妄想性パーソナリティ障害

 妄想性パーソナリティ障害の人は、他人を信用せず懐疑的です。特に証拠はなくても、他人が自分に悪意を抱いていると疑い、その行動の裏に敵意や悪意に満ちた動機を見出そうとします。そのため、自分では正当な報復だと思っても、他人にとっては不可解な行動をとってしまうことがあります。このような行動は人から嫌がられることが多いため、結局は、最初に抱いた感情は正しかったと思い込む結果になります。一般に性格は冷淡で、人にはよそよそしい態度を示します。

 妄想性パーソナリティ障害の人は、他者とのトラブルで憤慨して自分が正しいと思うと、しばしば法的手段に訴えます。対立が生じたとき、その一部は自分のせいでもあることには思い至りません。職場では概して比較的孤立した状態にありますが、場合によっては非常に有能でまじめです。

 耳が聞こえないなどの障害があって、日ごろから疎外感を感じている人は、自分に対する他者の見方や態度をよりいっそう悪い方に考えがちです。しかし、このような場合にみられる強い懐疑心は、他者に対する不当な悪意を抱かなければ、妄想性人格の証拠にはなりません。

 

症状

 妄想性パーソナリティ障害では以下のような症状が見られます。
・誰々が自分に良からぬ事を企んでいると、思い込みやすい
・周りの人間が、自分に何か良からぬ意図を抱いていないかどうか、心配になりやすい
・他人に利用される事をおそれるあまり、自分の個人情報を他人に教えるのを非常に嫌がる
・自分の周りの出来事を被害妄想的に解釈しやすい
・他人が自分に向けた、ネガティブなコメントは、たとえ、それが言葉の綾のようなモノであっても、簡単に聞き流さず、深刻に受け止めてしまう
・自分の体面が傷つけられたと感じた時には、たとえ、それが、他人の目から見れば、些細な事であっても、躊躇なく、怒りを相手にぶつけてしまうなど、過剰に反応しやすい
・パートナーが貞淑であったとしても、不貞をしているのではないかと、疑念が頻繁に生じやすい

 

治療

 妄想性パーソナリティ障害になると、他人への不信感が強くなるため、専門家に治療してもらうという選択を自らすることはあまり期待できません。たとえ家族からの要請で精神科やカウンセリングルームを受診したとしても、治療の現場でも医師、カウンセラーなどへの不信感が生じやすく、これは治療効果を妨げる大きな要因になります。

 妄想性パーソナリティ障害の基本の治療方法は心理療法です。日常生活で心を苦しめている問題や、対人関係を深刻に阻害する、他人への強い不信感に対処していきます。  

 薬物療法が必要かどうかは個々人の病状によります。憤りや不安感が認められるときには抗不安薬、被害妄想的傾向が強まっている時には抗精神病薬、気分が大きく落ち込んでいる時には抗うつ薬など、状況に応じて治療薬が選択されます。