年次有給休暇の出勤率算定

 年次有給休暇は、6ヵ月以上継続勤務した場合に10日、以降継続勤務1年を増すごとに1日を追加した日数を与えなければならないことになっています。ただし、前年度の出勤率が8割未満のときは当年度の年次有給休暇を与える必要はありません。

 この場合の出勤率の計算式は、次のようになります。

   出勤率(%)= 出勤日/全労働日 × 100

 継続勤務とは労働契約の存続期間(在籍期間)をいいます。

 継続勤務か否かについては勤務の実態に即して判断すべきものですが、次の場合は継続勤務とみなします。(昭和63年3月14日 基発150号)

(1) 定年退職による退職者を引き続き嘱託等として採用している場合(所定の退職手当を支給した場合を含む)
 ただし、退職と採用との間に相当期間があり、客観的にみて労働関係が断続していると認められる場合は継続勤務とはなりません。(断続期間は概ね3ヵ月程度のようです。)
(2) 日雇労働者、試みの使用期間中の者解雇予告が必要でない者、又は臨時工が一定期間ごとに雇用契約を更新され6ヵ月以上に及んでいる者で、実態よりみて引き続き使用されていると認められる場合
(3) 在籍出向をした場合
(4) 休職していた者が復職した場合
(5) パート等を正規労働者に切り換えた場合
(6) 会社が解散し、労働者の待遇等を含め権利義務関係が新会社に包括承継された場合
(7) 全員を解雇し、その後改めて一部を再採用したが、実態は人員を縮小しただけの場合

 年次有給休暇は、全労働日の8割以上出勤した労働者に与えられますが、全労働日とは、雇入れ後6ヵ月(6ヵ月経過後は継続する1年)の総暦日数から所定の休日を除いた日数をいいます。

 この「全労働日」とは、労働契約上で労働義務が課せられた日のことで、就業規則などで定められた所定の休日を除きます

 会社側の都合で休業した日や正当な争議行為で労働しなかった日も、「全労働日」から除外されます。

 出勤率を算定する上での「出勤日」の単位は、労働した日です。

 下記の期間や日は、「出勤率」の算定に当たっては、出勤したものとして計算に算入します。
(1) 業務上の傷病により療養のために欠勤した期間賃金は無給でもよい
 通勤災害による欠勤期間については、労使間の定めに委ねます。
(2) 労働基準法による産前産後の休業期間
 この場合、出産日が予定よりも遅れ、結果的に産前6週間を超える休業になっても、出勤扱いになります。労働基準法を上回る休業期間については、労使間の定めに委ねます。
(3) 育児・介護休業法による育児休業期間、介護休業期間
 育児・介護休業法を上回る休業期間については、労使間の定めに委ねます。
(4) 労働基準法による年次有給休暇を利用して休んだ期間
 労働基準法が権利として保障した期間です。
(5) 使用者の責めに帰すべき休業期間および、不可抗力によって休業した期間
(6) 育児休業法に基づく看護休業

 通勤災害の休業日、生理休暇日、会社休暇日、休職期間については、出勤扱いとする決まりはありません。就業規則等によって、労使間で自由に定めることができますただ、使用者が労働義務を免除したものですから、出勤率の算定に当たっては出勤したものとして取扱うか、出勤率の査定に不利にならないように、これらの休暇を「全労働日」から除外するなどの配慮が必要でしょう。

 このほかの欠務については、次のような場合にこれを出勤率算定の分母分子の双方から除外して計算する取扱いがなされています。全労働日には含まれません
 ①労働基準法第26条に定める使用者の責めに帰すべき休業
 ② 労使双方の責めに帰すべからざるいわゆる不可抗力による休業
 ③ 正当なストライキその他正当な争議行為により労務の提供がなされなかった日

 

遅刻・早退した日について

 休暇の要件である出勤率の評価において、遅刻や早退といった一部欠勤について、これを不出勤と評価することはできません。出勤したものとして評価すべきです。

 たとえ短時間でも同じ労働日数就労している以上、全日労働から解放される休暇の趣旨からは、1日の所定労働時間の長短は休暇日数に影響しないと考えるのが妥当です。

 遅刻3回で1日の欠勤とか、遅刻時間の合計が1日分の所定労働時間に達した場合に、1日の欠勤とみなすといった取扱いはできないものと考えます。

 

産前産後の休業期間中の年次有給休暇の利用

 産前産後休業と年次有給休暇との関係について、産前休業と産後休業とで取扱いが異なります。

 産前休業については、これをとらず年次有給休暇を利用することが可能です。

 これに対し、産後休業の期間については、年次有給休暇の利用はできないと解されています。というのは、産前休業は、これを利用するか否かの判断が労働者本人に委ねられており、請求した場合のみ休暇が与えられるのに対し、産後の休業は本人の希望の如何や請求の有無に無関係で、産後8週間を経過していない限り、その間は就業させることはできない、という違いによるものです。

 

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