賃金の端数処理

 給与を計算する際には、当月の労働時間を計算して通常賃金や残業代などを決定しますが、従業員の不利にならない程度の端数処理は認められています。

 また、その都度端数処理をするか、月の総時間数の端数処理をするかは任意です。

 

 賃金の計算において生じる労働時間、賃金額の端数は次のように取り扱われます。

1.遅刻、早退、欠勤等の時間の端数処理

 遅刻・早退などの場合は1分単位の管理が原則ですが、1時間以下であれば任意で、一般には15分単位・30分単位とすることが多いようです。

 一定時間(15分或いは30分等)に満たない場合に、例えば5分の遅刻を30分の遅刻として賃金カットするような処理は、労働の提供のなかった限度を超えるカット(25分のカット)となるため、賃金の全額払いの原則に反し違法です。

 ただし、就業規則に定める減給の制裁として、制裁の制限内で行う場合には、全額払いの原則には反しません。

 

2.欠勤等の時間の端数処理

 欠勤等などの場合は1日の所定時間です。

 

3.割増賃金の端数処理

 以下の方法に従った端数処理は「これを、違反として取り扱わない」としています。(昭和63.3.14基発150号)

(1) 「1ヵ月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること」は、違反とはなりません。

 残業時間は1日ごとに算出するのではなく1ヵ月を合計して、支給単位に満たない時間については、「切り上げ・切り捨て」することになります。

 例 残業時間が39分であるとき
    支給単位が1時間の場合  切り上げ 1時間
    支給単位が30分の場合  切り捨て 30分
    支給単位が15分の場合  切り上げ 45分

 (2) 1時間当たりの割増賃金額の端数処理

 「1時間当たりの割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げること」は、違反とはなりません。

 1時間当たりの割増賃金額を計算する際に、円未満の端数が生ずることがあります。

 端数処理は次のように行います。

① 通常の1時間当たりの賃金額に円未満の端数が生じた場合は、四捨五入することができます。

     例 240,000円/161時間 = 1,614円90銭 → 1,615円

② 1時間当たりの割増賃金額に円未満の端数が生じた場合は、四捨五入することができます。

     例 240,000円/161時間 × 1.25 = 2,018円63銭 → 2,019円

   ※1時間当たりの割増賃金額の設定方法として、次の考え方があります。
   ・そのままの数字とする(小数点第2位くらいまでが一般的)。
   ・円未満四捨五入する。
   ・円未満はすべて1円に切り上げる。

  このほか、円未満をすべて切り捨てる方法もありますが、常に労働者に不利になることから、法の趣旨に沿わないと考えます。

 

(3) 割増賃金の合計額の端数処理

 「1ヵ月における時間外労働、休日労働、深夜業の各々の割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合に、(2)と同様に処理すること」は、違反とはなりません。

 時間外手当の総額に円未満の端数が生じることがありますが、円未満は四捨五入することができます。

 また、円未満を切り上げる方法をとることもできます。

 例 残業手当を15分単位で支給する場合(残業時間15時間15分)
    1,826円 × 15.25時間 = 27,846円50銭 → 27,847円

   小数点第2位までを単位とする場合
    1,825.84円 × 15.25 = 27,844円06銭 → 27,844円

 さらに、月の支払額に端数がある場合は、次のように処理することができます。

・その月の差引支給額に100円未満の端数が生じた場合は、50円未満の端数を切り捨て、それ以上を100円に切り上げて支払うことができます。

・その月の差引支給額に生じた1,000円未満の端数は、翌月の給与支払日に繰り越して支払うことができます。

 例)

 

差引支給額

端数金額

支払額

1月

285,178

178円

285,000

2月

274,951

951円

178(1月繰り越し月)+951=1,129円

1,129-1,000=129円

275,000

3月

286,408

408円

129(2月繰り越し)+408=537円

286,000

 

4.次の方法は、賃金支払の便宜上の取扱と認められるため、賃金の支払規定の違反にはなりません。

(1) 1ヵ月の賃金支払額(賃金の一部を控除して支払う場合には控除した額)に100円未満の端数が生じた場合、50円未満の端数を切り捨て、50円以上を100円に切り上げて支払うこと。

(2) 1ヵ月の賃金支払額に生じた1,000円未満の端数を、翌月の賃金支払日に繰り越して支払うこと。

 なお、これらの方法をとる場合には、就業規則に定めなければなりません。

 

労働相談・人事制度は 伊﨑社会保険労務士 にお任せください。  労働相談はこちらへ

人事制度・労務管理はこちらへ