グローバリゼーションと事業戦略

 優良な成長企業においては、多くの事業でIT化やグローバル化を果たしていると言えます。

 経営環境が著しく変化している中で、そういった環境への適応、または、環境の先取りを行った結果、成長することに成功しています。

 成功している企業は、競争優位を築いていますが、それらを維持するためには、世の中のトレンドが自社が属する業界や競合企業の状況などにもたらす影響を分析した上で、戦略を選択・実行していく必要があります。

 「グローバリゼーション」とは、交通機関等の進展による国境を越えた人々の移動、政治・経済分野における国家関係の緊密化により、様々な領域の問題が多くの国を巻き込んで地球規模に拡大している事態を表しています。

 また、「グローバル化」とは、これまで存在した国家や地域などの境界を超え、地球が1つの単位となる変動の過程を表しています。

 

グローバル化の必要性

 昨今、紙面や報道においても「グローバル化」というワードはあらゆるところで目にとまります。

 一般的に、経済において、地域特性が強く、地域内に閉じて競争原理が存在する事業ではグローバル化の重要度は低くなります。例えば、飲食業界は消費者の嗜好は地域によって異なりますので、グローバル化の重要度は低くなり、該当します。そのため、業界の競争特性に応じてグローバル化の必要性は異なると言えます。

 一方、グローバルで一つの市場となるような場合は、世界を見据えた開発、生産、販売網が競争力の源泉となるため、あらゆる面においてスピードが命となります。例えば、製薬業界やIT業界、石油業界などが該当します。多くの業界はこれらの中間に位置します。

 事業戦略において、グローバル化を考える場合は、まずグローバル化ありきで考えるのではなく、事業における優位性を確立するための施策立案から始めて、結果としてグローバル化が意義あるものであると判断された場合に、リソース配分や組織体制を整備する必要があります。

 

グローバル・マーケティング

 インターネットの普及によって世界との距離は大幅に縮まりました。

 たとえ、距離が離れていても、国境を介していても、いつでも私たちは世界中の人たちとコミュニケーションをとることができます。その結果、ほんとうの意味でのグローバル社会が到来したと言っても過言ではありません。ただ、グローバル社会において、ビジネスをどのように展開すればよいのでしょうか。これだけ距離が縮まっていても、具体的にどうやって世界に展開していけばいのかは未知数な部分が多い。

 グローバル・マーケティングと言うと、多国籍企業をイメージしてしまう方もいるかもしれませんが、それは厳密にはグローバル企業とは言えません。

 日本で成功した企業が世界へと商圏を広げようとするのは当然なことですが、もし自社の技術を生かして、その企業ごとに製品やサービスを変えてしまえば、日本独自の特異性は失われてしまいます。一定の理解は得られるかもしれませんが、マーケットに擦り寄るようなやり方では、地元企業に勝つのは難しいでしょう。

 ではどうすればよいのか。ここで考えるべきなのが「グローバル・マーケティング」なのです。

 グローバル社会において活躍するためには、自社の強みを生かすことも大切ですが、日本企業であることの特異性も意識しなければなりません。それが、国外の他の企業には真似できないことにつながります。

 技術力だけの勝負、あるいはスキルやノウハウで競合と戦おうとしても、いずれは体力の消耗戦になりかねません。また、その国にある需要というのは、すでにその国の企業が吸い尽くしていることも多い。そうした需要を外国の企業が把握して、取り込もうとしても、うまくはいかないでしょう。

 人種や言葉が違っても、人間が抱えている欲求の種類はそれほどたくさんあるわけではありません。

 まずは居住食がベースになりますし、インフラが整備されれば、少しずつ贅沢品にも手が出るようになり、文化的なものやレジャーなども広く普及するようになる。それは、国が変わっても当然通り抜けるフェーズなのです。そのように考えてみれば、世界で共通する根本的な需要はあると理解できるでしょう。

 グローバル・マーケティングにおいては、そういった世界的に普遍のニーズを取り込むことを目指します。

 日本において流行したものが、世界でも通用するかどうかはわかりませんが、少なくとも、流行した理由の裏には心理があり、その心理を上手に活用するのがマーケティングの基本です。

 人間心理に大差はないのです。

 日本市場はすでに飽和状態にありますし、少ないパイを狙って外国企業も日本に進出しています。そのなかで、右肩上がりの成長を続けるのは難しいでしょう。先手をうって海外に出て行くこと。たとえ、今は進出できないとしても、グローバル・マーケティングの基本を身につけておくこと。それが、これからのグローバル社会で事業を行っていくために、欠かせないことなのです。

 

グローバル・マーケティングの実践を迫られる日本企業

 グローバル社会の進展については、私たちの生活が大きく変化していることからも明らかです。そうした背景がありつつも、これから先、なぜグローバル・マーケティングが強く求められるのでしょうか。

 その理由は、大きく次の2点が挙げられます。

 ・日本の文化を世界に伝えていくことの必要性

 ・外国企業の日本への進出

日本の文化を世界に伝えていくことの必要性

 日本は島国ということもあり、大陸と比較して古来より海外との交流があまり盛んではありません。 江戸時代には200年以上鎖国しており、海外との交流が再開されたのは近代に入ってからです。

 最近では、周辺諸国との関係性についても懸念されることもあり、島国特有の問題を抱えていることも事実です。それは、政治的な問題だけにとどまらず、ビジネスにおいても少なからず影響を及ぼします。たとえば、特定の国では日本製品だから購入されたり、日本製品だから購入されないという事態がおこっています。これは、製品そのものではなく、日本という国に対して固有の印象を持っていることが原因です。こうした状態では、どれほど優れた製品を開発しても、サービスを提供しても、マーケティングが生かされることはありません。このような背景を考えると、より広く日本製品を世界に普及させることは急務です。近隣諸国だけでなく、遠くの国までも日本の製品、および文化を広めていくこと。それが、企業のひとつの役割となっているのです。

 日本の人口が減少していくのが確実な情勢ということに加えて、グローバル・マーケティングは企業にとって欠かせないものとなっています。

外国企業の日本への進出

 もうひとつの理由として、外国企業の日本進出という点が挙げられます。

 普段の生活から考えてみても、日本に進出している外国企業の製品やサービスを利用していることはとても多いかと思います。同じような製品やサービスを提供している日本企業があるにもかかわらず、外国企業は選ばれているのです。これは、ビジネスを行っているあらゆる日本企業において、危機的な状況だと言わざるを得ません。

 いくら日本のマーケットにおいて盤石な地位を築いていたとしても、これから先、世界中の企業が日本に進出してくれば、そのシェアが大きく奪われてしまうこともあり得るのです。法律や制度で保護されている事業についても、将来的には分かりません。

 そういった外国企業に打ち勝つためには、積極的に海外に進出しなければなりません。現地の企業から学び、顧客から学び、そして、幅広い視野をもって事業を展開することが これからのビジネスでは欠かせないのです。日本でシェアを奪い合うことも大切ですが、より競争力を高めていくためには、グローバル・マーケティングの視点から事業を行う必要があると言えるでしょう。

 

グローバル・マーケティングのプロセス

 個別のステップを理解することも大切ですが、現場ベースでは、全体像を理解しつつ粛々と進められる体制を整えることが求められます。

 現場レベルで動けなければ改革を断行することはできないのです。

Step1 マーケティング・コンセプトの設定

 最初に、世界市場で共通して実践するべきマーケティング・コンセプトの設定をします。

 それぞれの国ごとにトレンドや文化はあるかもしれませんが、そうした部分を加味しつつも、基本として貫くべきマーケティング・コンセプトを決めておけば、一貫性のあるマーケティングを実践することができます。

Step2 ターゲット市場の選定

 マーケティング・コンセプトを設定したら、次はターゲット市場の選定を行います。

 マーケティングの基本部分を共有できたら、市場調査を通じてターゲット市場およびセグメントを見定めていきます。この段階においては、国ごとに相違があっても構いません。効率性を重視して、個別に見極めていきます。

Step3 内外のコミュニケーション戦略

 コンセプトと市場が決まれば、方針をいかに現地法人に浸透させるかを考えていきます。

 いわゆる社内外のコミュニケーション戦略の構築です。

 いかに日本の本社で議論を重ねても、それが現地法人のスタッフに伝わらなければ意味がありません。実効性のあるグローバル・マーケティングを導入するためには、コミュニケーションが欠かせないのです。

Step4 マーケティング戦略の修正

 最後に、導入したグローバル・マーケティングが正しく機能しているかを定期的にチェックし、必要に応じて修正を加えていきます。

 各国で得られた知見やノウハウについては、広く全社的に共有することで、普遍的なグローバル・マーケティングを構築できる可能性も高まります。継続性への意識が重要です。

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