発達障害
発達障害とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であって、その症状が通常低年齢において発現するものです。「発達障害」は、発達の遅れという意味ではなく、脳の認知機能のかたよりのために社会不適応を起こす状態をいいます。発達障害は、脳機能の発達が関係する生まれつきの障害です。
発達障害は以下に分類されます。
①広汎性発達障害
コミュニケーション能力や社会性に関連する脳の領域に関係する発達障害の総称です。自閉症、アスペルガー症候群のほか、レット症候群、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害を含みます。
診断を明確に区別する難しさから、重い自閉症から知的に遅れのないアスペルガー症候群までを一つの連続体と捉えた自閉症スペクトラム(ASD)という考え方が一般的になっています。
②注意欠陥多動性障害(ADHD : Attention Deficit Hyperactivity Disorder)
不注意、多動性、衝動性を主な特徴とします。「不注意」とは集中力が続かない、気が散りやすい、忘れっぽいなど、「多動性」とはじっとしていることが苦手で、落ち着きがないなど、「衝動性」とは思いついた行動について、行ってもよいか考える前に実行してしまうなどの特徴です。
③学習障害(LD : Learning Disability)
聞く、話す、読む、書く、計算する、または推論する能力のうち、特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を示します。
④トゥレット症候群
トゥレット症候群(TS:Tourette’s Syndrome)は、多種類の運動チック(突然に起こる素早い運動の繰り返し)と1つ以上の音声チック(運動チックと同様の特徴を持つ発声)が1年以上にわたり続く重症なチック障害です。
⑤吃音
吃音(Stuttering)とは、音の繰り返し、ひき伸ばし、言葉を出せずに間があいてしまうなど、一般に「どもる」と言われる話し方の障害です。
発達障害は脳機能の障害が原因となっています。そのため、自閉症の場合は知的障害を伴う場合もあります。知的障害は発達障害の一つであると言えます。
社会行動やコミュニケーション能力の障害)により対人関係や意思疎通を円滑に行うことができないために日常生活に著しい制限を受ける方」は障害年金を受給できる可能性があります。この「発達障害(社会行動やコミュニケーション能力の障害)により対人関係や意思疎通を円滑に行うことができないために日常生活に著しい制限を受ける方」とは、うつ病や統合失調症などが併存している場合、あるいは重い二次障害があり、日常生活に日常生活に著しい制限を生じている方をいいます。
知的障害の診断は、知能テストなどで測定される「知的能力」と、社会生活を営むために必要な行動をとる力「適応能力」を元にします。一方、発達障害は「コミュニケーション能力」や「適応能力」などで診断します。知的障害と発達障害の診断では、重なる部分もあるのです。
障害の程度 |
障 害 の 状 態 |
1級 |
・発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、またかつ、著しい異常行動がみられるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの |
2級 |
・発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が乏しく、かつ、異常行動がみられるために、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの |
3級 |
・発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が不十分で、また、社会行動に問題がみられるため、労働が著しい制限を受けるもの |
障害手当金 |
- |
知的障害を伴わないアスペルガー症候群や広汎性発達障害については、医学的には先天性であるとされています。幼少期に両親が子供を医師に受診させていた場合には、その時が初診日となり、「20歳前による障害基礎年金」として請求することになります。幼少期から発達障害の特徴である症状が出ていたとしても、そのときには受診せず、20歳以降になって初めて医師の診察を受けたような場合は、その20歳以降に「医師の診察を受けた日」が初診日となります。発達障害で一律に初診日を20歳前にすることが、障害年金の受給権を阻害することにもなるためです(発達障害は知的障害とは扱いが異なります)。20歳前障害による障害基礎年金ではなく、通常の障害年金を請求することになります。
発達障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定します。
発達障害と別の精神疾患が併発しているケースがあります。
・知的障害が3級程度であった人が社会生活に適応できず、発達障害の症状が顕著になった場合は「同一疾病」とします。初診日は誕生日です。
・知的障害を伴わない者や3級不該当程度の知的障害のある人については、発達障害の症状により「別疾病」として扱います。初めて診療を受けた日を初診日とします。初診日証明が必要になります。
・発達障害や知的障害である者に後から統合失調症が発症することは、極めて少ないとされていることから、原則「別疾病」とします。
・発達障害と診断された方が、うつ病などの他の精神疾患を併発した場合は、同一疾病と考えられ、発達障害で初めて受診した日が初診日と扱われます。
・うつ病などの精神疾患診断されていた方が、後から発達障害だと分かった場合は、うつ病等の精神疾患で初めて医師の診察を受けた日が初診日と扱われます(診断名の変更であるとみなされるのです)。
・知的障害である者が、後からうつ病となった場合には、先天性の障害とされ、初診日が「誕生日」と扱います。
「同一疾病」と考えられるケースとしては、発達障害や知的障害の症状の中には、稀に統合失調症の様態を呈すものもあり、このような症状があると作成医が統合失調症の診断名を発達障害や知的障害の傷病名に付してくることがあります。したがって、このような場合は「同一疾病」とされることがあります。
知的障害や発達障害と認定対象とされる精神疾患を併発した場合の初診日の取り扱い
前発疾病 |
後発疾病 |
判定 |
発達障害 |
同一疾病として扱う。(診断名の変更となるが、新たな疾病が発症したものでない。) 統合失調症のほうが初診日 |
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発達障害 |
同一疾病として扱う。(診断名の変更となるが、新たな疾病が発症したものでない。) うつ病のほうが初診日 |
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統合失調症 |
別疾病として扱う。 初診日は別々 (知的障害が原因で統合失調症を発症したと診断された場合は、知的障害のほうが初診日とされる。) |
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知的障害 |
うつ病 |
同一疾病として扱う。 (知的障害が基因で発症したものとして) 誕生日が知的障害としての初診日 |
知的障害 |
神経症で精神病様態 |
基本的に別疾病として扱う。 初診日は別々 知的障害が原因で統合失調症を発症したと診断した場合は、誕生日が知的障害としての初診日とされる。 |
知的障害 |
その他精神疾患 |
原則別疾病として扱う。 |
軽度の知的障害(3級程度) |
発達障害 |
同一疾病として扱う。 誕生日が知的障害としての初診日 |
3級不該当程度の知的障害 |
発達障害 |
別疾病として扱う。 初めて診療を受けた日を初診日(20歳過ぎということがある。) |
発達障害 |
統合失調症 |
別疾病として扱う。 初診日は別々 (知的障害が原因で統合失調症を発症したと診断された場合は、発達障害のほうが初診日とされる。) |
発達障害 |
うつ病 |
同一疾病として扱う。(発達障害が起因で発症したものとして) 発達障害のほうが初診日 |
発達障害 |
神経症で精神病様態 |
同一疾病として扱う。(発達障害が起因で発症したものとして) 発達障害のほうが初診日 |
発達障害 |
その他精神疾患 |
原則別疾病として扱う。 |
たとえ知能指数が高くても、社会行動やコミュニケーション能力の障害により対人関係や意思疎通を円滑に行うことができないために、日常生活に著しい制限を受けることに着目して認定を行います。
発達障害は「アスペルガー症候群」、「自閉症」、「注意欠陥多動性障害(ADHD)」、「学習障害」などがありますが、これらの発達障害でも日常生活や労働に支障が出ていれば障害年金を受給できる可能性があります。
一般に「労働能力がある」という場合は、健常者の方などと同一の労働環境下、同様の仕事をしている場合をいいます。働いているといっても、周りの方の援助や配慮があってなんとか働けている状態なら、障害年金の受給の可能性はあります。職場において、仕事が限定されている、残業(超過勤務)は免除されている、同僚の手を借りながら(同僚に助けてもらいながら)仕事をしている場合など、特別な配慮がなされている場合は「労働能力がある」とはいえないのです。障害者雇用促進法の保護の下や社会復帰施設、就労支援施設、小規模作業所での簡易な軽労働の場合も、「労働能力がある」とはいえません。
発達障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定します。精神の場合には別傷病であっても、病態を分けることができないことが多いので、併合ではなく総合認定で行われる可能性が高いものです。
「病歴・就労状況等申立書」の書き方
自覚症状の程度(生きにくさ)や、二次障害、併存障害についての治療内容・経過、また、認知機能のかたよりによって困難を生じている日常生活状況、生活歴、家族歴、既往歴、幼少期から成人後の症状などについて詳しく、さらに、時系列をまとめた上で書いていかなければなりません。
どのような治療を受けているか(処方薬や精神療法の内容)についても記載する必要があります。うつ病や統合失調症などが併存している場合、あるいは二次障害が重い場合は、処方されている抗うつ薬などを記載する必要があります。処方薬を記載することにより、あなたがどういう状態なのかを把握しやすくなります。
申立書に記載すべき日常生活状況については、発達障害の特性すなわち認知機能のかたよりによる生活の困難、また、併存障害があるために制限されてしまうことを中心に記載していくことになります。たとえば、偏食が激しい方であれば、ストレスと栄養障害によって、抑うつ症状や不安感などの精神症状を引き起こしてしまったり、悪化することが指摘されていますので、偏食(発達障害の特性)について記載する必要があります。金銭管理や対人関係についても同様です。とくに、ことばの裏を読むことが困難なコミュニケーション障害のある人は、人にだまされやすい傾向がありますので、こうしたことも記載する必要があるでしょう。
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