婦」だけで円グラフを作ると、「OL」であり「主婦」でもある人はいますので、重なりが生まれてしまいますし、「OL」でもなく「主婦」でもない「学生」は漏れてしまいます。

 対して、全ての年齢をカバーした表にすれば、重なるところはなくターゲット全体を見通せます。ターゲット全体が見えないと、アイディアも限られてきてしまいます。新たな営業戦略を練って、顧客開拓をするのであれば、MECEで全体像を浮かび上がらせることが大切です。

 

営業戦略と営業戦術は多角的な視点で分析していく

 企業の今後を左右する営業戦略と営業戦術。この2つは、内的要因や外的要因といった多角的な視点から分析していく必要があります。立案までに時間を要しますが、焦らず的確に戦略を立案していきましょう。  また、立案された戦術は、実行してすぐ結果が出るわけではありません。PDCAサイクルに乗せて、成功したポイント、失敗したポイントを洗い出し、より効果的な戦術としていくことも大切です。

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