その他

○障害年金の実地調査が行われた場合の対応方法

 障害年金は原則として提出した書類のみで審査されます。

 しかし、すべての審査を書類のみで行うのは限界があり、例外的に実地調査が行われることがあります。

 障害年金の認定基準には、実地調査について次のように記されています。

 「提出した診断書等のみでは認定が困難な場合又は傷病名と現症あるいは日常生活状況等との間に医学的知識を超えた不一致の点があり整合性を欠く場合には、再診断を求め又は療養の経過、日常生活状況等の調査、検診、その他所要の調査等を実施するなどして、具体的かつ客観的な情報を収集した上で、認定を行う」

 上記の認定基準を根拠に、年金事務所が指定する医師へ再診断を命じたり、初診時と直近の間に受診している医療機関の診断書の提出を求めたりします。

 年金事務所の職員が自宅に来て実地調査を行うこともあります。

 

○審査請求を行なう理由や根拠

 障害年金の審査結果に不服があり、審査請求を行なう理由としてよく見受けられるものは

 「主治医が障害年金を受給できるはずだと言ってくれた。 

 「不支給とされるのは不当だ!」

 「不支給となったことでさらに精神的に不安定となった。障害年金を受給できるはずだ!」

 「障害年金を受給しなければ経済的に大変なんだ!」

など、提出した書類(診断書や病歴・就労状況等申立書)に関係のない事柄や、請求時以降の状況、不支給となった不満などを審査請求をする理由としている方が見受けられます。

 提出した書類のどこに問題があったのか、過去の裁決例や認定基準などと照らし合わせ、どの点を立証すれば容認(不服が認められる)されるのかを考えます。

 また、必要に応じて、追加で提出する書類の取得や医師への相談、意見書の依頼などを行ない、審査請求をする趣旨や理由を記入していきます。

 最初の請求の内容が誤っていた場合、審査請求でそれを主張するより再度障害年金の請求を行う方が合理的です。例えば、診断書作成医が本人の症状や障害状態、日常生活状況、就労状況などを正しく記入しておらず、明らかに実態と異なるような場合です。このような場合には障害年金を再度請求することも可能です。

 書類不備などで返戻された場合に有効なケースがある。 日本年金機構の「障害給付事務取扱要領」でも、不支給・却下処分後において、本人からの申し出により不支給・却下処分に誤りが判明したときには、この処分を取り消し、改めて裁定を行うとされています。

 

 現在、精神障害者の福祉、とりわけ所得の保障というものを考えるとき、手だては生活保護か障害年金ということになる。

 生活保護は広く一般の生活困窮者を対象とする制度であり、障害を持つものに対する特別な所得保障ではない。一方、障害年金は障害者自身の障害の状態に対応したものであり、一定の要件を満たしさえすれば誰でもが受けることができる制度である。  対人関係で緊張を生んだり、集中力が続かない等々の障害を持つ精神障害者にとって「就労」そしてこれによる全生活費の充足というのは困難な場合が多い。

 生活に見合った就労や収入の見通しが立てられない。しかし、障害者年金が受給されることによりある程度の裁量で自立することが可能になる。

 生活費全部を年金でまかなえなくても、年金で半分、就労で半分となると、かなり精神的に軽減される。

 自分の障害を受け止めるという側面もあり、自分なりに生きていくという指針にもなる。しかし、現実には、障害者年金を受けていることに対する社会の偏見や、家族にとって受給することにかなりの抵抗があり、相当な決心を要する場合も多い。

 

 診断書を書く医師をはじめ、地域の保健婦や医療関係者の間でも、障害の捉え方に微妙な食い違いが存在している。それは障害年金を受給するについての見解にも反映する。医師が診断書を書いてくれない。書いても症状のみに終始し、年金の診断書としては不十分なものがあったりという場合もある。

 身体障害者の場合は、本人が希望し要件が揃っていたら障害年金を請求することを止める人はまずいない。しかし、精神障害者の場合は、医療が重視されるあまり、障害者としての位置づけが確かなものになっておらず、社会の中での偏見・差別の存在、明らかな形で示すことのできにくい障害であることなどから、障害年金の申請を決心するまでの過程に障害の受容とは別の問題が存在している。

 

 

 精神障害が10~20歳代発病が多く、見極めが難しいため初診日が遅れたり生活全般が混乱して年金加入の手続きが遅れたりなどの悪条件が重なりやすい。一方、病気の症状は慢性化、長期化しやすくそれゆえの生活面での制限・制約は重い。  したがって、障害の程度は該当しても、もう一つの要件である初診日の時期の問題や保険料納付要件を満たせない場合が生じやすい。

 

 広報活動は、「法律を官報に掲載すれば足り、それ以上はしなくても良い単なる行政サービスにすぎないというものではない」が「法的強制の伴わない広報・周知徹底の責務が認められるにとどまる」と判示されている(永井訴訟:大阪高判平5・10・5)。

 

 厚生労働省は、平成26年7月7日付けで都道府県・中核都市宛てに「障害年金制度の周知について」と題した通達を発信しています。その中で、「障害者手帳を所持している方の中には、障害年金を請求すれば受給できる可能性があるにも拘わらず、その請求を行っていない方がいることが考えられる」として、障害保健福祉担当窓口などでリーフレットを配布してその制度の周知を図るとしています。

 

障害者控除 

 税法上の「障害者」に該当すると、一定の所得控除が受けられます。 また、ご本人に他の収入がない場合でも、ご家族に扶養されている税法上の控除対象配偶者や扶養親族などである場合には、そのご家族が「障害者控除」を受けることができます。

 ここでいう「障害者」とは以下の人をいいます。

1. 常に精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態にある人

2. 児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医の判定により、知的障害者と判定された人

3. 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人

4. 身体障害者福祉法の規定により交付を受けた身体障害者手帳に、身体上の障害がある人として記載されている人

5. 精神又は身体に障害のある年齢が満65歳以上の人で、その障害の程度が(1)、(2)又は(4)に掲げる人に準ずるものとして市町村長等や福祉事務所長の認定を受けている人

6. 戦傷病者特別援護法の規定により戦傷病者手帳の交付を受けている人

7. 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律の規定により厚生労働大臣の認定を受けている人

8. その年の12月31日の現況で引き続き6ヶ月以上にわたって身体の障害により寝たきりの状態で、複雑な介護を必要とする人

 

 18歳未満は障害児として障害者総合支援法の給付を受けられるようになります。

 障害者総合支援法は障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律である。

 障害で失われた機能を補い、社会的障壁を除去することにより自立した日常生活及び社会生活を営むことを目的としている。

 自立支援給付と地域生活支援事業を規定している。

自立支援給付は、

①障害福祉サービス

②地域相談支援・計画相談支援

③自立支援医療

④補助具

が対象となる。

 

 

年金生活者等支援臨時福祉給付金

 「一億総活躍社会」の実現に向け、賃金引き上げの恩恵を受けにくい年金受給者などの高齢者の生活を支援するため、平成27年度の市民税(均等割)が課税されていない65歳以上の方への給付金が実施されました。

 

高齢者向け給付金 

 平成27年1月1日を基準日として以下の要件を満たす方のうち、平成28年度中に65歳以上となる方(昭和27年4月1日以前に生まれた方)

・市町村の住民基本台帳に登録されている方 ・平成27年度の市民税(均等割)が課税されていない方(ただし、平成27年度の市民税(均等割)が課税されている方の扶養親族等になっている方を除く) ・生活保護及び「中国残留邦人等の円滑な帰国の促進並びに永住帰国した中国残留邦人等及び特定配偶者の自立の支援に関する法律」による支援給付を受けていない方 ・日本国籍を有していない方は、中・長期在留者、特別永住者などに該当する方

 

障害・遺族年金受給者向け給付金  

 平成27年1月1日を基準日として以下の要件を満たす方のうち、平成28年度中に65歳以上となる方(昭和27年4月1日以前に生まれた方)

・市町村の住民基本台帳に登録されている方

・平成27年度の市民税(均等割)が課税されていない方(ただし、平成27年度の市民税(均等割)が課税されている方の扶養親族等になっている方を除く)

・生活保護及び「中国残留邦人等の円滑な帰国の促進並びに永住帰国した中国残留邦人等及び特定配偶者の自立の支援に関する法律」による支援給付を受けていない方

・日本国籍を有していない方は、中

・長期在留者、特別永住者などに該当する方

支給額  支給対象者1人につき3万円(1回限り)

支給開始時期  支給決定後に6月から順次支給を開始

 

国民年金保険料

 平成28年度 16,260円

 これをまとめて先払いする方式(前納)にすると割引があります。

平成28年度における前納額

(1)6ヵ月前納(平成28年4月~9月分、平成28年10月~平成29年3月分)  

口座振替:96,450円(1,110円割引)  

現金納付:96,770円(790円割引)

 

(2)1年前納(平成28年4月~平成29年3月分)

口座振替:191,030円(4,090円割引)

現金納付:191,660円(3,460円割引)

 

 平成26年4月から、2年度分の保険料を口座振替でまとめて納める「2年前納」が始まりました。

 口座振替のみ2年前納(平成28年4月~平成30年3月分)制度があります。

 

 このほか、口座振替では各月の保険料を当月末までに振り替える「早割」があります。

 月額は50円お得な16,210円(平成28年度)となります。

 平成26年4月からは、過去2年1ヵ月分の免除申請ができるようになりました。

 

 

 障害基礎年金を受給する人(60歳未満)は国民年金保険料が法律で定める「法定免除」に該当し、全額免除されることになります。

 保険料を前納した後に法定免除に該当するようになった場合に、仮に前納した保険料があったとして還付されなかったのが、平成26年4月から前納した保険料のうち免除に該当した月以降の分に係るものについては還付が可能となりました。

 

 法定免除遡及該当の場合に保険料納付済期間とする取扱い 遡及して法定免除となった場合に、当該法定免除となった期間の分として免除該当後に納付されていた保険料が、本人が特に希望する場合には、当該期間を保険料納付期間として取り扱うことが可能となりました。

 法定免除該当期間のうち平成26年4月以後の期間のうち、本人が申し出した期間について保険料を納付することができるようになりました。

 保険料の納付申出を行った場合は、付加保険料の納付(原則65歳から国民年金に上乗せしてもらえる付加年金の保険料)または国民年金基金の加入を行うことができます。

 納付申出後、保険料を未納にして時効(保険料の納期限から2年間)が成立すると、その期間は未納期間となります。時効成立後に申し出ても法定免除期間とすることはできません。

 納付申出期間は、申請免除・納付猶予や学生納付特例の申請を行うことができます。

 

国民年金は国が行っている事業ですが、事業に係る費用、つまりお金はどのように賄われているのでしょうか

1 まず「保険料」があります。 国民年金の第1号被保険者が月々納める国民年金保険料です。

2 つづいて、「基礎年金拠出金」があります。 これは、厚生年金保険の被保険者や共済組合の組合員など加入者が間接的に負担しているものです。たとえば、厚生年金保険の被保険者は厚生年金保険料を事業主とともに負担していて、国民年金保険料は納めていませんが、厚生年金保険料などで賄われている厚生年金保険制度から、国民年金保険料に相当するものとして分担金のような形で拠出されています。簡単に言ってしまえば、厚生年金保険の被保険者が厚生年金制度を経由して国民年金制度に拠出しているわけです。

3 次に「国庫負担」です。つまり、税金などが財源です。これは国民年金の給付費にも賄われていて、これにより、国民年金保険料が全額免除とされた期間についても、年金給付を受けることができる理屈になっています。

4 さらに「積立金の運用収入」があります。

 

厚生年金被保険者の拡大

 平成28年10月から、短時間労働者への社会保険(健康保険・厚生年金)の適用拡大が実施されることになっています。

 これまで厚生年金に未加入であった次の労働者にも適用されることになりました。

 従業員が501人以上(現行の適用基準で適用となる被保険者数)の事業所を対象に、次の1.2.3.全てに該当する人(学生は除く)が対象です。

 1. 週所定労働時間20時間以上

 2. 賃金月額8万8千円以上(年収106万円以上)

 3. 勤務期間1年以上見込み

 

 今回は約25万人程度の労働者が対象となる見込みと報道されています。

 また、500人以下の企業も労使合意に基づき企業単位で適用拡大できるようです。

 

介護保険制度

 介護保険制度とは、65歳以上の第1号被保険者と40歳以上64歳までの第2号被保険者で構成され、市町村を保険者として要介護のリスクに対応するものである。

 この制度は、要介護認定を受けて要介護・要支援と認定された人が給付の対象となる。

 介護保険制度で提供されるサービスには、(1)居宅サービス、(2)施設サービス、(3)地域密着型サービスがある。

 居宅サービスには、訪問介護(ホームヘルプサービス)、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所介護(デイサービス)、通所リハビリテーション、短期入所生活介護・短期入所療養介護(ショートステイ)、特定施設入所者生活介護(有料老人ホームやケアハウスでの介護)、福祉用具貸与,特定福祉用具販売,住宅改修であり、これらのサービスをマネジメントする居宅介護支援(ケアマネジメント、要支援の場合は介護予防支援)がある。

 要支援者には同様のサービスが予防給付として提供される。

 要介護の場合には、施設サービスとして介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設に入所するサービスが受けられる。

 施設サービスは、要支援の場合は受けられない。

 地域密着型サービスとは、住み慣れた地域での生活を続ける支援サービスで、市町村が指定・監督を行うサービスであり、小規模多機能型居宅介護、夜間対応型訪問介護、認知症対応型通所介護、認知症対応型共同生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護がある。

 介護保険制度のサービスは、介護報酬に基づいて算定され、1割の自己負担がある。

 住宅改修はこの限りではない。

 居宅介護支援(ケアマネジメント、要支援の場合は介護予防支援)は自己負担がない。

 要介護状態等の区分,要介護度に応じて,支給限度額が設定されている。

 支給限度額を超えた場合には、自費でサービスを受けることになる。

 

 介護保険制度の財源は、保険料と公費負担である。

 介護保険の保険料は、第1号被保険者の場合には年金保険から天引きされる特別徴収が一般的であり、第2号被保険者の場合は医療保険と一緒に徴収される。

 

介護保険の被保険者と介護サービスを利用できる人

 介護保険には、40歳以上の人が全員加入します。介護サービスを利用できる人は、年齢によって2つのグループに分けられています。

(1)第1号被保険者(65歳以上) 介護サービスを利用できる人:

 介護が必要であると「認定」を受けた人(介護が必要になった理由は問わない)

(2)第2号被保険者(40~64歳) 介護サービスを利用できる人:  

 介護保険で対象になる病気が原因で「認定」を受けた人

※介護保険で対象となる病気 ・がん末期・関節リウマチ・筋萎縮性側索硬化症・後縦靱帯骨化症・骨折を伴う骨粗しょう症・脊髄小脳変性症 ・初老期における認知症・パーキンソン病関連疾患・脊柱管狭窄症・早老症・多系統萎縮症・閉塞性動脈硬化症 ・糖尿病性神経障害,糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症・脳血管疾患・慢性閉塞性肺疾患・両側の膝関節または股関節の著しい変形を伴う変形性関節症

 特定疾病とは、加齢との因果関係が認められる疾病であって、医学的概念を明確に定義できるもので、その状態が3~6ヵ月以上継続する割合が高いと考えられる疾病です。  特定疾病の判断は、主治医意見書をもとに認定審査会で判断されます。

 

 介護サービスの利用を検討する場合 介護保険のサービスを利用するためには、要介護(要支援)の「認定」を受ける必要があります。「要介護認定・要支援認定申請書」と「申請される方への確認事項」・「認定調査連絡票」の3点に必要事項を記入のうえ、介護保険被保険者証を添えて(40歳から64歳までの方は医療保険証のコピーも必要)、介護保険担当の窓口にて申請してください。

 

公的扶助の仕組み

 公的扶助制度は社会保障制度の一つとして、社会保険制度と並び国民・住民生活を保障するものである。

 社会保険制度は、生活上の困難がもらたす一定の事由(保険事故)に対して、保険技術を用い、被保険者があらかじめ保険料を拠出し、保険者が給付を行う公的制度であり,防貧的機能を有している。

 それに対して、公的扶助制度は、国民の健康と生活を最終的に保障する制度として位置づけられる。

 その特徴として、

・貧困・低所得者を対象としていること

・最低生活の保障を行うこと

・公的責任で行うこと

・資力調査あるいは所得調査をともなうこと

・租税を財源としていること

・救貧的機能を有していること

などが挙げられる。

 

 公的扶助制度は、大きくは資力調査を要件とする貧困者対策と所得調査(制限)を要件とする低所得者対策の2つがある。

 貧困者対策には、生存権を実現する生活保護制度がある。生活に困窮している国民すべてに対して、健康で文化的な最低限度の生活を保障する制度であり,その上で積極的にそれらの人々の社会的自立を促進する相談援助・支援活動を行うよう定められている。

 低所得者対策には、公的扶助と社会保険の中間的性格を持つ社会手当制度、民生委員の相談援助活動を通して資金の貸付を行う生活福祉資金貸付制度、低所得層を中心に住宅を提供する公営住宅制度等がある。

 

生活保護制度の仕組み

1 生活保護制度の目的・原理・原則

 生活保護法は、憲法に定める生存権を実現するための制度として制定されている。

 生活保護法第1条にて「この法律は、日本国憲法第25条に規定する理念に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする」とされている。

 すなわち、生活に困窮している国民に対して、健康で文化的な最低限度の生活を保障(所得保障を指す)するだけでなく、さらに積極的にそれらの人々の社会的自立を促進する相談援助・支援活動(生活保護法では「自立助長」と条文規定している。対人サービスを指す。)を行うことが示されている(法第1条)。 

 また、同制度では、次の3つの基本原理を定めている。

1. すべての国民は,この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護を無差別平等に受けることができる(無差別平等の原理 法第2条)。

2. 保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない(最低生活保障の原理 法第3条)。

3. 保護は、生活に困窮する者がその利用し得る資産、労働能力、その他あらゆるものを、その最低限度の生活のために活用することを要件とし、また、民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われなければならない(補足性の原理 法第4条)。

 そして、その運用に当たっては、次の4つの原則を定めている。

1. 法は申請行為を前提としてその権利の実現を図ることを原則としている。一方、保護の実施機関は、要保護者の発見、あるいは町村長などによる通報があった場合適切な処置をとらなければならない(申請保護の原則 法第7条)。

2. 厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基に、そのうちその者の金銭または物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行う(基準及び程度の原則 法第8条)。

 現行の保護基準は,最低生活に必要な費用を各種の扶助ごとに金額で示しているが、この基準は保護が必要かどうかを判定するという機能も有している。

 つまり、保護基準は、保護の支給基準であると同時に保護の要否の判定基準ともなっている。

1. 保護が要保護者の年齢別、健康状態といった個々の事情を考慮したうえで有効適切に行われなければならない(必要即応の原則 法第9条)。

2. 保護の要否や程度を世帯単位で判定して実施する。つまり,個々の困窮者には保護の請求権があるが、その者が生活困窮に陥っているかどうか、あるいはどの程度の保護を要するかという判断は、その者の属している世帯全体について行う(世帯単位の原則 法第10条)。

 

2 生活保護の種類と方法

 生活保護法は、その前提要件として、収入、資産、能力を活用し、さらに私的扶養、他の法律による給付を優先して活用し、それでもなおかつ生活に困窮する場合に初めて保護を適用する仕組みである。

 生活保護法で定める保護の種類は、8種類の扶助(生活扶助 住宅扶助 教育扶助 介護扶助医療扶助 出産扶助 生業扶助 葬祭扶助)に分けられている。

 保護は必要に応じて1種類(単給という)から2つ以上の種類の扶助が受けられる(併給という。)。

 給付は金銭給付を原則とし、それにより難い場合には現物給付を行っている。

 扶助の種類別でみれば、医療扶助と介護扶助においては、給付の性格上、現物給付で行っている。それ以外は金銭給付の方法で行うことを原則としている。

 介護保険法の制定にともない創設された介護扶助は、保険の1割負担部分と入所者生活費(従来の施設入所への入院患者日用品費に相当するもの)に対応する。

 一方、介護保険料は生活扶助で対応する仕組みとなっている。

 また、生活保護は居宅保護を原則としている。しかし、それにより難い場合には施設にて保護を行う。

 生活保護法で規定されている保護施設には、救護施設、更生施設、医療保護施設、授産施設、宿所提供施設の5種類があり(法第38条)、それぞれ施設の目的・対象・機能が違っている。

 

 生活保護世帯には次のような負担の軽減や免除があります。

・国民健康保険料(税)が免除になります

・国民年金保険料が法定免除されます

・上下水道が減免されます

・固定資産税が免除される場合があります

・医療費が無料になります

 

 障害年金を受給することができる人は、まず障害年金を優先的に受給し、その上でその人の最低限度の生活をする上で不足するものを生活保護として受けることになります。

 障害年金の受給額が生活保護の支給額よりも多くなれば、生活保護は支給されなくなります。

 障害年金と生活保護は同時に受給できますが貰える金額はトータルでは変わりません。

 

 生活保護には「障害者加算」の制度があり、障害等級1級または2級の障害年金を受給している人には生活保護に加算が行われますので生活水準は向上するといえます。例えば1級在宅者で障害年金1級の人は26,750円/月、2級の

 

3 被保護者の権利・義務

 生活保護を受けている者(被保護者)は、特別な権利を与えられている一方、義務も課せられる。

 被保護者の権利には次のものがある。

1. 正当な理由がないかぎり、すでに決定された保護を不利益に変更されることがない(不利益変更の禁止 法第56条)。

2. 保護金品を標準として、租税その他の公課を課せられることがない(公課禁止 法第57条)。

3. すでに給付を受けた保護金品、またはこれを受ける権利を差し押さえられることがない(差押禁止 法第58条)。

 また、被保護者の義務には,次のものがある。

1. 保護を受ける権利を譲り渡すことはできない(譲渡禁止 法第59条)。

2. 常に能力に応じて勤労に励み、支出の節約を図り、その他生活の維持、向上に努めなければならない(生活上の義務 法第60条)。

3. 収入、支出その他生計の状況について変動があったとき、または、居住地もしくは世帯の構成に異動があったときは、速やかに,福祉事務所長にその旨を届け出なければならない(届出の義務 法第61条)。

4. 福祉事務所長が行う生活の維持、向上、その他保護の目的達成に必要な指導に従わなければならない(指示等に従う義務 法第62条)。

 

4 費用の返還と徴収

 次のような場合、保護費の返還と徴収が行われる。

1. 急迫した事情などにより資力があるにもかかわらず保護を受けた場合(法第63条)

2. 届出の義務を、故意にこれを怠ったりあるいは虚偽の申告をした場合など不正な手段により保護を受けた場合(法第78条)

 なお、不正受給については、単に費用徴収にとどまらず、その理由によっては、生活保護法の罰則規定(法第85条)あるいは刑法の規定に基づき処罰を受けることもある。

1. 扶養義務者が十分な扶養能力を有しながら扶養しなかった場合

 この場合は、その扶養義務者の扶養能力の範囲内で、保護のために要した費用の全部または一部を徴収されることがある(法第77条)。

 

5 不服の申立て

 当然受けられるはずの保護が正当な理由もなく行われなかった場合は、行政上の不服申立てによる救済の途が認められている。

 それは次の二つの段階がある。

1. 福祉事務所長の行った保護開始・申請却下,保護停止・廃止などの決定に不服がある者は、都道府県知事に対し審査請求を行うことができる(審査請求 法第64条)。

2. 都道府県知事の裁決に不服のある者は、さらに厚生大臣に対して再審査請求を行うことができる(再審査請求 法第66条)。

また、都道府県知事の裁決を経た後は、裁判所に対して訴訟を提起することができる。

 

6 生活保護の実施

(1) 生活保護の実施機関としての福祉事務所

 福祉事務所は、社会福祉法において「福祉に関する事務所」と規定されている。

 生活保護法、児童福祉法、身体障害者福祉法、老人福祉法、知的障害者福祉法、母子及び寡婦福祉法のいわゆる福祉六法を中心に、援護、育成または更生の措置に関する業務を行っている第一線の総合的な社会福祉行政機関である。すなわち、生活保護の実施機関という側面と、福祉各法(福祉五法)の実施機関としての側面を併せ持っている。

 都道府県、指定都市、市及び特別区においては義務設置、町村は任意設置である。職員として福祉事務所長のほか、査察指導員、現業員及び事務職員を置くことになっており、対人援助に当たる職員は社会福祉主事資格を有する者が当たることになっている。

 

(2) 生活保護の実施

生活保護の決定実施過程は、受付 → 申請調査 → 要否判定 → 決定(開始・却下)→ 支給(変更・停止)→ 廃止のプロセスをとる。

原則として要保護者(生活困窮状態にある者)が申請を行い、保護の実施機関が保護の要否の調査、保護が必要な場合その種類、程度及び方法を決定し給付を行う。

保護の要否を判定し決定・実施する機関は、申請者の居住地または現在地(居住地がないか明らかでない場合)を所管する福祉事務所であり、そこが実施責任を負う。

福祉事務所では、申請を受け付けると地区を担当しているソーシャルワーカー(社会福祉主事)が家庭訪問などを実施し、保護の要否を調査する。これが補足性の原理を満たしているかどうかを確認するためのミーンズ・テスト(資力調査)である。

この調査結果に基づいて、原則として世帯を単位に保護の要否を決定し、それを申請者に文書で通知する。この通知は申請があった日から14日以内にしなければならないとなっているが、特別な理由がある場合は延長し、30日以内に行うこととなっている。

保護の要否や程度は、保護基準によって定められたその世帯の最低生活費と収入認定額とを対比させることによって決められる。そこで認定された収入が保護基準によって定められたその世帯の最低生活費を満たしていない場合に、その不足分を扶助費として給付する。

 

低所得対策

 低所得対策には、主として社会手当制度、公営住宅制度、生活福祉資金貸付制度がある。

(1) 社会手当制度

 社会手当は社会保険と公的扶助(生活保護制度)の中間的性格を持つ、無拠出の(すなわち保険料などを納めなくても受け取ることができる)現金給付を指している。それは、所得制限のある選別的手当と所得制限のない普遍的手当に分かれ、わが国の支給する社会手当は、恩給や戦争犠牲者援護などを除き社会手当である。

わが国の社会手当としては、児童手当、児童扶養手当、特別児童扶養手当、特別障害者手当、障害児福祉手当などがある。

 (2) 公営住宅制度

 低所得者を対象に住宅を提供することを目的としており、母子世帯、高齢者、心身障害者などを対象とした住宅や低家賃住宅などがある。

 1996(平成8)年の公営住宅法改正により、所得制限別の第1種、第2種の区分を撤廃、事業主体の民間住宅の買い取り借り上げが可能となったこと、社会福祉法人が公営住宅を住宅として使用できるようになるなど、その内容も変わってきた。

(3) 生活福祉資金貸付制度

 生活福祉資金貸付制度は、低所得世帯や障害者、高齢者、失業者世帯などを対象として、低利子もしくは無利子で生活に必要な資金を貸し付ける制度である。

 生活福祉資金の種類は、総合支援資金、福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金である。

 生活福祉資金貸付制度の実施は都道府県社会福祉協議会である。貸付業務の一部は市町村社会福祉協議会に委託している。

 利用者に対する相談業務については、市町村社会福祉協議会の担当職員だけでなく、地域の民生委員が担っている。特に、民生委員は制度発足から重要な役割を担っており、申込みに関する相談だけでなく、世帯の調査や貸付世帯への日常的な訪問を通し必要な援助活動を行っている。

 

マイナンバー(個人番号)は、国民一人ひとりが持つ12桁の番号です

マイナンバーは今後、下記のような社会保障、税、災害対策の行政手続で必要になります。

1 社会保障

 年金の資格取得や確認、給付 雇用保険の資格取得や確認、給付 医療保険の給付請求 福祉分野の給付、生活保護 など

2 税

 税務当局に提出する確定申告書、届出書、調書などに記載 税務当局の内部事務 など

 

3 災害対策

 被災者生活再建支援金の支給 被災者台帳の作成事務

 ただし、社会保障・税・災害対策分野の中でも、法律や地方公共団体の条例で定められた行政手続にしか使えません。つまり、社会保障や税金の手続きであれば全ての場面で使うことができるわけではなく、あくまで法律で定められた範囲のみで使用が認められています。