三菱樹脂事件 最高裁 昭48.12.12

(分類)

 採用  均等  解雇

(概要)

 憲法19条および14条は、国または公共団体の統治行動に対して個人の基本的な自由と平等を保障する目的に出たもので、私人相互の関係を直接規律することを予定するものでないとするもの。

 また、憲法上の基本権保障規定をそのまま私人相互間の関係についても適用ないしは類推適用すべきものとすることは、決して当を得た解釈ということはできないとするもの。

 企業者は経済活動の一環として契約締結の自由を有し、いかなる者をいかなる条件で雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定できるとするもの。また、企業者が労働者の採否決定に当たり、労働者の思想、信条を調査し、その者からこれに関する報告を求めることも違法でないとするもの。

 試用契約の性質について、就業規則の文言、実情、慣行によって判断すべきであるが、本件は、解約権留保付きの雇用契約であり、本採用の拒否は留保解約権の行使すなわち解雇であるとするもの。また、この場合の留保解約権の行使は通常の解雇の場合よりも広い範囲で解雇の自由が認められるとしつつ、解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し、社会通念上相当として是認される場合、すなわち、企業者が採用決定後の調査結果により、または、試用中の勤務状態等により、当初知ることができず、又は知ることが期待できないような事実を知るにいたった場合に、その事実に基づきその者を引き続き雇用することが適当でないと判断することが相当であると認められる場合に行使できるとするもの。

 学生時代の政治活動及び団体役員経験を秘匿して採用された者対して試用期間満了直前に本採用拒否を通告したことについて、一定の事実の秘匿を理由とする解雇権の行使が許されるかどうかは、秘匿の事実の有無、程度、その入社後の行動、態度の予測、人物評価への影響、企業の採否決定に有する意義等を考慮する必要が有る等として、「通常の会社では入社試験の際に思想、信条に関する事項を申告させることは公序良俗に反して許されない。」として労働者を勝訴させた控訴審判決を破棄差戻ししたもの。

(関係法令)

 労働基準法  憲法

(判例集・解説)

 民集27・11・1536  

(関連判例)

 大日本印刷事件 最高裁第2小(昭和54・7・20)  
 大林ファシリティーズ事件 最高裁第2小(平成19.10.19)
 富士重工業事件 最高裁第3小(昭和52・12・13)
 炭研精工事件 最高裁第1小(平成3・9・19)
 十勝女子商業事件 最高裁第2小(昭和27・2・22) 
 神戸弘陵学園事件 最高裁第3小(平成2・6・5)  

 

労働相談・人事制度は 伊﨑社会保険労務士 にお任せください。  労働相談はこちらへ

人事制度・労務管理はこちらへ