腎臓移植

 不可逆的腎不全(腎臓が機能せず、治療しても治らない)の患者にとって、腎移植は年齢にかかわらず透析に代わる救命法です。

 最初は腹膜透析(PD)を開始し、その後に血液透析(HD)に移行したり、またその逆もあり得ます。PDとHDの併用療法という方法をPDまたはHDへの移行の橋渡しとして使うことも可能です。

 さらに、どの透析形態からも腎移植を行うことが可能で、移植後に腎機能が低下した場合、どの透析形態へも移行が可能です。腎移植の生着率は、新しい免疫抑制薬の登場によりさらに向上しています。しかし、腎移植は一度受ければ一生安全というわけではなく、透析の再導入が必要な場合もあります。

 腎臓移植には、家族・配偶者・身内から体内に2つある腎臓のうち1つ提供を受ける「生体腎移植」と、脳死や心臓死になられた方から腎臓の提供を受ける「献腎移植」の2種類がある。

 腎移植で使う腎臓の約3分の2は死亡したドナーからの提供によるものです。摘出された腎臓は冷蔵状態で速やかに病院へ輸送され、そこで血液型と組織型が合ってドナーの組織に対する抗体を産生しない人に移植されることになります。

 腎移植は大手術です。レシピエントの腹部を切開してドナーの腎臓を骨盤腔に入れ、レシピエントの血管と膀胱につなぎます。通常、レシピエントの機能していない腎臓は摘出せずにそのまま残します。ただしコントロール不能な高血圧症を起こしている場合や、感染している場合は取り除きます。

 生きているドナーから提供を受けた場合は95%を超える移植腎が移植から1年たっても機能しています。移植後1年を過ぎると毎年3~5%の腎臓が機能しなくなっていきます。一方、死亡したドナーから提供を受けた腎臓では移植から1年たっても機能しているのは82~91%です。移植後1年を過ぎると毎年5~8%の腎臓が機能しなくなっていきます。しかし、移植した腎臓が30年を超えて機能し続けることもあります。移植が成功すれば、通常は、活動的な生活を普通に送ることができます。

 免疫抑制薬を使用しても移植後に1回以上の拒絶反応がみられることがあります。急性拒絶反応では発熱、尿の産生量の低下(体重増加を伴う)、移植部位の痛みと腎臓の腫れ、血圧の上昇が起こります。腎臓の機能が低下しているかどうかは血液検査でわかります。こういった症状は感染症や薬剤による腎障害でも起こるので、拒絶反応の診断を確定するために腎臓の針生検を行います。

 急性拒絶反応は移植後3~4ヵ月以内に現れます。通常は免疫抑制薬を高用量で用いたり、抗体療法を短期間実施したりすることでコントロールできます。また、維持免疫抑制薬の種類を変えることで拒絶反応を抑えられる場合もあります。

 慢性拒絶反応は移植後数ヵ月ないし数年間で生じ、比較的頻繁にみられ、移植した腎臓の機能を徐々に低下させます。拒絶反応をコントロールできなければ腎臓は機能を失い、患者は再び透析を受けなければならなくなります。この場合も発熱、圧痛、血尿、高血圧がしつこく続くようでなければ、腎臓はそのまま体内に残しておきます。2度目の移植でも成功率は初回の移植とほぼ同じです。

 腎移植のレシピエントは一般の人と比べて癌が10~15倍も発症しやすくなります。この原因は、おそらく、免疫抑制薬の使用により感染症だけでなく癌の発生からも体を守っている免疫システムの機能が抑えられてしまうからです。特に、リンパ系の悪性腫瘍(リンパ腫)では発症率が一般の人の30倍も高くなりますが、それでもリンパ腫の発症自体は多くありません。よくみられるのは皮膚癌です。