横浜セクハラ事件 東京高裁(平成.9.11.20) 横浜地裁(平成.7.3.24)
(分類)
セクハラ
(概要)
被告:上司である営業所長(親会社からの出向者)
会社 原告:営業所に勤めていた女性
被告は、原告に対し、肩をたたいたり、髪の毛をなでるなどの行為を行った。また、事務所で原告を抱きしめ、「一度抱きしめたかった」などと言いながら、無理矢理キスしたり、身体を密着し、指を股間に入れる等、約20分間にわたって執拗にこれらの行為を続けた。被害者が会社を訴えてからは、仕事をさせないなど嫌がらせを行い、退職に追い込んだ。原告は、慰謝料500万円と弁護士費用を請求。
判決 横浜地裁 原告敗訴
被害者が、抵抗して逃げなかったことが、その理由となった。
事務所内での抱きつき行為について、20分もの長時間、上司のなすがままにされていたこと自体が、考えがたく、そのような被害にあえば冷静な思考、対応をとるのは、不可能であると考えられるのに、原告女性の思考、対応は冷静だったことなどから、女性の供述には信用がおけないなどとされた。
東京高裁 原告逆転勝訴 275万円容認(慰謝料 250万円、弁護士費用 25万円)
原告の供述内容は具体的であり、目撃者等がないことでその信用性が失われるものではない。また、職場における性的自由の侵害行為には、職場での上下関係や同僚との友好関係を保つための抑圧が働き、身体的抵抗をとらない要因となりうることが認められ、原告の供述内容が不自然であると断定することはできない。なお、加害者と出向先の使用者責任は認められたが、出向元企業については責任を負わないとされた。
控訴審判決は、被害女性の供述の信用性につき、アメリカにおける強姦被害者の対処行動についての研究などに基づき、女性の供述に信用性を認めた上で、上司及び会社(使用者責任)に対して275万円(うち25万円は弁護士費用)の支払いを命じた。
なお、会社の労働環境整備についての義務違反を理由とする会社そのものの不法行為責任については、会社がセクハラの事実について確実な証拠を有していなかったことから、これを否定した。
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