久我山病院事件 東京地裁判決(昭和35年6月13日)

(分類)

 退職金

(概要)

 被告を退職した従業員が就業規則の退職金規程に基づき退職金を請求した事例。

  (請求認容)

 退職金について使用者が就業規則中に規定を設けて、あらかじめその支給条件を明確にし、その支払が使用者の義務とされている場合には、退職金は賃金の一種に属するものとみるべきであり、従って労働者が退職した場合における賃金の支払の確保を図ろうとする労働基準法第23条の関係部分の規定はかかる退職金の支払について適用されるべきものというべきである。しかしながら同条第一項前段は、使用者の負担する賃金債務ですでに履行期の到来したものについて、権利者から請求があったときにおいて7日以内にその支払をしなければならないことを規定したものであることが明らかであるところ、被告の就業規則第六十四条の規定は、被告の義務にかかる退職金の支払期日自体について定めをしたものとみるべきであるから、労働基準法第23条第1項に反するものでもないし、又もとより公序良俗に反するものともいえないので、これを無効とするいわれはないのである。
  被告の就業規則第64条において「退職金は発令後6ケ月以内の期間に支払う。但し情況により変更することができる。」旨規定されていることは、当事者間に争いがないところ、右但書は、本文において定められているところに従って退職金の支払をなし得ないことが相当であると認められる情況のある場合に限り、当該退職者に対する被告の一方的意思表示によって本文所定の支払期間を変更することができることを規定したものと解するのが相当である。

(関係法令)

 労働基準法23条1項

(判例集・解説)

 労働民例集11巻3号628頁  法律時報375号97頁

 

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