年次有給休暇を請求する期日を制限すること

 労働基準法では、年次有給休暇は、原則として労働者が請求した時季に与えなければならないものとしています。しかし、その請求をいつまでにするのかといった手続きについては、定められていません。したがって、各企業の事情に応じて、請求手続きを定めることになります。

 労働基準法では、事業の正常な運営を妨げる場合には、会社は、労働者が請求した年次有給休暇の時季を変更できることとしています。したがって、年次有給休暇の請求の時季は、事業の正常な運営の妨げになるかどうかの判断ができる最小限度の時間があれば十分であると考えられます。

 使用者の時季変更権の要否を検討し、行使するために相当な時間が必要となるので、事前に申請するよう定めることは可能ですが、前々日までに申請するように定めた規定は有効とされています(電電公社比花電報電話局事件 最高裁 昭57.3.18)。

 年次有給休暇の取得の当日の請求は、事後報告と判断され、どう判断するかは会社の裁量に任されています。当日に届出された場合、これは拒否することが可能です。なぜなら、会社には上記の時季変更権があるため、時期変更の検討する期間が必要だからです。よって、通常は「前日までに」、連続休暇する場合は「1週間前までに」などの規定を設けることも可能と考えます。

 ただ、会社がこの当日の請求に応じるとしても問題はありません。当日の届け出は急の疾病などによるものが多く、全て拒否するのは問題です。事後許可制を設けておくことが重要と考えます。

 なお、運用上、事後に使用者に申し出することで有給休暇扱いにしている会社で、急病等のやむを得ない理由によって当日に突然休んだ場合、例えば申し出のあった労働者が気に入らないということで「事後の有給休暇の請求を認めない」とするような使用者側の裁量権の濫用があった場合は、違法判断されることになります。

 「事後の振替請求もできる」とだけ規定してある場合は、労働者の権利といった誤った認識をさせることがあり、直前での請求を助長させ、事業の運営に影響を及ぼしかねません。事後の振替請求は、基本的には急病といった事態を想定したものであり、事後請求はあくまでも使用者の「承認」という裁量に委ねる旨の規定とすべきでしょう

 就業規則で明確に年次有給休暇の請求方法・時期について定めておく必要があります。

就業規則規定例

第○条 (年次有給休暇)
   ・・・
 年次有給休暇の取得届は、緊急やむを得ない場合を除き、事後の届出は受理しない。当該提出届の提出締め切り日は原則として希望日の3日前とする。

 

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