進行性骨化性線維異形成症

 進行性骨化性線維異形成症(FOP)は、骨系統疾患と呼ばれる全身の骨や軟骨の病気の1つです。
 子供の頃から全身の筋肉やその周囲の膜、腱、靭帯などが徐々に硬くなって骨に変わり、このため手足の関節の動く範囲が狭くなったり、背中が変形したりする病気です。生まれつき足の親指が短く曲がっていることが多いという特徴があります。

 日本における患者さんの数は不明ですが、研究班の調査から、日本における患者数を60~84名と推計しています。
 この病気は特定の国や地域に多いという傾向はなく、世界中でほぼ一定の割合の患者さんがいると考えられています。またこの病気になりやすいという特別な体質などはないと考えられています。

原因
 この病気の原因は、ACVR1(別名ALK2)と呼ばれる遺伝子の一部が正常と異なることであることが分かっています。ALK2はBMPと呼ばれる骨形成因子の信号を細胞内に伝達する受容体であり、ACVR1遺伝子の変化がどのようにして病気を引き起こすかについては研究が進んできています。

 この病気は、常染色体優性遺伝という形で遺伝することが分かっていますが、いわゆる突然変異による患者さんが多く、家族の中で複数の患者さんがいることは実際にはまれです。

症状
 この病気の主な症状である異所性骨化(筋肉やその周囲の膜、腱、靭帯などが硬くなって骨に変わること)は、乳児期から学童期にかけて初めて起きることが多く、まず皮膚の下が腫れたり硬くなったりして、時に熱を持ったり痛みを伴うことがあります。この症状をフレア・アップと呼びます。フレア・アップを繰り返しながら異所性骨化を生じ、手足の関節の動きが悪くなったり、背中が変形したりしますが、フレア・アップが起きても必ず異所性骨化につながるとは限りません。けがや手術などがきっかけとなってフレア・アップが起きることもあります。異所性骨化は背中や首、肩、足の付け根から始まり、徐々に手足の先の方に向かって広がる傾向があります。ですから手の指の動きまで悪くなることは少ない様です。呼吸に関係する筋肉や口を動かす筋肉の動きも悪くなり、呼吸の障害が起きたり、口が開けにくくなったりすることがあります。心臓を含む内臓の筋肉には異所性骨化を生じないとされています。
異所性骨化以外に、足の親指が短く曲がっている、手の親指が短い、手の小指が曲がっている、耳が聞こえにくい、髪の毛が薄くなるなどの症状を示すことがあることが知られています。レントゲンを撮ると膝などに異所性骨化とは異なる骨の出っ張りがあることもあります。
 また、最近は、FOPに症状が似ているが、異所性骨化の程度が軽い、足の親指の変形が軽いなど、同じACVR1遺伝子に変化があるにもかかわらず症状の異なる患者さんがいることが分かってきています。

治療法
 この病気を完全に治してしまう治療法は現在ありません。原因となる遺伝子の変化はわかってきましたが、遺伝子治療は行われていません。

 フレア・アップを生じた際に異所性骨化への進行を防ぐために様々な薬が試みられていますが、明らかに有効であると確認されたものはありません。ステロイド、非ステロイド性消炎鎮痛剤、ビスフォスフォネートなどという薬が使用されています。海外ではフレア・アップを生じた際に骨化を防ぐ可能性がある薬剤の治験が行われています。

 この病気は病名にあるように、徐々に異所性骨化が進行していきます。足の関節が硬くなることにより、歩きにくくなり、杖や車いすが必要になることがあります。またうでの関節が硬くなることにより、食事や洗顔など手を使った身の回りの動作がやりにくくなったりします。呼吸の障害や、口を開きにくいことによる栄養の障害が寿命に関わるとされていますが、栄養の管理などの医療技術の進歩もあり、この病気でありながら50~70歳代で生存している患者さんも確認されています。

 フレア・アップを予防するためには、けがを避ける必要があります。特に転倒、転落はフレア・アップだけでなく、受身の姿勢を取れずに頭などをけがしてしまうこともあるので特に注意が必要です。筋肉内注射は避けるべきですが、皮下注射や静脈注射には問題がないといわれています。従って皮下注射の予防接種は十分に注意すれば問題なく行うことができます。インフルエンザなどのウイルス感染をきっかけにフレア・アップを起こすことがあるといわれています。
 口が開きにくいために歯みがきがおろそかになり虫歯ができると治療がとても厄介です。適切な歯の管理の指導を受けて励行することも大事です。

 

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