営業社員の残業代は不要か?

 営業職では、時間外労働手当を込みで「営業手当」として定額で支給する場合があるかと思います。しかし、営業社員に営業手当を支払っているからといって、残業代はなしとしているケースがありますが、それは困ります。Fotolia_66318669_XS

 時間外労働手当を定額で支給していたとしても、営業社員が通常どのくらいの時間外労働をしているのか、労働時間の把握を行わなければなりません。

 営業手当が残業代相当分としていても、時間外労働手当として計算した額のほうが営業手当の額を上回った場合は、その差額は支払わなければなりません

 営業社員の時間外労働に対して支払ったセールス手当について、法定の割増賃金を上回る額であれば、法の趣旨は満たされ、割増賃金として一定額を支払うことは許されるとしつつ、法定の計算方法で算出した割増賃金の額が定額の手当の額を上回るときは、その差額の請求権を労働者側に認めたものがあります(関西ソニー販売事件 大阪地裁 昭63.10.26

 例  
  基本給   250,000円
  所定労働時間  170時間
  残業手当  30,000円を一律で支払う場合
  残業単価  250,000 ÷ 170 × 1.25 = 1,838円
       30,000 ÷ 1,838 = 16.3時間

 つまり、16時間を超えた時から超過分の残業代を支払う必要があることになります。

 したがって、場合によっては賃金の計算や管理が複雑になり、事務手続きが煩雑になる可能性があります。

 時間外労働手当の代わりに毎月一定額の手当を支給する場合は、労働契約書や就業規則(賃金規程)に、「時間外労働手当として支払うものである」との内容を明記し、その計算方法(何時間分の割増賃金になるのか)について明示する必要があります。

就業規則規定例

第○条 (外勤手当)
 営業部門に所属する従業員で、主として事業場外で業務に従事し事業場外のみなし労働時間制が適用される従業員に対し、個別に提示した外勤手当を支給する。なお、外勤手当は時間外労働の割増部分を一部含むものとする。

2 第○条の時間外労働の割増賃金で算出された時間外労働の割増賃金が当該外勤手当の額を超えるときは、その差額を支払うものとする。

 定額の残業手当の支給は、人件費の予定が立てやすく事務の手間を軽減できる等もありますが、本来の時間外手当より多額を支給することとなる可能性も高く、良策かどうか疑問が残ります。

 

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