特発性血小板減少性紫斑病

 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は、血小板に対する自己抗体(自分の体を攻撃してしまう免疫物質)が血小板に結合した結果、網内系(もうないけい)細胞である組織マクロファージにより貪食(どんしょく)、破壊されて血小板が減少し、出血傾向を来す疾患です。
 日本の年間発生は1000〜2000人、男女比は約1対2で、女性に多い疾患です。ITPによる死亡率は5%以下で、頭蓋内出血および腹腔内出血が主な死因です。

原因
 免疫異常によって産生される血小板に対する自己抗体は、血小板関連免疫グロブリンG(PAIgG)とも呼ばれ、血小板膜に結合し脾臓、肝臓、骨髄の網内系細胞(主にマクロファージ)に貪食され、その結果、血小板が減少します。PAIgGが骨髄巨核球へ結合して巨核球の成熟を障害することも考えられています。
 また、抗血小板抗体により血小板機能異常を来し、出血傾向を助長している可能性もあります。これらの免疫異常の原因は不明です。

症状の現れ方
 ITPは急性型と慢性型に分類されます。急性型は感冒様症状が前駆症状のことが多く、その原因としてウイルス感染症があげられています。慢性型の一部は、ヘリコバクター・ピロリ菌(以下、ピロリ菌)感染が原因といわれています。
 症状は紫斑(しはん)(点状出血あるいは斑状出血)が最も頻度が高く、鼻出血、口腔粘膜出血、血尿、下血がみられることもあります。最近は、出血傾向がみられない時期に、健診で血小板の減少を指摘され診断に至ることもあります。

治療の方法
 急性ITPは6カ月以内に90%以上は自然軽快するので、発症2週間以内の高度の血小板減少による出血症状への対応が大切です。慢性ITPと区別がつかない場合は、慢性ITPの治療指針に準じて対応します。
 慢性ITPでは、最近、ピロリ菌感染がみられる患者さんにピロリ菌除菌で血小板数が上昇することがあることから、治療戦略が見直されています。すなわち、慢性型ITPと診断されたら、ピロリ菌感染の有無を調べ(尿素呼気試験、血清抗体価、便中ピロリ菌抗原など)、陽性であればまず除菌を行います。
 ピロリ菌除菌をしても無効の場合、あるいはピロリ菌が陰性の場合、血小板数が3万μl以上では経過観察、2万μl以下では、スタンダード治療として、まずステロイド療法を行い、反応が悪い場合は脾摘術(ひてきじゅつ)を施行するのが基本的な治療方針です。
 診断時には、基礎疾患の存在が明らかでなくても、副腎皮質ステロイド薬の減量中に基礎疾患が顕在化してくることがあるので注意が必要です。副腎皮質ステロイド薬長期投与の副作用・合併症として、白内障、骨粗鬆症と骨折、感染症、消化管出血、糖尿病、精神神経症状、満月様顔貌などがあります。
 脾摘術は最近は内視鏡的脾摘出術で開始することが多く、開腹脾摘出術へ移行するのは10%程度です。脾摘後の長期経過中に敗血症や髄膜炎などの重篤な感染症がみられることがあり、術前に肺炎球菌ワクチンの予防接種を行います。
 以上の治療法に反応しない難治性ITPに対しては、サルベージ療法(救済的療法)として免疫抑制薬(アザチオプリンあるいはシクロホスファミド)、ビンカアルカロイド、コルヒチン、ダナゾールなどの薬を試みますが、効果は一過性です。

 

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