統合失調症はどのような経過をたどるか

 統合失調症の経過は人によってさまざまです。どのような経過をたどるのか、時間を追ってみます。

初期

 初めは「引きこもり」や「不登校」のような形で徐々に始まり、やがて「独り言」や「奇異なこだわり」を示すようになって、周囲が病気に気付くケースがあります。しかし、いきなり「妄想」「幻覚」「興奮」といった陽性症状が発現する場合もあります。

治療開始

 急性期の陽性症状は比較的症状が目立っていますが、逆にくすぶってハッキリしないケースもあります。いずれも、周囲が異常に気付き、投薬などの治療が始まります。それまで陽性症状のラインが急速に上昇していたのが、薬を飲み始めたころからラインが下がり始めます。抗精神病薬が陽性症状に効果を現し始めるためです。

揺り戻し

 薬の治療効果で陽性症状は消えます。しかし、これで統合失調症が治ったわけではありません。薬によって病気のラインは正常値を越して下降し、下方にある陰性症状に入るようになります。これは、一種の「揺り戻し」状態といえます。いわゆる消耗期から回復期へと移行しますが、統合失調症はここからが長いのです。患者も家族も長い期間にわたって陰性症状とつきあうことになります。

 統合失調症というと妄想や幻覚などの陽性症状のイメージが強いのですが、症状の長期的な観点からみれば陰性症状の病気ともいえます。

長い回復期

 陰性症状の回復は、長い時間をかけて正常への道のりをたどり、少しずつ上っていくことになります。この過程は、年単位という長期間で、人によっては20年、30年をかけても不十分というケースもあります。また、この間には、再発(陽性症状の再燃)ということもあります。この長い道筋は、患者にとっても家族にとっても、もどかしく思えるかも知れません。また、陰性症状の時の患者は意欲が低下し、集中力が乏しく、人付き合いがうまくいかないことから、はた目からみると「怠け癖」がついている、「甘えている」などの評価を受けてしまうことがあります。こうしたことが患者の「生きづらさ」を増幅させてしまいます。  

 陽性症状の時期は、医療機関による投薬や入院を中心とした対応が行われます。陰性症状の場合は、抗精神病薬の効果があまり期待できないため、地域のケアがより重要となります。ケアには、デイケア、作業所などでのリハビリテーション、訪問看護、家族や周囲の人の支えなどがあります。時間をかけて家族や周囲が支えアドバイスをしながら患者に自信と常識を身につけてもらうことが、回復への着実な一歩となります。

 

高齢になると改善しやすい

 統合失調症の症状を年齢との関係でみると、20~30代の患者が最も激しい症状を示し、40代になると症状が少し和らぎ、50~60代になるとかなり症状は軽快します。たとえば、25歳のとき妄想や幻覚などの陽性症状で無能力状態だった人が、50歳になる頃には回復ぶりを示すことがあります。それは、病気そのものが燃え尽きてしまった様相といえます。

主な症状 に続く