大阪工業大学事件 大阪地裁判決(昭和59年2月1日)

(分類)

 雇止め

(概要)

 期間を1年とする雇用契約を締結後半年の期間延長を経て雇止めされた大学の臨時職員たる守衛が、右雇用契約は正職員となることを予定して締結されており、期間の設定は便宜上のものにすぎないから、右雇止めは理由がなく雇用は有効に存続しているとして雇用契約上の地位確認等求めた事例。

 右人事課長の言辞は、一般論としての本件雇用契約更新の可能性を述べたに過ぎないものというべきであって、右言辞を、原告に対し、臨時職員という雇用形態にかかわらず、毎年契約更新を続ける等により、実質的に期間の定めのないものとして取扱うことを約束する趣旨のもの、とみることはできない。  また、原告が採用された被告守衛職については、確かに被告は当初期間の定めのない専任職員の採用を予定する等、原告勤務予定の守衛の職務自体の臨時性はみられないし、原告が当時被告人事課長から就職を紹介されたその外の職種はいずれも右専任職員を採用予定のものばかりであった、といえるが、そのような事情の下で、被告が、敢えて、臨時職員としての守衛として原告を採用したということは、期限の定めについて意味を持たせる趣旨であった、と考えられ、また、被告において、当時、臨時職員としての守衛も予定されていなかった訳ではないから、被告が専任職員の採用予定でいた等の右事情があったからといって、本件雇用契約における臨時職員としての期間の定めが単に形式だけのものに過ぎないとはいえない。  更に、原告の当時の事情からみても、本件雇用契約当時、他でどの程度勤務していたか必ずしも明らかではないが、少なくとも、将来雇用継続されるはっきりした保証がない限り被告には就職しなかったといえる程の安定した勤務先を持っていたとは、到底みられないから、原告が臨時職員という不安定な形では被告に就職することがありえないことを前提にした推論をすることはできない。右の認定・検討によれば、本件主張立証上、本件雇用契約が、当初原告・被告とも毎年の更新を予定したものであったとか、原告が右更新を期待するにつき合理的理由があったとか、いえるだけの事情は見当らず、この点に関する右原告の主張は、右のとおり、いずれの点をとっても、根拠とする事実を欠き、或いは、根拠とならない事実を前提とするもので、採用することができない。従って、本件雇用契約の右雇用期間経過による終了の関係につき、これを雇い止めとして解雇の法理を類推適用する余地はない、というべきである。

(関係法令)

 国家公務員法60条

(判例集・解説)

 労働判例430号71頁  労経速報1190号6頁

 

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