日常生活能力の程度・判定

精神障害の認定等級の目安

 障害年金の診断書の記載項目にある日常生活能力の程度」の結果と「日常生活能力の判定」の平均を出し、両者を以下のマトリックス表に照らし合わせて等級の目安を出すこととしている。

程度

判定

(5)

(4)

(3)

(2)

(1)

3.5以上

1級

1級

又は2級

     

3.0以上 3.5未満

1級

又は2級

2級

2級

   

2.5以上 3.0未満

 

2級

2級

又は3級

   

2.0以上 2.5未満

 

2級

2級

又は3級

3級

又は非該当

 

1.5以上 2.0未満

     

3級

又は非該当

 

1.5未満

 

     

非該当

非該当

 日常生活能力の程度(5段階評価)
 (1) 精神障害を認めるが、社会生活は普通にできる
 (2) 精神障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には援助が必要である
 (3) 精神障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である
 (4) 精神障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である
 (5) 精神障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の介助が必要である

日常生活能力の判定(程度の軽いほうから1~4の数値に置き換え、その平均を算出
 1 できる
 2 おおむねできるが時には助言や指導を必要とする
 3 助言や指導があればできる
 4 助言や指導をしてもできない

 日常生活能力を見る場合、アパートなどでの一人暮らしでの平均的な日常生活能力が想定されている。「援助」がなければできない場合は、「ひとりでできる」という評価にはならない。

(適用の対象となる主な傷病)
・精神障害
  統合失調症  うつ病  双極性障害  脳動脈硬化症に伴う精神病  アルコール精神病
・発達障害
  アスペルガ―症候群  自閉症  高機能自閉症  自閉症スペクトラム  PDD(広汎性発達障害) 
  ADHD(注意欠陥多動性障害)  多動性障害  LD(学習障害)
・知的障害

 

日常生活能力の程度・判定

 うつ病などの精神疾患の場合は日常生活の状況によって障害等級が決まります。

○日常生活能力の程度 

 「日常生活能力の程度」とは、「日常生活能力の判定」の7つの場面も含めた日常生活全般における制限度合いを包括的に評価したものです。

 この日常生活能力の程度は、5段階で評価されます。あなたがこの5段階のどれに当てはまるか、考えてみてください。

 

一 般 状 態

(1)

精神障害を認めるが、社会生活は普通にできる。

・適切な食事摂取、身辺の清潔保持、金銭管理や買い物、通院や服薬、適切な対人交流、身辺の安全保持 や危機対応、社会的手続きや公共施設の利用などが自発的にできる。あるいは適切にできる。
・精神障害を持たない人と同じように日常生活及び社会生活を送ることができる。

(2)

精神障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には援助が必要である。

・(1)のことが概ね自発的にできるが、時に支援を必要とする場合がある。
・ 一人で外出できるが、過大なストレスがかかる状況が生じた場合に対処が困難となる。
・日常的な家事をこなすことはできるが、状況や手順が変化したりすると困難が生じることがある。身辺の清潔保持は困難が少ない。
 ひきこもりは顕著ではない。
 自発的な行動や、社会生活の中で発言が適切に出来ないことがある。
 行動のテンポはほぼ他の人に合わせることができる。
 普通のストレスでは症状の再燃や悪化が起きにくい。
 金銭管理は概ねできる。
 社会生活の中で不適切な行動をとってしまうことは少ない。

(3)

精神障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。

・(1)のことを行うためには、支援を必要とする場合が多い。
 医療機関等に行くなどの習慣化された外出は付き添われなくても自らできるものの、ストレスがかかる状況が生じた場合に対処することが困難である。
 食事をバランスよく用意するなどの家事をこなすために、助言などの支援を必要とする。
 身辺の清潔保持が自発的かつ適切にはできない。
 対人交流が乏しいか、ひきこもっている。
 自発的な行動に困難がある。
 日常生活の中での発言が適切にできないことがある。
 行動のテンポが他の人と隔たってしまうことがある。
 ストレスが大きいと症状の再燃や悪化をきたしやすい。
 金銭管理ができない場合がある。
 社会生活の中でその場に適さない行動をとってしまうことがある。

(4)

精神障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である。

・(1)のことは経常的な援助がなければできない。
・親しい人間がいないか、あるいはいても家族以外は医療・福祉関係者にとどまる。自発性が著しく乏しい。
 自発的な発言が少なく発言内容が不適切であったり不明瞭であったりする。
 日常生活において行動のテンポが他の人のペースと大きく隔たってしまう。
 些細な出来事で病状の再燃や悪化をきたしやすい。
 金銭管理は困難である。
 日常生活の中でその場に適さない行動をとってしまいがちである。

(5)

精神障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必要である。

・(1)のことは援助があってもほとんどできない。
・入院・入所施設内においては、病棟内・施設内で常時個別の援助を必要とする。
 在宅の場合においては、医療機関等への外出も自発的にできず、付き添いが必要であったり、往診等の対応が必要となる。
 家庭生活においても、適切な食事を用意したり、後片付けなどの家事や身辺の清潔保持も自発的には行えず、常時の援助を必要とする。

 ○日常生活能力の判定

 ここでは診断書による「日常生活能力の判定」について考えてみます。「日常生活能力の判定」とは、日常生活の7つの場面における制限度合いを、それぞれ4段階で評価したものです。

 この日常生活能力の判定を考えるときは、「単身でかつ支援がない状況で生活した場合を想定」して検討する必要があります。もしあなたが家族と一緒に生活しているのであれば、一人暮らしだとしたら日常生活はどうなるかという観点で考えるようにしてください。家族のサポートがある状態で日常生活状況を考えてしまうと、必要以上に日常生活能力を軽く判断してしまいますので、注意が必要です。

 日常生活能力の判定にかかる7項目について、あなた自身がどれに当てはまるか4段階で評価してみてください。

 また、「病歴・就労状況等申立書」の裏面の日常生活状況について、本人が記載するものですが、こちらも診断書と共通する項目があります。

(1) 適切な食事

できる

・栄養のバランスや必要十分な量の食事を自分一人で考え、調理・配膳・後片付けを含め、3食きちんと摂ることができる。

自発的にできるが時には助言や指導を必要とする

・だいたいは自主的に適当量の食事を栄養バランスを考え適時にとることができるが、時には食事内容が貧しかったり不規則になったりするため、家族や施設からの提供、助言や指導を必要とする場合がある。

自発的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる

・3食用意されたものを食べるが、用意をしてもらわないと自ら準備することはできない。
・1人では、いつも同じものばかりを食べたり、食事内容が極端に貧しかったり、いつも過食になったり、不規則になったりするため、助言や指導を必要とする。

助言や指導をしてもできない若しくは行わない

・常に食事へ目を配っておかないと不食、偏食、過食などにより健康を害するほどに適切でない食行動になるため、常時の援助が必要である。

 栄養的にバランスがとれた食事を、自分で用意して食べられるかどうかです。これを単身で生活し、誰からの援助も得られない状態を想定して記入するのです。母親が用意した食事を食べているだけでは「できない」に該当します。
 一人で生活している場合、コンビニで買ってくるという人も、栄養バランスを考えて偏食とならないよう買えているかが問題なのです。いつも同じものしか買わないでは「できない」に近いということになります。

(2) 身辺の清潔保持

できる

・洗面、整髪、ひげ剃り、入浴、着替え等の身体の清潔を保つことが自主的に問題なく行える。
・必要に応じて(週に1回くらいは)、自主的に掃除や片付けができる。
・TPO(時間・場所・状況)に合った服装ができる。

自発的にできるが時には助言や指導を必要とする

・身体の清潔を保つことが、ある程度自主的に行える。
回数は少ないが、だいたいは自室の清掃や片付けが自主的に行える。
・身体の清潔を保つためには、週1回程度の助言や指導を必要とする。

自発的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる

・身体の清潔を保つためには、助言や指導を必要とする。
・自室の清掃や片付けを自主的にはせず、いつも部屋が乱雑になるため、助言や指導を必要とする。

助言や指導をしてもできない若しくは行わない

・常時支援をしても身体の清潔を保つことができなかったり、自室の清掃や片付けをしないか、できない。

 言われなくても自らすすんで入浴をしますか?
 シャンプーを使って洗髪をしますか?
   洗身をせずに湯につかるだけでは「できない」になります。
 注意されなくても季節や気候にあった清潔な服装ができますか?
 シーツや布団は清潔ですか?自室の掃除は自分からしますか?
など考えてください。

(3) 金銭管理と買い物

できる

・金銭を独力で適切に管理し、1ヵ月程度音やりくりが自分でできる。
・1人で自主的に計画的な買い物ができる。

自発的にできるが時には助言や指導を必要とする

・1週間程度のやりくりはだいたい自分でできるが、時に収入を超える出費をしてしまうため、時として助言や指導を必要とする。

自発的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる

・1人では金銭の管理が難しいため、3〜4日に一度手渡しして買い物に付き合うなど、援助を必要とする。

助言や指導をしてもできない若しくは行わない

・持っているお金をすぐに使ってしまうなど、金銭の管理が自分ではできない、あるいは行おうとしない。

 買いすぎてもいけませんが、買わな過ぎるのもいけません。ここで問われているのは、計画的に適切なものを適切な量を自分で判断して買うことができるかです。
 どれを買うべきか迷って買えなくなる人、判断に長い時間がかかる人も少なくありません。こうした場合は「できない」もしくは「助言や指導があればできる」に該当します。

(4) 通院と服薬

できる

・通院や服薬の必要性を理解し、自発的かつ規則的に通院・服薬ができる。
病状や副作用について、主治医に伝えることができる。

自発的にできるが時には助言や指導を必要とする

・自主的な通院・服薬はできるものの、時として病院に行かなかったり、薬の飲み忘れがある(週に2回以上)ので、助言や指導を必要とする。

自発的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる

・飲み忘れや、飲み方の間違い、拒薬、大量服薬をすることがしばしばあるため、経常的な援助を必要とする。

助言や指導をしてもできない若しくは行わない

・常時の援助をしても通院・服薬をしないか、できない。

(5) 他人との意思伝達及び対人関係

できる

・近所、仕事場等で、挨拶など最低限の人付き合いが自主的に問題なくできる。
・相手が伝えようとしていることを理解し必要に応じて自分の意思や意見を相手に伝えられる。

自発的にできるが時には助言や指導を必要とする

・最低限の人付き合いはできるものの、コミュニケーションが挨拶や事務的なことにとどまりがちで、友人を自分からつくり、継続して付き合うには、時として助言や指導を必要とする。
・他者の行動に合わせられず、助言がなければ、周囲に配慮を欠いた行動を取ることがある。

自発的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる

・他者とのコミュニケーションがほとんどできず、近所や集団から孤立しがちである。
・友人を自分からつくり、継続してつきあうことができず、あるいは周囲への配慮を欠いた行動が度々あるため、助言や指導を必要とする。

助言や指導をしてもできない若しくは行わない

・助言や指導をしても他所とのコミュニケーションができないか、あるいはしようとしない。
・隣近所・集団との付き合い・他者との協調性がみられず、友人等との付き合いがほとんどなく、孤立している。

 円滑な会話ができない、人の多いところがだめ、被害的になる、外にほとんど出ない、トラブルを引き起こしがちなどの問題がある場合などは「できない」ことになります。

(6) 身辺の安全保持及び危機対応

できる

・道具や乗り物などの危険性を理解・認識しており、事故等がないよう適切な使い方・利用ができる(例えば、刃物を自分や他人に危険がないように使用する、走っている車の前に飛び出さない、など)。
・通常と異なる事態となった時(例えば家事や地震など)に他人に援助を求めたり指導に従って行動するなど、適正に対応することができる。

自発的にできるが時には助言や指導を必要とする

・道具や乗り物などの危険性を理解・認識しているが、時々適切な使い方・利用ができないことがある(例えば、ガスコンロの火を消し忘れる、使用した刃物 を片付けるなどの配慮や行動を忘れる)。
・通常と異なる事態となった時に、他人に援助を求めたり指示に従って行動できない時がある。

自発的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる

・道具や乗り物などの危険性を十分に理解・認識できておらず、それらの使用・ 利用において、危険に注意を払うことができなかったり、頻回に忘れてしまう。
・通常と異なる事態となった時に、パニックになり、他人に援助を求めたり、指示に従って行動するなど、適正に対応することができないことが多い。

助言や指導をしてもできない若しくは行わない

・道具や乗り物などの危険性を理解・認識しておらず、周囲の助言や指導があっても、適切な使い方・利用ができない、あるいはしようとしない。
・通常と異なる事態となった時に、他人に援助を求めたり、指示に従って行動するな ど、適正に対応することができない。

(7) 社会性

できる

・社会生活に必要な手続き(例えば行政機関の各種届出や銀行での金銭の出し入れ等)や公共施設・交通機関の利用にあたって、基本的なルール(常識化され た約束事や手順)を理解し、周囲の状況に合わせて適切に行動できる。

自発的にできるが時には助言や指導を必要とする

・社会生活に必要な手続きや公共施設・交通機関の利用について、習慣化されたものであれば、各々の目的や基本的なルール、周囲の状況に合わせた行動がおおむねできる。
・急にルールが変わったりすると、適正に対応することができないことがある。

自発的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる

・社会生活に必要な手続きや公共施設・交通機関の利用にあたって、各々の目的や基本的なルールの理解が不十分であり、経常的な助言や指導がなければ、ルールを守り、周囲の状況に合わせた行動ができない

助言や指導をしてもできない若しくは行わない

・社会生活に必要な手続きや公共施設・交通機関の利用にあたって、その目的や 基本的なルールを理解できない、あるいはしようとしない。そのため、助言・ 指導などの支援をしても、適切な行動ができない、あるいはしようとしない。

 何かの会合や懇親の場で、周りの人に配慮した行動ができるかということも社会性の一つです。
 場に合わせた行動ができない、周囲にかまわず料理を食べるといった違和感のある行動も社会性に問題があるということになるでしょう。

 

 

障害年金の不支給率の地域差

 「同じように障害年金を申請した場合でも、支給される地域差があるのではないか?」と言う声に応えるために、厚生労働省は、平成22年~平成24年までの3年間で新規に申請された障害基礎年金の内、不支給となった割合を都道府県ごとに比較しました。

 調査の結果、不支給となった割合が最も高いのが大分県(24.4%)で、最も低いのが栃木県(4.0%)と20.4%もの差があることが判明しました。

 大分県では障害基礎年金を受給しにくく、栃木県は受給しやすいという事になります。

 

 ワースト1位:大分県 24.4%

 ワースト2位:茨城県 23.2%

 ワースト3位:佐賀県 22.9%

 ワースト4位:兵庫県 22.4%

 

 傷病部位ごとの不支給割合では、身体障害などは全国的に同様の結果となりやすく、精神障害・知的障害について特に地域差がみられました。

 

 本来であれば同じような診断書や申立内容であれば、提出する都道府県に関わらず結果は同様でなくてはなりません。なぜこのような地域差は生まれてしまうのでしょうか?

 主な理由としては次の2つが理由として考えられます。

 

原因1 認定基準が不明瞭

 身体障害等の基準は「数値ではっきり」決められているので障害等級の判断が分かりやすいのに対して、精神障害・知的障害は「基準が非常に曖昧」というのが以前から指摘されていました。

 

原因2 審査の場所が違う

 障害年金の審査は、障害厚生年金と障害基礎年金とでは取り扱いが異なります。

 特に、うつ病や双極性障害といった精神障害や知的障害における認定基準が曖昧であるため障害基礎年金では各都道府県におかれた日本年金機構の年金事務センターごとで独自のガイドラインを用いて審査を行ってきました。

 各事務センターでの独自のガイドラインに沿って認定される為、同じような診断書や申立内容であっても、ある地域では支給、ある地域では不支給という不条理な決定がなされてしまったのです。

 

「全国統一のガイドライン」が適用されるとどのような影響があるのでしょうか?

 このガイドライン適用によって「受給率の低下」が心配されています。

 今までは都道府県ごとに各々の基準によって、支給・不支給を決定していましたが、等級判定ガイドラインを適用することによって全国統一の基準によって判定されます。これにより地域差は是正されることになります。そうなると、今まで認定されやすかった地域も今後は認定されにくくなることが予想されるのです。