薬物の使用と乱用

 かつて「薬物中毒」という用語が薬物依存症と同義の言葉として用いられた時代がありましたが、いまは用いられなくなっています。その理由は正しくないからです。「中毒」というのは、文字通り「毒(=薬物)が体の中にある状態」を指していますが、この状態は「解毒(毒を体外に出す)」すれば薬物による心身に対する弊害は消失し、治療はおわりとなるはずです。ところが依存症はそうはいきません。たとえば、薬物をやめていても、かつて薬物よく使用していた場所を訪れたり、一緒に使用していた薬物仲間と出会ったり、あるいは覚せい剤の粉末を溶かすために携行していた500mlのミネラルウォーターのペットボトルを目にしたりするだけで、薬物の欲求が蘇ることがあります。たとえ欲求を自覚しなくとも、かつて薬物を使ったときに体験した様々な心身の変化(心拍数の上昇、発汗、落ち着きを失う)が出現します。あるいは、暇な時間に退屈な気分になったときに、ふと「薬物を使いたい」と考えてしまったり、「しかし、我慢しないと」などと葛藤したりします。つまり、薬物依存症は「薬物が体内に存在すること」が問題ではなく、薬物を繰り返し使ったことで、人の心身に何らかの変化が生じた状態を表しています。

 覚せい剤や大麻、シンナー、危険ドラッグなどの依存性のある薬物は、いずれも脳内の快感中枢を直接刺激する性質を持っています。この中枢は、たとえば一生懸命勉強をしてよい成績をとったり、努力が認められて褒められたりした際に興奮し、私たちをよい気分にさせてくれる働きがあり、そのおかげで私たちは苦しいことやつらいことがあっても、その向こう側の「よい気分」を期待して頑張れるわけです。ところが、依存性薬物は努力のプロセスを一気に飛び越えて、直接その中枢を刺激し、多幸感を体験させ、苦痛をやわらげます。その結果、勉強を褒められた子どもがせっせと勉強に打ち込むようになるのと同じように、薬物でそのような体験をした人は再びその体験を求めて薬物使用を繰り返すようになるのです。こうなると、薬物を使っていないときにも、次に薬物を使う機会が待ち遠しいと感じるようになるのは時間の問題です。気づくと、自分のなかでの価値観の序列が変化してしまっています。たとえば、これまで自分にとって大切だったもの、―家族や恋人、友人、仕事、財産、健康、そして将来の夢―よりも上位に薬物が位置づけられ、薬物を使い続けるライフスタイルに合った恋人や友人、仕事を選択するようになります。

 昔から知っている人からすると、薬物中心の生活を送るようになった本人のことを「性格が変わった」「別人になった」と感じることでしょう。何よりも大きな変化は、嘘をつくようになるというでしょう。薬物を使い続けるには家族や職場にバレないようにする必要があるので、薬物依存症を抱える人は本当によく嘘をつきます。しかし大抵の場合、一番騙している相手は他の誰よりも自分なのです。「これが最後の一発」と自分にいいきかせながら薬物をいつまでも使い続ける・・・ これが自分に対する嘘です。この段階では、薬物を使用することの快感はほとんどなく、むしろ使わない状態のときに自分を襲う苦痛や、目を背けていた現実と向き合う不安の方が強くなっています。
 薬物依存症とは、「心がいつも薬物にとらわれている」状態、つまり、脳が依存性薬物に「ハイジャック」され、自分の意志や行動が薬物にコントロールされている状態を意味します。

 合法的、非合法的にかかわらず、薬物は多くの人にとって毎日の生活になくてはならないものになっており、青少年の薬物使用率は依然として高いままです。

 個々の薬物の合法性と社会的容認度は、その使用目的、効果、使用者によりしばしば異なります。たとえば、多くの薬物には合法化された医療用の使用法があります。

アンフェタミン:
  注意欠陥多動性障害の治療

バルビツール酸系薬およびベンゾジアゼピン系薬:
  不安および不眠の治療

コカイン:
  体表面を麻痺させる(局所麻酔薬として)

ケタミン:
  麻酔

マリファナ:
  進行癌による吐き気の治療

オピオイド:
  痛みの軽減および麻酔

 しかし、これらの薬を快楽のために使用することは違法であり危険です。薬物の合法性と社会的容認度は、しばしば社会や国の違いにより大きく異なります。また、同じ社会や国でも時代により変化します。

 合法か違法かにかかわらず、多くの薬物は精神に作用します。精神に作用する薬物(向精神薬)の中には、使用量に関係なく、使用するたびに脳の機能に影響を及ぼすものがあります。大量に使用したときや続けて使用した場合にのみ、脳の機能に影響を及ぼすものもあります。何度も繰り返し使いたくなる、あるいは脳に影響を及ぼし、使う必要があると思わせる(渇望)薬物もあります。多幸感(高揚感)などの症状を引き起こす薬物もあります。

 薬物乱用を議論する際に、麻薬がよく取り上げられます。この用語は感覚の消失、しびれ感、眠気を引き起こす薬を指します。特にオピオイド(細胞のオピエート受容体に結合する薬)を指してよく使用されます。一方、違法な薬物または違法な使用法を含めたより広い(不正確な)意味で、麻薬という用語が使用されることもあります。

 

定義

 精神に作用する薬物(向精神薬)の使用により引き起こされる問題を指すのにさまざまな用語が使用されます。しかし、用語の厳密な意味をめぐっては、医師や専門家の間で意見の食い違いがみられることがあります。

寛容性(Tolerance)

 寛容性とは、もともとは少量で得ていた効果を得るためにだんだん多くの薬を必要とするようになることを意味します。オピオイドなどの薬物やアルコールに対し、寛容性が生じる可能性があります。

中毒(Intoxication)

 この用語は特定の薬物の即時的で一時的な作用を指します。中毒を起こすと、精神機能や判断能力が損なわれて気分が変化します。薬物に依存すると、興奮感、誇大な幸福感、多幸感を感じることもあれば、より落ち着いてリラックスして眠くなることもあります。多くの薬物は身体機能を傷つけ、協調運動能力を低下させるため、転倒や自動車事故につながります。一部の薬物は攻撃的な態度を誘発し、けんかにつながります。薬物を大量に使用すると、有害作用が顕著になり(過量摂取と呼びます)、重度の合併症や死のリスクを伴います。

薬物依存(Drug Dependence)

 薬物依存とは、薬物の摂取をやめるのを困難にする要因のことをいいます。これらの要因には、渇望や離脱症状などがあります。薬物依存には、心理的な依存と身体的な依存があります。

 心理的依存とは、精神作用薬の薬物体験を繰り返したい(渇望)、または薬物を使用しないことによる不満(離脱症状)を避けたいという抑えきれない欲望をいいます。衝動的に薬物を使用する唯一明らかな理由が薬物体験への欲望です。

 心理的依存の原因となる薬物は多くの場合、次の1つ以上を引き起こします。
 ・不安および緊張の軽減
 ・高揚感、多幸感など、心地よい気分の変化
 ・精神力や身体能力の向上感
 ・現実からの一時的な逃避感
 ・環境認識の変化(たとえば幻聴や幻視)

 薬物使用への激しい欲望および衝動により、最初に思っていたよりももっと大量に、もっと頻繁に、もっと長く使用するようになります。薬物に心理的に依存している人は、薬物使用を理由に社会的活動やその他の活動を放棄します。また、薬物は体に有害で、家族や仕事など生活の他の側面を害することがわかっていても、なお使い続けます。

 身体的依存とは、薬物を中止すると不快感、場合によってはつらい身体的症状(離脱症状)が現れることをいいます。症状は、薬物がとぎれなく存在していることに体が順応するために現れます。

 離脱症状が現れた人は気分が悪くなり、使用した薬物によってさまざまな不快症状が現れます。一部の薬物(アルコールやバルビツール酸系など)の離脱症状は重篤で、命を脅かすこともあります。

 どのように薬物依存が起こるかについては複雑で不明確であり、以下の相互作用で決まります。

薬物:
 どれほど人を依存させやすいかについては、薬物によりさまざまです。

使用者:
 使用者の性格、健康状態、身体的特徴(遺伝子構成を含む)、感情的状態は、使用者が依存するようになるかどうかに影響を及ぼします。たとえば、持続的な痛みがある場合には薬物を不適切に使用してしまいます。感情的な苦痛がある場合も同様です。しかし、なぜ一部の人が依存するようになり、他の人はならないのかを説明づける明確な生化学的差異または身体的差異は明らかにされていません。

文化的・社会的因子:
 仲間またはグループからの圧力やストレス(仕事や家族への義務感など)が依存に関与している場合があります。

 

薬物乱用(Drug Abuse)

 薬物乱用は、社会的な否定と薬が社会的・感情的安寧に与える影響の点から定義することができます。

 薬物乱用には次のようなケースが含まれます。
 ・通常は違法とされる薬物を医学的理由のためでなく、娯楽的に使用する場合
 ・医療専門家の勧めなしに、医学的問題や症状を軽減する目的で向精神薬を使用する場合
 ・心理的または身体的に抑えがたい強い渇望(依存)のために薬物を使用する場合

 違法薬物の使用はしばしば、主に薬物そのものが違法であるために乱用とみなされます。しかし、乱用される薬物は必ずしも違法というわけではなく、精神に作用する場合もしない場合もあります。これには、違法薬物はもとより、処方薬、アルコール、薬物とはみなされない製品(接着剤や塗料など)に含有される物質も含まれます。あらゆる社会経済層の人が薬物を乱用します。

 一部の乱用者は薬物を大量または長期間使用して、本人および周囲の人の生活の質(QOL)や健康、安全を脅かします。しかし、多くの乱用者は調整して使用し、健康状態や心身機能への悪影響などの明らかな影響が現れないようにしています。

 薬物乱用は必ずしも依存を伴うとは限りません。

娯楽的な薬物使用(Recreational Drug Use)

 薬物の娯楽的使用には、比較的少量の薬物を臨時に使用することも含まれ、多くの場合、使用者に害を及ぼすことはありません。すなわち、使用者に寛容性が現れたり、身体的な依存症になることはなく、薬物が(少なくとも短期的には)身体的に害となることはありません。

 通常、娯楽薬とみなされるものには、アヘン、アルコール、ニコチン、マリファナ、カフェイン、幻覚作用のあるキノコ、コカインなどが含まれます。

 娯楽薬は通常、口から摂取するか吸入します。

他の乱用薬物

 薬物乱用には一般に向精神薬が使用されますが、減量や運動能力向上など他の目的で摂取する薬物が使用される場合もあります。医学的な必要性がなく、医学的管理のない状態でこれらの薬物を服用すると、使用者の生活の質、健康状態、安全を損なう可能性があります。薬物のこのような使われ方も薬物乱用とみなされます。この種では、タンパク同化ステロイドがおそらく最も多い乱用薬物です。

成長ホルモン

 成長ホルモンは脳下垂体でつくられ、体内でタンパク質、炭水化物、脂肪の利用を調節して成長を促します。成長ホルモンは医療用の薬としても製造され、体内で十分量の成長ホルモンをつくれない低身長の小児に投与される場合もあります。一方、成長ホルモンが筋肉の成長や体力を増強し体脂肪を減らすとの思いこみから、成長ホルモンを乱用する運動選手もいます。

 医学的に必要がないのに成長ホルモンを長期間にわたって使用すると、血液中の脂肪が増加し、糖尿病や心臓肥大を引き起こし、心不全にいたることがあります。

 体内でつくられたものではない成長ホルモンを測定する検査は、一般には行われていません。

エリスロポエチンとダルベポエチン

 エリスロポエチンは腎臓で産生されるホルモンです。骨髄を刺激して赤血球を生成します。エリスロポエチンは医薬品としても製造されています。ダルベポエチンはエリスロポエチンに似た薬です。どちらの薬もある種の貧血の人に対して赤血球の生成を増加させるために使用されます。赤血球を増やせば酸素を筋肉に多く取り込めるようになり、運動能力が向上するという思いこみから、これらの薬を運動選手が使用することがあります。

 医学的に必要がないのにエリスロポエチンやダルベポエチンを使用すると、体内の赤血球産生の調節機能が変化し、使用を中止したときに赤血球数が急激に減少することがあります。

利尿薬

 利尿薬は腎臓による塩分と水分の排出を促す薬です。利尿薬は、高血圧や心不全などさまざまな病気の治療に使われます。しかし、運動選手や神経性無食欲症などの摂食障害のある一部の人が、体重を早く減らすために利尿薬を摂取することがあります。利尿薬を不適切に使用すると、脱水症を起こしたり、カリウムなどの電解質の重度の欠乏が生じます。これらの欠乏により重度の疾患や死に至ることもあります。

トコンシロップ

 トコン(吐根)シロップは嘔吐を誘発する薬です。化学物質や毒物を誤って飲んでしまった小児の治療に使用することがあります。しかし、神経性無食欲症などの摂食障害がある人が体重を減らす目的でトコンシロップを使用することがしばしばあります。不適切に使用すると、下痢、重度の電解質欠乏、筋力の低下、不整脈、心不全を起こすことがあります。

下剤

 下剤は物質の消化管通過を促進する薬で、便秘の治療に使われます。しかし、健康でいるためには頻繁に便通がなければならないという誤った思いこみをしている人は、しばしば下剤を乱用します。また、神経性無食欲症などの摂食障害のある人が、下剤で体重を減らせると考えて使用することもあります。

 医学的な必要がないのに下剤を頻繁に使用すると、脱水症と重度の電解質欠乏が生じます。下剤を常用すると他の薬の吸収が阻害され、その作用が止まってしまうこともあります。長期にわたって下剤を不適切に使うと、大腸の筋層が損傷し、重度の便秘やその他の腸の障害(憩室症など)に至ることがあります。

 

薬物中毒(Drug Addiction)

 薬物中毒には広く認められた定義はありません。本人や周囲の人に害を及ぼすにもかかわらず、薬物を強く渇望し、衝動的で抑制のきかない使用をすることを特徴とします。嗜癖者は、薬物の入手、使用、その影響からの回復にますます多くの時間を費やすようになります。薬物中毒は多くの場合、仕事や勉強の妨げとなり、家族や友人との人間関係に影響を及ぼします。

 薬物中毒は違法薬物でも合法薬でも起こり得ます。しかし、違法薬物の入手や使用は、単に病院へ行き、処方せんをもらって薬局へ行くだけの合法薬の入手や使用とはまったく異なります。違法薬物(または医学的必要なしに使われる合法薬)の入手には、うそや盗みが関わる場合があります。たとえば、医師に症状を偽ったり、同じ症状で何人もの医師の診察を受けて複数の処方せんを入手します。一方、進行癌による重度の痛みのある人がモルヒネなどのオピオイド薬に(心理的、身体的に)依存するようになった場合には、持続的に薬物を必要としても通常は嗜癖とみなしません。しかし、ヘロインに依存するようになった人が、ヘロインを買うためのお金を盗んだり、家族や友人にうそをつくような行為は、嗜癖とみなされます。

 時には家族や友人が、薬物やアルコールを使用し続けることを許すようなふるまいをすることがあります。このような人たちはイネイブラー(協力者)と呼ばれます。薬物中毒者が嗜癖物を使用し続けることに自分のニーズがからみあっている場合は、共依存者とみなされます。イネイブラーは、嗜癖者に代わって病欠の電話をかけたり、嗜癖者の行為を弁解します。イネイブラーは嗜癖者に対して、薬物やアルコールをやめるように懇願はしますが、その他に嗜癖をやめる助けとなるようなことはめったにしません。

 嗜癖者が妊娠すると、使われている薬物に胎児が曝露します。妊娠した妊婦は多くの場合、薬物使用や飲酒の事実を医師に打ち明けません。母親が薬物を使用した結果として、胎児も薬物依存となり、重大な障害が現れることがあります。特に医師が母親の薬物中毒に気づいていない場合には、分娩直後に重度または致死的な離脱症状が新生児に現れることがあります。

使用法

 薬物の使用法には、飲みこむ、煙を吸い込む、粉末にして鼻から吸引する(鼻でかぐ)、または注射するなどの方法があります。薬物を注射した場合には、作用がより早く現れたり、より強く現れたり、その両方が起こることがあります。

 薬物は静脈、筋肉、皮下に注射します。静脈注射では一般的に腕の静脈を使用しますが、その部分が瘢痕化した場合は、太もも、首、わきの下など体のどこかの静脈に注射します。

 

薬物注射の合併症

 薬物注射には、他の方法よりも多くの危険があります。薬物の副作用だけでなく、次に示すような注射そのものに関連する問題が生じます。

混ぜ物:
 混ぜ物とは、物理的性質を変化させるために薬物に加える物質です。通常は、コストを減らしたり薬物を使いやすくする目的で、使用者が知ることなしに加えられます。したがって、使用者は何を注射しているかわかりません。ヘロインやコカインなどの路上で手に入る薬物(ストリートドラッグ)には、精神作用を高めたり、薬物の代用として混ぜ物が加えてある場合もあります。ヘロインの一般的な混ぜ物であるキニーネは、ギラン・バレー症候群など、神経の損傷を示す症状(複視や麻痺など)を誘発することがあります。

賦形剤:
 処方薬の錠剤を砕いて溶かし、その液体を静脈に注射する人もいます。これは、錠剤に一般的に含まれる賦形剤(セルロース、タルク、コーンスターチなど)を注射していることになります。賦形剤が肺に入り込み、炎症を引き起こす可能性があります。心臓の弁を損傷する可能性もあり、感染のリスク(心内膜炎)が増します。

細菌とウイルス:
 滅菌していない針、特に他の人が使用した針で注射すると細菌やウイルスが体に入る可能性があります。その結果、注射部位の近くに膿瘍ができたり、細菌やウイルスが血流に乗って肺、心臓、脳、骨などの他の部位に運ばれて、感染をおこします。心臓弁の感染は、細菌に汚染された薬物の注射や汚れた注射針の使用でよく起こる深刻な結果です。注射針の使いまわしにより、B型またはC型肝炎やヒト免疫不全ウイルス(HIV)などの重度の感染を広げる可能性があります。

注射針使用による外傷:
 骨化性筋炎は、注射針を不適切な位置に刺すことを繰り返したために起こります。ひじ周辺の筋肉が瘢痕組織に置き換わってしまいます。皮下注射(皮膚打ちとも呼ばれます)により皮膚に潰瘍が生じることもあります。静脈内注射を繰り返すうちに静脈が瘢痕化すると、静脈への注射がますます困難になり、血流障害が生じます。

 

スクリーニング検査

 スクリーニング検査では、薬物乱用の症状があるとは限らない人の薬物乱用を調べます。

 以下のような人で系統的に行われることもあれば、無作為に行われることもあります。
・学生、運動選手、囚人など特定のグループ
・ある種の仕事(パイロット、トラック運転手など)に応募している人やすでに従事している人
・自動車やボートの事故あるいは仕事中に事故に巻き込まれた人
・はっきりしない手段で自殺を図った人
・裁判所の命令により薬物乱用治療プログラムに参加している人または保護観察中か仮釈放中の人で、禁酒が必要で守っているかを監視されている人
・薬物乱用治療プログラムに参加している人

 薬物乱用を続けていないかを検出して、よりよい治療計画を実施するため、交通事故など特定の状況を除き、通常はスクリーニング検査に同意しなければなりません。スクリーニング検査では、使用頻度を判定できず、一時的な使用者とより深刻な問題を抱えている人とを区別できません。また、薬物スクリーニング検査はごく一部の物質のみを対象とするため、他の多くの物質を見逃します。

 対象となる物質で最も多いのは、アルコール、マリファナ、コカイン、オピオイド、アンフェタミン類、フェンシクリジン、ベンゾジアゼピン系薬、バルビツール酸系薬などです。

 尿、血液、呼気、唾液、汗、毛髪を検査します。尿検査は体への負担がなく、迅速、安価で、多くの薬物を検出できるため、最も一般的に行われています。1~4日以内に使用した薬物を検出できますが、薬物によってはそれ以前でも検出できます。毛髪検査は広く普及していませんが、一部の薬物は100日前に使用した場合も検出できます。医療専門家が検体採取に直接立ち合い、不正に手を加えられていないことを確認して封をすることがあります。

 薬物を使いたいという強い欲求がある  常用者は薬物の効果が切れてくると、使いたいという強烈な欲求がわいてきます。ある期間、あるいは、数ヵ月やめていても、何かのきっかけで、使いたいという強烈な欲求がわいてきます。その結果、
 ・薬物を入手するためにいくつもの病院、薬局を回る
 ・薬物を入手するためなら、万引きや強盗、売春などの犯罪もおかす
 ・薬物を入手するため、結果引き起こされた借金や事故、事件などの問題
など、薬物依存症 危険ドラッグ (脱法ハーブ,脱法ドラッグ)特有の問題が発生します。 

 

自己制御の困難  

 危険ドラッグなどは使いたくない、今回はここでストップしたい、この位の量で終わりたいと思っても、コントロールが効かなくなります。 

 薬物の使用をやめたり、量を減らすと離脱症状(禁断症状)が出る  

 不眠、過眠、抑うつ、不安、焦燥、幻覚、筋肉や関節の痛み、妄想、けいれん発作、食欲亢進、脱力、嘔吐、下痢、異常な発汗

 ほとんどの場合、薬物に耐性ができ使用量が増える  

 危険ドラッグ(脱法ハーブ)など薬物の作用に体がなれてしまい、快感を得るために必要な量が増えていき、使用量がどんどん増えます。

薬物使用中心の生活  

 一日の大部分を、薬物の入手、使用、回復のために使うようになります。結果的に、社会的、職業的、娯楽的活動が放棄されるか、軽んじられてしまいます。 

 危険ドラッグ(脱法ハーブ)などで薬物依存症になると、本人は何よりも薬物を手に入れ使うことを優先します。このため、借金を重ねたり、うそをついたり、盗みをすることがあります。その結果、家族関係や対人関係がこじれて次第に社会から孤立していきます。

薬物依存症の後遺症  

 危険ドラッグ(脱法ハーブ)など薬物をやめてもストレス、不眠、飲酒等の小さな刺激で薬物を使用した時と同じような幻覚・妄想等の精神症状が再発しやすくなります。 このような状態になったことを「フラッシュバック(再燃)」と言います。

 

薬物依存症の特徴  

 現在のところ、日本で流行している乱用薬物は危険ドラッグ(脱法ハーブ 脱法ドラッグ)をはじめとする覚せい剤(メタンフェタミン)、大麻(たいま)、有機溶剤(トルエン、シンナーなど)が主なものです。

 薬物依存の本質は、体の痛み、心の痛みに耐えきれずに、生きている実感を得るために示す自己確認・自己治療の努力がそのきっかけとなります。  また、何とかして薬物を入手し「薬物中心の生活」をしている薬物依存者は、同時に周囲にいる家族にも依存しないと、一人ではその生活が成り立ちません。家族を不安に陥れては、自分の薬物依存の生活を支えるように仕向ける「ケア引き出し行動」が非常にうまいのも特徴のひとつです。 薬物依存症が家族に与える影響  薬物依存症は、その人の心と身体をむしばむだけではありません。家族の誰かが薬物依存症におちいると、家族はその悪い影響を受けて、気がつかないうちに病んでいきます。依存症が「家族の病」であると言われているのはこのためです。薬物依存症の進行に伴って、家族にも一定の変化がみられるようになります。依存症の人を長い間抱え込んでいると、心理状態や行動パターンが変わってくるのです。薬物依存症の初期、まだ薬物依存症に関する様々な問題が深刻化する前の段階では、多くのご家族は無意識にその問題と向き合うことを避けようとします。「ちょっとした好奇心でやっていることだ。そのうちにやめるだろう」「お父さんがあの子をきつく叱りすぎるから反抗しているだけで、父と子の関係が良くなりさえすればすべて解決するんだけれど」。このように、起きている問題を楽観視したり、何か他の原因のせいにしたりすることで、問題への直面化を避けようとするのです。そのうちご本人の薬物使用がエスカレートして、問題を直視せざるをえなくなると、今度はなんとか薬物をやめさせようとあらゆる努力をするようになります。けれども相手は薬物依存症という障害にかかっているので、これらの努力が報われることは滅多にありません。ご家族の努力が功を奏し、一時的に薬物使用が止まることがあるかもしれませんが、ほとんどの場合は長つづきしません。ご家族は、期待をしては裏切られるということを繰り返すうち、だんだんとご本人のことを信じることができなくなり、怒りや恨みの感情をもつようになります。また、薬物をやめさせようとして失敗することを続けていくうちに、ご家族は無力感や自責の念を感じるようになります。一方で、借金や暴力・暴言など、依存症が原因となって起きてくる様々な問題が深刻化し、ご家族を追いつめていきます。ご家族は、今や一人前の責任を果たすことができなくなっているご本人の代わりに、次から次へと起きてくる問題に対処しなくてはなりません。このような生活を続けることはご家族にとって大変な負担となります。「心配で夜も眠れない」「悩みばかり増えて心が休まるときがない」、こんな毎日を送っているうちに、知らず知らずのうちに心身が消耗し、本来ご家族に備わっていたはずの問題を解決する力や冷静な判断力がどんどん失われていってしまうのです。慢性的な危機状態を乗り越えるため、感情が麻痺し、今自分がどのように感じているかがわからなくなってくることもあります。さらに、薬物依存症の人と長く暮らすうちに、家族の機能全体がうまく働かなくなっていきます。健康な家族というのは、本来それぞれが独立した個を保ちながらゆるやかに結びついているものですが、薬物依存症の人がいる家族では、家族全体が、この危機をなんとか乗り越えようとすることのみを目標に動くようになってくるのです。そうすると、個人の成長が妨げられたり、それぞれの境界線が壊れて自立性が保てなくなるという問題が起きてきます。また、このような問題が家庭の中で起きていることを周囲に知られたくないと思うので、どうしても秘密が多くなり、次第に社会から孤立するようになってきます。このように、薬物依存症は、気がつかないうちに家族全体の健康をも奪っていきます。

 自分は使っても大丈夫だろう、使う量や方法を間違えなければ大丈夫だろう、合法だから安全だろうと安易な考えで使用してこのような状態になっています。被害妄想、幻聴など「統合失調症」と似た症状も発現することもあり、事実、統合失調症と診断されたケースも報告されています。その他、薬物の種類ごとに様々な症状があるのが薬物依存症の実際です。

 

診断

 薬物使用をやめたいという理由で医療専門家のもとを訪れ、薬物乱用の診断が下される場合があります。また、薬物の使用を隠そうとする人もいます。

 医療専門家は、気分や行動に変化がみられると薬物使用の問題を疑い、詳しい身体診察を行うことがあります。薬物乱用の徴候がみられることもあります。たとえば、繰り返し静脈内注射をしていると注射痕が残ります。注射痕は小さな黒い点々(針を刺した跡)の線で、周囲の皮膚には黒ずみや変色があります。皮下に注射した薬物により環状の瘢痕や潰瘍ができます。中毒患者はその跡について、頻繁に献血をした、虫に刺された、けがをしたなど、別の理由を主張することがあります。

 医療専門家は他の方法(アンケートなど)も使用して薬物やその他の物質の乱用を確認し、乱用の程度とその影響を判断します。尿検査や、場合によっては血液検査を実施して薬物の存在を調べます。

 薬物使用の問題が明らかになり、特に薬物を注射していた場合は、肝炎、HIVや薬物使用者に多いその他の感染症について徹底的に調べます。

 

治療

 具体的な治療は使用した薬物により異なりますが、通常はカウンセリングを行い、場合によっては他の薬物を使用します。家族によるサポートや支援団体の援助を得て、薬物をやめた状態を維持します。

 合併症の治療は、他の原因による同様の合併症の治療と同じです。たとえば、膿瘍は排膿し、感染症の治療には抗生物質を使用します。

 注射針の使いまわしがHIV感染の一般的な原因であることから、有害な影響を削減する運動が始まりました。その目的は、薬物をやめられない使用者が薬物使用で受ける害を減らすことです。そこで、使用者には清潔な針や注射器を提供し、他の乱用者の針を再利用しないようにします。これは、HIV感染や肝炎の広がり(および社会への負担)を縮小するのに役立ちます。

薬物依存 スピリチュアルな視点