日産自動車家族手当請求事件 東京地裁判決(平成1年1月26日)

(分類)

 均等

(概要)

 共働きの女子従業員が被告会社の家族手当支給規程のもとで家族手当の支給を拒否されたのは不当な女子差別であるとして、家族手当等を請求した事例。  (棄却(控訴))

 憲法14条は法の下における平等の基本的原理を定め、これを受けた労働基準法3条及び4条の規定の下においては、同一の労働について性別を理由として賃金の差別を行うことが許されないことは明らかである。したがって、就業規則をはじめ賃金等にかかる諸規程を作成するに当たっても男女平等を旨とすべきことはいうまでもない。しかして、被告会社が本件規程第2条において「家族手当は第3条に掲げる親族を実際に扶養している世帯主である従業員に対し支給する。ただし、独身の従業員が両親、兄弟姉妹を扶養する場合には必ずしも世帯主であることを要さない。」と定めていることは当事者間に争いがないところ、《証拠略》によれば、被告会社においては、従前より賃金規則において扶養家族1人につき均一の手当額を定め、これに扶養家族数を乗じて手当額を算出するという方式はとらず、別表(6)「年度別家族手当支給額表」記載のとおり扶養家族の数が増加するに従って扶養手当の総額を一定額まで増額するが、第2、3被扶養者に対する手当の額は第1被扶養者のそれより少額とする方式を採用していたため、仮に共働き夫婦に分割申請を認めると右方式によることが困難になり、夫又は妻のいずれか1人が従業員として働き他の1人が無職である場合に比べ扶養家族数が同一であっても、多額の家族手当を支給しなければならないことになって公平を欠く結果をもたらし、また支給事務も煩雑になるため、家族手当の支給対象者を夫又は妻のいずれか1人に絞る必要から、本件規程第2条のような規程としたものであることが明らかである。しかして、被告会社におけるような家族手当額決定方式を採る限り、共働き夫婦による分割申請を認めず支給対象者を1人に絞ることはやむを得ないものというべきである。(中略)家族手当の受給者を実質上の世帯主即ち一家の生計の主たる担い手とする被告会社の前記運用は、本件規程第2条本文の「家族手当は第3条に掲げる親族を実際に扶養している世帯主である従業員に対し支給する。」との文言に反するものではないし、また、本件家族手当が設けられた目的及びその法的性質即ち本件家族手当が扶養家族の員数によって算出されるなど、家族数の増加によって生ずる生計費等の不足を補うための生活補助費的性質が強い事実に鑑みると、家族手当を実質的意味の世帯主に支給する被告会社の運用は強ち不合理なものとはいい得ない。

 さらにまた、右の基準を夫又は妻のいずれか収入の多い方に支給するとすることは、一家の生計の主たる担い手が何人であるかを判定する具体的運用としては明確かつ一義的であり、前記のように分割申請を認めないことに合理的理由がある以上、これまた必ずしも不合理なものとはいい難い。

(関係法令)

 労働基準法4 

(判例集・解説)

 労働民例集40巻1号1頁  時報1301号71頁  タイムズ694号114頁  労働判例533号45頁 
 ジュリスト945号131~133頁  月刊法学教室105号90~91頁  季刊労働法153号115~120頁  
 判例時報1315 221~225頁  季刊労働法152号154~155頁 
 ジュリスト臨時増刊957 200~202頁  判例タイムズ臨時増刊735

 

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