労災の損害賠償請求

 業務災害の被災労働者若しくはその遺族は、労働基準法上の労災補償や労災保険法上の保険給付とは別に、使用者に対して「安全配慮義務違反」を理由に損害賠償請求を求めることができます。

 労災が発生したことにより、企業に損害賠償責任が認められる場合、上積補償による給付を損害賠償から控除することができるかどうかは、上積補償制度をどのようなものとして規定するかによることとなります。一般的には、上積補償を行うことによって、その価額の限度で同一事由につき被災労働者又は遺族に対して負う損害賠償責任を免れると考えられます。

しかし、紛争防止のためには、上積補償制度について明確に定め、従業員に周知しておかなければなりません。特に次の2点に留意が必要です。

(1) 上積補償は労災保険給付の不足分を補うために上積みする趣旨であるので、原則として労災保険給付との支給調整は行わない取扱い(昭56.10.30 基発 696号)であること

(2) 「上積補償以外には民事損害賠償を行わないこと」とする規定を設けても、上積の金額が事故による被害の大きさに応じた相当の金額でなければ、当該規定は無効となること

 上積補償を行うに当たっての特別な合意がない限り、上積補償を行った後にさらに慰謝料等の民事損害賠償請求を提起されてしまう可能性もあります。実務上は、十分な上積み金であれば、交付と同時に民事損害賠償請求権を放棄する旨の念書を取ることも検討できるでしょう。

 上積補償の原資として、団体生命保険等を利用する場合は、被災労働者(遺族)補償分と会社の逸失利益分とを明確に分けて契約する必要があります。

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