統合失調症 予後

改善、回復が可能な病気

 長年、統合失調症は「精神分裂病」と呼ばれ、発病したら一生入院生活を送らなくてはならず、いずれ人格が荒廃してしまう不治の病と言われてきました。このような社会の偏見が根強くあり、病気に対する誤ったイメージが刷り込まれてきたことも事実です。このことが、医療の現場においては、発病した本人や家族に病名も告げられず、病気への理解が進まない中で、治療も思うに任せない状況が続いていました。しかし、転機となったのは2002年でした。病名がこれまでの「精神分裂病」から、「統合失調症」に改められたことによって、これまでの暗い否定的なイメージが変わり、統合失調症も普通の病気の一つであることが徐々に理解されてきたのです。  一方、よい薬の開発がどんどん進み、病状に応じて薬の選択も可能となり、症状の改善が可能となりました。さらに、薬物療法と非薬物療法の組み合わせによる治療法も普及したことによって、病状の回復と社会参加も可能となったのです。そして、回復後も薬物療法とリハビリテーションを続けていくことで、ストレスが軽減でき、再発の予防もできるようになりました。こうして、統合失調症という病気は、もはや不治の病ではなく、医療でもって十分にコントロールできる病気の一つなのです。糖尿病や高血圧症などと同様に、きちんと治療をしていけば、普通に社会生活を続けていくことができる疾患の一つです。他の疾患と同様に、病気の前兆に早く気づいて、気軽に医療機関を受診していけば、早期発見・早期治療が可能となり、改善、回復、社会復帰への道が大きく開かれています。

 

予後について

 統合失調症は、患者一人ひとりによって、症状の程度や薬に対する反応などが異なるため、必ずしもすべての患者に標準的な治療があてはまるわけではありません。したがって、病気の回復状況もそれぞれ異なっています。

 チオンピ博士が1976年に行った30年にわたる長期予後調査によると、「回復」と「軽度」の障害の状態と判断された人は、合わせて49%にのぼっています。別の調査によると、初回入院のあと5年間安定した生活を続けられた人の場合、68%がこの予後良好群に入るとの結果もあります。さらに、適切な薬物療法とリハビリテーションが行われた場合は、回復の度合いはさらに良好です。ハーディング博士が1987年に実施した30年間の長期予後調査によれば、適切な薬物療法とリハビリテーションの組み合わせで、40%の人が過去1年間に就労経験をもち、68%の人においてほとんどの症状が消失し、73%の人が充実した生活を送っていると報告しています。  

 このほかの研究では、まず短期的な予後において、抗精神病薬の服薬が適切になされているかどうかが予後に大きな影響を及ぼすとしています。統合失調症を初めて発症して寛解したあとに予防的に抗精神病薬を服薬しないと、1年以内に70~80%の高率で再発するといわれています。長期的な予後に関しては、3分の1の患者に顕著な改善がみられ、もう3分の1の患者はある程度改善するが再発もすることがあり、残りの3分の1の患者は重篤な障害を残すと言われています。

 なお、早期の治療が行われることが多くなってきた今日において、症状が現れてから薬物治療を開始するまでの期間(精神病未治療期間)が短いと、予後が良いことが指摘されています。このことから、長期経過の面でも早期発見・早期治療がより大切です。

 病型別に予後をみてみると、緊張型や妄想型では、幻覚・妄想などの陽性症状の方が抗精神病薬に反応しやすく、予後も一般的に良くなっています。これに比べて、破瓜型や単純型などの陰性症状では、治療の効果が得られにくいため、予後も悪い。男女別でみると、男性の方において予後不良が多く見受けられます。

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