労働基準法の休憩
労働基準法上の休憩時間とは、労働時間の途中に置かれた労働者が権利として労働から離れることを保障された時間をいいます(昭22.9.13基発17号)。
休憩時間には、単に作業に従事しないいわゆる「手待時間」は含まれません。
使用者は、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければなりません。
この規定は、ある程度労働時間が継続した場合に蓄積される労働者の心身の疲労を回復させるため、労働時間の途中に休憩時間を与えるべきことを規定したものです。
労働時間が6時間を超える場合とは、始業後6時間を経過した際に少なくとも45分の休憩を与えなければならないという意味ではなく、一勤務の実労働時間の総計が6時間を超え8時間までの間は、労働時間の途中に少なくとも45分の休憩を与えなければならないということです。
6時間以下の労働時間の場合は休憩を与える必要はありません。
労働時間が8時間を超える場合は、少なくとも1時間の休憩を与えなければなりませんが、8時間を超える時間が何時間であっても1時間の休憩を与えれば問題ありません。したがって、午前8時から午後5時までの8時間労働(午後0時から1時まで休憩時間)の場合、休憩時間がすでに1時間あるため、以後休憩を与えずに深夜まで労働させても、労働基準法に違反するものではありません。しかし、適度な休憩は与えるべきでしょう。(昭和22年11月27日 基発401号、昭和26年10月23日 基収5058号)
労働基準法では、休憩時間について、
(1) 労働時間の途中に与えること
(2) 一斉に休憩を与えること
(3) 自由に利用できること
の3つの原則を定めています。
それぞれについてみていきます。
1.労働時間の途中に与えること
休憩時間は労働時間の途中に与えなければならないこととなっています。始業前や始業後に与えることはできません。
2.一斉に休憩を与えること
休憩はみんな一緒に休憩時間を分割してとることは可能ですが、一斉付与の原則といって、労働者全員が一斉に休憩をとることになっています。
一斉休憩除外の許可は、おおむね次のような場合が該当します。
① 交替制によって労働させる場合
② 石油コンビナート、原子力発電所等での計器監視その他危害防止上必要であるもの
③ 同一事業所内で作業場を異にする場合で業務の運営上必要なもの
ただし、同一作業場内であっても、休憩の自由利用が妨げられずに、かつ、労働強化にわたることがないと認められる実態を備えている場合に限っては、一斉休憩除外の許可が与えられます。
休憩時間を一斉に与えることについて、運輸交通業や販売業などのように、休憩を一斉に付与することが業務の円滑な運営に支障があると客観的に判断されるような場合は、労使協定を締結することにより一斉に与えないことができます。
・一斉に休憩することで公衆に不便がある業種
・運輸・販売・金融・映画・郵便・通信など
労働基準法第34条(休憩) |
労使協定の締結(平成11年1月29日 基発45号)
労使協定には、一斉に休憩を与えない労働者の範囲及び当該労働者に対する休憩の与え方について定めなければならないものであること。
ここでの労使協定には、休憩時間を交替で与える社員の範囲や、休憩時間の与え方などについて記載することになります。
労働基準監督署への労使協定書の提出は必要ありません。
休憩時間の交替制が必要な事業の場合には、その規定を就業規則の中にも追加しておきましょう。
就業規則規定例 第○条(休憩時間) |
次の事業は、労使協定がなくても一斉に与えないことができます。
(厚生労働省令で別段の定めをすることができる事業)
① 道路、鉄道、軌道、索道、船舶又は航空機による旅客又は貨物の運送の事業
② ドック、船舶、岸壁、波止場、停車場又は倉庫における貨物の取扱いの事業
③ 物品の販売、配給、保管若しくは賃貸又は理容の事業
④ 金融、保険、媒介、周旋、集金、案内又は広告の事業
⑤ 映画の製作又は映写、演劇その他興行の事業
⑥ 郵便、信書便又は電気通信の事業
⑦ 教育、研究又は調査の事業
⑧ 病者又は虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業
⑨ 旅館、料理店、飲食店、接客業又は娯楽場の事業
⑩ 焼却、清掃又はと畜場の事業
この規定は、原則的な労働時間制、休憩時間の一斉付与等の規定をそのまま適用すると、公衆に不便をもたらしたり、不都合が生じたりする事業があることから、その調整を図るため、一定の事業について、その適用の特例を定めているものです。
3.自由に利用できること
労働者は休憩時間を自由に利用することができます。休憩時間が労働から解放される時間である以上当然といえますし、さらに、休憩の実をあげるためには、休憩時間の自由な利用を認めることが必要になるからです。
権利として労働から離れることを保障されているか否かは、労働者がその時間を自由に利用できるかどうかという観点から判断するとされています(昭和39.10.6基収6051号)。
こうした自由利用を保障された休憩が与えられなかった場合には、それによる精神的苦痛について慰謝料請求が認められる場合があります(住友化学工業事件 最高裁 昭54.11.13)。
休憩所などが整備されている場合は、そこで休憩することを就業規則で定めて、外出の制限をすることは可能となります。
事業場内において自由に休憩できる場合は、休憩時間中の外出について所属長の許可を受けさせることは、必ずしも違法にはならないとされています。
一定の範囲の外出のみ許可制にすることで、休憩時間の自由利用は認めつつ、必要な管理のみ行うようにすることができます。(昭和23年10月30日 基発1575号)
就業規則規定例 第○条(休憩時間) |
次の労働者には、例外として休憩時間を自由に利用させないことができます。
① 警察官、消防吏員、常勤の消防団員、児童自立支援施設に勤務する職員で児童と起居をともにする者
② 乳児院、児童養護施設、知的障害児施設、盲ろうあ児施設、肢体不自由児施設に勤務する職員で児童と起居をともにする者
次の者には休憩を与えなくても差し支えありません。
① 運送事業や郵便事業に使用される者のうち列車、気動車、電車、自動車、船舶又は航空機の乗務員(機関手、運転手、操縦士、車掌、列車掛、荷扱手、列車手、給仕、暖冷房乗務員、電源乗務員、鉄道郵便乗務員)で長距離にわたり継続して乗務する者
航空機に搭乗するスチュアーデスは乗務員(給仕)に含まれます。
列車内販売員は乗務員に該当しません。
② 上記①以外の乗務員について、その者の従事する業務の性質上、休憩時間を与えることができないと認められる場合で、その勤務中の停車時間、折り返しによる待ち合わせ時間その他の時間の合計が休憩時間に相当するとき
③ 屋内勤務者が30人未満の郵便局において郵便、電信又は電話の業務に従事する者
(判例)
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