「脱ガソリン」は空虚な政策

 政府は、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」として、2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにするという目標を掲げた。

 「2050年までの脱炭素社会の実現」を基本理念に明記した 地球温暖化対策推進改正案では、温暖化対策を「国民や国、地方自治体、事業者、民間団体などの密接な連携の下に」推進すると定めています。

 都道府県や政令指定都市、中核市がつくる温暖化対策の実行計画に、再生可能エネルギーの利用促進策を実施するための「目標」を加えるよう義務付け、市町村にも対応を求めるとしています。

 2035年までに新車販売で電動車100%を実現する。また、東京都は、2030年までに都内で販売される新車を全て電動車に切り替えることを目指す。ハイブリッド車や電動自動車、水素を燃料とした燃料電池車を普及させる予定だという。

 この「電動車」にはいろいろな種類がある。トヨタのプリウスなど、ガソリンエンジンとモーターを併用するハイブリッド車(HV)、充電も可能なプラグインハイブリッド車(PHV)、水素などで動く燃料電池車(FCV)、ガソリンを一切使わず、バッテリーで動く電気自動車(EV)です。

参考

 夏や冬にエアコンなどの使用頻度が高くなり、電力需要が高まれば、停電になりかねないのが現在の日本の状況です。その主な原因は、二酸化炭素(CO2)排出量をゼロにする「脱炭素」を目指して、火力・原子力発電を減らした無理な電力構成にシフトしようとしていることにあります。

 日本の中心電源として開発計画が進む 太陽光や風力などの再生可能エネルギーは、天候によって発電量が左右され、不測の事態に対応することは極めて難しい。再エネルギー中心の電力構成では、電力供給量が10%ほど減り、日本の産業に壊滅的な打撃を与えます。

 日本の電力の4割は、CO2排出量が比較的少ない液化天然ガス(LNG)の火力発電が占めています。しかし、LNGは超低温で管理する必要があり、長期保存に向かないことから、発電事業者のLNGの備蓄は2週間程度。LNG任せの現状の電力供給でも、エネルギー安全保障のリスクを高めていると指摘されています。

 環境保全のお題目のもと、電力の安定供給が可能な石炭火力や原子力なしに、日本の電力需要を支えるには かなりの無理があると言わざるを得ません。

 有害物質を大気中に無尽蔵に排出することは規制すべきですが、「CO2の増大そのものが地球を破滅させる」というのは、一種の終末論です。過度のCO2削減は、産業を停滞させ、著しく景気を衰退させます。「地球温暖化対策基本法案」は、国民生活に多大なしわ寄せが回ってきます。「経済発展や技術の進歩を捨て、原始時代に帰ろう」という主張は、形を変えた左翼運動、マルキシズムと言えるかもしれません。長期的には代替エネルギー、新エネルギーの開発を強力に進めるべきですが、性急なCO2排出削減はやるべきではないと考えます。経済成長を犠牲にしてまで進めるべき政策ではありません。

 世界各国が脱炭素の取り組みを進める中、中国は石炭火力発電所の建設を進め、CO2の排出量を増やし続けてきました。「脱炭素は、先進国を弱体化させるために仕掛けた罠」である可能性が極めて高く、相当の注意が必要です。日本政府は早急に「脱炭素」の方針を見直すべきです。

参考

 電気自動車が増えても、火力発電が主要であれば石油を燃やすことになります。電気自動車の製造過程では、ガソリン車よりも多くのCO2が排出されます。

 そもそも、日本でガソリンを燃やす量が減っても、輸入した原油から石油製品用のナフサや飛行機の燃料などを抽出する過程で、今までと同じ量のガソリンは生産され続けます。そのガソリンは捨てるわけにもいかないので、どこかで使うことになります。そこで使用されれば、CO2の排出量は変わらないわけです。

 さらなる「そもそも論」として、日本が人為的なCO2排出量を仮に実質ゼロにしたところで、地球の温度はほとんど冷えません。

 「二酸化炭素による地球温暖化」はあくまで仮説に過ぎません。日本の出すCO2は、世界のCO2排出量のうち、わずか3.5%。東京大学名誉教授の渡辺正氏の試算によれば、日本が人為的な排出量をゼロにしても、たった0.001度しか地球の温度を冷やさないといいます。

参考

 このように、「脱ガソリン」は何重もの意味で空虚な政策です。その一方で、産業界には計り知れないダメージを与えます。

 トヨタは国内メーカーの中でも電気自動車の開発が断トツで進んでいます。「国内における他社との競争という意味で、脱ガソリンはトヨタに有利だ」「利権も疑われる」とまで言われるほどです。そのトヨタが悲鳴を上げるということは、他社も含めた日本の自動車産業全体が、どれほどの打撃を受けるか、想像に難くはありません。

 「カーボンニュートラル」に向けて取り組みを実施すれば、自動車や鉄鋼業などの産業が縮小、もしくは破壊されてしまいます。日本経済においては、GDPマイナス30%の大恐慌が訪れることが分かっています。

 「世界に乗り遅れるな」と焦り、分かりやすいスローガンを打ち上げる政府ですが、冷静な目が必要です。

参考

 脱炭素などにいくら励んでも、ほとんど意味はありません。政府は温暖化絡みで2030年までに100兆円超を使う予定ですが、そんなお金があるなら、防災や医療、福祉に回すべきです。

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