災害補償
○災害補償
従業員が業務上あるいは通勤途中で負傷し、又は疾病にかかった場合には、会社はその費用で必要な療養を行うか、必要な療養にかかる費用を負担しなければなりません。
(1) 療養のため従業員が労働することができないために賃金を支給されない場合には、平均賃金の100分の60の休業補償を行う。
(2) 従業員の身体に障害が残った場合は、障害の程度に応じて、定められた日数の金額の補償を行う。
(3) 従業員が業務上死亡した場合には、遺族に対して、遺族補償を行う。
(4) 葬祭を行うものに対して、葬祭料を支給する。
就業規則規定例 第○条 (災害補償) |
負傷し、疾病にかかり、あるいは死亡した従業員がパートタイマーなど正社員以外の者であった場合も、会社は前述の災害補償を行わなければなりません。ただし、労災保険法に基づいて前述の災害補償に相当する給付が行われるべきものである場合には、会社は補償の責任を免れることになっています。
労働者災害補償保険(以下「労災保険」といいます。)制度は、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等について必要な保険給付を行い、あわせて被災した労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護等を図ることを目的とした政府管掌の災害補償制度です。
ただし、業務災害により休業する場合の最初の3日間は、労災保険からの休業補償給付が行われないので、事業主は、労基法に基づいて平均賃金の60%以上の休業補償を行う必要があります。
業務上の災害補償は労働基準法第75条等により使用者に義務づけられていますが、その給付は原則として労災保険によることとなります。
通勤災害給付
就業規則規定例 第○条 (通勤災害給付) |
打切補償
就業規則規定例 第○条 (打切補償) 2 前項の定めは、労働者災害補償保険法が支給する傷病補償年金に代えることができる。 |
上積補償等
業務災害の被災労働者若しくはその遺族は、労働基準法上の労災補償や労災保険法上の保険給付とは別に、使用者に対して「安全配慮義務違反」を理由に損害賠償請求を求めることができます。
労災が発生したことにより、企業に損害賠償責任が認められる場合、上積補償による給付を損害賠償から控除することができるかどうかは、上積補償制度をどのようなものとして規定するかによることとなります。一般的には、上積補償を行うことによって、その価額の限度で同一事由につき被災労働者又は遺族に対して負う損害賠償責任を免れると考えられます。
しかし、紛争防止のためには、上積補償制度について明確に定め、従業員に周知しておかなければなりません。特に次の2点に留意が必要です。
(1) 上積補償は労災保険給付の不足分を補うために上積みする趣旨であるので、原則として労災保険給付との支給調整は行わない取扱い(昭56.10.30 基発 696号)であること
(2) 「上積補償以外には民事損害賠償を行わないこと」とする規定を設けても、上積の金額が事故による被害の大きさに応じた相当の金額でなければ、当該規定は無効となること
上積補償を行うに当たっての特別な合意がない限り、上積補償を行った後にさらに慰謝料等の民事損害賠償請求を提起されてしまう可能性もあります。実務上は、十分な上積み金であれば、交付と同時に民事損害賠償請求権を放棄する旨の念書を取ることも検討できるでしょう。
上積補償の原資として、団体生命保険等を利用する場合は、被災労働者(遺族)補償分と会社の逸失利益分とを明確に分けて契約する必要があります。
業務上の事故について、労災がカバーしてくれるとはいっても、そのカバーしてくれる範囲は無制限ではありません。特に大きな障害や死亡事故になってしまった場合には、その損害額は大きくなります。会社に責任(故意や過失)がある場合、「損害賠償」の請求を受けることがあるからです。
このリスクの予防として民間保険に加入するのが「労災上乗せ補償」です。
労災上乗せ補償は法定の給付ではありません。自社で導入している場合にはしっかり就業規則に記載しておく事項です。
ここでの注意点は次の3点です。
(1) 労災上乗せ補償は、慰謝料などに充当するものであるので、この補償を受けるにあたって、会社に対する全ての損害賠償権を放棄するものであること
(精神的苦痛については別だ、等の主張をさせない)
(2) 会社に対して全ての損害賠償権を放棄する旨の書面提出を義務とすること
(あとで言った言わないのトラブルを回避)
(3) 支給対象者を明確にしておくこと
(例:民法上の相続人)
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