障害年金の給付制限
○全面的な制限(故意の保険事故)
故意に障害またはその直接との原因となった事故を生じさせた者の当該障害については、これを支給事由とする障害年金は支給しない。
○全部または一部の制限
故意の犯罪行為もしくは重大な過失により、または正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、障害若しくはその原因となった事故を生じさせ、または障害の程度を増進させた者の当該障害については、これを支給事由とする給付は、その全部または一部を行わないことができる。
○障害厚生年金の額の改定制限
障害厚生年金の受給権者が、故意若しくは重大な過失により、または正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、その障害の程度を増進させ、またはその回復を妨げたときは、第52条第1項の規定による改定を行わず、またはその者の障害の程度が現に該当する障害等級以下の障害等級に該当するものとして、同項の規定による改定を行うことができる。
○保険財政に関する制限
保険料を徴収する権利が時効によって消滅したときは、当該保険料に係る被保険者であった期間に基づく保険給付は、行わない。ただし、当該被保険者であつた期間に係る被保険者の資格の取得について、第27条の規定による届出または第31条第1項の規定による確認の請求があった後に、保険料を徴収する権利が時効によって消滅したものであるときは、この限りでない。
○協力義務に関する制限
年金たる保険給付は、次の各号のいずれかに該当する場合には、その額の全部または一部につき、その支給を停止することができる。
・受給権者が、正当な理由がなくて、第96条第1項の規定による命令に従わず、または同項の規定による当該職員の質問に応じなかつたとき
・障害等級に該当する程度の障害の状態にあることにより、年金たる保険給付の受給権を有し、または第44条第1項の規定によりその者について加算が行われている子が、正当な理由がなくて、第97条第1項の規定による命令に従わず、または同項の規定による診断を拒んだとき
・前号に規定する者が、故意若しくは重大な過失により、または正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、その障害の回復を妨げたとき
○保険給付事務に関する制限
受給権者が、正当な理由がなくて、第97条第3項の規定による届出をせず、または書類その他の物件を提出しないときは、保険給付の支払を一時差し止めることができる。
違法薬物や自殺未遂による場合
1 覚醒剤使用により障害が発生した場合
自らの意思で覚せい剤などを使用したことによる後遺症については、障害年金は支給されないということになります。
ただし、強迫や暴力により強制的に使用させられた場合は故意にあたらないので支給の対象となります。
病名が覚せい剤精神病など以外でも、医師が薬物使用との因果関係を認めていれば後遺症とみなされます。
元々の持病である精神障害により判断能力が失われ、違法薬物を使用してしまった場合は、この行為が故意であったかがポイントとなります。元々の精神障害により判断能力がない状態での使用であれば故意による給付制限の対象とすることはできないと考えられます。
過去に覚せい剤の使用歴がある人が統合失調症になってしまった場合は、病気の症状が覚せい剤の使用と因果関係があるかがポイントとなります。中毒症状がみられず、医学的に因果関係が認められない状態の場合は給付制限の対象とはなりません。
2 自殺未遂の場合
「故意とは自分の行為が必然的に障害又は死亡等の一定の結果を生ずべきことを知りながらあえてこれをすること」としています。
自殺は故意の犯罪行為もしくは重大な過失に該当しません。自殺が未遂に終わり、結果として障害が残った場合は給付制限は受けないものとなります。
ただし、障害年金を受給することが目的で自殺未遂を行った場合は、給付を制限されてしまうということです。
3 アルコール中毒による精神障害
アルコールを摂取すること自体は合法ですので、給付制限はありません。
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