岩手銀行女子賃金差別事件 控訴審判決仙台高等裁判所(平成4年1月10日)
(分類)
賃金
(概要)
1.銀行が扶養親族を有する世帯主たる行員に支給してきた家族手当等が、労働基準法11条にいう「労働の対償」としての賃金に当たるとされた事例。
2.労働基準法4条に違反する就業規則等の効力。
3.給与規程中の家族手当等が支給される世帯主について定めた「その配偶者が所得税法に規定されている扶養控除対象限度額を超える所得を有する場合は、夫たる行員とする。」との規定等が、労働基準法4条に違反し、民法90条により無効であるとした事例。
4.給与規程中、扶養親族を有する世帯主たる行員に対しては家族手当等を支給するが、配偶者が所得税法上に規定されている扶養控除対象限度額を超える所得を有する場合は夫を世帯主とするとの定に基づき、共働きの女性行員に対し家族手当等の支給を拒否したことについて、男子行員に対しては妻に右扶養控除対象限度額を超える収入があつても、家族手当等を支給するのに、共働きの女子行員に対しては実際に子を扶養するなどしていても、夫に右限度額を超える収入があると、それを支給しないとする取扱は、男女の性別のみによる賃金の差別扱であるとして、このような取扱を定めた前記規定部分は労働基準法4条に違反し、民法90条により無効であるとされた事例。
5.家族手当等は、具体的労働に対する対価(報酬)という性格を離れ、生活扶助給付、生活補助給付という経済的性格をもつものであるが、支給条件、基準等について裁量の余地はなく、所定の要件を具備する者に対しては法的に一律の支払義務を負うもので、労働基準法11条にいう「労働の対償」に当る賃金であるとされた事例。
6.労働基準法4条は、憲法14条1項の理念に基づき、これを賃金について具体的に規律具現した強行規定であり、公序に関する規定であると解されるから、労働基準法4条に違反する就業規則およびこれによる労働契約の賃金条項は、民法90条(1条の2)により無効である。
7.銀行の給与規定において、扶養親族を有する世帯主に支給する家族手当等について、配偶者が所得税法に規定されている扶養控除対象限度額を超える所得を有する場合は夫を世帯主とすると規定している場合について、この規定によって、男子行員に対しては妻に収入があっても家族手当等を支給するのに、共働きの女子行員に対しては夫に所定額以上の収入があると家族手当等を支給しないとする取扱いは、男女の性別のみによる賃金の差別扱いであって、合理的根拠もなく、右給与規定部分は、労働基準法4条に違反し、民法90条により無効である。
8.銀行が扶養親族を有する世帯主たる行員に支給してきた家族手当等が、労働基準法11条にいう「労働の対償」としての賃金に当たるとされた事例。
9.労働基準法4条に違反する就業規則等の効力。
10.給与規程中の家族手当等が支給される世帯主について定めた「その配偶者が所得税法規定されている扶養控除対象限度額を超える所得を有する場合は、夫たる行員とする。」との規定等が、労働基準法4条に違反し、民法90条により無効であるとした事例。
(判例集・解説)
判例時報1410号36頁 労働関係民事裁判例集43巻1号1頁
判例タイムズ777号87頁 労働判例605号98頁
労働経済判例速報1449号10頁
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