橘屋事件 大阪地裁判決(昭和40年5月22日)

(分類)

 労働時間  賃金

(概要)

 1日8時間を超えて行われた労働につき、超過部分に対し割増賃金を請求した事例。  (請求認容)

 右のとおり、原告らの労働時間が、いわゆる夏場にあっては10時間、冬場にあっては12時間ということになると、右労働時間の定めは労働基準法第33条、第36条所定の手続を経たものでないかぎり(右手続が経由されていないことは被告の認めるところである)、同法第32条にいわゆる1日8時間労働の原則に反することは明らかである。そうすると、同法第13条により、原告らの被告会社における労働時間の定めは、1日8時間とする契約に修正されるものと解すべきである。  ところで、労働時間を前記の通り修正した上で労働契約を有効とする場合に、賃金がどうなるかは一つの問題である。一般に賃金は常に労働時間に比例して定められるものとはいえないから、労働の性質や契約内容などから時間給であることが明らかな場合の外は、賃金の部分については影響がないものと解するのが相当である。
 同法第37条によれば、同法第33条及び第36条の条件を具備した時間外労働には使用者は割増賃金の支払義務のあることは明らかであるが、右条件を充足しない違法な時間外労働に対しては法は明示するところがない。しかしながら、適法な時間外労働に対し割増賃金の支払義務があるならば、違法な時間外労働をさせた場合にはより一層強い理由でその支払義務を認めるのが当然であるから、同法第37条は前記条件を具備しない場合にも、時間外労働に対し割増賃金の支払義務を定めたものと解するのが相当である。

(関係法令)

 労働基準法13条,33条,36条,37条

(判例集・解説)

 労働民例集16巻3号371頁  タイムズ178号174頁
 月刊労働問題106号128頁

 

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