「病歴・就労状況等申立書」の留意すること

 「病歴・就労状況等申立書」は、初診から現在までの状況(発病から初診にいたるまで、初診から請求にいたるまで)の病歴を自ら記入し、申告するものです。傷病についての履歴書のようなものです。

 医師に作成依頼する診断書と異なり、申立書は障害年金請求者(又はそのご家族の方)が作成する書類です。原則請求者本人が作成します。

 発病・初診の確認や傷病の治療経過により、治ゆ、再発などを判断するための有力な判断資料となります。

 一般の方が申請すれば、2級の障害状態にあっても3級と認定されることはよくあります。医師と良く相談し、「診断書」と「病歴・就労状況申立書」を完成させ、障害状態に応じた障害等級の年金を受給することです。

 極力実情をありのまま記載すること。

 傷病の程度を必要以上に重く見せようとして、医師の作成した診断書の内容と矛盾するような記載があると、かえってマイナスになる場合があります。

 

項目ごとの留意点

枚数  右上

 複数枚記入した場合は、順番と記入した枚数を数字で記入します。

(例)全部で2枚作成した場合
 1枚目  NO.1-2枚中
 2枚目  NO.2-2枚中

 

傷病名

 診断書に書かれてある傷病名を転記します。

 

発病日

 その傷病を自覚した日を記入します。

 自覚症状が現れる前に次のようなことがありましたら、その日を記入します。
 ・健康診断で異常が発見された場合  その異常を指摘された検診の日
 ・先天性疾患の場合  症状を自覚したとき、または検査で異常が発見された日
 ・生来性の知的障害(精神遅滞)の場合  出生日
 ・事故に遭った場合  その事故の日

 正確な年月日が分からない場合は、○年△月頃 とします。

 

初診日

 初めて診療を受けた日を記入します。

 受診状況等証明書に書かれている日付を記入。

 証明が出来ない場合、受診状況等証明書が添付出来ない理由書と参考資料を提出し、○年○月頃と記入。

 初めて診療を受けるより前に次のようなことがありましたら、その日を記入します。
 ・健康診断で異常が発見されて療養に関する指示を受けた場合  療養を受けた日
 ・生来性の知的障害(精神遅滞)の場合  出生日

 事故に遭ってすぐに病院に搬送された場合は、発病日と初診日が同一日となります。

 

病歴状況 1~

発病から順番に現在までの状況について、期間をあけずに時系列に記入します。

1 には、傷病の発病日から初診日までの間の状況について記入します。

 受診していないので、「受診していない」を ○ で囲みます。

 その傷病を自覚したとき、事故に遭った時などの状況、先天性かどうかなどを記入します。

 会社の健康診断、人間ドックで指摘を受けたときは、その内容を記入します。

 最後に、初めて受診するきっかけとなったこと等を具体的に記入します。

 

2 以降について

 2 には、初診日に受診した期間について記入します。

 医療機関に受診していた場合は、「受診した」に ○ を付け、医療機関名を書きます。

 医療機関名には、○○病院だけでなく、△△科というように診療科名まで記入します。

 ・自覚症状の程度
 ・入院期間または通院期間
   通院の場合は月平均の受診回数
 ・治療の経過
   投薬治療の場合は薬剤名を記入
 ・医師から指示された事項
 ・その期間の症状の経過とその程度
 ・日常生活や家庭内外との状況
 ・就労や就学の状況
 ・日常生活の影響、不便さ
 ・転医  医師からの紹介
などを記入します。

 1つの病院の期間が長い場合は、3年~5年ぐらいに区切って記入します。

 入学や就職などの人生のイベントで区切ってみます。

 転院や治療中止期間があれば、そこで区切ります。

受診していない期間がある場合
 「受診していない」に ○ を付けます。
 ・中断の期間
 ・中断の理由
 ・自覚症状の程度
 ・日常生活や家庭内外との状況
 ・就労や就学の状況
 ・日常生活の状況
などを記入します。

 受診に中断がある場合、「社会的治癒」の確認もされます。

 社会的治癒を主張する場合には、請求上の初診日を明確にしたうえで、社会的治癒期間の前の病歴ならびに社会的治癒期間の生活および就労状況を記載していきます。社会的治癒を主張する期間については、いかに社会的に問題ない状態だったのかを詳細に記載します。できれば給与明細や上司、同僚等の証明書などその根拠となる資料も添付します。

 受診していなかったが、傷病は継続していたことを主張する場合には、病状のせいで受診できなかったその理由とともに、日常生活能力または労働能力の低下の程度を記載します。

 因果関係のある別の傷病があるときは、その傷病の発症からの病歴を記入します。

 相当因果関係に関して、前後の傷病に相当因果関係があると主張する場合には当然に前発傷病から記載をしていきますが、相当因果関係がないと主張する場合にも、診断書等で相当因果関係が認定される可能性がある前発傷病が記載されている場合には、返戻を避けるため、念の為「相当因果関係はないと考えられるため、初診日は○年○月○日として請求するが、前発傷病の経過については以下のとおりである」などと前置きしたうえで、記載する場合があります。その根拠となる資料の添付も検討します。

障害の程度等について

 診断書に就労状況の経過についての記載欄がないため、休職、退職、復職、転職、制限勤務の有無とその内容、およびそれぞれの期間については、必要だと判断できる範囲で過不足なく記載しましょう。特に、遡及請求の場合には、疾病の継続性をしっかりと申し立てる必要があります。場合によってはその根拠となる資料も添付します。

 精神疾患の例として、会社に在籍しているものの欠勤・遅刻・早退を繰り返したり、休職期間中のケースも多くあります。診断書では、障害認定日から請求日までの休職、退職、復職、転職、制限勤務の内容、およびそれぞれの期間、症状の継続性、日常生活状況等は把握できません。そのため、病歴・就労状況等申立書でこのことも記載し、休職証明や給与明細などの資料も添付しましょう。

 診断書の傷病名が複数あるときは、申立書は原則として傷病ごとに作成します。ただし診断書が複数ある場合でも、傷病が一つならば、病歴:就労状況等申立書は1枚になります。

 一つの傷病を原因として複数の障害が有る場合、診断書と同様に、各々の障害に対して複数枚の申立書が必要です。その障害毎に発症日や受診状況などが異なる場合があるからです。

 以前治癒したはずの傷病が再発又は悪化した場合でも、最初の発病時点から記載する必要があります。

 先天性疾患については、0歳~20歳までの治療経過、症状等を記載します。

 生来性の知的障害(精神遅滞)の場合は、小学校入学前(幼稚園、保育園)、小学校低学年、小学校高学年、中学生、高校生に区切って日常生活や学校での状況などを記入してください。

 1枚で書ききれない場合は、病歴・就労状況等申立書 の続紙 に記入を続けます。

 診断書や受診状況等証明書との整合性に留意して記入します。

 

裏面 就労・日常生活状況

 障害認定日での請求ができる場合は、1.障害認定日(昭和・平成年月日)頃の状況 と 2.現在(請求日頃)の状況 の両方を記入してください。

 

就労していた場合
 どんな仕事をしていたか具体的に記入してください。

職種
 仕事の内容を具体的に記入します。
(例)
  飲食店で接客業務
  工事現場で交通誘導員
  データ入力業務    など

 厚生年金未加入の就業の場合、パート、アルバイトなどと記入します。

 複雑な判断を要する仕事や他人とのコミュニケーションが多い仕事であるほど、障害の程度が低いと判断される可能性が高くなってきます。

 本来はとても就労出来る状態ではないのに、親族が経営する会社に在籍(勤務)している為、従来通りの報酬を得ていた場合は、その旨を正直に記載する方がよい。

 休職、退職、復職、転職、制限勤務の有無とその内容、およびそれぞれの期間については、必要だと判断できる範囲で過不足なく記載。

 「病気休暇」を取っていたり、「状態が悪いのに無理をして働いていた」など、具体的に書きましょう。

通勤について記入して下さい。
 長時間の通勤となるほど、本人の判断を多数要する通勤経路であるほど、障害の程度は低いと判断される可能性が高くなってきます。

 

仕事中、仕事が終わったときの身体の調子がどんなであったか記入してください。

 就業時に苦労したこと、辛かったこと、薬を常用しての就業等、身体の調子などを記入します。

 「頭が重く仕事がはかどらなかった」「勤務後は疲れて寝てばかりいた。」など。

 もし、労働困難な病状を同僚から言われたことがあれば書いておきましょう。

 就労していない(いなかった)場合で、休職中だった場合は、 オ その他(理由  ) に理由を記入してください。

 

日常生活状況  について

 「仮に一人暮らしだったらどの程度できるか」という設問です。

着替え
 本人が季節に応じて、自分で箪笥から長袖やら半袖やらを取り出して着ることができるか。黙っておけば毎日毎日同じ服を着ることはないか。という視点で見てください。

 家族と同居していて食事を作ってくれるから食べられているという場合でも、一人だったら面倒で作れないという時には「自発的にできた」ではないところに ○ を付けることになります。

 目の前に出された食事を食べることは自発的に食事ができるとはいいません。自発的に食事ができるというのは、毎回栄養バランスを考え、献立を考え、火を使って調理をし、盛付けをし、食卓に運び、それを食べ、食べ終わったら台所へ持っていき後片付けをすること。すなわち今現在家族が毎日していることを本人ができて始めて自発的にできたと言います

 

その他日常生活で不便に感じたことがありましたら記入してください。

 日常生活において本人がどのくらいの不自由さを感じているかを記入します。主治医に確認する必要はありません。

 どれだけの症状があって、どれだけ生活に困ったかを、なるべくたくさん思い出して具体的に書きます。生活動作の不自由な事を詳しく書くことが最良かと思います。

記載例
 ・金銭管理が出来なくなり、不要なものを買い込み、 適切な判断が出来ない。
 ・不要な物を買ってしまうので、 金銭管理は家族が管理している。
 ・昼夜が逆転したような生活で、終日横になっている。
 ・通院は妻の同行なしでは行けない。
 ・日常生活のほとんどが援助がなければ自力ではできない。
 ・洗面、入浴といったことも人から言われないとやらないため、身辺の清潔保持ができず、不便を感じています。
 ・調子の悪い日は、1日中寝ていることが多く、起き上がることもできないため、不便を感じています。
 ・うつ病の症状がなかなか改善せず、意欲低下、集中力低下により、就労することもできず、不便な状況が続いています。    など

 

2.現在 (請求日頃)の状況を記入してください。

 次からは現在(請求日・診断書作成日頃)の状況になります。

 

 診断書には就労状況の経過についての記載欄がないため、休職、退職、復職、転職、制限勤務の有無とその内容、およびそれぞれの期間については、必要だと判断できる範囲で過不足なく記載します。

 特に、遡及請求の場合には、疾病の継続性をしっかりと申し立てる必要があります。場合によってはその根拠となる資料も添付します。

 精神疾患の場合、会社に在籍しているものの欠勤・遅刻・早退を繰り返したり、休職期間中のケースも多くあります。診断書では、障害認定日から請求日までの休職、退職、復職、転職、制限勤務の内容、およびそれぞれの期間、症状の継続性、日常生活状況等は把握できません。そのため、病歴・就労状況等申立書でこのことも記載し、休職証明や給与明細などの資料も添付します。

 傷病の具体的状況を記載しようとすると、他人には知られたくないようなことを記載しなければならないことがありますが、極力実情をありのまま記載します。

 傷病の程度を必要以上に重く見せようとして、医師の作成した診断書の内容と矛盾するような記載があると、かえってマイナスになる場合があります。

 厚生年金加入期間中の就労状況について、本来はとても就労出来る状態ではないのに、親族が経営する会社に在籍(勤務)している為、従来通りの報酬を得ていた場合は、その旨を正直に記載する方がよいでしょう。

 医学的・専門的な文言で記載する必要はありません。必要事項を細大漏らさず、簡潔に要領よく、具体的に書きます。

 

 下の署名は、本人自署は押印不要です。

 

(確認)

・裁定請求書、診断書記載の請求傷病すべてについて、「病歴、就労状況等申立書」が請求傷病毎に添付されているか。

・複数傷病名がある場合、それぞれについて「病歴、就労状況等申立書」の記入がされているか。

 例えば、うつ病と脳卒中を併発しているなど障害が複数ある場合、それぞれの傷病について「病歴・就労状況等申立書」が必要です、ただし、複数の障害があっても障害に因果関係が認められる場合は1枚で良いこともあります。

「発病から初診までの状態」

・発病年月日の状態から初診までの経過が記載されているか

 (最初の指摘からの経過が記載されているか。

・先天性疾患の場合、0歳から20歳までの治療経過、症状等が記入されているか

・初診医療機関の受診期間及び受診状況が記載されているか ・医療機関ごとの受診期間が明確に分かるか ・受診していない期間についても記載されているか ・発病から初診までの間に初診医療機関の前に受診した記載はないか

「受診歴」

・病歴、受診歴が長期にわたる場合、3~5年に区切って記入されているか

・受診していない期間についての記入がされているか

・健康診断で指摘を受けたことがある場合、その内容が記入されているか

・「受診状況等証明書」における初診年月日・終診年月日・終診時の転帰と整合性があるか

・就労状況等関係が記載されているか

・認定日請求の場合、障害認定日および請求時のそれぞれの状況の記入がされているか

・請求書、病歴・就労状況等申立書、受診状況等証明書、診断書で経過等(発病・初診に整合性がとれているか

 

 実際に書かれた「病歴・就労状況等申立書」を見てみると、「あちこちの病院をまわった」とか「算数は苦手だった」「わがままで困った」など、親の苦労話や本題とは関係ないことが掛れていることがよくあります。大切なことは、本人の「障害の状況」ですので、発達や学習の遅れ具合など、「本人ができなかったこと」について書いてください。