賃金とみなされる例・みなされない例

1 賃金とみなされる例

 (1) 使用者が任意的恩恵的に支払う退職金や災害見舞金等のうち、労働協約、就業規則、労働契約等によってあらかじめ支給条件が明確になっているもの

 賞与退職金は、使用者の査定などにより額が上下することがありますが、就業規則その他において支給基準が明らかにされており、使用者に支給義務がある場合には退職金は賃金に当たると解されています(伊予相互銀行事件 最高裁 昭43.5.28)。

 支給条件が明確になっていない場合は、賃金とみなされません。

(2) 給与所得税額や社会保険料について、本人負担分を使用者が労働者に代わって支出する場合の税金補助金ないし保険料補助金  

 個々の労働者は、自己の必然的な支出を免れる利益をそのつど現実に受けるため賃金とみなされます。

(3) 住宅の貸与

 住宅の貸与を受けない者に対して定額の均等給与が支給されている場合は賃金とみなされます。

 従業員に対する住宅資金の貸し付けや社宅の貸与などが、企業が従業員の福利厚生のために負担するものであるときは、労働者への報酬とは理解されていませんので賃金には当たらないといえます。

(4) 昼食料補助、居残弁当、早出弁当料

(5) 通勤手当又はその現物支給としての通勤定期券

  労働に付随して生じるものですから賃金となります。

 

2 賃金とはみなされない例

(1) 使用者が任意的恩恵的に支払う退職金や災害見舞金等

 チップは、顧客が労働者に直接渡すものであるかぎり、賃金には当たらないといえます。asian businesswoman standing on white background

 使用者が受けとったものを労働者に分配する場合には賃金になりえます。 支給条件が明確になっている場合は賃金とみなされます。

 労働者が死亡した場合に遺族に支払われる死亡退職金について、一般に労働者にいったん帰属した退職金が遺族に支払われるものではなく、遺族が会社の規定などに基づき直接に請求権を取得するものですので、賃金には当たらないのが通常です。

(2) 通常実費弁償としてとらえられている旅費、労働者持ちの器具の損料として支給する器具手当、使用者の支給する工員の作業衣、交通従業員の制服等

 企業が業務の遂行に当たり負担すべき費用であって、労働の対価ではありませんので、賃金には当たりません。

 タクシー券の給付については、業務に要した費用(あるいはその見込額)を支給するものである限り、賃金の支払いには当たらないといえそうです。

(3) 法定の額を超える休業補償は法律で平均賃金の3分の2と規定されていますが、これは最低の基準と考えられるため、事業場で休業補償として平均賃金の3分の2を上回る制度を設けている場合は、その全額が休業補償とみられます。

 

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