豊田自動織機製作所事件 名古屋高裁判決(昭和48年3月15日)

(分類)

 退職

(概要) 

 佐藤首相訪米阻止闘争にともなう行為により逮捕・勾留され、長期欠勤にともなう自動退職扱につき、権利濫用として退職効果は発生しないとした事例。

 本件退職規定は、事故欠勤が一か月に及んだときでも、前示特別事由があるときは、退職の効果が生じないことを規定したものと解すべきであるが、それとともに、連続事故欠勤が退職事由とされた趣意に照らし、右時点において特別事由があれば、爾後事故欠勤期間は不定ないし無期限(就労障害が一時的なものと客観的に判断されるといっても、それはあくまで推測的判断にすぎないものであるから、必ずしも当初の判断どおりの期間で該障害が消失するとは限らない。)となると解するのは相当でなく、控訴会社において延長すべき相当な期間を定めることができ、もし控訴会社においてこれを定めないときは更新されること(延長または更新期間終了時において特別事由があるときはさらに延長または更新が繰り返えされることとなるが、前示業務外傷病の場合の退職猶予期間との対比においてその繰り返しには限度がある。いい換えれば、就労の障害が一時的なものかどうかは連続事故欠勤の開始時を基準として判断することとなるというべきである。)を規定したものと解するのを相当とする。(中略)

 被控訴人の事故欠勤(被控訴人は、本件退職規定にいう「特別の事由」に関してであるが、被控訴人に対する勾留は不可抗力に当る旨主張するが、勾留が違法不当なものである場合においてはこれを不可抗力といいうるとしても、被控訴人に対するそれが違法不当なものであったことを認めるに足る疎明はない。)が1か月に達する昭和45年9月30日当時被控訴人において就労の意思を有していたことは明らかであるとともに、就労の障害となっていた勾留による身柄拘束が保釈により近い将来とかれ、就労の見込みがあったと認められるから、本件退職規定にいう「特別の事由が認められないとき」に当らないこととなる。いい換えれば、1か月の事故欠勤期間満了によっては退職の効果は生ぜず、その期間は更新されたものというべきである。そうして、更新された該期間内に被控訴人は勤務場所とされた東京出張所に労務の提供をしたが、控訴会社により拒絶されているのであるから、欠勤状態は解消し、本件退職規定による退職の効果発生の余地はないものである。

(関係法令)

 労働基準法2章

(判例集・解説)

 労働判例183号51頁

 

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