認知症とトレーニング

認知症と脳のトレーニング

脳の機能について

 脳には、
 ・記憶する
 ・時間や場所を認識する
 ・計算をする
 ・読み書きをする
 ・言葉を話す
 ・道具などを使いこなす
 ・物事の善し悪しを判断する
 ・出来事などを理解する
などの機能があり、これらを認知機能と言います。

 脳は生まれてから20歳ごろまでどんどん発達しますが、20歳を超えると発達は止まってしまいます。そして、発達が止まった脳は年と共に少しずつ小さくなっていき、認知機能も徐々に低下していきます。ただ、物事を理解したり判断したりする機能は80歳くらいまで低下はしないとされています。

 脳を働かせることが認知症予防に繋がります。

 脳が働くにはたくさんのエネルギーが必要です。そのため、脳が働いている時には、たくさんの血液が脳に流れ酸素と糖が運ばれます。たくさんの血液が流れる事で、脳の機能の低下を防ぎ、若々しさを保っていられます。反対に、脳を働かせていなければ、血流も悪くなり、脳の栄養である酸素や糖が運ばれず、認知機能も低下してしまうということになります。認知機能の低下は認知症に繋がるので、認知症予防や認知症の症状悪化を防ぐためにも脳を働かせるということは大事なのです。

 

脳を働かせるとは

バランス良い食生活

 脳の重さは体重の2%にすぎません。それに対してエネルギーは身体の20%も必要になるのです。脳を働かせるには、まず栄養が必要です。糖分の摂り過ぎも良くないですが、全く摂らないのも脳には良くありません。中年期以降は無理なダイエットなどはしないようにしましょう。また、生活習慣病によって脳血管に障害が起こり、認知症が引き起こされる事もあります。出来るだけバランスの良い食生活を心掛けましょう。

認知症予防のための脳トレ

 認知症予防は高齢者だけのものではありません。40代でも自覚がないだけで脳は少しずつ委縮していっています。名前が出てこないなどの物忘れは、40代でもあるのではないでしょうか。高齢者になってからではなく、早くから脳を働かせる生活をしましょう。ただし、どれも楽しく行える範囲で行ってください。しなければならないと思うようになると、それがストレスになり、認知症予防にはならず逆効果になります。

パズル

 認知症予防にはパズルが効果ありとされています。1回行ったから良くなるものではなく、続けて行う事が大事です。パズルはどのようなものでも構いません。年齢にあったものを選びましょう。また、数字のパズルである数独(ナンバープレース)も効果があるとされています。

計算をする

 認知機能の1つである計算するという機能を低下させない為に、計算をしましょう。年齢に合わせ高齢の方なら簡単な足し算引き算を制限時間を設けず行い、若い方なら少し高度な計算問題を制限時間を決めてすること。特に難しい問題ではなく、簡単な計算問題で構いません。また、問題などを作らなくても、買い物をした時に、概算でも良いのでいくらくらいになるか計算したり、お釣りの計算をしましょう。財布の中を見て小銭がたまらないよう、お金の出し方を考えるのも良いです。

読み書きをする

 新聞の短いコラムなどを書き写すなど、何かを見ながら書く事や、声に出して読む事は脳の刺激になります。また、日記を毎日書くのも良いことです。若い世代でパソコンや携帯を使っている方も多いですが、一度自分で字を書いてみてください。パソコンや携帯では、漢字を変換する場合候補が出て選ぶだけですが、自分で考えながら物を書く場合は、漢字を思い出さなくてはなりません。簡単なようで結構忘れてしまっていると気付く場合が多く、脳の良い刺激になります。

囲碁・将棋・オセロ

 相手の手の裏を読んだりするゲームは、高度な認知機能が必要ですので、脳が刺激されます。また、難しく嫌だと思いながらするのではなく、楽しく行うという事が脳の活性化に繋がります。

他人とのコミュニケーションを図る

 他人を気遣う、他人と話をするというのは脳の良い刺激になります。一方的に話したり、自分より弱い立場の人が周りにいても、我先に話したりしてはいませんか。相手の話を聞き、それに対して的確な答えを返すまた、他人を気遣い配慮するなど、上手く他人とコミュニケーションを取ることが認知症予防になります。

新しい事を行う

 ピアノやギターなどの趣味がある人は、新しい曲を作ってみましょう。編み物や日曜大工なども、作った事がない物に挑戦する方が良いでしょう。絵を描いたり俳句を詠んだり、また英会話やパソコンなど、これまでやった事がないものにチャレンジすることは、とても良い脳トレになります。

認知症患者のリハビリとしての脳トレ

 複数人で一緒に行うリハビリをやってみましょう。話をしながら、また相手と対戦しながら行う事で、良いコミュニケーションが生まれます。認知症改善の脳トレには1人ででも出来る計算や塗り絵などがありますが、1人でそれをやっていても良い効果が現れない場合があります。そこに家族や施設職員とのコミュニケーションがある事が大事なのです。

簡単な読み書きや計算

 ごく簡単な計算をしたり、絵本を読んだりしましょう。絵本は挿絵があり、大きな文字で書いてあるので、読みやすいでしょう。

塗り絵や折り紙

 どこにどんな色を塗るか考えながら塗る事で、脳に刺激を与えます。手先を使う折り紙も、はみ出さないよう丁寧に折ることを意識しながら折りましょう。また、紙粘土工作なども手を使い考えながら行える脳トレです。

音楽を聴いたり歌う

 音楽を聴き、リズムに合わせて手を叩いたり、身体を動かしたり、歌を歌うのはリラックス効果もあります。そのため、多くのデイサービスなどで音楽療法として取り入れられています。

回想法

 昔の思い出を語り合ってください。懐かしい昔話を思い出しながら話すというのは、脳を刺激し、精神的にも安定すると言われています。写真などがあればそれを見ながら話します。自宅で家族と、またデイサービスなどで同年代の人達ともコミュニケーションが取れる方法です。

ゲーム

 囲碁や将棋などのルールを知っている方はやってみましょう。1人ではなく相手がいる事で刺激となります。輪投げなどのゲームも、大勢でやると楽しく、また、狙って投げる事は難しい行為なので、良い脳トレになります。

 

脳トレが出来るサービス

ルモシティ

 182ヵ国で6000万人の利用がある脳トレアプリです。パソコンでも、スマートフォンでも楽しむことが出来ます。科学的に設計されたトレーニングで、脳が鍛えられるとしています。記憶力・柔軟性・処理速度・注意力・問題解決などから、自分が鍛えたい能力を設定します。更に、その中から鍛えたいスキルを選び回答していきます。この回答によって、個人にあった脳トレプログラムを考えてくれるのです。

くもん学習療法

 学習する者と指導する者がコミュニケーションを取りながら、音読や計算問題を行う事で、前頭前野の機能の維持と改善が図れ、認知症の予防と改善に効果があると科学的に証明されているものです。問題は一人一人に合った、ごく簡単でスラスラ読めたり解けたりするもので、週に5日、20分から30分程度行います。デイサービスなどで導入されている所も多くなっており、認知症予防で始めた人では意欲がわいたり物忘れが少なくなったり、認知症の症状改善の為の人では、徘徊や被害妄想などの問題行動が少なくなったなどの効果がみられています。

 

歯と認知症の関係

歯と脳の関係

物を噛むと脳は刺激される

 歯の働きは食べるという咀嚼機能だけではありません。物を噛む行為は、同時に脳を刺激するという事がわかっています。歯と歯を噛み合わせた時の刺激は、歯根にある歯根膜から脳に伝わり、その刺激は脳における感覚や運動、また、記憶や思考、意欲を司っている部位の活性化に繋がるのです。

残存歯が少ないと脳の働きに影響が出る

 東北大学が行った研究から、高齢者の歯の残存数と認知症との関連性を見ることができます。健康な人では平均14.9本の歯が残っていたのに対し、認知症の疑いのある人では9.4本と明らかな差が見られます。また、残っている歯が少ないほど、記憶や学習能力に関わる海馬や、意志や思考の機能を司る前頭葉の容積などが少なくなっていた事がわかりました。この結果から、歯が無くなると、脳が刺激されなくなり、脳の働きに影響を与えてしまうという事が判明しました。

歯が無い人の認知症リスクは高い

 神奈川歯科大学の研究結果では、残っている歯の数が20本以上ある人と比べて歯が無く、入れ歯も入れていない人の認知症リスクは1.9倍。良く噛んで食べることができる人に対して、あまり噛めない人の認知症リスクは、1.5倍と高くなっています。

噛む事の必要性

 噛む事を意識して食べると脳は活性化しやすいのです。

 歯があれば噛めますが、歯が抜けると噛めないだけでなく歯根膜もなくなり、脳へ刺激は伝わらなくなります。また、歯があってもあまり咀嚼を意識しないで食べていると、脳への刺激が少なくなってしまいます。このことから、脳を活性化するには意識して噛む事が重要だと言えるでしょう。

噛まないとアミロイドβ蛋白は沈着しやすく、海馬の細胞数が減少

 アミロイドβ蛋白とはアルツハイマー型認知症の原因と考えられている物質です。 物をよく噛んで食べる事ができなければ、咀嚼によって中枢神経が刺激される事も少なくなり、アルツハイマー型認知症を引き起こしてしまう確率が高くなるのです。

歯と認知症予防

歯を治療する事で記憶力が回復する例もある

 奥歯を削り噛みにくくしたマウスの歯をセメントなどで修復すると、正常なマウスと同じ程度にまで記憶力が回復したという研究結果があります。噛み合わせが悪いまま放っておくのではなく、噛む事が出来るように治療することで、記憶力の回復の可能性が高まるのです。

入れ歯やインプラントでも脳は刺激出来る

 アルツハイマー型認知症の方の口の中を調べると、歯が無くなり、長い間良く噛んで食べる事が出来ていなかったと思われる人が多く見られます。歯が無いと歯根膜が無くなるため、刺激が脳には伝わりません。しかし、歯に代わる入れ歯や、インプラントなどの治療を行えば、歯と同様の働きをすることが出来るのです。しかし、ただ入れ歯を入れるだけでは不十分です。その人に合った入れ歯を使用し、正しく噛む事が重要なのです。

トレーニングガムを利用する

 歯があっても良く噛まなければ脳に刺激を与えられません。食事の時に良く噛む事も必要ですが、ガムを噛むことも有効です。市販のガムよりも硬く、噛みごたえがある歯科用ガムが効果的です。ガムを噛む事でリラックス効果ももたらされ、集中力も回復するのです。トレーニングガムとして歯科でのみ販売されているものもあるようですが、市販のガムでも効果はあります。認知症予防のために利用してみましょう。

入れ歯とインプラント

 歯が無くなった時の代替えとして、入れ歯とインプラントという選択肢があります。入れ歯は人工的に作った歯や歯茎です。インプラントは、顎の骨に穴を開け、まず金属で作った歯根を埋め込み、その上に人工の歯を作るものです。どちらを選択する場合も、自分に合った物を作るようにしましょう。入れ歯は保険が利くため、安い物では総入れ歯でも1万円程度で出来ますが、フィット感のある高性能の物だと高額になります。インプラントは1本10万円以上となり、歯だけでなく治療費も自己負担となり、かなり高額になってしまいます。

入れ歯のメリット・デメリット

メリット
 ・保険が利くので安く出来る。
 ・治療による事故はほとんどない。
 ・顎の骨の状態などに左右されず作る事が出来る。
 ・メンテナンスが楽である。
 ・高性能の入れ歯も選ぶことが出来る(保険適用外の場合もある)。

デメリット
 ・慣れるまで、口の中に異物感がある。
 ・安い物は大量生産されている場合が多く、個人個人にフィットした物ではないため、外れたり痛みが出ることもある。
 ・インプラントに比べると咀嚼力に欠ける。

インプラントのメリット・デメリット

メリット
 ・ほとんど自分の歯と同じ程度の力で噛む事が出来、見た目も変わらない。
 ・口の中に異物感が無い。
 ・入れ歯のように外れたり、痛みが出たりする事が無い。

デメリット
 ・顎の骨の状態、また持病によっては、作れない場合がある。
 ・保険適用外で、全額自己負担になるため金銭面での負担が大きい。
 ・定期的なメンテナンスが必須である。
 ・歯根膜は作れないため、噛む力を加減出来ず、周りの歯や歯茎を傷めてしまう事がある。
 ・外科手術であるため、治療事故が起きる可能性がある。

 

認知症と生活習慣病の関係

生活習慣病とは

 食べ過ぎや飲み過ぎ、運動不足、喫煙など、良いとは言えない生活習慣から起こる病気を生活習慣病と言います。糖尿病・脂質異常症・高血圧・脳卒中・肥満などがこれに当てはまります。日本人の死亡原因の2/3は生活習慣病によるものとされています。高齢者の生活習慣病は増え続けており、認知症と大きく関連しています。

生活習慣病が脳に及ぼす影響

 脳の血管に障害が起きると、脳血管性認知症が発症しやすくなります。

糖尿病

 糖尿病には、1型糖尿病と2型糖尿病がありますが、生活習慣によって引き起こされるものは2型糖尿病です。生活習慣によってインスリンの分泌が低下したり、インスリンに対して抵抗性が出る事で、血液の中のブドウ糖を処理し切れず、血糖値が高いままになると、脳血管や脳神経に障害が起こりやすくなります。

脂質異常症

 血液の中の中性脂肪やコレステロールが多くなり、血管内に溜まる事によって動脈硬化を起こしやすくなります。動脈硬化になると血管内が狭くなるため、血流が悪くなったり、血管がもろくなったりし、結果、心疾患や、脳梗塞、脳出血などが起きやすくなります。

高血圧

 最高血圧が140mmHg、もしくは最低血圧が90mmHg以上の場合を高血圧とします。ただ1回測定した結果だけでは高血圧だとは言えず、この状態が続く場合を高血圧と呼びます。血圧が高いという状態は、血管が大きく引き伸ばされる状態が続く事です。その結果、血管が傷み、動脈硬化などを起こしやすく、脳卒中などの原因になります。

脳卒中

 心臓近くの血管が詰まると心筋梗塞になりますが、脳で詰まると脳梗塞になり、血管がもろくなっている場合は、脳出血となる場合もあります。また、脳卒中の前兆として、TIA(transient ischemic attack)と呼ばれる一過性の脳虚血発作が起こる事もあります。脳卒中になると、脳細胞が傷つき、麻痺や言語障害が残りやすくなってしまいます。

肥満

 BMI (肥満指数)の値が25以上を肥満と言います。肥満は病気ではありませんが、肥満になる生活をしている事が、様々な病気を引き起こす元になります。糖尿病や脂質異常症などは、肥満との繋がりがあります。また、無呼吸症候群になりやすく、脳へ送る酸素が少なくなる事で、脳に障害を引き起こす原因にもなると言われています。

生活習慣病と認知症の関係についてのデータ

 生活習慣病は脳血管障害を起こしやすくし、脳血管性認知症の発症に関係しているのではないかと考えられています。1985年から数回に渡り福岡の久山町で行われている調査では、高血圧症の人が正常血圧の人よりも脳血管性認知症になるリスクが3.4倍もある事がわかりました。また、50歳以上64歳以下の中年期で高血圧である人は、これよりも高いリスクになる事が判明。この事より、若い頃から血圧が高い人ほど、脳血管性認知症になる確率が高いと言えます。

 2型糖尿病は、血管に障害を起こし脳血管性認知症とも関わりがあるとされていますが、アルツハイマー型認知症になるリスクも高いとも言われています。2型糖尿病と関係する高インスリン血症状態が、アルツハイマー型の原因と言われているアミロイドβ蛋白を分解出来なくするとのことです。また、アミロイドβ蛋白と同じく、アルツハイマー型の原因と考えられている、タウ蛋白の変質促進にも関わっているとされています。糖尿病の人の発症リスクは、血糖値が正常な人より約4.6倍も高くなっている事も明らかになっています。

 

認知症を予防するには、まず生活習慣を改善

 認知症は発症するずっと前からの生活習慣の積み重ねが関係します

 アルツハイマー型認知症の原因になるアミロイドβ蛋白は、発症の25年も前から溜まりだすというデータがあります。高齢期が65歳だとすると、早い人で40歳から溜まってしまう事になります。アミロイドβ蛋白とインスリンに関係がある事がわかっていますので、糖尿病にならないよう、この時期から注意が必要です。

食生活の改善

 食べ過ぎに注意し、食べる時は腹八分に食べる。また甘い物ばかり食べないように注意し、糖尿病を防ぎましょう。お肉ばかりを食べている人は悪玉コレステロールが増えますので改善が必要です。コレステロール値を上げないよう、海藻や野菜、果物など、バランス良く食べましょう。高血圧にならないように、塩分を控えましょう。飲酒もほどほどに。脳血管性やアルツハイマーではなく、アルコール性の認知症というのもあります。多量に長年飲んでいる人は早めに改善しましょう。

日常生活の改善

 小まめに動きましょう。運動が出来るのであればその方が良いですが、途中で挫折しないよう長く続ける事が大事です。食べてすぐ横になって寝るなどの生活であるなら、それを改善し、日常生活で動く事を意識するようにしてみてください。また、喫煙は出来るだけ控えましょう。喫煙は動脈硬化になる危険性が大きいので、認知症の発症リスクも高くなります。ストレスを溜めない生活をしましょう。ストレスから暴飲暴食になったり、睡眠不足になったりします。睡眠不足もまた認知症と関係があるとされています。夜更かしし過ぎないで早く寝る習慣をつけましょう。

生活習慣病を治療する

 生活習慣病を疑われても、治療せず放置する人が多いという事がいろんなデータから分かっています。しかし、治療も受けず、生活習慣も改善しなければ、良くなるはずがありません。自分が将来癌などになるかもしれないと考える人は多いのですが、認知症になるかもしれないと思う人は以外に少ないものです。自分だけは大丈夫という思いだけでは予防する事など出来ません。生活習慣病にならないよう生活を見直し、もし病気になったとしても、きっちり治療をする事が認知症の予防に繋がります。

有酸素運動で認知症予防

 認知症を予防する方法として、有酸素運動が有効視されています。年齢に関係なく適度な負荷で手軽にできる有酸素運動と認知症と関係について説明します。

有酸素運動とは

 有酸素運動とは、呼吸により酸素を利用して行う運動のことを言います。運動の強度自体は強くありませんが、継続して筋肉を動かし、そのエネルギーを生み出す材料として酸素が使われるのです。つまり、酸素を取り入れた運動、強度が弱い持続的運動が有酸素運動だということです。

 一般的に知られている有酸素運動の効果は、体脂肪燃焼によるダイエット効果ですが、それだけではありません。血流を促進することによって、脳の機能向上、目の健康維持、心疾患予防、うつ病予防にも効果を発揮します。

 具体的な有酸素運動とは以下の通りです。

 ・ウォーキング ・ジョギング ・水中ウォーキング ・水泳 ・ヨガ ・踏み台昇降運動 ・エアロバイク

有酸素運動が与える認知症への効果

 有酸素運動は、認知症の予防にも効果を発揮します。有酸素運動は脳機能の低下を防ぎ、脳を若く保つ働きがあることが明らかにされています。有酸素運動を行うことで、持続的に酸素を体内に取り入れる事こそが、認知症予防に有効とされる理由です。酸素は血液によって運ばれ、その血流増加は脳にも派生し、脳の血管に新鮮な酸素を含んだ血液が送り込まれます。

 脳内の血液が豊富になる事によって、脳の神経細胞であるニューロンが新しく作られます。そして、神経細胞同士を結び付ける働きを持つシナプスは脳機能に非常に重要であり、酸素が多く脳に送られることで活発に働き、記憶力を増強させるのです。また、脳内の血流増加により、傷ついて機能しなくなった毛細血管の代わりに新しい毛細血管も作られていきます。そうすることで、脳の記憶を司る海馬の脳内ネットワークがうまく機能しなくなることで起こる認知症を予防することが出来るのです。

有酸素運動の取り入れ方

 認知症予防に行う有酸素運動は、まずは1日10分程度の時間で気分転換になりそうな軽いものから始めましょう。例えば、ウォーキングなどを行うのも1人で行うのではなく、出来ればご家族や友達と会話をしながら歩くことが有効です、会話をすると、その分負荷がかかり酸素を多く身体に取り入れる事が出来るからです。また、外に出て歩くことで、周りの景色が変化し、それに合わせて目から入ってくる情報を脳が判断する為に働くという効果も見込めます。慣れてくれば、毎日ではなく、週に2~3日1回約30分の有酸素運動を取り入れて行きましょう。

 

筋トレで認知症予防

 筋肉を動かすことは、脳の神経伝達をスムーズにし、かつ海馬の神経細胞を新しく作ることが出来ます。

筋トレと脳の関係

 筋トレを行う事は身体を健康に保つだけではなく、脳をトレーニングすることにも繋がります。これは脳と筋肉との関係性を知れば分かります。

 私たちが身体を動かす時に筋肉に指令を出しているのが脳なのです。また、運動をした後に感じる筋肉痛は、逆に筋肉からの電気信号が脳に神経回路を通じて送られているのです。つまり、筋肉を動かしてやる事で、脳内の神経脂肪であるニューロンからの情報伝達機能が繰り返し使われることとなり、脳のトレーニングへと繋がるのです。また、記憶を司る海馬は65歳を超えると1年で約1%萎縮し、その機能が減少してしまうと言われています。しかし、筋トレを行う事で血流が促進され、海馬内の神経細胞が新しく作られ、かつ海馬が大きくなったというデータもあります。筋トレによって脳の伝達機能をトレーニングし、海馬内の神経細胞を常に鍛える事で認知症予防につなげる事が出来ます。

筋トレの効果

 筋トレというと、若い子がするものというイメージを持たれがちですが、いくつになっても筋肉は鍛える事が出来ます。

・体幹バランスを保つ  

 年齢とともに失われがちな身体を支える中心部の筋肉をいつまでも元気に保つことが出来ます。また、体幹バランスが崩れると、背中が曲がる圧迫骨折も起こりやすくなってしまうのです。

・骨粗鬆症予防  

 骨は適度な振動が加わることで強くなり、骨密度が上がります。カルシウムといった骨の材料の成分を取ることはもちろん、筋トレで骨に負荷を与える事で骨粗鬆症も予防できます。

・冷え症改善  

 筋肉が落ちてくると、顕著に表れてくるのが手足や身体の冷えです。冷えを感じると、ますます動くことが億劫になる為、万病のもとと言われる冷え症を進行させてしまうのです。

簡単筋トレメニュー

・大腿四頭筋トレーニング 背もたれがある椅子に腰かけ、片足ずつゆっくりと膝を伸ばし、ゆっくりと元に戻します。

 これを1セット=10回連続して、まずは3セットを片足ずつ行いましょう。

 これで鍛えられるのは太ももの前側の筋肉です。スクワットで鍛える方法もありますが、体重が膝にかかる分、膝への負担が大きくなりますので、この方法が優しく確実に鍛えられます。少し負荷をかけるには、鍛える側の足の裏を床から浮かし、出来るだけゆっくりと曲げ伸ばしをしましょう。また、より効果を出す為には、鍛えている筋肉を意識することと呼吸を止めない事です。どこの筋肉を動かしているかという事に集中することでより、脳からの神経伝達がスムーズになります。また、呼吸をしながら鍛える事で脳にも筋肉にも酸素を送ることができ、より効果が高まります。下半身には全身の筋肉の約3分の2が集中していますので、この方法を用いて無理なく脳トレへと繋げましょう。

 

デュアルタスクで認知症予防

 認知症になると物忘れがひどくなり、今まで出来ていた「ながら動作」が出来なくなります。

デュアルタスクとは

 デュアルタスクというのは、2つの事を同時に行う「ながら動作」の事をいいます。デュアルタスクにも、様々なやり方やレベルがありもちろん簡単なものもあります。例えば、「洗濯をたたみながらテレビを見る」というのもその一つです。これなら普段からやっていることだと思われるかもしれませんが、テレビに夢中になって手が止まってしまってはいけません。テレビを見ていても、手はちゃんと動いて洗濯をたたみ、分けるべきものは分けるのです。また、洗濯たたみをしていてもテレビの内容も理解しているという、どちらもが同時に行えてはじめてデュアルタスクとなるのです。

 2つの事を同時に行うデュアルタスクの中でも、特に脳に有効とされている方法があります。それが、身体を動かしながら頭も動かすという方法です。

デュアルタスクが脳に与える効果

 デュアルタスクは何故脳に良い影響を与えると言われているのでしょうか。一つには、2つの事を同時に行う事で脳の血流量を上げる事が出来るという点です。認知症を調べる検査法であるSPECT(スペクト)検査を行うと、脳のあちこちで血流の低下や血流不足が発見されます。そして、脳の血流量が少なくなることと平行して脳の機能も低下していくことが分かっています。デュアルタスクで活性化されるのは、特に前頭葉と言われる部位です。前頭葉は脳の前方部分であり、脳の司令塔とも言われ、運動を行う機能と思考を司る脳の最高中枢なのです。この部位が、損傷を受け血流不足で働きが悪くなると、状況判断力の低下が顕著に表れます。逆に言うと、デュアルタスクで刺激を与え続ける事が、機能低下に繋がっていくのです。

今日から出来るデュアルタスクメニュー

 簡単にできるデュアルタスクメニューを紹介します。

・足踏みしながら手を挙げる  

 足踏みをするという簡単な動作にプラスして、指示された側と逆の手を挙げて行きます。 指示された手をあげるのは簡単ですが、逆の手となると一瞬考える必要が出てきます。このように、指示にも一捻りしてあることも大切なポイントです。

・ひとりじゃんけん  

 必ず右手が勝つようにという条件のもとに、ひとりで右手と左手でじゃんけんを行います。手を動かすという動作と、じゃんけんに勝つ為の次の手を考える頭を使う2つが組み合わさったトレーニングです。

・歩きながら引き算をする  

 100から、歩きながら6を引いた数字を口にする。1、5、10といった簡単な数字は避け、それ以外の数字で引き算を行っていくと脳の活性化になります。 簡単にできるデュアルタスク

 エクササイズを取り入れ、認知症に有効な前頭葉を刺激し、脳の血流をあげることで楽しみながら認知症予防を行いましょう。

 

認知症と糖尿病の関連性

 糖尿病の人もしくは高血糖気味の人は認知症になりやすいといわれています。糖尿病の人は認知症の一つである「脳血管型認知症」になるリスクが、糖尿病ではない人と比べて2倍以上もあります。脳血管型認知症は脳の神経細胞に障害が起きることによって起こります。糖尿病により、血糖値が高い状態にある人の血液はドロドロで粘性が高く、脳内の血管が詰まりやすい状態です。脳内の血流が滞ることにより、神経細胞にも十分な血液が行き届かなくなります。その結果、神経細胞が正常に働くことができなくなり、認知症の症状が現れます。

 糖尿病の人はアルツハイマー型認知症になるリスクが、認知症ではない人に比べて4倍以上あるといわれています。人間の脳内にはインスリン分解酵素が存在し、アルツハイマーの原因となる物質(アミロイドβ)を分解しています。そのため、インスリン分解酵素が正常に働いていれば、アルツハイマーにかかりにくい状態です。しかし、糖尿病の人はインスリン分解酵素が少なくなってしまい、アルツハイマーの原因物質を分解する力が弱く、アルツハイマーになるリスクが高まってしまうのです。

糖尿病予防は認知症予防の第一歩

 糖尿病は脳が正常に働くために必要な栄養素であるブドウ糖がうまく代謝できない病気です。そのため、脳に十分な栄養が行き届かず、認知症になるリスクが高まります。認知症のリスクを減らして、老後を健やかに過ごすために予防として今できることを行うようにしましょう。

・食生活の見直し  

 血液がドロドロにならないために、食事に玉ねぎや納豆など、血液をサラサラにする効果のある食品を積極的に取り入れるようにしましょう。そして、ドロドロ血液のもとである脂肪分や糖分の多い食品を控えましょう。

・運動習慣を身に付ける  

 激しい運動をする必要はありません。軽いウォーキングやラジオ体操など、一回に数十分の有酸素運動を最低週3日行うようにしましょう。

 糖尿病の人は、その患っている期間が長ければ長いほど、将来認知症になるリスクは高くなります。「今はまだ糖尿病とまではいっていないが、生活習慣の乱れから比較的血糖値が高め」あるいは「家系的に糖尿病になりやすい」といった方は、いまから糖尿病予防、ひいては認知症予防に取り組むようにしましょう。

 

食用オイルで認知症予防

 認知症予防には、40代~50代からの食生活習慣の見直しが推奨されています。ここでは認知症予防に良いとされる食用オイルをご紹介いたします。それぞれ味や認知症予防以外に期待される効果も違うので、あなたにあった食用オイルを試してみるのもよいかもしれません。

えごま油

 えごま油がなぜ認知症に良いとされるのか。それは豊富に含まれるαリノレン酸が体内で脳の栄養素であるEPAあるいはDHAに変化し、脳に多くの血液を送り血流が良くなるため、脳の神経細胞が活発に動くようになるのです。

 α-リノレン酸はコーン油やオリーブオイルなどにも含まれていますが、含有量は約60%とえごま油がとりわけ多いため、認知症予防としてよいのです。

 認知症予防以外に期待される効果

  うつ病改善、血管の若返り、ダイエット、美肌、歯の健康、視力回復

亜麻仁油

 亜麻仁油もα-リノレン酸を約25%と豊富に含むため、認知症予防に良いとされています。もともとは塗料やインクの原料として用いられていましたが、豊富な栄養素により現在は食用油として注目されています。

認知症予防以外に期待される効果

 花粉症などアレルギー症状の緩和、生活習慣病の予防・改善、血流の改善、美肌、便秘の解消、ダイエット、更年期障害の改善、不妊、リウマチ、気管支炎、肝炎、腎炎などの炎症を抑える、免疫力を高める、癌の予防、鬱病、統合失調症、自律神経失調症、など精神疾患の予防・改善、慢性疲労の予防・改善、片頭痛の予防・改善

 

認知症予防に効果的な歩数

 ウォーキングなどの有酸素運動が認知症の予防に効果的だと考えられています。どれくらい歩くのが一番良いのでしょうか。ある調査により、その歩数の目安が速歩きで1日5000歩だとわかりました。速歩きは、「大股で速く、力強く歩く」ことを意識するのが大切です。

 ウォーキングを習慣づけるためには、用事や日頃の楽しみなど、既に生活の一部となっていることに歩行を加えると効果的です。「1日5000歩/7.5分(中強度の運動時間)」。これを頭に入れ、習慣的な速歩きに挑戦してみてはいかがでしょうか。