遅刻・早退による賃金の減額

 不就労についていくら賃金カットをするかについては法律の定めはないので、給与規程の定めに従ってカットすることになります。

 賃金はもともと、労働の対価(代償)として支払われるものですから、遅刻、早退等によって労務の提供がなかった時間分の賃金を支給しないことは、「ノーワーク・ノーペイ」の原則に基づくもので問題ありません。

 30分で実際の遅刻を超える分の賃金の減額をするという場合は、就業規則上の制裁金の範囲内であれば違法ではありません。

 「減給の制裁」は、「労務提供がなされ、本来支給すべき賃金の一部を控除すること」ですので、次のような法律上の制限が設けられています。
 (1) 1事案(1件)に対する減給額は、平均賃金の1日分の半額を超えないこと。
 (2) 複数事案に対して減給する場合にも、一賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えないこと。

 

「遅刻・早退3回を欠勤1日とみなす」はよいか?

 1ヵ月の遅刻・早退が3回になったときに、1事案の制裁事由が発生することになりますが、1事案について減給の制裁として控除できる額の上限は平均賃金の1日分の半額に相当します。所定労働時間が1日8時間である場合、4時間分の賃金に相当します。3回の遅刻・早退の合計が4時間以上であれば、1日分(8時間分)の賃金をカットすることは差し支えありません。しかし、3回の遅刻・早退の合計不就労時間が4時間未満の場合に1日分の賃金控除を行うと、4時間を超える時間分の賃金、すなわち平均賃金の1日分の半額を超える額に相当する賃金を控除することになりますので、労働基準法第91条の減給の制裁の制限に抵触することになります。

  「遅刻早退についてその時間に比例して賃金を減額することは違法ではないが、遅刻早退の時間に対する賃金額を超える減給は制裁とみなされ、労基法91条の適用を受ける」(昭26.2.10基収4214号、昭63.3.14基発150号)。

 遅刻や早退に対してペナルティを課すには、就業規則に『遅刻または早退(合理的理由のないもの)が3回以上に及んだときは不就労時間の賃金を控除するほか、平均賃金の1日分の半額を控除する。』のように定めるのがよいと考えます。

 

遅刻時間相当分と残業時間との相殺

 従業員が遅刻したときに、通常の終業時間を繰り下げて労働させ、その時間相当分を当日の残業時間と相殺することが可能です。

 行政解釈では、労働者が遅刻した場合、その時間だけ通常の終業時刻を繰下げて労働させた場合には、1日の実労働時間を通算して8時間を超えないときは、36協定及び割増賃金の必要はない(昭29.12.1 基収)としています。

 就業規則等には、『やむをえない場合は、所定労働時間を繰り下げまたは、繰り上げる場合がある』旨を定めておく必要があります。

 

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