再生可能エネルギーの問題点

 現政権は「2030年の温室効果ガス46%削減」を表明し、火力発電比率を4割まで引き下げる方針です。

 火力発電を限りなく少なくし、日本の発電の最大6割を再生可能エネルギーで賄い、そのうち3000万~4500万キロワット(原発30~45基分)を洋上風力で発電するという。

 しかし、廃炉が進む原発は、全部再稼働したとしても2割程度。残りの4割以上を太陽光を中心とした再生可能エネルギーで賄わざるを得ない。これは、日本中の山の斜面を太陽光パネルだらけにしても、なお達成できないでしょう。

 それでもエネルギー政策を策定するというのなら、わずか9年間で太陽光発電を中心とする再エネが「爆増」するという、荒唐無稽な計画を立てるしかありません。

 「脱炭素」は日本経済にも大打撃を与えます。これまでも、日本の「再エネ」普及は国民の莫大な代償によって成り立ってきました。民主党政権が導入した「再エネ固定価格買い取り制度(FIT)」により、太陽光発電のコストを国民全体が負担する仕組みです。一般家庭用(使用量260kWh/月)の場合、2021年は年間で1万476円となっています。この国民負担の総額は、2030年に4.5兆円に達し、「46%削減」でさらに大幅に膨れ上がると見られます。

 総発電量に占める再生可能エネルギーの割合について、政府からは、2030年に30%、2050年に50~60%とする案も出ています。これらをそのまま実現した場合、どれほどの規模の発電所をつくる必要があるのでしょうか。高浜原子力発電所軽水炉4基分で339万kW、面積233ヘクタールです。定期点検や日照時間などを加味して、原子力の稼働率は70%、ソーラ発電の発電利用率は15%として計算すると、原子力20基分をソーラパネルで置き換えるには、92km2という広大な土地が必要となります。

 それほど巨大な面積のものを1ヵ所につくりようもありませんから、日本列島の上に並べるとします。かつ、ソーラ発電を主力電源化し、24時間電気を供給するためのバッテリーを付随させ、充放電ロスと直流交流の変換ロス分を20%と考えます。すると、幅120m、長さ920kmのソーラパネルベルトを山間部に建設しなければなりません。総発電量に占める再生可能エネルギーの割合が15%になったらどうなるでしょうか。日本の総発電力は年間約1兆kWhです。その15%を24時間365日、ソーラ発電で供給するとなると、0.15兆kWhとなります。発電敷地面積は1.2×200km2で北海道から鹿児島まで、山地にソーラパネルベルト幅120m、長さ2000kmを建設しなければなりません。

 再生可能エネルギーの割合が30%ならば、幅120mのソーラパネルベルト2000kmを日本列島に2本、60%ならば4本必要になります。これはまさに日本の国土破壊です。

 しかも、通常のリチウムイオンバッテリーの寿命は、充放電500回ほどです。昼間充電し、夜間放電を毎日繰り返すサイクルになるので、1.3年毎にバッテリーを交換し、寿命10年とされるソーラパネルを10年毎に交換します。部品のみならず、交換工事コストも上乗せになり、とても割高です。産業廃棄物の量も膨大になります。

 ガラス板である太陽光パネルは、台風にも地震にも弱い。太陽光発電施設が大災害で一度に壊れた場合、その一帯の発電力は、壊れたパネルを全て取り替えるまで戻らないことになる。停電が長引くなどすれば、日々の生活は破壊され、病院は機能停止する。

 政府や東京都は、新築の戸建て住宅に太陽光発電設備の設置を義務化することを検討する方針を明らかにしている。だが、太陽光パネルだらけの都市に地震が起こればどうなるか。「家々の屋根からパネルが落下する」「壊れたパネルに雨が降り、火災が発生する」「停電が長引き、復旧しない」といった形で、都市は滅茶苦茶になる恐れがある。個人が自由意志で家庭用太陽光パネルを設置するのはともかく、行政が設置を義務付けるのは大きな問題です。

 こうした被害に加えて、土石流による交通寸断で復興物資が入らないといった状況が重なれば、軍事攻撃を受けたかのような惨状になる。つまり、文明そのものが一気に破壊されるのです。

 太陽光や風力などの再生可能エネルギーは、天候によって発電量が左右され、不測の事態に対応することは極めて難しい。

 再エネ中心の電力構成では、電力供給量が10%ほど減り、日本の産業に壊滅的な打撃を与えます。

洋上風力は机上の空論

 「洋上風力発電」は、ヨーロッパで発電単価10円/kWhを切り、日本の火力発電の単価を凌ぐものも登場している。これだけを切り取れば、低コストで再エネ化を達成できると錯覚してしまう。

 ただ、日本とヨーロッパでは まったく事情が違う。ヨーロッパでは、安定的に偏西風が一定方向から吹き、発電効率が段違いに良い。風力発電の発電量の指標である設備利用率は、日本の陸上風力が20%台であるのに対し、欧州の一部地域では平均50%前後で、2倍以上の差がある。残念ながら、日本列島周辺では そんな都合の良い風は吹かない。また、ヨーロッパでは、洋上風力に適した遠浅の海が多いなど、海岸付近から急に深くなる日本とは全く条件が違う。日本には計画にあるような大量の洋上風力を設置できる海岸線は存在しない。

 太陽光発電や洋上風力発電などに対する融資は増やしていくことが想定されるが、これらは発電量に比して投資コストが高い上に、発電量そのものも不安定となる。

 脱化石燃料発電が進めば、電気料金が上がり、停電リスクが高まることになり、そのしわ寄せは産業全体に及ぶ。

 さらに、各産業においても、自動車産業(ガソリン車)や製鉄業、化学工業といった日本の中心的業界ほど、CO2の排出量が多い現状がある。もし、そうした産業が CO2排出削減のために湯水の如き投資をしなければ、そして、各銀行から干されていくような流れになれば、製品開発・高品質化や製造効率化への投資もその分遅れることになるでしょう。

参考

 グレタさん流で太陽光発電などを進めると、生活と産業が破壊され、文明の崩壊に至る。太陽光の主力電源化は日本の自殺行為です。

 そもそも、壮大な虚構を前提とした国策としてのCO2削減、再エネ推進は、百害あって一利なしです。冷静な国民の声で政府に方向転換を迫る必要があります。

 「脱炭素は世界の避けられない潮流」との言説に騙され、中国を利し、国家の経済やエネルギー安全保障、国土の安全を危険にさらすことは断じてあってはならないのです。

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