精神疾患

 精神疾患に関する理解や、その治療法は進歩しましたが、周囲の偏見は未だに残っています。たとえば、精神疾患になったことを非難されたり、「怠けている」、「無責任である」とみなされたりすることがあります。

 精神疾患は、体の病気と比べて実態がとらえにくく、確認が難しいため、国や保険会社は、治療費を保険の支払い対象としたがらないのが現状です。子供が精神疾患になると、親がそのために非難されることもあります。また、一般社会には精神疾患の人を敬遠する傾向があり、近所に住んだり、同じ職場で働いたり、付き合ったりするのを避けようとする場合もあります。

 精神疾患は、遺伝的要因環境的要因が相互作用して発症すると考えられています。神経伝達物質と呼ばれる脳内の化学伝達物質の障害によって引き起こされる場合があるとみられています。MRI(磁気共鳴画像)検査やポジトロン放射断層撮影(PET)検査などの脳画像診断法を利用して、脳の機能障害を可視化することにより、多くの精神疾患に生物学的要因が関与していることが示されています。また、多くの精神疾患に遺伝的要因が関与していることも研究によって示されています。

 精神疾患の発症に関して、何らかの遺伝的な脆弱(ぜいじゃく)性を持つ者が、家族生活、社会生活、あるいは職場において過度の環境的ストレスを受けることにより、精神疾患が引き起こされると考えられます。

 精神疾患は、正常な行動と必ずしも明確に区別できるとは限りません。たとえば、配偶者や子供など大切な人を亡くした場合、死別に直面した喪失感と うつ病を区別するのは困難です。また、仕事に関する心配やストレスから来る不安は、大多数の人が経験することで、それを不安障害と診断するかどうかの判断は恣意的になる可能性があります。同様に、個人の性格的な特徴とパーソナリティ障害との境界も不明瞭です。したがって、精神的に健康な状態と疾患に陥った状態は、連続的なものと考えるのが適切でしょう。現時点で、両者の境界線は、症状がどのくらい続いているか、普段の本人とどれほど様子が異なっているか、また、症状が実生活にどれほど深刻な影響を与えているかに基づいて通常判断します。

精神疾患の治療 に続く