住友重機玉島製造所事件 岡山地方裁判所(昭和54年7月31日)

(分類)

 整理解雇

(概要)

1.会社が経営危機の状況にあり雇用維持努力の一環としてやむをえず命じた職種変更を伴う出向を正当な理由なく拒否した労働者を、「正当事由なく出向に応じられなかった者」との整理解雇基準該当者として解雇したことには必要性、合理性があるとされた事例。

2.整理解雇は、

 (1) 企業が高度の経営危機下にあり、その実施が必要やむをえないものであること、

 (2) 解雇に先立ち余剰労働力吸収のための努力が尽されたこと、

 (3) 整理基準の設定、適用が客観性、合理性に欠けるものでないこと、

 (4) 右(1)の経営危機の実態と整理解雇の必要性、右(3)の整理基準等につき労働者側に十分の説明を加え協議を尽したこと、

 以上の要件を欠くときは解雇権の濫用であり無効である。

3.

(1) 整理解雇実施の4年余以前に懲戒処分(出勤停止)を受けた労働者、および、配転を拒否して懲戒解雇され、後日会社組合間の交渉により右配転に応じた結果それが出勤停止処分に変更された労働者を整理解雇基準該当者としたことが合理性に乏しく、かつ、苛酷に失するとされた事例。

(2) 無届欠勤を事故欠勤2日と換算する取扱を整理解雇基準に導入する必然性があるとはみなし難いとして現実の欠勤日数に着目し、それが整理解雇基準を上回ること僅少であり、整理解雇実施の前年においては零であることを理由に右基準を適用してなされた解雇の効力を否定した事例。

(3) 会社が経営危機の状況にあり雇用維持努力の一環としてやむをえず命じた職種変更を伴う出向を正当な理由なく拒否した労働者を、「正当事由なく出向に応じられなかった者」との整理解雇基準該当者として解雇したことには必要性、合理性があるとされた事例。

(4) 「勤労意欲にかけ業務に不熱心な者及び勤務成績の不良な者」の整理解雇基準を適用し定期昇給成績査定の低位の者を該当者として選定したことにつき、解雇されなかった者との考課点数差が僅少であり、評定者の主観の混入が疑われるのみならず、右基準該当者が併存する2労働組合中の1組合の組合員に極端に集中している等の観点から、その選定に公平および合理性が乏しいとして解雇の効力を否定した事例。

(5) 廃止された不採算事業部門に所属する者を整理解雇基準該当者としたことにつき、教育訓練等による職種転換により雇用維持の努力を会社に期待すべきであるとして、右解雇の効力を否定した事例。

(判例集・解説)

 労働判例326号44頁  労働経済判例速報1023号3頁

 

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