東京都水道局事件 東京地裁判決(昭和40年12月27日)
(分類)
労働時間
(概要)
東京都の水道局の職員が36協定が存しないことを理由に深夜の作業を拒否したところ地方公営企業労働関係法11条1項の「業務の正常な運営を阻害する」行為をなしたとして同法12条1項により解雇されたので、労働契約の存在確認等を求めた事例。
地方公営企業の職員の勤務関係が公私いずれの法的性格を有するかについては、その従事する公務の性質、内容やその労働関係についての実定法の規制のしかた等を配慮して合目的的に判断すべきものと考えるところ、右(1)、(2)に述べたところからすれば、地方公営企業の職員の労働関係は私法的規律に服する契約関係とみるのが相当であり、したがって、原告ら(原告らが企業法36条にいう地公労法の適用を除外される職員に該当しないことは、弁論の全趣旨から双方明らかに争わないものと認められる。)に対する本件解雇が行政処分であるとする被告の主張は、採用の限りでない。
以上に述べたところによれば、36協定を欠く本件時間外作業の実施は労基法上許されないものであって、A支所長の支所職員に対する右作業命令は、労働条件の法定基準を下回る勤務を強制する点において違法であり、職員は右命令に服従する義務を負わないものというべきである。
労基法36条が36協定を各事業場毎に締結すべきものと定めたのは、時間外労働については、各事業場に特殊な具体的事情を考慮する必要があり、また当該事業場の労働者又はその結成する労働組合の意思が重視されなければならないとの趣旨に出たものであって、前掲労働協約の内容も、右法の趣旨を前提としたものにほかならない。従って、仮に被告が主張するようにB労働組合(本部)が局側に対し本件給水作業の実施に全面的協力の意向を表明したとしても、36協定の締結に関し各支部組合員の意思を拘束し得るものでなく、36協定が締結されたと同視し得べき事情にも該当しない。
(関係法令)
労働基準法2章,36条
(判例集・解説)
労働民例集16巻6号1212頁 時報434号9頁 タイムズ187号132頁
新版労働判例百選〔別冊ジュリスト13号〕90頁 月刊労働問題97号86頁
季刊労働法61号96頁 判例評論91号29頁
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