日立電子事件 東京地方裁判所(昭和41年3月31日)
(分類)
服務
(概要)
1.使用者は労働契約に際して明示した労働条件の範囲を超えて当該労働者の労働力の自由専恣な使用を許されず、当該労働者の承諾その他これを法律上正当づける特段の根拠なくして労働者を第三者のために第三者の指揮下において労務に服させることは許されない。
2.労使間の黙示の合意によつて労働契約の内容となつていると認められる慣行とは、その慣行が企業社会一般において労働関係を律する規範的な事実として明確に承認され、あるいは当該企業の従業員が一般に当然のこととして異議をとどめず、企業内においてそれが事実上の制度として確立しているほどのものであることを要し、従来系列会社への出向が行われ、一般従業員にもその事実が明らかであつても、そのことから直ちに出向の慣行が存するとはいえない。
3.就業規則に「社命により社外の業務に専従するとき」は休職とするとの規定があつても、出向義務に関する直接規定のない以上、右規定を出向義務を創設したものと解することはできない。
4.出向命令が無効な場合、従前の職場以外に勤務する義務の不存在確認の訴は、出向先へ勤務する義務の不存在の確認を求める限度で、その利益がある。
5.就業規則の懲戒規定は、使用者が懲戒権行使につき自律的制限を課したものであるから、右懲戒規定に違反する解雇は無効である。
6.系列会社への出向命令拒否は、懲戒解雇事由たる業務命令違反に当らない。
7.従業員に対する出向命令の無効を前提として、従前の勤務県以外に勤務する義務がないことの確認を求める請求に対し、出向先で勤務する義務がないことの確認の限度で請求を認容することができる。
8.会社から従業員に対する出向命令を無効として、従前の勤務課以外の部署に勤務する義務のないことの確認を求める訴は、出向命令に基づく出向先で勤務する義務のないことの確認を求める限度では理由があるが、他の場所については、現在紛争関係を生じていず、確認の利益を欠くとした事例。
(判例集・解説)
労働関係民事裁判例集17巻2号368頁 判例時報442号16頁 判例タイムズ193号121頁
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