賞与の支給日在籍要件
労働基準法第89条にて就業規則の必要記載事項について定めていますが、賞与などの「臨時の賃金等」は「相対的必要記載事項」とされています。賞与を支給することを必ず就業規則に定める必要はなく、また、定めをする場合にも、支給要件その他については自由に定めることができるわけです。したがって、就業規則で「支給日当日に在籍していること」を支給要件とすることは問題ありません。
「賞与は、従業員にとって単なる会社の恩恵または任意に支給される金員ではなく、労働の対価としてその支払いを義務付けられた賃金の一部であり、支給対象時に在籍しない従業員に対しても使用者は支払義務をもつ」としたものがあります(日本ルセル事件 東京高裁 昭49.8.27)。
しかし、判例の多くは、支給日在籍を条件とする支給規定を正当としているようです(大和銀行事件 最高裁 昭57.10.7 ほか)。
ただし、退職日を労働者本人が選択することができない定年退職や、整理解雇等の会社都合退職については、自己都合退職の場合と同様に考えるわけにはいきません。定年退職では、退職日を労働者本人が選択することができず、整理解雇等の会社都合退職についても、労働者の都合で退職するわけではないからです。支給日在籍条項は、労働者の自発的退職の場合に適用と判断するのが妥当でしょう。
学説でも、「裁判例では、支給日在籍要件が自発的退職者の事案で適法とされ、さらに退職日を自ら選択できない定年退職者についても適法とされた。後者の解釈は、賞与の賃金としての性格から疑問が多い。」とするものがあります。
トラブル回避には、就業規則に『支給日に在籍していること』の文言を付け加えるとよいでしょう。
就業規則規定例 |
(判例)
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