関節リウマチの治療

 抗リウマチ剤や副腎皮質ホルモン剤、炎症抑制剤、免疫抑制剤、生物学的製剤など、病気の進行を抑える薬を使います。

 リウマチの治療は、治療方法の進歩により、旧来の痛みを抑えるだけの治療から進行を食い止める治療へと変わってきています。寛解に持ち込むために、よりよい日常生活の質を保つために、患者と医師が協力して治療に臨むことが大切です。そのための治療、は主に4つの柱から構成されます。  

1.患者自身が行う「基礎療法」  

 患者本人の病気に向き合う姿勢は治療に大きく影響します。長くつきあう病気なので本人の姿勢、生活態度が治療の根本になるのです。 患者自身が日常的に注意を払い努力すべき暮らしの中の療法が「基礎療法」です。

1) 患者自身が自分の病気を学習し冷静な心構えを持つこと  

 正しい知識を持つと不必要な不安は解消されるものです。病気についての正しい知識を持ち治療内容や自分の病状を理解しておくことで、様々な事態や情報について賢い判断ができるようになります。また、家族や友人、職場の人など周囲の人に病気のことを理解してもらい協力してもらうことも大切です。

2) 適切な保温と冷却を行うこと  

 全身あるいは局所の関節が冷えるようなことは避けましょう。冬だけでなく夏も冷房などでの冷やしすぎに注意が必要です。水仕事もお湯を使うなど冷えで痛みを増幅しないよう工夫しましょう。 

3) 適度な運動と安静に心がけること  

 動かさずにいると関節が固まり機能障害を起しますので運動(リハビリ)は大切です。しかし無理や過度の運動にならないよう注意することと、炎症がひどいときなど必要なときには安静を守りましょう。安静と運動のバランスをとっていくことは個人差もありなかなか難しいことですが医師などと相談して行ってください。

 不安やストレスから自ら病気や悪化を招くことがないように、正しく知り、守るべきことを守り、規則正しい生活を明るい前向きな気持ちで送ることが肝要です。バランスのよい食生活も基本です。肥満は関節に負担をかけるので過食にならないよう注意しましょう。

2.薬物療法(内科的療法)

(1)薬の種類

 関節リウマチの治療の中心は薬物療法です。

 治療に使用される薬の主な種類は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、DMARD、コルチコステロイド薬、免疫抑制薬などです。新しい薬剤には、レフルノミド、アナキンラ(インターロイキン-1受容体拮抗薬)、腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬、免疫応答を修正するその他の薬剤(免疫抑制剤)などがあります。一般に強力な薬ほど深刻な副作用が生じる可能性が高いので、治療中は注意深く観察する必要があります。

 関節リウマチの治療計画には、関節の炎症を抑える薬のほかに、運動療法、理学療法、作業療法などといった非薬物療法や、ときには外科手術も行います。炎症を起こした関節は、特定の位置で固まらないようにするため、穏やかなストレッチを行うべきです。炎症が治まったら定期的な運動が役立ちますが、過度の疲労を感じるまで行うべきではありません。多くの患者が水中では無理なく運動できます。

 固まった関節の治療は、集中的に動かし、ときには医療用のスプリントを使用して徐々に関節を伸ばしていきます。薬が役に立たない場合は、手術療法が必要となることがあります。関節の病状が進行した場合、その可動域と機能を回復させる最も効果的な方法は、膝や股関節を人工関節に取り換える手術です。特に足の関節では、歩行の痛みを軽減するために、関節を切除したり、固定することがあります。手の親指の関節を固定すれば、ものをつかめるようになり、首上方の不安定になった頸椎を固定すれば、脊髄を圧迫することによる麻痺を防ぐことができます。

 治療法は、薬や手術に加えて、単純な保存的療法があります。単純な保存的療法とは、患者の症状をやわらげ、休息や栄養を十分にとることです。疾患修飾抗リウマチ薬(DMARD)は、症状を軽減するばかりでなく病気の進行を実際に遅らせるので、関節リウマチと診断されたら多くの場合、直ちに投与が開始されます。

 関節の炎症が激しい場合、動かし続けると炎症が悪化することがあるので、休ませるべきです。多くの場合、定期的な休息期間をおけば関節の痛みは軽減し、最も活動性が高く痛みを伴う病期の激しい炎症でも、少しの間ベッドで安静にしていることで痛みが軽減することがあります。1つまたは複数の関節を固定し安静を保つためにスプリントを使用することもできますが、関節周囲の筋力の低下や関節が固まらないよう、ある程度継続的に関節を動かさなければなりません。

 規則正しく、栄養バランスのとれた食事を適度な量、摂取します。魚類や植物油に富み、赤身の肉が少ない食事は、炎症に対して有益な効果が少しあるとされています。まれに、ある食物を食べた後に急激に関節が痛むことがあり、その場合はその食物を避けるべきです。多くの食事療法が提案されていますが、有効性は証明されていません。一次的に流行しているような食事療法は避けるべきです。

 関節リウマチの治療に使用される薬の主な種類は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、DMARD、コルチコステロイド薬、免疫抑制薬などです。

 新しい薬剤には、レフルノミド、アナキンラ(インターロイキン-1受容体拮抗薬)、腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬、免疫応答を修正するその他の薬剤(免疫抑制剤)などがあります。一般に強力な薬ほど深刻な副作用が生じる可能性が高いので、治療中は注意深く観察する必要があります。

非ステロイド性抗炎症薬:

 NSAIDは通常、関節リウマチの症状を治療するために使用されます。NSAIDは関節リウマチによる損傷が進行するのを防げないので、主たる治療と考えるべきではありません。NSAIDは関節の腫れを抑え、痛みを軽減します。関節リウマチは変形性関節症と異なり、炎症を起こしているのがわかります。したがって、炎症を抑える薬剤(NSAIDを含む)は、痛みを軽減しても炎症を抑えないアセトアミノフェンのような薬剤に比べ、重要な利点があります。しかし、すべての非ステロイド性抗炎症薬(アスピリンを含む)は副作用があり、胃の不調を起こすことがあり、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの活動性の消化性潰瘍のある人は服用できません。プロトンポンプ阻害薬と呼ばれている薬剤(エソメプラゾール、ランソプラゾール、オメプラゾール、パントプラゾール、ラベプラゾールなど)は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍のリスクを減らすことができます。NSAIDのその他の副作用として、頭痛、錯乱、高血圧の悪化、腎機能の悪化、腫脹などがあります。アスピリンを服用した後に じんま疹や喘息を発現する人は、その他のNSAIDを服用した後も同じ症状を発現する可能性があります。NSAIDは、心臓発作と脳卒中のリスクを増す可能性があります。高用量を長期間使用する場合、リスクはより高くなるようです。NSAIDのうちでも特定の薬剤は、その他の薬剤よりもリスクは高くなります。

 アスピリンは有効量でもしばしば毒性が認められるため、関節リウマチの治療には現在使用されていません。

 シクロオキシゲナーゼ(COX-2)阻害薬(コキシブ、たとえばセレコキシブ)は、その他のNSAIDと作用は似ているものの、胃を損傷する可能性の低いNSAIDです。しかし、胃の損傷は、アスピリンを服用する場合とその他のNSAIDを服用する場合と、ほぼ同程度に起こるようです。コキシブの使用や、おそらくすべてのNSAIDの長期使用、心臓発作や脳卒中の危険因子をもつ患者への使用には、注意が必要です。

疾患修飾抗リウマチ薬(DMARD):

 スルファサラジンは関節リウマチの進行を遅らせ、ときには病気の経過を改善することができますが、ほとんどの場合、効果を得られるまで数週間あるいは数カ月を要します。関節リウマチと診断されると、通常、すぐにDMARDが追加されます。痛みがNSAIDで軽減されるとしても(たとえ症状がないか軽度であるとしても)、病気は進行するので、医師はDMARDを処方します。

 関節リウマチ患者の約66%は全体的に改善されますが、完全寛解はまれです。一般的に関節炎の進行は遅くなりますが、痛みは残ることがあります。患者はDMARDのリスクを完全に知らされるべきであり、毒性の発現について慎重に観察されなければなりません。

 DMARDの併用は、単独使用より効果的なことがあります。たとえば、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、メトトレキサートの併用は、メトトレキサートの単独使用またはその他の二剤の併用よりも効果的です。さらに、特定の免疫抑制薬とDMARDの併用は、DMARDの単独使用または特定のDMARDの併用よりしばしば効果的です。たとえば、メトトレキサートはTNF阻害薬と併用することができます。

 メトトレキサートは、1週間に1回経口投与します。低用量で抗炎症作用を示し、関節リウマチを治療するために使用されます。非常によく効く薬で、DMARDとしては比較的効果が速く現れ、数週以内に効き始めます。肝機能障害や糖尿病のある人が、メトトレキサートを服用する場合、副作用が早く検出されるように、頻繁に医師の診察を受け、血液検査を受ける必要があります。肝臓は瘢痕化することがありますが、これは、多くの場合、重大な損傷が進行する前に検出でき、回復させることができます。肝障害のリスクを最小化するためには、飲酒を最小限に控えなければなりません。骨髄抑制(赤血球、白血球、血小板の生成抑制)が起こることがあります。メトトレキサートを服用するすべての人は、2ヵ月に1回、血球算定の検査を受けるべきです。肺の炎症が起きることはまれですが、起きれば致死的な可能性もあります。口内炎や吐き気が現れることもあります。メトトレキサートを中止した後に、重度の関節炎が再発することがあります。葉酸の錠剤を使用すると、口腔内潰瘍などの一部の副作用の発症を抑えることができます。

 ヒドロキシクロロキンは、毎日、服用します。副作用として、発疹、筋肉痛、眼の障害などがありますが、通常は軽度です。ただし、一部の眼の障害は一生続く場合もあるため、ヒドロキシクロロキンを服用している人は治療開始前と治療中は6~12ヵ月ごとに必ず眼科医による眼の検査を受けなければなりません。治療開始から9ヵ月経過しても効果が得られなければ、投与を中止します。効果があれば、ヒドロキシクロロキンの投与を必要なだけ続けることができます。

 スルファサラジン錠剤は症状を緩和し、関節損傷の進行を遅らせることができます。スルファサラジンは、それほど重症ではない関節リウマチの患者に使用するか、別の薬剤に加えて有効性を増すことができます。投与量は徐々に増量していくと通常3ヵ月以内に改善がみられます。その他のDMARDと同様に、胃の不調、肝臓障害、血球障害、発疹などの副作用があります。

 金化合物はもはや使用されません。

コルチコステロイド薬:

 プレドニゾロンなどのコルチコステロイド薬は、体のあらゆる部分の炎症を抑える、最も劇的な効果のある薬です。短期間使用するには効果的な薬ですが、長期間使用すると効果が減弱します。ところが、関節リウマチは通常数年以上に渡る病気です。

 コルチコステロイド薬が関節リウマチの進行を遅らせるかどうかについては、意見が分かれています。さらにこの薬の長期使用では必ずといってよいほど副作用が発生し、ほぼすべての器官がその影響を受けます。したがって、医師は通常コルチコステロイド薬を、重度の症状を治療する際の治療開始時期に(DMARDが効果を現すまで)、もしくは多くの関節が冒されるほど激しく再燃したときに、短期間使用するようにしています。この薬は関節以外、たとえば肺を覆う膜(胸膜)や心臓を包む嚢(心膜)などの炎症の治療にも有用です。副作用のリスクがあるため、ほとんどの場合、最小限の投与量で使用されます。コルチコステロイド薬が関節に注入される場合は、口(経口)または静脈(静注)から投与されるときと同じ副作用は起こりません。炎症のある関節内に直接コルチコステロイド薬を注入すると、速やかに短期的な症状緩和が得られます。

 消化性潰瘍性疾患、高血圧、感染症、糖尿病、緑内障などのある人は、医師による副作用の観察を十分に受ける場合にのみ、経口または静注のコルチコステロイド薬を使用するべきです。

コルチコステロイド薬の使用法と副作用

 コルチコステロイド薬は、体内の炎症を抑える最も強力な薬です。この薬は、関節リウマチやその他の結合組織疾患、多発性硬化症、さまざまな非常事態(たとえば、癌による脳腫脹、喘息発作、重度のアレルギー反応)で起こる炎症のどのような状態にも有用です。炎症が重篤である場合に、コルチコステロイド薬のおかげで命が助かることもよくあります。

 コルチコステロイド薬の投与方法には、静脈内投与(特に緊急時)、経口投与、炎症を起こしている器官への直接使用(肺に対する吸入剤、点眼薬、皮膚用のクリーム剤のように)などがあります。たとえば、喘息の治療には吸入剤を使用することができます。花粉症(アレルギー性鼻炎)の治療には点鼻薬を使用します。眼の炎症(ぶどう膜炎)には点眼薬を使用します。また、湿疹や乾癬など、特定の皮膚疾患の治療には、患部に直接つける塗り薬を使用します。

 コルチコステロイド薬は、副腎皮質でつくられるステロイドホルモンであるコルチゾール(またはコルチゾン)と同じ作用をするように合成された薬剤(それゆえに「コルチコステロイド」と呼ばれる)です。しかし、多くの合成コルチコステロイドはコルチゾールよりも強力に作用し、その大半は作用がより長く持続します。コルチコステロイドは、体内でつくられ運動選手がときに濫用するタンパク同化ステロイド(たとえばテストステロン)と化学的に関連がありますが、作用は異なります。

 コルチコステロイド薬には、プレドニゾロン、デキサメタゾン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、ベクロメタゾン、フルニソリド、フルチカゾンなどがあります。これらの薬剤はどれも、(その程度は用量にもよりますが)非常に強い作用を示します。ヒドロコルチゾンは作用の穏やかなコルチコステロイド薬で、皮膚用クリーム剤として市販されています。

 コルチコステロイド薬によって炎症反応が抑えられると、人間の体に備わった感染防御力も同時に低下してしまうため、感染症がある場合の使用には細心の注意が必要です。それらを使用すると高血圧、心不全、糖尿病、消化性潰瘍、骨粗しょう症などを悪化させることもあります。したがって、そのような病気の人にコルチコステロイド薬を用いるときは、便益がリスクをはるかに上回る可能性が高い場合に限られます。

 内服薬や注射薬のコルチコステロイド薬を2週間以上投与されている場合は、急に中止すべきではありません。これは、コルチコステロイド薬により副腎皮質でのコルチゾール産生が抑制されていて、その産生が回復するまでには時間がかかるためです。このためコルチコステロイド薬を中止する場合は使用量を徐々に減らしていきます。コルチコステロイド薬を使用している人は、用量・用法について必ず医師の指示に従うことが重要です。

 コルチコステロイド薬を長期にわたり、特に高用量で、内服や静脈注射により使用していると、全身のほぼあらゆる器官にさまざまな副作用を必ず引き起こします。一般的な副作用としては、皮膚が薄くなり伸展裂創やあざができる、高血圧、血糖値の上昇、白内障、顔面(ムーンフェイス)と腹部の腫れ、腕や脚が細くなる、傷が治りにくい、小児期の発育障害、骨からのカルシウムの減少(骨粗しょう症につながる)、空腹感、体重増加、気分の変動などがあります。吸入薬や皮膚に直接つける外用薬は、主に体の限られた部位に作用するため、ステロイド薬の静脈注射や経口投与に比べて、副作用はかなり減ります。

免疫抑制薬:

 コルチコステロイド薬にも免疫系を抑制する働きがありますが、その作用がさらに強い薬があり、それらは免疫抑制薬と呼ばれます。免疫抑制薬はそれぞれ、関節リウマチの進行を遅らせ、関節に隣接する骨への損傷を軽減することができます。しかし、その一方で、免疫系を抑制するため、感染症と特定の癌が発生するリスクが高まります。免疫抑制薬には、メトトレキサート(しばしば最初に使用されるDMARD)、レフルノミド、アザチオプリン、シクロホスファミド、シクロスポリン、腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬、リツキシマブ、アバタセプトなどがあります。

 免疫抑制薬は重度の関節リウマチの治療に効果があります。免疫抑制薬は炎症を抑える働きがあるため、これを使用すると、コルチコステロイド薬の量を減らす、またはまったく使用しないことも可能となります。しかし、免疫抑制薬はそれ自体が毒性を示すことがあり、肝障害、感染症のかかりやすさの増大、骨髄の血球産生の抑制などの重篤な副作用がみられ、シクロホスファミドでは、膀胱からの出血を引き起こします。さらに、アザチオプリンとシクロホスファミドは、癌のリスクを増す可能性があります。妊娠を考えている女性は免疫抑制薬を使用する前に医師と相談すべきです。

 レフルノミドは、メトトレキサートと同様の便益がありますが、血球産生の抑制や肺の瘢痕化を引き起こす可能性は低いようです。この薬はメトトレキサートと同時に投与できます。レフルノミドは毎日経口投与します。主な副作用は、発疹、肝機能障害、脱毛、下痢などです。

 エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブはTNF阻害薬であり、メトトレキサート単独では十分に反応しない人に劇的な効果をもたらすことがあります。エタネルセプトは週1~2回皮下注射し、インフリキシマブは初回投与後8週間毎に静脈投与します。アダリムマブは、1、2週に1回皮下注射します。TNFは体の免疫系の一部で、TNFを阻害すると、体がもつ感染症と戦う能力を阻害します。これらの薬は、感染症が活動的である人には使用を避けなければなりません。エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブは、メトトレキサートと併用できます。

 アナキンラは組み換えインターロイキン-1(IL-1)受容体拮抗薬であり、炎症に関連する主な化学経路の1つを遮断します。アナキンラは1日1回注射します。注射部位の痛みとかゆみは、最もよくみられる副作用です。IL-1は免疫系の一部なので、IL-1を阻害すると感染症と戦う能力を阻害することがあります。アナキンラは白血球の生成を抑制することもあります。TNF阻害薬と併用するべきではありません。

 リツキシマブは、炎症を引き起こし感染と戦う白血球の1つであるB細胞リンパ球の数を減少させます。その他の多くの薬剤ほどリツキシマブの安全性についての証拠が多くないので、リツキシマブは通常、メトトレキサートとTNF阻害薬を投与しても十分に改善しない人のために残しておきます。2週間の間隔で2回静脈注射します。副作用には、その他の免疫抑制薬と同様に、感染症のリスクの増加があります。さらに、リツキシマブは投与中に、発疹、吐き気、背中の痛み、かゆみ、高血圧または低血圧などを起こすことがあります。

 アバタセプトは、炎症を調整する細胞間の情報伝達を阻害します。この薬は数分間かけて静脈に注入します。アバタセプトはいくつかの副作用がみられるため、その他の薬剤を使用しても改善されなかった人に限って使用されます。

(2) 「逆ピラミッド方式」へ  

 従来の薬物療法は「ピラミッド方式」という考え方に基づき行われてきました。  効き目は弱くても副作用の少ない薬から投薬を開始し、炎症が抑えられなくなったら強い薬に徐々に切り替えていくという方法で、現在でも多くの病院で行われています。しかし、最近では「逆ピラミッド方式」あるいは「ステップダウン・ブリッジ方法」と呼ばれる早期からの積極的な投薬治療の考え方が出てきました。スタート時から非ステロイド系抗炎症剤に抗リウマチ剤を併用したり、重症の場合はステロイド剤も使うなど、最初から強い薬を複数使い効果が現れたら薬の数や量を減らすというものです。  関節リウマチでは初期に進行するものも多く、また診断時に既に進行している場合もあり、初期の段階で積極的な治療を行わないと障害を最小限に食い止められないことからこのような見直しが行われつつあります。

(3) 新しい治療方法  

 関節の滑膜増殖を引き起こす物質を抑えたり、骨の破壊を抑えるバイオ製剤や、異常な遺伝子をコントロールする遺伝子治療など、新しい治療法の研究が進められています。

 

3.リハビリテーション  

 リハビリテーションとは、広くは医師、看護婦、理学療法士、作業療法士、ケースワーカー、国の福祉制度など、患者が自立して生活し社会参加することを支えるすべてのことを指します。

 ADL(アクティビティーズ・オブ・デイリィ・リビング)  入浴・食事・排泄・移動・衣服の着脱などの日常生活動作能力 ASL(アクティビティーズ・オブ・ソーシャル・ライフ)  仕事や家事、交通機関の利用、自動車の運転などの社会生活行為 QOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)

 関節リウマチの場合は関節の変形や拘縮、筋力低下、筋肉萎縮などの症状が出て、放置すると機能障害が進んで手足が動かなくなってしまうので、関節や筋肉の機能低下を防ぎ生活動作を高めるために、運動療法などの狭い意味でのリハビリテーションが必要となります。

<リハビリテーション>

(1) 運動療法  

 関節を動かせる範囲をできるだけ保ち、筋力の低下を防ぐために運動療法は必要です。 等尺運動、リウマチ体操などありますが、理学療法士などの専門家と相談して自分の状態にあった運動を正しい方法で行いましょう。毎日少しずつでも根気よく行うことが大切です。

・一日数回は腕や足の関節を出来る範囲で動かす 痛みがあったり寝たきりの状態だとしても出来る範囲で動かす。痛くない範囲でやっていると関節可動域(動かせる範囲)が狭まってしまうので少し痛みを感じるところまで自分で動かせない場合は他動運動(人に動かしてもらう)もあるが、なるべく自動運動(自分で動かす)を行う。

・痛みが強いときもできる「等尺運動」で筋力強化 筋肉だけを緊張させたり緩めたりする等尺運動は関節を動かさずにできるので痛みが強いときでもできる。

 関節や全身を動かす「リウマチ体操」 様々な関節を動かす体操がある。毎日少しずつでも行うとよい

・「適度な負荷を与える」運動も必要 骨は適度な負荷を与える運動をしないともろくなるので、軽量ダンベルやヒモなどを使った軽い負荷のかかる運動もよい。

・お風呂の中やプールで 体が温まるお風呂での体操や、関節に負担をかけず運動できる温水プールで運動する方法などもある。

・姿勢や歩行、日常動作(ADL) 自立した生活を送るために必要な入浴・食事・排泄・移動・衣服の着脱・家事などの日常動作をチェックして自分の状態を把握する。関節を保護したり動作しやすい工夫をして日常動作を行う。

・首の運動は安易に行わない 症状が頸椎に及び亜脱臼を起している場合は非常に危険なので注意。

(2) 物理療法  

 水や温熱、光線、超音波などの物理的な刺激により血液循環をよくして痛みを和らげるのが物理療法です。

温熱療法・・・パラフィン浴、ホットパック、部分浴など 冷却療法・・・アイスパックなど

 温熱療法がよく行われるが、炎症の真っ最中で患部が熱を持ち腫れているときは冷やすことが効果的であり炎症がおさまったら温めて血流をよくすることがよいと言われている。炎症を抑える薬を服用したりするので、温熱療法が有効な場合が多いといえる 電気療法・・・赤外線、超音波、レーザーなど 水治療法・・・入浴、水泳、バイブレーションバスなど  全身浴は症状によっては逆効果になるので医師の指示に従う

(3) 作業療法  

 主に手や手指の機能回復を目的としたリハビリテーションです。作業療法士の指導を受けながら様々な作業を行います。編み物、織物、手芸、藤細工、木工、粘土細工、絵画、書道、展示、ワープロなど、趣味や生きがいとなったり、仲間との出会いや外へでかけるキッカケになったりと、精神的なリハビリ効果も大きく、楽しみながら積極的に毎日を過ごすことの助けとなってくれます。

(4) 装具療法  

 装具は関節の負担を軽減し変形の予防や矯正を行うものです。また、炎症部分の安静を保つことでの鎮静効果もあり着けることが治療となるので医師の勧めなどがあれば積極的に利用しましょう。  着脱のしやすさ、通気性、伸縮性なども考慮して作られており、最近では軽量化や小型化が進んでいるので、外見的にも衣服などでのカバーがしやすくなってきています。ただし手指の装具など時々外して関節を動かすことも関節可動域を保つために大切です。 装具はすべて自分に合うように調整してもらいます。

 

4.手術療法  

 関節リウマチの手術は、失われた関節の機能を外科的手法で再建してQOL(生活の質)の改善を図ることを主な目的として行われます。具体的には関節の動きをよくしたりグラグラしていたのを安定させたりします。  しかし手術を受ければ一生症状が出なくなるわけではなく、手術後の経過にも個人差があります。また、術後、反対側の関節にも手術が必要になったり、人工関節のすりへりやゆるみ、感染症に注意が必要だったりと、問題点や注意すべきこともあります。 進行が明らかで薬物治療やリハビリ治療の効果がない場合や、日常生活に著しく不自由を強いられている場合など、手術の効果・問題点と自分の状況とを考えあわせて踏み切ることとなると思います。

滑膜切除術  

 炎症を起している滑膜を取り除いて関節の痛みや破壊を防止する手術。手指、手首、ヒジなどに行われる。ただし、数年で再発することが多く効果は永久ではない。しっかり切り開く手術のほかに、現在では内視鏡を使った方法が一般的になってきた。

人工関節置換術  

 壊れた関節を切り取って人口関節と置き換える手術。股、ヒザ、足首、肩、ヒジ、指などに行われるが歩くことを望む患者が多いことから下肢に多く行われる。術後の機能回復のリハビリは重要。材質や技術の進歩が目覚しいが、細菌感染の危険性、人工関節の耐用年数が明確でないなどの問題点もある。

関節固定術  

 壊れた関節を一つの骨のように固定して安定させ痛みをとる手術。動かなくても支障が少ない関節に行われる。指、手首、足首など。日常動作には不便さが出る

頸椎固定術  

 頸椎で炎症がおき亜脱臼や脱臼により神経が圧迫されると麻痺が生ずる。このずれを戻して頸椎を固定する手術。

その他の手術  

   変形の進んだ足指の関節を切り取って矯正する「関節切除術・形成術」  切れた腱をつないだり移植する「腱形成術」  など

 リウマチ スピリチュアルな観点