京都セクシュアルハラスメント(呉服販売)事件 京都地裁判決(平成9年4月17日)

(分類)

 セクハラ

(概要)

 女性社員の異性関係等を他の社員の面前で公然発言した取締役につき、損害賠償が請求され、また女子更衣室にビデオを設置して密かに撮影していた社員の行為に関連して会社の債務不履行責任(職場環境整備義務違反)が肯定された事例。

 前記1、4で認定したとおり、被告Y1は被告会社の取締役であって、代表取締役である被告Y2の親族でもあり、その発言は社員に大きな影響を与えるから、被告Y1は、不用意な発言を差し控える義務があるというべきである。また、不用意な発言をした場合には、その発言を撤回し、謝罪するなどの措置を取る義務があるというべきである。それにもかかわらず、前記3、4で認定したとおり、被告Y1は、朝礼において、本件Y1発言に引き続いて原告は被告会社で勤務を続けるか否か考えてくること、今日は今すぐ帰っても良い旨発言して、原告に対して退職を示唆するような発言をしたうえ、そのため社員が原告との関わり合いを避けるような態度を取るようになり、人間関係がぎくしゃくするようになったことから、原告にとって被告会社に居づらい環境になっていたのに、何の措置も取らなかったため、原告は退職しているから、被告Y1は、原告の退職による損害を賠償する責任を負う。

〔中略〕  被告会社は、雇用契約に付随して、原告のプライバシーが侵害されることがないように職場の環境を整える義務があるというべきである。そして、前記2で認定したとおり、被告会社は、被告会社の女子更衣室でビデオ撮影されていることに気付いたのであるから、被告会社は、何人がビデオ撮影したかなどの真相を解明する努力をして、再び同じようなことがないようにする義務があったというべきである。それにもかかわらず、前記2で認定したとおり、被告会社は、ビデオカメラの向きを逆さにしただけで、ビデオカメラが撤去されると、その後、何の措置も取らなかったため、再び女子更衣室でビデオ撮影される事態になったのであるから、被告会社は、債務不履行により、平成7年6月ころに気付いた以降のビデオ撮影によって生じた原告の損害を賠償する責任を負う。〔中略〕

 被告会社は、雇用契約に付随して、原告がその意に反して退職することがないように職場の環境を整える義務があるというべきである。そして、前記1、4で認定したとおり、本件Y1発言によって、社員が原告との関わり合いを避けるような態度をとるようになり、人間関係がぎくしゃくするようになったので、原告が被告会社に居づらい環境になっていたのであるから、被告会社は、原告が退職以外に選択の余地のない状況に追い込まれることがないように本件Y1発言に対する謝罪や原告は被告会社で勤務を続けるか否か考えてくること、今日は今すぐ帰っても良い旨の原告に対して退職を示唆するような発言を撤回させるなどの措置を取るべき義務があったというべきである。それにもかかわらず、前記4で認定したとおり、被告会社が何の措置も取らなかったため、原告は被告会社に居づらくなって退職しているから、被告会社は原告の退職による損害を賠償する責任を負う。

(関係法令)

 民法44条1項 415条 709条 715条

(判例集・解説)

 タイムズ951号214頁  労働判例716号49頁
 法律時報70巻7号93~96頁  労働法律旬報1441号20~25頁

 

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