パニック障害の治療方法

 治療は、まず内科などと同じように問診から始めます。問診には特に時間をかけて、心身の具体的な症状、苦痛の頻度や程度、本人や家族の病歴、仕事や日常生活などについて詳しくお聞きします。次に、身体的な病気がないか、薬物の中毒による発作ではないか、身体的な検査を行って確かめます。また、必要に応じて、脳や神経系の検査や心理テストや性格診断テストなどを行った末に、今後の治療方針を決めます。治療は大きく分けて「薬物療法」と「精神療法」の2つがあります。

パニック障害 心理療法

 パニック障害の治療は、主に薬物療法が中心ですが、さらに効果を高めるために精神療法を併用しながら治療が行われます。精神療法として広く用いられているのが、認知行動療法と自律訓練法です。

 認知行動療法 認知行動療法とは認知療法と行動療法のことで、認知(考え方、受け止め方、思い込み、認識、学習など)のゆがみや偏りを修正しながら、行動することによって認識を改めていく方法です。

 パニック発作自体は、薬物療法でかなり早い段階で改善することはできますが、予期不安や広場恐怖は完全に消えるまでに少し時間がかかります。それは誤った認知、つまり誤った考え方や認識や学習が、予期不安や広場恐怖を起こしている原因になっているからです。例えば、エレベーターの中で最初のパニック発作が起きたとします。すると、「エレベーターの中」と「パニック発作」という2つの無関係な事柄を一つに関連づけて学習してしまいます。その結果、「エレベーターに乗ると、また発作が起きるのではないか」という予期不安が生じて、次はエレベーターに乗るのを避けようとする広場恐怖へと発展していくのです。

 実際に認知行動療法を行う手順を追ってみます。

 最初は心理教育です。なぜ、パニック発作や予期不安、広場恐怖が起こるのか、そのしくみについて学ぶことから入り、同時に認知行動療法の意義や進め方についても学び、理解が得られるように指導します。 次に、自分自身の毎日の状況を観察し、ノートに記録していきます。どんな場合に発作が起こるのか、自分が避けている事は何か、また、パニック発作の頻度や症状についても、できるだけ正確に客観的に自分を見て記録していきます。また、刺激に対して、過敏に反応しないように、呼吸法や自律訓練法などの訓練を受け、自分を冷静にコントロールできるようにします。 次に、必要以上に不安や恐怖を感じる身体感覚や認識に対して、その解釈に誤りがないかを治療者と一緒に検討し、認知を再構築していきます。それが出来た段階で、最後に実際に恐れている場所や場面、状況に自分をさらしていくことによって、誤った認知を修正していきます。

 行動療法ですが、自分が恐怖と思っている場所や状況に実際に身を暴露します。もちろん、いきなり恐れている場所に身を暴露すると、非常に大きな苦痛を伴い、逆効果になりかねませんので、医師と相談しながら慎重に進めていきます。手順としては、まず治療計画を立てます。自分が不安に感じている場所や状況を、不安の程度が強い順にすべてを書き出します。その中で、最も不安が少ない場所や状況からトライし、何日か何回か行動して不安がなくなってきたら次のステップへトライします。そして、最後に最も不安を感じている場所や状況に身を置くことによって、これまでの思い込みや誤った認識を自覚し、恐怖を克服していきます。大事なことは、それぞれの場所や状況に自分をさらしたとき、ここに来ても何も起こらなかったということをしっかり確認することです。  

 具体的な一例を挙げます。電車に乗るのが不安だと思っている人が、1人で電車に乗れるようになりたいという目標をたて行動する場合です。目標に向かい、いくつかの段階に分けて挑戦していきます。

○ 第1ステップ・・・駅の改札口まで行ってみる。(その場所に慣れたら次へ)

○ 第2ステップ・・・プラットホームに立ってみる。(その場所に慣れたら次へ)

○ 第3ステップ・・・誰かに付き添ってもらって1駅だけ電車に乗ってみる。(それに慣れたら次へ)

○ 第4ステップ・・・1人で1駅だけ乗ってみる。(それに慣れたら次へ)

○ 第5ステップ・・・各駅停車で2駅以上乗ってみる。(それに慣れたら次へ)

○ 第6ステップ・・・急行電車で1駅乗ってみる。(それに慣れたら次へ)

○ 第7ステップ・・・急行電車で2駅以上乗ってみる。(それに慣れたら次へ)

 こうして、無理をせず段階を踏んで、1つひとつクリアしていきます。「ここに来ても何も起こらなかった」「大丈夫だった」ことを意識し、自覚し、認知することで、これまでの予期不安がなくなり広場恐怖も解消していくのです。  

 認知行動療法は、患者が意義を理解して取り組んでいけば、非常に高い治癒率で改善していき、再発も低く、治療期間も比較的短くてすむ治療法です。もとの生活に戻していくために、勇気をもって治療に踏み出すことが大切なことです。

 

自律訓練法

 自律訓練法は、リラックス法の一つです。6つの背景公式に従って順番に暗示をかけて、自分でリラックス状態を作る方法です。

 パニック障害では、薬物療法や認知行動療法と併用することによって、予期不安や広場恐怖の解消に大きな効果をあげています。  

6つの背景公式

①第1公式(重感公式)「両手両足が重たい」

②第2公式(温感公式)「両手両足が温かい」

③第3公式(心臓調整公式)「心臓が規則正しく打っている」

④第4公式(呼吸調整公式)「楽に呼吸している」

⑤第5公式(腹部温感公式)「おなかが温かい」

⑥第Ⅵ公式(額部冷感公式)「額が気持ちよく涼しい」

 自律訓練法は1回5分程度で、1日2~3回行います。訓練法の実際は、まず衣服やベルトをゆるめ、腕時計やアクセサリーなど、身に付いているものをはずしてリラックスし、仰向けに寝るか、または椅子にゆったり座って行います。目を軽く閉じ、足も軽く開き、腹式呼吸をゆっくりしながら「心がとても落ち着いている」と暗示をかけて、第1公式に入っていきます。 第1公式では、利き腕が右手だとすれば右手から始めます。「右手が重たい」「左手が重たい」「右足が重たい」「左足が重たい」「両手両足が重たい」と順番に暗示をかけていき、マスターできたら今度は第2公式に移って、同様に「右手が温かい」「左手が温かい」・・・ とゆっくり心の中で繰り返しながら暗示をかけていきます。こうして第6公式まで行いますが、自律訓練法では特に第1の重感公式と第2の温感公式が重要ですので、この2つだけマスターしても十分効果が得られます。

 自律訓練法は、最初は専門家の指導を受けてやることをお勧めします。初めは集中するのが難しく、すぐに重さや温かさは感じられないでしょう。自己暗示をかけたとき、意識的に感じようとしないで、リラックスした状態で自然に重たく感じるのを待ってください。繰り返して練習していけば自然とコツがわかり、慣れてくるとどんな場所でも訓練できるようになります。注意点としては、食事した直後や、空腹時は避けましょう。また、訓練が終わったら必ず消去動作を行ってください。消去動作は、気分がリラックスしてボーッとした状態から心身を目覚めさせる動作のことで、これをしないで立ち上がったりすると、ふらついたり転んだりして危険です。

 動作の方法は、目を閉じたまま両手を5~6回握ったり開いたりを繰り返し、次に両ひじを2~3回曲げたり伸ばしたりし、最後に両手を組み、手のひらが上に向くようにして頭上に上げ、大きく背伸びをしてからゆっくり目を開けます。  自律訓練法がもたらす効果としては、精神の安定・抗ストレス効果・集中力のアップ・疲労回復・血行促進・イライラの解消などがあげられます。

 

パニック障害 薬物治療

 治療の中心になるのは薬物療法で、最も確実な効果が期待できる療法です。

 しかし、中には薬に対して抵抗感をもつ人が少なくありません。「脳に悪い影響を与えるのではないか」「一生飲み続けるのではないか」「くせになってやめられないのではないか」「副作用が強いのではないか」といった心配をされる患者がいますが、決して怖いものではありません。薬に対して不安があれば、遠慮せずに医師に相談されることです。  

 パニック障害の薬は、かなり高い確率でパニック発作を抑え、予期不安の症状を改善し、軽症であれば完治してしまうこともあります。個人差はありますが、3~4週間ぐらいの服用で効果が出てきてほとんどの人が普通の生活ができるようになります。症状が改善しても再発予防のため約1年間は薬の内服を続けます。

 薬物療法とはどのようなものかというと、抗うつ薬・抗不安薬と呼ばれる薬を使って脳や神経に働きかけ、パニック症状の改善をはかる治療法です。私たちは危険を感じると、脳幹にある青斑核からノルアドレナリンが分泌され、その刺激を大脳辺縁系に伝え、初めて不安や恐怖を感じ、身を守ろうとします。ところが、危険でもないのに青斑核が誤作動を起こし、非常ボタンを押して警報を鳴らしてしまうため、突然激しい動悸や息切れ、めまいの症状を訴えることになります。抗うつ薬・抗不安薬は、この誤作動が起こらないように防いでくれ、発作が起きても、薬が神経の興奮を抑えて非常事態を鎮めてくれます。神経は発作を繰り返すと興奮しやすくなり、少しの刺激でもすぐに反応します。ですから、薬をしばらく服用し続けることによって、少しの刺激ぐらいでは興奮しないように、再発を防いでくれるのです。

薬物療法の進め方

○ 急性期の1~3ヵ月間は、薬の投与量を症状が顕著に治まる限度まで増量して服用する。

○ 継続期の3~6ヵ月間は、効果が最大になり、副作用が最小になるように薬の投与量を調整し、特に広場恐怖に対して効果を高める。

○ 維持療法期の6~12ヵ月間は、薬の量を減量していって、改善した状態を維持し、正常な生活に戻れるようにする。

○ 薬物中止期の10~18ヵ月間は、時間をかけて減量していき、投薬をしなくとも症状が起こらない状態維持できるようにする。

主な治療薬の効果と特徴

SSRI

 パニック障害の薬で、世界的に第一選択となっているのがSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)で、抗うつ薬の一種です。SSRIは、セロトニンだけに選択的に作用してアセチルコリンには影響しないため、副作用が少なく安全性が高いのが特徴です。パニック発作を強力に抑える効果があり、予期不安や抗うつ効果も高く、また、広場恐怖や強迫性障害、過食症にも有効です。

 現在、フルボキサミン(ルボックス・デプロメール)とパロキセチン(パキシル)、塩酸セルトラリン(ジェイゾロフト)が認可されています。

三環系抗うつ薬

 SSRIが開発されるまでは、パニック障害の治療に最も多く使われていた薬です。三環系抗うつ薬は、パニック発作を抑える効果がきわめて高く、予期不安や広場恐怖、強迫性障害にも有効ですが、副作用が強いのがデメリットです。脳神経の機能を活発にするセロトニンとノルアドレナリンの働きを高める一方で、アセチルコリンの働きを低下させてしまうため、口の渇き、便秘、眠気、倦怠感、めまい、動悸、かすみ目、排尿障害、起立性低血圧、認知障害、性機能障害、頻脈、多汗などの副作用があります。用量を必ず守り、低用量からはじめて徐々に増やしていきます。効果が出るのは、最低でも2~4週間くらいかかります。

 現在、治療として認可されている薬には、イミプラミン(トフラニール)、クロミプラミン(アナフラニール)、アミトリプチリン(トリプタノール)、アモキサピン(アモキサン)などがあります。

ベンゾジアゼピン系薬物

 ベンゾジアゼピン系薬物は、脳の興奮を抑えるGABAの働きを高める作用があり、不安や恐怖を緩和する抗不安薬です。俗にいう精神安定剤です。主にパニック障害の急性期に使われ、パニック発作や予期不安を抑える効果があります。 またこの薬物は、SSRIや三環系抗うつ薬の効果が出るのに2~4週間かかりますが、その間にパニック発作が出たときのみ服用する頓服的な使い方をします。また、認知行動療法を行う際に予期不安を抑える目的で一時的に使うこともあります。ベンゾジアゼピン系薬物は、効果の発現が早くて安全性も高いが、耐性や依存性も生じやすい。

 主な製剤には、アルプラゾラム(コンスタン、ソラナックス)やロラゼパム(ワイパックス)、エチゾラム(デパス)などがあります。

SNRI

 SNRIはSSRIに続いて認可された抗うつ薬で、選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬です。SSRIがセロトニンだけに作用するのに対し、SNRIはセロトニンとノルアドレナリンの両方に作用するため、抗うつ効果が高く、また、副作用も少なく依存性もないので、より大きな効果が期待できます。

 現在、ミルナシプラン(トレドミン)・デュロキセチン(サインバルタ)が認可されています。

β遮断薬

 この薬は、激しい動悸があるパニック発作には効果があります。もともと、高血圧や不整脈の治療に使われている薬で、交感神経の働きを末梢で遮断するために、不安に伴う動悸や頻脈を緩和します。ただし、パニック発作そのものを改善する効果はありません。

 製剤には、プロプラノロール(インデラル)やカルテオロール(ミケラン)などがあります。

 

パニック障害 漢方薬治療

柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)

 神経質でビクビクして不安が強く、よく動悸を起こす場合や、対人恐怖や視線恐怖があり人からどう思われているかが過度に不安になるタイプに用いられる。投与量は7.5㎎/日

柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)

 適応は柴胡加竜骨牡蠣湯と似るが、もう少し体力が弱い人や、気力が低下している人に用いる。冷えが強い人、胃が弱い人、うつ兆候がある人、寝汗をかく人などの恐怖・不安・不眠が対象となる。投与量は7.5mg/日

甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)

 柴胡系と違い、パニックや過換気症候群を起こす患者や、泣いてばかりで、時に衝動的な行動を起こす患者、フラッシュバックに伴う悲哀的感情のある患者さんに用いる。体力が弱くても使用でき、頓服としても利用される。投与量は7.5㎎/日

桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)

 動悸・不安・緊張・不眠などの場合に用いるが、特にフラッシュバックや悪夢の繰り返しなどがある場合に有効。投与量は7.5㎎/日

加味逍遙散(かみしょうようさん)

 月経周期に関連しておこる不安障害、更年期障害に伴う神経症状、月経症状に伴う不安・イライラ・強迫観念・動悸・胸部症状に用いられる。投与量は7.5㎎/日

半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)

 鬱々として不安を伴い、食事がのどを通らない場合に用いられる。投与量は7.5㎎/日

加味帰脾湯(かみきひとう)

 不安だけでなく、体力・気力が低下している場合に用いる。投与量は7.5㎎/日

 

『パニック障害』の認知行動療法

誤った学習の是正

 パニック障害の患者には、特有の認知的特徴が認められます。一般の人には普通に生じている出来事でも、パニック障害の患者にとってみると、それは自分を死に至らしめる「危険で最悪の事態である」と受け止めます。よくある例として、電車に乗っているときにパニック発作が起きると、「電車に乗ると必ずパニック発作が起きる」と学習し、本来は関係ない二つの事柄を関連づけてしまいます。その結果、電車に乗るとまた発作が起きるのではないかという予期不安が生じ、電車に乗るのを避けるという広場恐怖へと発展していきます。また、パニック発作を繰り返す中で、実際には問題はないのに危険だなと、誤って学習することもあります。こうした誤った学習の結果、「また起きるかもしれない」と考えただけで、心臓がドキドキしたり、呼吸がいつもより速くなったりすると、「自分は、このまま死んでしまうかもしれない」と、悪い方にばかり考えてしまいます。さらに、薬を飲んでも効かないと「一生治らないのでは」と極端に考えたり、根拠もないのに物事を断定したり、ささいな出来事を深刻にとらえるようになります。この誤った学習が、ある身体的感覚を破局的に受け止め、さらに、パニック発作が起きるかもしれないという可能性に対する知覚が不安感を生じさせ、その不安そのものが危険であるという信念となって、回避行動を起こすというメカニズムが分かっています。その結果、エクスポージャー(暴露療法)によって不安を消去し、適切な接近行動がとれるようにすると同時に、患者さんの認知の修正をねらうことができる認知行動療法が、パニック障害の治療法として用いられるようになりました。

身体感覚への誤解をとく

 パニック障害の患者は、息切れ、動機、発汗、めまいなどのような、ちょっとした体の変化に対して、悪い方向に拡大解釈する傾向があります。誰でも不安になれば感じる正常な身体感覚でも、患者にしてみればそれが心臓発作や脳卒中のような一大事の病気と考えてパニックになります。「このまま死ぬのではないか」と強い不安に襲われます。したがって、身体症状をたえず気にし、小さな変化に過敏になります。発作が起きるのがこわくなり、外出や運動をひかえるなどの回避行動をとるようになります。また、回避することが身体症状を抑える方法だと考えたりします。身体の変化を何度も繰り返すパニック発作を起こすと、さらに不安が強まって悪循環し、ついには死の恐怖に襲われるのです。そして、強い緊急性や危険性を感じるようになるのです。  

 パニック障害の背景には、身体感覚への誤解があると考えると、その誤解を特定して客観的に分析し、症状に危険性がないとわかれば不安は和らぐはずです。そこで、認知行動療法では、その認知をとらえて治療技法でもって介入することにより、誤解をといて危険がないことを実感できるようになります。治療を通して、息切れやめまいは誰にでもあることだと認識しなおすと、パニック発作に襲われることは減ってきます。

 パニック障害に対する認知行動療法の評価点としては、①治療期間が比較的短期である、②治癒率が高い、③再発率が他の治療法に比べて低い、④患者にとって問題の理解と治療法の理解が得られやすい、などが挙げられています。

具体的なプログラム内容の狙い

 パニック障害に対する認知行動療法のねらいは、患者を取り巻く生活状況と身体感覚が、パニック発作とどのように関連しているのかを学び、発作をコントロールすることができるように援助することです。

 そのための具体的なプログラム内容をまとめると、次のような点になります。

① 患者が抱えている問題を、客観的に理解することができるように、問題点を整理し、自己理解をはかる。

② 症状、とりわけ予期不安と回避行動がどのように獲得され、維持されているかを学ぶ。

③ 適切な振る舞いをどのようにすると身につけることが出来るかを学ぶ。つまり、回避している場面や状況に身を曝す(エクスポージャー)ことによって不安を消去するとともに、そのような場面に安全に対処することを学ぶ。

④ リラクゼーションや拮抗動作法など、不安に対処することができる具体的な対処方法を学ぶ。

⑤ 患者特有の認知の修正をはかる。つまり、多くの普通の人に起きている出来事を「危険で最悪の事態である」という誤った考え方や、不安を生じさせる原因となっている「考え方のスタイル」を明らかにし、修正することができるように援助する。

⑥ しばしばパニック発作の引き金となっている「過呼吸状態」を予防する練習をする。また、「死にそうだ」という危険信号となる考え方を、「ちょっと過呼吸になっているだけで、対処できる」という適切な考え方に置き換えることができるように練習をする。

⑦ 将来起こりうる問題に対しても、適切な対処が自分で出来るように自身の向上をはかり、セルフコントロールをめざす。

 認知行動療法の実際にあたっては、まず心理教育が行われます。パニック発作や予期不安、広場恐怖が起こるしくみを理解することから始めます。また、認知行動療法の意義についても、正しい理解が得られるような説明が行われます。次に患者は、毎日の自分の状態を観察し、パニック発作の起こる頻度や症状などを記録していきます。これによって、どんな刺激があるときに発作が起こるのか、自分は何を回避しているのか、客観的に見ることができます。さらに、物事に過敏に反応しないように、呼吸法や自律訓練法などの訓練を受けたりします。その後、自分の身体感覚に対する認知に誤りがないか、治療者とよく検討して認知を再構築します。最後に、実際に恐れている状況に曝されることによって、誤った学習を修正していきます。

 

《知行動療法の一般的な手順

① 心理教育を受ける。

② パニック症状を観察して記録する。

③ 呼吸法や自律訓練法など、リラクゼーション法の訓練を受ける。

④ 身体的感覚の誤った解釈を是正し、認知を再構築する。

⑤ 恐れいている状況に曝されることによって、恐怖感や不安感を取り除く。

 

段階的にクリアしていくエクスポージャー

 エクスポージャー(exposure)とは、曝露するという意味です。あえて恐れている状況に段階的に身を曝すことによって、その刺激に慣れさせていき、恐怖心や不安感を取り除いていく治療法のことです。「曝露療法」ともいわれます。

 エクスポージャーの有効性については、治療を受けたパニック障害の患者の89%において発作が消失したという報告もあり、薬物療法と同等の効果があります。

 エクスポージャー法には、「想像エクスポージャー」と「現実エクスポージャー」の2種類があります。

 想像エクスポージャーは、系統的脱感作法ともいい、不安を感じる場面を思い浮かべて、それを言葉で表現し、そのイメージに慣れる訓練です。録音して繰り返し聞くようにしますが、一種のイメージトレーニングともいえます。現実エクスポージャーは実際にその場所に行く方法です。人前に出たり、電車に乗ったりして、不安な場面に物理的に身を曝し、その場に慣れることによって不安や恐怖を軽減していきます。また、アレンジした方法として、「内受容性エクスポージャー」があります。これは、深呼吸や足踏みジョギングなどの運動をして、意図的に動悸や息切れ、めまいを起こす「疑似パニック発作」を誘発させ、その感覚に慣れていく方法です。エクスポージャー法では、不安場面にあえて直面したとき、不安や恐怖は一時的に強くなりますが、最終的には安全な状態に落ち着いてきます。不安な場面に慣れることによって、同じ場面に直面しても不安や恐怖感が軽減し、少しずつ自信がついてきます。エクスポージャーは、いきなり行うと苦痛が強すぎますので、治療計画にもとづいて慎重に進める必要があります。そのためには、まず「不安階層表」を作成してもらいます。患者に不安に感じる場所や状況をすべてリストアップしてもらい、不安の程度の強いものから弱いものへと順に並び替えてもらいます。その際、最も強い不安を感じる場面を100点とし、不安を感じない状態を 0点として、書き出したすべての場面に対して評点(この点数を自覚的障害単位:SUDという)します。実施においては、一般的に不安の少ない場面からトライしていきます。何日か行い、不安の弱い場面に慣れ不安がなくなってきたら、次のステップにチャレンジします。不安な状況であっても、回避行動をとらなくなったら少し段階を上げていき、少し上の強い不安に立ち向かいます。こうして、一つずつ段階を上げていき、最後はもっとも恐れている場面に向き合っても、たいていの不安や恐怖にも対処できるようになっていきます。一例を挙げれば、電車に乗るのが不安で恐怖を感じる場合、初めは不安の弱い「プラットホームに立ってみる」、それが慣れてきたら「各駅電車に一駅乗ってみる」、不安を感じなくなったら次は「2駅、3駅と距離や時間をのばして乗ってみる」、各駅電車に乗っても不安がなくなったら次は「急行電車で一区間乗ってみる」・・・ こうして段階的に進めていきます。エクスポージャーでは、一度不安が高まったり発作が起きたりした後、その状態が一定のところまで軽減するまでに、最低1時間から最大2時間を要します。この全過程を体験する必要がありますので、練習のためには最低でも1時間は乗車しなければなりません。エクスポージャーでは、発作が起こる体験をしなければ、本当の効果が出ることにはならないことを意味しています。  いずれにしても、決して焦らないことです。一つひとつ着実にクリアしていくことが重要で、いきなり高い目標に飛びつくと、逆効果となって危険です。SUDの高い場面に向き合うときは、家族や配偶者、パートナー、友人などの支えが力になることがあります。

 エクスポージャーは、患者にとっては恐怖を感じる状況に立ち向かわなければならないので、非常に強い苦痛を伴います。無理をして高い目標をかかげ、不安や恐怖に立ち向かうと、逆に不安を増大させることになり、ますます自信を失って症状が悪化してしまうことがあります。医師や治療者の指導のもとに、一歩ずつ確実にステップアップしていくことが大切です。体調の悪い日などは、認知行動療法を休むことも必要です。強行すると、発作が起きやすく、せっかく積み重ねてきた成功体験が水の泡になってしまいます。あせらず、発作が起こらないことを繰り返し確認しながら進めていきます。また、ひとつの目標をクリアすることができたときは、「不安を克服できた」という達成感と自信がわいてきます。この感覚が、エクスポージャーでは非常に大切です。本来エクスポージャーはストレスのかかる治療法ですので、目標をクリアするごとに自分にご褒美をあげるのも良いでしょう。途中で止めてしまったら、元の木阿弥です。自分を励ましながら、喜びをかみしめながら進めることです。この段階的に刺激に慣れていくエクスポージャーに対して、フラッディングという手法があります。これは、集中的に刺激にさらす方法で、かなり荒治療になります。耐えられない場合は、逆効果になりますので注意が必要です。

注意点

 無理をしないで、一段ずつ確実にクリアしていく。

 体調の悪い日は、治療を休む。

 発作が起こらなかったことをその都度確認しながら進める。

副作用

 最初、一時的に不安が増大することがある。

 患者が治療者に依存してしまうことがある。

 刺激に耐えられずドロップアウトした場合は、症状がさらに悪化する。

 

補助的方法・1 自律訓練法

 自律訓練法は、ドイツの精神科医シュルツが考案したリラックス法で、6つの公式と呼ばれる暗示をかけ、自分でリラックス状態を作り出すものです。この訓練法は、比較的短期間で習得可能なうえ、リラックス効果が高く、心身の安定に役立つことから、精神疾患の治療に用いられるほか、スポーツ選手がメンタルトレーニングに活用したり、会社が社員のメンタルヘルスの一環として取り入れたりするなど、さまざまな現場で広く利用されています。パニック障害では、薬物療法や認知行動療法と併用することで、予期不安や広場恐怖の解消に大きな効果をあげています。  

 自律訓練法を行うとアルファー(α)波が増え、皮膚温が上昇します。血圧が安定して血行がよくなり、心身の緊張がほぐれます。胃腸の働きも正常に保ちます。

自律訓練法の効果
 ① 精神が安定します。
 ② 血行が増進されます。
 ③ 抗ストレス効果があります。
 ④ 集中力がアップします。
 ⑤ 疲労が回復します。
 ⑥ イライラが解消します。
 ⑦ 消化器・循環器・呼吸器のトラブルを緩和します。
 ⑧ 自己管理能力がアップします。

 自律訓練法は、初めは集中するのが難しく、すぐに手足の重さや温かさを感じられないかもしれません。うまくいかないからといって諦めないで、少しずつ繰り返し練習していけば、コツがわかってきます。それまで少し時間がかかります。最初始めるときは、専門家の指導を受けるのが望ましいです。場所も初めは集中できるように、静かな場所で行うと良いでしょう。慣れてきたら、いつでもどこでも出来るように、いろいろな場所で訓練します。

 自律訓練法は、始める前に衣類やベルトをゆるめ、時計やアクセサリーなど身につけているものははずして、仰向けに寝るか椅子に座って行います。仰向けに寝る場合は、全身の力を抜いて両足を軽く開き、手や腕は自然に伸ばします。座った場合は、深く腰を掛け、足は床につけて軽く開きます。手は太ももの上に軽く置きます。軽く目を閉じ、ゆっくり複式呼吸をしながら、「気持ちがとても落ち着いている」と暗示をかけます。次に6つの公式を、第1公式から順に行っていきます。第1公式は重感公式といって「両手両足が重たい」という暗示ですので、利き腕が右手だったら「右手が重たい」「左手が重たい」「右足が重たい」「左足が重たい」という順番に暗示をかけていきます。第1がマスターできたら、次に第2公式の温感公式です。同様に、「右手が温かい」「左手が温かい」「右足が温かい」「左足が温かい」と、ゆっくり心の中で暗示をかけていきます。こうして、第3、第4、第5、第6公式まで行います。自律訓練法では6つの公式の中でも、特に大切なのは「重感公式」と「温感公式」の2つで、この2つだけでもマスターしておけば、十分に効果を上げることができます。1回の訓練は約5分程度で、1日2~3回を毎日行います。

自律訓練法の6つの公式

① 第1公式: 重感公式「両手両足が重たい」

② 第2公式: 温感公式「両手両足が温かい」

③ 第3公式: 心臓調整公式「心臓が規則正しく打っている」

④ 第4公式: 呼吸調整公式「楽に呼吸している」

⑤ 第5公式: 腹部温感公式「お腹が温かい」

⑥ 第6公式: 額部冷感公式「額が気持ちよく涼しい」

 注意点としては、自己暗示をかけたとき、意識的に感じようとしないことです。たとえば、「右手が重い」と暗示をかけたとき、意識して重たくしようとしないことです。あくまでも、自然に重たく感じられるようになるのを待ちます。また、食後すぐに行うことや空腹時は避けるようにします。訓練が終わった後は、リラックスしてボーッとなっている状態から心身を目覚めさせる必要がありますので、消去動作を必ずおこないます。消去動作をしないで、いきなり起き上がったりすると、ふらついたり転んだりすることがあって危険です。普段の活動レベルに戻すために、消去動作は必要です。

消去動作の方法

① 両手を5~6回握ったり開いたりする。

② 両ひじを2~3回上方に曲げたり伸ばしたりする。

③ 大きく背伸びをして、ゆっくり目を開ける。

 

補助的方法・2 リラクゼーション・トレーニング

 パニック障害のある人は、たいていの場合、緊張状態に置かれると発作を起こしやすい傾向にあります。普段から体が緊張していると、ちょっとした不安や恐怖でも、過呼吸から発作につながっていきます。したがって、緊張状態に陥らずに心身ともにリラックスすることができれば、パニック障害を改善することができることになり、この考え方に基づいた治療法が、リラクゼーション・トレーニングといわれるものです。すなわち、リラクゼーション・トレーニングとは、体をリラックスさせることで、不安やパニック発作の軽減を図ることができる行動療法の補助的方法です。繰り返し練習することで、よりリラックス出来るようになり、突発的な不安やパニック発作に備えます。リラクゼーション・トレーニング単独の治療反応率は56%とのことです。

 自分の体は緊張していないだろうか? 緊張しているとすれば、体のどの部位あたりに緊張を感じるのか、知る必要があります。別表を使って、緊張している部位はどこか、どれくらい緊張しているかセルフチェックします。チェック期間は最低12日間行い、毎日同じ時間帯に記入しますが、出来れば夕食前に行うのがベストです。緊張の度合いは、0(なし)、1(低い)、2(中ぐらい)、3(高い)の数字で記入します。

漸進的筋リラクゼーションと等尺性リラクゼーション

 リラクゼーションの方法には、「漸進的筋リラクゼーション」と「等尺性リラクゼーション」の2つがあります。この2つのリラクゼーションは、それぞれ使う場所や使う目的が違います。漸進的筋リラクゼーションは、恐怖の対象にさらされる前に使う方法であるのに対し、等尺性リラクゼーションは恐怖の対象に直面している最中に用いる方法です。また、漸進的筋リラクゼーションはリラックスしていない状態からリラックスを得るための方法で、等尺性リラクゼーションはリラックスしている状態を維持するための方法です。漸進的筋リラクゼーション練習は、筋肉を順番にリラックスさせる方法です。額 → 目のまわり → あご → 首 → 肩 → 背中 → 上腕 → 下腕 → 手 → 胸 → 腹 → 腰 → 太もも → 尻 → すね → 足先 といった順番に、筋肉を緊張させたり緩めたり(弛緩)させることを繰り返すトレーニングです。 

 練習方法は、椅子に座って行います。できるだけ頭と肩をもたれさせてくれる座り心地のよい椅子を選びます。適当な椅子がない場合は、背中にクッションをあてて、そこにもたれたりします。仰向けになると眠ってしまうことがあり、眠ると効果がないので、仰向けになって練習はしないほうがよいです。練習の効果を長持ちさせるためには、毎日欠かさず練習する必要があります。  

 等尺性リラクゼーション練習は、自分が恐怖を感じた時に行うトレーニングです。等尺性という意味は、筋肉の長さが同じままということで、筋肉を緊張させるときも筋肉の長さは同じままなので、他人から見ると一見なにもしていないように見えます。等尺性リラクゼーションの練習で間違いやすいのは、緊張を入れるのが急ぎすぎたり、強すぎたりすることです。優しくゆったりした練習が等尺性リラクゼーションの特徴です。

練習の方法

足の筋肉をリラックスさせる練習 

・小さく息を吸い込み、7秒間息を止めます。

・息を止めている間は、くるぶしのところで足を交差させておき、下になっている足は、上になっている足を持ち上げるようにし、上の方の足は下の方の足を押さえつけるようにし、ゆっくりと両足の筋肉の緊張を高めます。あるいは、息を止めている間に、くるぶしで両足をからめさせておきます。そして2本の足を反対方向に横に引っ張り合うようにして、ゆっくりと両足の筋肉の緊張を高めます。                       

・7秒たったら、ゆっくりと息を吐きながら「リラックスしよう」と自分に言い聞かせます。そして、ゆっくりと筋肉の緊張をゆるめていきます。

・緊張をゆるめたら目を閉じ、そのあと1分間は、息を吐くたびに「リラックスしよう」とつぶやきながら、緊張をゆるめた状態をそのまま続けておきます。

腕の筋肉をリラックスさせる練習

・小さく息を吸い込み、7秒間息を止めます。

・息を止めている間は、両手を向かい合わせにして重ね、膝の上におきます。そして、下の方の手は上の方の手を持ち上げるようにし、上の方の手は下の方の手を抑えるようにし、ゆっくりと両手や両腕の筋肉の緊張を高めます。あるいは、息を止めながら、座ったまま椅子の下側に手を差し入れ、椅子を持ち上げるようにします。または、椅子の後ろ側で手を組んで、両手を引っ張り合いながら、椅子の背にその手を押し当てるようにします。あるいはまた、息を止めながら、座ったまま首の後ろで両手を組み合わせます。そして、頭を後ろに押し付けながら、両手を引っ張り合います。

・7秒たったら、ゆっくりと息を吐きながら「リラックスしよう」と自分に言い聞かせます。そして、ゆっくりと筋肉の緊張をゆるめていきます。

・緊張をゆるめたら目を閉じ、そのあと1分間は、息を吐くたびに「リラックスしよう」とつぶやきながら、緊張をゆるめた状態をそのまま続けておきます。

以下同じ手順で、部位を変えて行う練習

1 首をすくめて肩を上げながら筋肉の緊張を高め、肩を落としながら腕の筋肉の緊張をゆるめる。

2 両方のこぶしをぐっと握りしめながら筋肉の緊張を高め、こぶしをひらいて、手のひらを上に向けて両手を膝の上におき、筋肉の緊張をゆるめる。

3 足首を体側にぐっと曲げて筋肉の緊張を高め、足の甲を伸ばして筋肉の緊張をゆるめる。

4 背筋をぐっと反らせて筋肉の緊張を高め、背中を丸めて脱力させ筋肉の緊張をゆるめる。

5 両足の関節を本来曲がる方とは逆に目いっぱい伸ばし、筋肉の緊張を高め、足の関節をゆるめて筋肉の緊張をほぐす。

6 体の後ろで手を組み合わせ、組んだ手を両方に引っ張り合って筋肉の緊張を高め、手の緊張をゆるめる。

 筋肉を緊張させて、緩めるバリエーションはいろいろ考えられますので、工夫して辛抱強く練習することが大切です。

リラクゼーションの上達を速めるためのポイント

① 何回も、何回も繰り返して練習する。

② 緊張が高まっているなと感じたら、いつでもすぐにリラクゼーションの練習をする。

③ 緊張に対しては、リラクゼーションで反応するという習慣をつける。

④ 練習を重ねれば、人が見て分かるような運動をしなくても、手足の筋肉の緊張を高めたり緩めたりすることができる。また人前で気づかれないように練習することは、緊張をゆっくり高め、ゆっくり緩めるコツをつかむのに適している。

⑤ 他人の前で、7秒間緊張を続けることが難しい場合は、少し短い時間でもよい。ただし、その場で何度か同じ練習を繰り返したほうが効果がある。

⑥ 苦しくなったり疲れたりするほど緊張させてはいけない。また、7秒以上緊張を続けるのもよくありません。

⑦ 職場での仕事中や、列をつくって並んでいるときなど、さまざまな場面で緊張が高まってきたときの練習方法をアレンジしておくことも必要。

⑧ 何週間か練習を続ければ、緊張が減って、緊張しにくくなる。自分で自分をコントロールできる感じが得られ、自信につながる。

 

補助的方法・3 呼吸訓練

 パニック障害の患者に共通する特徴のひとつとして、呼吸が浅く、不規則であるという点です。発作の際、ほとんどの場合で息が切れる、うまく呼吸ができない、という症状がみられることから、パニック発作と呼吸は深く関係していることは確かです。そこで、呼吸を強化し、改善する方法として考え出されたのが呼吸訓練で、行動療法の補助的方法として用いられています。呼吸が浅く、不規則な呼吸をしていると、体内の酸素と二酸化炭素のバランスが崩れやすくなり、パニック発作の身体症状がますます現れやすくなります。したがって、呼吸を改善することは、パニック発作の治療においては、非常に有効な方法となります。

 まず、自分が呼吸を1分間に何回するか測ってみます。息を吸って吐き終わるまでを1回とし、時計を見ながら1分間に、何回呼吸をするかを数えます。意識的に呼吸を速くしたり、遅くしたりしてはいけません。治療プログラムの一環として、1分間の呼吸を1日に何回かおこなって記録していきます。

呼吸訓練の技法

 不安やパニックの最初の徴候が現れたら、まず最初に用いる技法です。過呼吸かなと思ったら、すぐに次の方法を実践してみてください。

 やりかけていることをやめて、腰をおろすか、何かにもたれかかります。

 息を止めて、10数えます。(このとき深く息を吸わないこと)

 10まで数えたら、息を吐きます。そして静かに、ゆっくりと、「リラックスしよう」「落ち着こう」と自分に言い聞かせます。鼻を通して息をすることを忘れないことです。

 6秒に1回の速さで呼吸をします。つまり、3秒間息を吐いて、3秒間息を吸います。これで、1分間に10回呼吸をすることになります。息を吐くたびに、「リラックスしよう」「落ち着いて」と自分に言い聞かせます。

 10回呼吸するたびに(1分ごとに)、10秒間息を止めて、それから6秒に1回の呼吸を続けます。

 過呼吸の症状がすべて消失するまで、この呼吸を続けます。

パニック障害 スピリチュアルな視点