知的障害の療育

 精神遅滞/知的障害の小児にとって最善なのは、多職種で構成されたチームによるケアを受けることです。このようなチームには、かかりつけ医、ソーシャルワーカー、言語療法士、作業療法士、理学療法士、小児神経科医もしくは発達小児科医、心理療法士、栄養士、教師などが含まれます。知的障害の疑いが生じたら、できるだけ早期に専門家チームは家族とともにその小児に合った包括的な療育プログラムを作成します。小児の親や兄弟姉妹に対しても精神的な支援が必要です。カウンセリングが必要な場合もあります。家族全員が療育計画に関与するようにします。

 どのような支援が必要であるかを決めるにあたっては、その小児が得意なことと苦手なことすべてについて検討しなくてはなりません。身体障害、性格面での問題、精神疾患、対人能力などの要素をすべて考慮します。精神遅滞/知的障害に加えて、うつ病などの精神疾患を伴っている小児の場合には、適切な薬を精神遅滞/知的障害のないうつ病の小児への投与量とほぼ同量で投与することがあります。しかし、薬物療法に並行して行動療法や環境の変化を行わないと、たいていの場合は効果がありません。

 通常、知的障害の小児にとって最善なのは、自宅で生活することです。しかし、特に小児の障害が重篤で複雑な場合には、自宅でこのような小児のケアが十分できないことがあります。小児がどこで生活するかを決めるのは難しく、家族と支援チームがさまざまな点に関して話し合う必要があります。重い障害をもつ小児と自宅で生活するためにはきめ細やかなケアが必要であり、親の中にはこれができない場合もあります。家族に心理的な支援が必要なことがあります。ソーシャルワーカーは、家族が支援サービスを利用できるようにします。デイケアセンターや一時療養施設などを利用したり、家政婦や保育士などの助けを得たりすることもできます。精神遅滞/知的障害のある成人、はたいてい地域社会が提供する施設で生活していますが、こうした施設では各人の必要に応じたサービスを受けたり、仕事や娯楽に参加したりする機会も提供されます。

 

軽度知的障害の治療法

 一口に軽度知的障害といっても、知能テストではIQ50〜69と幅があり、中度知的障害寄りの場合もあれば、健常者寄りの場合もあります。能力は人それぞれですし、得意・不得意も異なります。症状の出方は千差万別なのです。

 最近では、自閉症スペクトラムやADHDなどの発達障害が疑われた後、病院を受診し、知能検査を受けて初めて「軽度の知的障害」と発覚する場合が多いようです。

 軽度知的障害は知的障害の中で一番軽い部類で、知的障害者全体の8割を占めます

 障害が軽いからといって困りごとが少ないわけではありません。一見健常者に見えるため、困っているにも関わらず必要な支援が受けられないこともあるのです。

 基本的には、知的障害を治療する手段はありません。そもそも、障害を引き起こす原因の8割が不明とされているのです。

 先天性代謝異常などの病気が原因の知的障害の場合、早期に病気を発見し病気自体の治療を行うことができれば、知的障害は防げる可能性もあります。しかし、それ以外の原因のもの、あるいは原因不明の知的障害に関しては、基本的に一生治りません。

 成長と共に、知能が周囲に追いつく場合もありますが、逆に遅れが広がる場合もあります。

   軽度知的障害の人が健常者のようになれる治療はありませんが、療育などで社会性やコミュニケーション能力を高め、少しずつ社会に適応できるように訓練することは可能です。

 「周囲の人たちとどう関わっていけばよいのか」「困った時、どうやって助けを求めればいいのか」など、通常であれば自然と身につけるはずのスキルを、特別な訓練を通して身につける必要があるのです。

 訓練によって、本人は自分なりの生きやすさを模索し、生活における制限を軽くすることが十分可能なのです

 できるだけ早くハンディキャップを抱えていることを認識し、いろんな体験をさせ、本人のペースで社会性を身につけることが重要となってくるのです。

 

 大事なのは周囲のサポートです。

 彼らが社会の中で自立し逞しく生きていけるようにサポートしてあげること。

 社会適応力とコミュニケーション能力を高め、生きにくさを軽減させていくこと。

軽度知的障害との向き合い方

 保護者をはじめ本人にとっても、軽度知的障害を受け入れるには時間が必要です。無理に急いで受け入れようと焦っても心理的な負担になりかねません。障害の理解や受け入れていくスピードは人によって違いがあり、その人のペースに合わせて支援が必要です。

 最初のうちはショックや葛藤が生じることがありますが、本人や周囲の人が、それぞれのペースで身体的・社会的・心理的に障害を受け入れていくまで、焦らず時間をかけて関わり合うことが大切です。困った時は、発達障害者支援センターや専門医など、専門家に頼りながら落ち着いた対応を心がけましょう。