平和産業事件 神戸地裁決定(昭和47年8月21日)

(分類)

 解雇

(概要)

 路上教習の指導中、追突事故のためむちうち症を負った自動車学校の技能指導員が、通院加療を継続中に、欠勤過多等を理由として、懲戒解雇されたので、従業員としての地位保全、賃金仮払の仮処分を申請した事例。  (申請認容)

 労働基準法19条1項は、その本文において、使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のため休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない旨定めているが、そこにいう業務上の負傷又は疾病とは、労働者が使用者の指揮命令下にある労働状態の際に、その労働状態に附随して惹起された負傷又は疾病をいい、休業とは、労働者が業務上の傷病を理由にそれが回復しない間に解雇されると新たな職場を見つけることが極めて困難であって労働者の生活を脅やかすことを考えると、必ずしも傷病後解雇にいたるまで全部休業することは必要ではなく、一部休業でも足りるというべきであり、又、同条の解雇制限は、同条が同法20条1項但書と異り、「労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合」を除外していないから、通常解雇のみならず懲戒解雇をなす場合にもその適用があるというべきである。(中略)

 してみると、本件の場合、債権者の負った傷害は、業務上の傷病であって、追突事故後の休業はいずれもその傷病に起因することが一応認められるうえ、会社のなした懲戒解雇の意思表示は、業務上の傷病の療養のためにする休業後30日間内になされたものであることが明らかであるから、その意思表示は労働基準法19条1項本文に違反して無効というべきである。

(関係法令)

 労働基準法19条

(判例集・解説)

 時報694号113頁

 

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