国鉄レッド・パージ事件 東京地判決(昭和45年6月30日)

(分類)

 解雇  懲戒

(概要)

 定員法に基づき免職処分に付された国鉄職員らが、右免職処分は思想、信条による差別待遇にあたり無効である等として、処分後9年余を経て処分の無効確認を求めた事例。  (請求却下)

 おもうに、日本国有鉄道(以下単に国鉄という。)とその職員との勤務関係は、私企業とその労働者との勤務関係と本質的には同様の性質をもち労働契約にもとづくものであり、ただその労働関係については公労法の、その分限、懲戒等については国鉄法の各適用を受ける点で特殊性を有するにすぎないと考えられる。従って、国鉄職員に対する免職等の不利益処分は、これを抗告訴訟によって争わせる旨の実定法の定めのない限り、同様な法関係は同様な法原則に服せしめるという一般原則からいって、私企業の労働者に対する解雇についてと同様民事訴訟によって争わせるのが法の趣旨であると解するのが相当であるところ、(中略)。実定法上、国鉄職員に対する国鉄法29条による免職処分については、例えば国家公務員や地方公務員に対する不利益処分の場合(国家公務員法92条の2、地方公務員法51条の2参照)とは異なり、これを抗告訴訟によって争わせる趣旨の規定はないから、これを抗告訴訟の対象となる「処分」と解することは困難である。(中略)  そうすると、国鉄法29条にもとづく右免職が「処分」であることを前提としてその無効確認を求める原告X1の訴えは、その余の点について判断するまでもなく不適法といわざるをえない。
 おもうに、定員法にもとづく免職が「処分」とされる理由の一つは、これについて早期に不可争力を生じさせ法律関係の安定を図ろうとするところにあると考えられるのみならず、そもそも労使の法律関係というものはこれを早期に安定させる必要が存在するのである(労働組合法27条2項、公労法25条の5第4項、労働基準法115条参照)。しかも、本件のように免職処分を受けた者が異議をとどめず退職金等を受領し、その後長期にわたって右処分の効力を争わないときは、企業側において、労働関係が消滅したものと信じてその上に新たな企業組織を形成し、企業活動を展開してきたとしても、もっともなことであるから、そのような場合に免職処分を受けたものが長期間を経てから突如その無効を主張して訴えを提起することは、労働関係上の権利の行使としてはもとより訴権の行使としてもあまりにもし意的であり、信義にもとる行為であるといわなければならない。  そうであるとすれば、原告X2らの本件訴えは、前示のような事実関係に照らし考えるとき、信義則に反する訴権の行使として不適法とみるのが相当である。

(関係法令)

 日本国有鉄道法29条  民法1条2項

(判例集・解説)

 時報606号92頁  タイムズ251号237頁

 

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